葛西建築事務所 葛西和子 『住まいとインテリア』      
〔設計例から〕こもらないキッチン                       
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   台所がキッチンと呼ばれるようになって陽の当たる場所へ出てきました。
   そして対面式と呼ばれるキッチンスタイルが生まれたのですが、
   本当に主婦が望んでいたのは、対面式ではなく対話式だったのです。

対面式キッチンから対話式キッチンへ

これまで家づくりのポイントはリビングルームでした。
これはリビングが居間+応接間で、来客の目も意識したためでした。
ところが近頃ではライフスタイルが多様化し、家族それぞれの活動が個別化してきて、
いっしょに食べることをより大事にするようになってきたようです。
せめて朝食だけは、朝日の当たる部屋でいっしょにとりたい、
友達を呼んで料理の腕をふるいたいなどという希望が建て主さんからでてくるようになったのです。

家づくりの「へそ」はキッチンだ、という設計者もいます。
というより、食べる場所こそが「へそ」であり、そこにどんなキッチンをどういう形で
くっつけるかが大事になってくるのです。

少し前までは、キッチンづくりといえばまずシステムキッチン選びでした。
家具調と呼ばれた美しいシステムキッチンが、これみよがしに鎮座しているのが
素敵なキッチンとして憧れを持たれたものです。

今、リフォーームの相談にみえる方は、皆さんキッチンにこもりたくないと言います。
家族や来客の顔が見えるところで作業したいのです。
私サービスする人、あなた方サービス受ける人、と言う一方的で固定した関係がいやなのです。
サービスをする人受ける人という関係は、対面式だって固定されそうですが、
対面式には少なくとも会話があり、食器の受け渡しがあるのが新鮮でした。

そこでさらに、会話や受け渡しを残し音や臭いを漏らさないような、対話型のキッチンづくりを
考えるようになりました。
対面式キッチンでは家族と視線をかわすために、どうしてもキッチンがオープンになってしまい、
臭いがもれる、音がうるさい、片付いていないのが見えるといった不満がでていたので、
見えつつ隠すプランニングをするようになりました。 

家族や来客を誘い込む、動線の工夫

 対話型のキッチンでは、食べる場所とのつながりを考えるだけでなく、
キッチンにみんなが入りやすいような動線も考えます。
会話さえあれば、キッチンが主婦ひとりの城でもいい、とは思いません。
 自然な形で家族全員が家事参加をするのが理想ですが、そこまでいかなくても、
キッチンの様子がわかり、さりげなく手伝えるようなしつらえにしたいものです。

そのためにはまず、どれくらい見せるか、隠すかを決めます。
フルオープン対面式にしてレンジフードや吊戸棚まで取ってしまった例もあれば、
食べる場所からはコンロもシンクも見えないような対話型もあり、この点については、
お宅によってさまざまです。
つぎに、行き止まりにならないような動線をなるべくたくさん作ります。
何人かが同時に出入りし、中で動き回れるようにしたいからです。
行き止まりの動線は奥を物置にしてしまい、ますます動きにくくなります。
実例の間取りにみられますが、一本の柱を囲んで三枚のドアがついているのもこのためです。

実際にキッチンで動いている主婦の方たちは、このあたりのことを感覚的に理解している
ことが多く、こちらから提案するまでもありません。
高齢期には夫がキッチンに入ることになるか、ヘルパーさんがキッチンに入ることになるか。
いずれにしても誰もが入りやすく使いやすいキッチンにしておきたいものです。

こもらないキッチンを支えるのは最新設備と計画的な収納です

さて、こもらない入りやすいキッチンとは、すなわち見えるキッチンです。
「八割がたの主婦には、見えるキッチンは使いこなせない」と言った建築家もいましたが、
その頃よりまた一段とモノは増え、キッチンは片付かなくなりました。
そして今のオープンキッチンの流行です。

和洋中の調理器・食器、常に新しくしたくなる家電製品、増える一方のゴミ分別。
近頃ではレトルトなど半調理食品やお取り寄せも増え、パントリー・食品庫を
希望されることもでてきたのも、キッチンのオープン化と関係あるかもしれません。。

キッチンの設計では、できるだけたくさんの収納を作ってほしいと言われることが
ほとんどです。設計者としては、いろんなアイデアをだしてたくさん収納を作るのは
腕のみせどころですが、さて使いこなせるだろうかと思うこともあります。

キッチンをどのくらいオープンにするかは、どのくらい片付けられるかによると思います。
お片づけに自信のない方には、対話型セミ・オープンキッチンがおすすめです。

  (『ナイス・リフォーム」誌2003年夏号に掲載したものを加筆訂正しています)

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