どこの店で、どんな三線を、どの程度の価格で購入すればいいのかは、初めて三線を購入する人にとって大問題です。話を聞く上で、用語について多少知識が有れば、少しは気後れしないで済むかもしれません。三線を買いに行くときの基本的な知識やお店で良く聞く用語を解説します。
●三味線店の選び方
●棹に関する用語
●胴(チーガー)に関する用語
●型に関する用語
●付属品に関する用語
●価格の目安
[取材協力:宮里三線店]
●三味線店の選び方
沖縄では三線を売っている店を「しゃみせんや〜」と呼ぶことが多いです。お土産物と一緒に三線を販売している店よりも、三味線屋で購入する事をオススメします。
どこの三味線屋さんも、良きに付け悪しきに付け、それなりのこだわりを持って三線を販売しています。どの店もうちが一番と売り込んできますので、複数の店で話を聞いて購入することをお勧めします。
一番重要なのは、とにかく自分で鳴らして音を聴いてから決めると言うことです。何の楽器を買うにしても、これから買おうという楽器にさわらせないという売り方はあり得ませんから、音の善し悪しが分からなくとも、とにかく弾かせてもらったらいいと思います。
これまで楽器というもの自体を買ったことがない人の中には、同じ価格の同じモデルなら同じ音が出ると考えがちです。しかし、電化製品と違って、楽器、特にアコースティック楽器はギターでもピアノでもひとつひとつ音色が違うのです。
また、絶対に確認して置いて欲しいのは、メンテナンスについてです。棹が曲がってしまったり、皮が破れてしまったときに、責任を持って修理または交換してくれる店を選んでください。自信のある三線を扱っている店なら拒否しないはずです。
こうした買い方をするには、やはり沖縄に旅行に来た時に買うのが一番ですが、どうしても沖縄まで買いに来られない人は、まず、自分の研究所の先生や良い音のする三線を持っている先輩を通して買うことをお勧めします。
沖縄で買い物をする時のコツでもありますが、とにかく知り合いから買うというのは有効な方法です。沖縄は小さな島社会なので、知っている人にまがい物をつかましてはすぐに評判を落としてしまいやっていけないのです。
●棹に関する用語
三線を選ぶ上で一番重要なのが棹の材質といわれています。
- くるち(黒木)
黒檀の事。八重山の黒木が最上級とされていますが、希少なため価格が高騰しています。初心者は無理して黒木にこだわることはないでしょう。中には数十万から数百万の棹もありますが、高価な棹は希少価値も含みますから、高価なら高価なほど素晴らしい音が出るとも限りません。
- カマゴン
フィリピン産の黒檀。黒檀の棹のほとんどがカマゴンの原木を輸入し、沖縄県内で加工したものです。音質も良く値段も妥当な範囲の物が多いです。中級者向きです。
- ゆし木
和名いすの木。初心者向には最適です。普及品と思われがちですが、鳴りの良い当たりの棹もありますのでじっくり探してみてください。
- カリン
硬い材質の木で、こちらも初心者向には最適です。
- しらた(白板)
木材に含まれる白い木目部分。白い部分が少ないほど良い黒木とされます。
- うずらみ(鶉目)
黒木に含まれる柄のような白い部分。形がよいうずらみがさりげなく入っていると粋な印象を与えると言われますが、好みでしょう。
- すんち塗り
棹を透明の漆で仕上げる塗り方。棹の材質が透けて見えるため、黒木の芯の部分は黒く仕上がりますが、しらたの部分は赤っぽく仕上がり、木目が柄のように見えます。
- 黒塗り
棹を透明の漆で仕上げる塗り方。材質がわからないので安価な三線は黒塗りが多いです。黒いからといって黒木であるとは限りませんので注意。
- 外国製棹
中国やベトナムで加工された棹。最近市場のあたりで見かける最も安い価格帯の三線のほとんどが外国製棹です。これから真剣に三線を学びたいと思う人は、安くてもこのランクは避けるべきでしょう。
- 分割棹
ヤマトの三味線のように分割できる棹。携帯性を狙っているようですが、弦楽器は弦を張っていないと調弦が安定しないという特性があるため、話題としては面白いですが実用性は疑問です。
●胴(チーガー)に関する用語
音質は棹と胴の相性によって決まります。特に皮ばりの品質は重要です。
- 蛇皮・本皮ばり
ニシキヘビの皮を張った胴。最も良い音がします。破れやすいといわれますが、それほど簡単に破れる物でもありません。毎日弾くことが一番の養生だといわれます。本土では特に破れやすいといわれていますが、私の場合三年間、特に注意しなくても破れませんでした。鱗が大きい方が皮が厚くて上等といわれますが、張りがゆるいとかえってこもった音になってしまいます。
- 人工皮ばり
人工皮革というか、ファイバーに蛇柄をプリントした物を張った胴。本皮ばりに比べて甲高い音がして、まろやかさに欠けますが、破れないという強みがあります。すこし弱く張ると甲高さを押さえることが出来ます。
- 二重ばり
薄い人工皮を張った上から本皮を張った胴。破れませんが音質はあまり期待できません。二重ばりでも比較的良い音に仕上げる腕の良い職人さんもいます。
- かんから三線
戦後物資が不足していた時、米軍物資の空き缶を胴に利用した三線。最近ではおみやげ物として、学校の教材用として利用されています。
●型に関する用語
真壁型、与那城型、など様々な型がありますが、詳しくは参考書籍に任せます。
- 真壁(まかびー)型
三線のスタンダードの型と言って良いでしょう。「開鐘(けーじょー)」と呼ばれる名器はすべてこの型です。ただし、真壁型だから音が良いという事ではありません。安価な三線もほとんど真壁です。
- 与那城(ゆなー)型
真壁の次に多い型だと思います。バリエーションに、小与那、江戸与那、鴨口与那があります。私はどちらかというと真壁よりゆなー派です。
各型とその分派(『琉球三線の名器一覧表/島袋正雄』より)
南風原型 (ふぇーばらー)─┬拝領南風原型(はいりょうふぇーばらー)
知念大工型(ちにんでーく) └翁長親雲上型(おながぺーちん)
久場春殿型(くばしゅんでん)
久葉の骨型(くばぬふにー)
真壁型 (まかびー)────宇根親雲上型(うーにぺーちん)
平中知念型(ひらなかちにん)
与那城型 (ゆなー)────┬小与那型 (くーゆなー)
├江戸与那型 (えどゆなー)
├佐久川与那型(さくぇかーゆなー)
└鴨口与那型 (かもぐちゆなー)
●付属品に関する用語
- 弦(ちるー)
三線の弦。太い方から、男弦(うーじる)、中弦(なかじる)、女弦(みーじる)と呼びます。バラでもセットでも購入できますが、女弦は特に切れやすいのでスペアを常備した方がよいでしょう。
- 爪(つめ)
三線のピック。普通は牛の角で出来ています。プラスチック製の物もあります。ギターのピックで弾く人もいます。
- 手掛(てぃーがー)
三線の胴を巻いている布。いろんな柄があるので、好みの柄に買い換えてみるのも楽しいです。
- ケース
三線を持ち運ぶ際の入れ物。木枠にビニールを張ったハードケース、布製のソフトケース、スチロール材に布を張ったセミハードケース、アルミ材のアルミケース、三線が二丁入るケース等があります。紅型の布袋や風呂敷で小粋に持ち運ぶ人もいます。保管用の木製の三線箱というのもあります。
●価格の目安
おおよその目安ですが、初心者なら[ゆし木・二重張り]で35000円程度からだと思います。中級者なら[カマゴン・本皮]で65000円〜100000円程度だと思います。[カマゴン・本皮]で65000円くらいなら、初心者も十分検討範囲です。
店によっては20000円前後の極端に安い三線もありますが、このクラスはお土産物と考えた方がよいでしょう。一年もすると棹が反って使い物にならなくなってしまうケースが少なくありません。
また、練習が進むにつれて音がわかってくると、必ずもっと良い物が欲しくなるものです。安物を買うというのはその日が早くくるだけですから、買い直すことを考えれば、値段だけにこだわる探し方には意味がありません。
逆に、いくら値段にこだわるなと言っても、いきなり初心者に数十万円の三線を薦めるお店も疑問です。そうした高額の三線を買うならば、信頼できる人に一緒に楽器を見て貰ってから購入した方がよいでしょう。上級者でさえ判断が難しいと思います。
子供用の三線はあるのかという質問も良くありますが、子供用サイズの三線というのは一般には存在しません。
※[ゆし木・本皮]で35000円程度からとしていましたが、[ゆし木・二重張り]に訂正します。いずれにせよ張り換えは後からでも出来ますから問題は棹です。(2003.6.30)
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