| 中国・呉橋 「雑技の郷」を訪ねて 〜華やかな舞台を夢見る農村の子供たち〜 天津から小型の長距離バスで南東へ5時間、中国製の古びたバスは砂埃を上げながら河北の平原を行く。周りはほとんど畑ばかりの農村地帯である。河北省南東部に位置する呉橋は農村部の小さな町に過ぎないが、長い雑技の歴史があり「天下雑技第一郷」(中国雑技の故郷)と呼ばれている。私立の小規模な雑技学校が林立し、多くの子供たちが集団生活を送りながら雑技の訓練に励んでいる。呉橋県は人口27万人、中心の桑園鎮でも馬車が通りをのんびり往来する田舎町である。 早朝六時、子供たちはもう路上にマットを敷き、軽くとんぼ返りや側転の練習をしている。路上でいくつもの棒を束に持ち皿回しをする少女たち。ただ回すだけではなく体を仰け反らしたり負荷をかけながら練習する。子供たちは雑技芸人養成の寄宿学校に4年間通う。5、6才から通う子が多く、小学校低学年くらいの子が大半である。河北省や近隣の省から来た農村の子弟がほとんどで、年間6千元ほどの費用を払うというから相当の覚悟である。学校では朝から夕方まで8時間じっくり雑技を学び、夜は1時間読み書きを学ぶ。優秀な生徒は将来、有名な雑技団に入団し、北京や上海など大都市の娯楽施設、さらには外国で活躍することを期待されている。実際、呉橋出身で活躍する若者は多く、親たちは親類や知人に借金をしてまで寄宿学校に通わせるという。毎朝5時台に起床するだけでも大変だが、練習もかなりハードで、子供たちは泣きそうになるのを必死にこらえている。コーチは子供の体をのけぞらせ、胸に抱いてグイグイ圧力をかける。思わず泣き出す子もいるが、一喝され唇をかんで我慢している。 午前11時、子供たちは練習を休め、テレビの前に集まる。てっきり自由時間を挟むのかと思ったが、そうではない。著名な雑技団のビデオCDを皆で鑑賞するのだ。年齢の大きい班の生徒たちは、後ろのほうで皿回しをしながらビデオを見ている。コーチの手前雑談をする子はいない。 さて、昼食の時間。体操マットを片付け、ちいさなテーブルをいくつか並べる。料理は冬瓜の煮物とおかゆ、マントウである。肉は入ってない。自分のホーロー碗を2つ手に2列に並ぶ。年長者が大鍋を床において座り込み、一人一人に配給するように柄杓で碗にいれる。小さなテーブルを囲んで、おしゃべりをしながら食事。この時は、さすがに子供らしい表情を見せていた。 夜は7時からは一時間読み書きの勉強をする。細長テーブルを皆で囲み、クシャクシャになった教科書を広げる。薄暗い裸電球にが子供たちを照らす。近所の専門学校生がアルバイトで先生をしている。夜は蚊帳の張った二段ベッドが並んだ狭い部屋で寝る。自分のスペースはこの二段ベッドの半分だけである。こうして寄宿生活のなかから未来の雑技芸人がうまれる。雑技学校の経営者・徐さんが部屋の奥から卒業生たちの写真を持ってきてくれた。日本で公演した者もいるという。決して十分でない環境で歯を食いしばる子供たち。中国の小さな田舎町から、華やかな舞台へはばたく日を夢見て・・・。 戻る |
![]() 早朝6時 路上にマットを敷きトンボ返りの練習 |
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![]() 楽々と両足を抱え仲間と談笑する |
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![]() 夜7時、暗い裸電球の下で読み書きの学習をする生徒たち |