曾樸



1872〜1935。字は孟樸。政治家としても活動した。
孽海花
結構良いんじゃない?

「清末・五四前夜集」平凡社(中国現代文学選集1)、収録
出版年・・・1963年8月
価格合計・・・450円

権謀術数を知らぬ英雄なんて、死体同然ですし、奔放不羈でない美女なんて、泥人形同然です。あなたはお美しくもあるし、(中略)そのためにはあなたがわたくしの身分をお知りになって、窮屈な思いをされたりしたら面白くないと思ったのです」彩雲はこのことばを聞くまでは、少し訳がわかりかけてきた気がしていたが、このことばでまたいっそう混乱してきたので、「奥さまはどんなご身分のおかたなのでしょう、お聞かせくださいませんでしょうか」というと、夫人は笑って、「お気になさらなくても、明日になればわかります」(第十二回。124ページ)
 『官場現形記』、『二十年目覩之怪現状』、『老残遊記』とならぶ、清末の譴責小説。譴責小説とは『儒林外史』のような風刺小説に比べ、より積極的かつ露骨に政治を糾弾する体の小説を言う。またこの『孽海花』はほかの三作と異なり、歴史小説という面も持つ。

 最初の方の場面は、いきなり膨大な数の人物が次々と登場し、その名前や年齢、境遇、関係などを把握しにくい。それでかなり読みにくかったのだが、第五回〜第六回あたりから主要人物もはっきりし、内容的にも面白くなってくる。
 舞台は中国からドイツ、ロシアにまでまたがり、ロシアの女アナーキスト・シャーリーや、気さくなドイツ女性・ヴェイヤー夫人(実はドイツ皇后)など、ヨーロッパ人も登場する。

 作者が清末の人だったことを考えれば、その思想は相当に開明的なものであるし、物語の規模は壮大で、筋もなかなか楽しい。未完に終わった作品であることは惜しいけれど(全六十回の予定であったが、三十五回で中絶した。翻訳は二十回まで)、まずまずおすすめできる作品である。


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