徒然華
更新履歴を兼ねた日記です。つれづれなるままに硯に、いえキーボードに向かって書き連ねています。
2005/12/31:現代の作家・書評ページでアンドレイ・コドレスクを紹介、『血の伯爵夫人』レヴュー。
○今年最後の更新。と言いつつ実は既に午前零時を過ぎており、もう2006年なのですが、まあ細かいことは気にしない方向で。2006年最後の紹介がこういうエログロ小説というのはちょっとどうかと思えなくもないですが、気にしない方向で。
それはともあれこれで現代文学は100作品目の紹介となりますな。2003年夏にカルヴィーノを読んで以来、随分たくさん読み漁ってきたもので。
○大晦日だし今年の頭に立てた目標について反省でもしておきましょう。1月1日の日記から転載すると、
一。中国書を十五冊以上読む。
二。留年しない。
三。名大祭でサークルの冊子を150部以上さばく。
四。平日の睡眠時間を増やし、休日のを減らす。
五。一つくらいは中編小説を完成させる。詩と掌編小説をたくさん書く。
となってますが。
一と二は達成。名大祭ではサークルの冊子を百二十部しかさばけなかったけれど、まあ儲かったのでいいでしょ。四は……もっと悪くなった。五については聞くな。
○今年全体の読書をふり返ると、中国語原書にかなり時間をあてたため、海外翻訳小説の読書ははかどらなかったです。今年初めの莫言、パヴィチ、エーコの三冊は大当たりでしたが、その後はやや低調。古典の大物はユゴー『海に働く人びと』とモーパッサン『モントリオル』くらい。古典でマイナーどころだと、ドフォントネーとアン・ブロンテ。現代作家で印象的だったのはエリクソン、李文烈、ラファティ、ペレーヴィンといったあたりですか。それとシュルツと。
とはいえまあ、キルギスの古典叙事詩や、グルジアの近代作家、中国の児女英雄小説など、色々と風変わりなものを読めたことは良かったし、楽しかったといえます。
2005/12/27:ペレーヴィン『眠れ』レヴュー。
○沼野充義氏が『200X年文学の旅』に記録している文章によれば、ロシアでは(でも、というべきか?)村上春樹が大人気とのこと。で、ロシアの作家でこれとタメを張れる人気作家はペレーヴィンだと。
確かに作風に似たところがあるような気がする両作家だけれど、ロシアで村上春樹が読まれているほどに日本でペレーヴィンが読まれているとはとても言えないだろう。なにせ1997年に『虫の生活』が出てから全く翻訳されていない。『眠れ』の解説ではこの短編集の後半部分も翻訳予定となっていたけれど、『眠れ』出版から9年経とうとしている今なお出ていない。となると……。
件の『200X年文学の旅』によると、ペレーヴィンは最近もどんどん創作しているらしいので、がんがん翻訳してほしいところなのだけれど。『眠れ』は短編集、『虫の生活』は中篇なので、できれば長篇作品が二つ三つ翻訳されると嬉しい。
――ここを見た人はとりあえず何も言わずに書店へ行って『虫の生活』と『眠れ』を買いましょう。売れれば翻訳もきっと継続されるはず!
○この一ヶ月間私をてこずらせてくれた『希夷夢』もどうにかこうにか読了。
周の遺臣・韓速と仲卿が、宋に抗おうとするも失敗、夢に浮石島に遊び、島主を助けて内乱を討ち外寇を退け、位人臣を極め、たまたま水の事故にまきこまれてはっと気付けばこれ一夢……あらすじを書けばこれくらいでOK。が、これ『封神演義』とかと同じくらいの分量がある上、作者が文章で自分の才能を見せようとしている面もあるので、かな〜り難解。
加えて、登場人物たちのキャラクター性も薄く、中盤以降戦争場面が続き、退屈な部分が多いことも、読了に間がかかったことの理由で。幻想的な描写はわりかし上手いのだけれど、その実力を発揮している場面がいかにも少ないのが惜しい限り。
神怪小説という区分だが、妖術仙術の類はほとんど出てこないので、『封神演義』ばりの法術合戦を期待すると裏切られることに。それよりは異界の珍奇な文物を紹介する場面が多い。
○多分中国小説を読むのはこれで今年最後になるだろうから、ここで総括。読み終わったのは『仙侠五花剣』『好逑伝』『銀瓶梅』『楊家将演義』『嶺南逸史』『説岳全伝』『雷峰塔奇伝』『緑牡丹』『常言道』『九雲記』『金台全伝』『花月痕』『後三国石珠演義』『鉄花仙史』『飛跎全伝』『希夷夢』の十六作品。なんとか目標達成。
このうち一番面白かったのは『嶺南逸史』。次いで『仙侠五花剣』。いずれもエンターテイメントとして今でも読むに堪える良作。『楊家将演義』は構成などの点で欠点が目に付くが、個々のエピソードには面白いものが多い。この三作に比べてちょっと劣るが、『好逑伝』『緑牡丹』『鉄花仙史』も悪くない。『花月痕』は文章はこの中で一番だが、筋がたるい(集中して読めなかった作品なので、読み返すと印象が変わるかもしれない)。『説岳全伝』は『楊家将』と並んで有名な作品だが面白いとは思わなかった。『銀瓶梅』『後三国石珠演演義』は読みやすいが物語のふくらみに欠け、人物造型にも独創性がなく、はっきり三流だと思う。
『嶺南逸史』は才子佳人を描きつつ、よく『三国演義』『水滸伝』の空気を受け継いで英雄伝奇としても優れており、女主人公たちの性格も一様でない。かなりよくできた作品だと思う。ただこれは明清小説の研究者たちの間ですら無名な作品で、きっと翻訳は今後百年経っても出ないだろう。
翻訳というものに興味ある、とか言うだけはタダだ。しかしこの作品くらいは、進路の如何に関わらず、いつかはなんとか翻訳してみたい。どうせ私が訳さなければ、この先誰も訳さないだろうし。
2005/12/24:20世紀の作家・書評ページでディミートル・ターレフを紹介、『鉄の燈台』レヴュー。
○初ブルガリア小説。と言っても作者はマケドニア出身だそうですが。
どちらかといえば一気に読んだほうが楽しめそうな作品でした。寝る前に30ページずつ読むという読み方はあまり良くなかったかもしれない。
ブルガリアの古典文学で名が高いのはヴァーゾフという作家の『軛の下で』という作品らしいです。タイトルの重苦しいばかりな感じがあまり好きではありませんが、これも機会があれば読んでみたいところ。
2005/12/23:今日の更新はありません。
○一向に読み終わらない『希夷夢』。まだ200ページくらい残ってます。……なんとか今年中には読みきりたいなあ。
気分転換に『飛跎全伝』を読んでみました。分量は『希夷夢』の10分の1くらいで、中篇といってもいいくらいです。揚州地方の方言を使って書かれた作品で、以前は独特の言葉遣いについていけず放り出してしまったのですが、今回は分からないところはあるながらもさくさくと読了。作者の鄒必顕は揚州で有名な評話芸人だったとのことですが、『三侠五義』の著者・石玉崑と似たような職種の人物ってことでしょうか。
「飛跎」は主人公・石信のあだ名ですが、また揚州方言ではデタラメな話をして他人を騙す者のことを「飛跎」と呼ぶらしく、要するに『飛跎全伝』というタイトルの意味は、デタラメな内容の小説だよということなんですな。
文学的な技法としては、妙に羅列が多い点が目につきますね。例えば、石信が虎に襲われる場面。
たちまち一陣の狂風が吹き、一群れの老虎が跳びだして来た。すなわち笑面虎、蒼蝿虎、吃食虎、假老虎、瞎眼虎、装媽虎、出山虎、皮老虎、紙老虎で、一斉に跎子(石信)を取り囲んだ。跎子は流光棍を振り上げて……
とこんな調子。西洋の作家で印象が近い作家を挙げると……ラブレー?
2005/12/17:リンク集拡大。
○汪寄『希夷夢』、ディミートル・ターレフ『鉄の燈台』を併行読書中。ともにようやく半分読み進んだところ。『希夷夢』も『後三国石珠演義』くらいにさくさく読めればいいのだけれど、なかなか文章に凝っていて難しい。といって、文学作品として『後三国』なんかよりよほど優れているのははっきり分かる。『鉄の燈台』は読みやすいけれど、なにしろ長い(二段組で活字も小さい400ページ強)。どちらもまだまだ先は長いなあ……。
ところがまあ、同じ本をずっと読み続けていると、他の本からの誘惑が激しくなったりもして。
東欧文学ではイスカンデルやドヴラートフ、まだ購入していないブルガーコフとペレーヴィン、計画に名前はあげていないけれどアイトマートフとかマヤコフスキーとか、それに共産圏出身の作家が幼少時代に必ず読んでいるオストロフスキー『鋼鉄はいかに鍛えられたか』(こんな作品は今じゃもう誰も読んでいないけれど、なんだかんだで多くの作家に影響を与えたものならば、案外面白いものなんじゃなかろうかという気がする)。
それと最近刊行されたものにも面白そうなものが多い。李光洙『無情』はようやく買った。ほかに韓国文学で欲しい本は李文烈『ひとの子』と黄皙暎『客人』。先月の新刊でもう一つ気になっているドールヴィイ『亡びざるもの』もそのうち買うつもり(3200円と一般的なハードカバーより少し高い程度の価格のわりに、えらく豪華な装丁で驚愕)。国書刊行会の刊行物ではウッドハウスも気になるし、このところ俄かに世界探偵小説全集も気になり始めた。特にイネス『ストップ・プレス』。
中国書では『双鳳奇縁』のほか、『鏡花縁』『綉雲閣』『済公全伝』などの大型作品も読みたいし、かつて放り出した『緑野仙踪』『林蘭香』『飛跎全伝』『何典』への再挑戦も考えている。かねてからの目標である、中国小説最大の巨編『野叟曝言』、艶麗で晦渋な文章で聞こえる『蟫史』にも、そろそろ挑戦してみたい。
まあ何をおいても、とりあえず『希夷夢』を読みきらねば。これを読み終われないなら、『野叟曝言』『蟫史』の読破など到底望めないだろうし。
○来年一月の文庫発売一覧。
全体的に微妙だけれど、ひとり気を吐いているのが筑摩。ウエルベック『素粒子』に『ノヴァーリス作品集(1)』ときた。岩波はトルストイ『戦争と平和』とブレヒト『三文オペラ』の新訳。それと現代文庫のほうでシーシキン『ノモンハンの戦い』という名前があるが、これはどういう人なのだろう。googleで検索をかけてみると、同名の画家に関する記事ばかりがたくさんヒットしてしまう。以前読んだ柴田元幸・沼野充義『200X年文学の旅』に、シーシキンという作家が『アンナ・カレーニナ』のパロディを書いたという記事があったが、あるいはこの人だろうか。それとも普通の歴史書かもしれない。
それとここには載っていないが、ハヤカワ文庫でイーガン『順列都市』が復刊するという噂を2ちゃんねるで聞いた。真偽のほどは知らん。
復刊といえば、岩波の来年2月の復刊がなかなか凄い。レッシング、ドーデー、ゴーゴリ、ワイルド、イプセン、いずれも珍しい作品ばかり。そしてゾラの最高傑作『ジェルミナール』も復刊するので、未読の人は必ず買って読むように。これを読まないなら、自然主義作家の小説なぞ一つも読まなくてよろしい、と言ってもいい作品だと思う。
2005/12/11:エリアーデ『19本の薔薇』レヴュー。
○『令嬢クリスティナ』や『ムントゥリャサ通りで』は割と何も考えずに読めるけれど、これは……なんとも難物、としかいえない。
2005/12/10:20世紀の作家・書評ページでのダル・ドゥンバゼを紹介、『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』レヴュー。
○これまで紹介されてきた数少ないグルジア文学はいずれもロシア語からの重訳だったのに対し、こちらは初のグルジア語原書からの翻訳だとか。
訳者の児島氏のページがあったのでリンクしておこう。グルジア滞在時の体験談なども読める。
グルジア文学はルスタヴェリ『豹皮の騎士』(12世紀に書かれた英雄叙事詩、世界的古典)以来長い歴史を持つそうで、この『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』の「二人目の一つ目」の章で描かれる主人公の書棚には、バルザックやディケンズなどと並んでチャフチャヴァゼ、ツェレテリ、タビゼ、ガムサフルディアなどのグルジア古典作家が並べられている。あとがきによれば、訳者はこれらの作品も翻訳していきたいと考えているようで、グルジア文学の今後の紹介に期待したい。
なお『豹皮の騎士』にはロシア語からの重訳があるそうだ。現在でも購入できるかどうかは分からないけれど、もし手に入れば読んでみたい。
○東欧文学多読計画、次はエリアーデ『19本の薔薇』。それからアトウッド『ペネロピアド』も読了しているので、そのうち感想を書く予定。
『希夷夢』は100ページほど読み進んだ、というかそれだけしか進められなかった(睡眠不足が酷くて……)。文章は普通の英雄伝奇や才子佳人ものとはちょっと変わっている感じがするが、下手ということではない。話はようやく夢に入ったところ。来週は作品の半分くらいは読み進みたいものだけれど、さて。
2005/12/6:ウィンターソン『永遠を背負う男』レヴュー。
○新・世界の神話プロジェクトは、「もう一度、物語を語りたい」をテーマに刊行された、現代作家による神話語り直しの企画。第一弾からいきなりジャネット・ウィンターソンとマーガレット・アトウッドという、現代の大家の名前が挙がっているのを見てまず腰を抜かした。世界三十二カ国同時刊行とか、シリーズ第百作が2038年刊行予定とかいう話を聞いてさらに驚愕。まったくえらい企画だ。執筆者リストにはペレーヴィンも名前を連ねているので刊行されたら是非とも読もう。日本からは桐野夏生……? これはまあ、どっちでもいいや(笑)。
今はアトウッドの『ペネロピアド』のほうを読みかけたところ。同じシリーズでも作家が変われば作風も変わる。当代一流の作家ともなれば特にそうだ。
――ところで、ジュンク堂へ行ったらこのシリーズが神話の棚に置いてあった。それはどうだろう、外国文学の棚に置くべきじゃないだろうか? 研究書じゃないんだからさ……。
○それとディレイニー『ノヴァ』も読了。感想を書くかどうかは未定。いろいろ隠喩が散りばめられていたらしいけれど、全然汲み取れなかった……(『白鯨』を下敷きにしているのはなんとなく分かったけど)。それを汲み取らなきゃ、ただの良く出来たスペースオペラだしなあ。『アインシュタイン交点』と『ダールグレン』に期待。
○今日は眠くて『希夷夢』読書がはかどらなかった。明日はもちっと進めよう。これ以外の中国古典小説で最近気になるのは『錦香亭』、それと鴛鴦胡蝶派の作品。前者は安史の乱を背景とした才子佳人小説。後者の鴛鴦胡蝶派は清末から民国初期に出現した娯楽性の高い小説家、及びその作品群を指す。明清小説がどう近代小説へ受け継がれていったかとか、そういうことを知るには読んでおくべきという気がする。
2005/12/3:リンク集拡大修正
○東欧文学多読計画というものを上げてみた。二十世紀前半の半古典と現代文学が中心。それに関連して東欧文学の刊行物が多い出版社へのリンクをリンク集に追加。
○今月刊行予定の新刊の注目作品リストをアップ。気になる新刊の嵐だった先月に比べると随分寂しいが、これくらいでないと財布がもたない。まだ李光洙とドールヴィイとグウィンを買ってない身としては、今月面白そうなものが山ほど出たりするとかえって困る。
ちくま文庫のグリム童話集は買っとくべきかなあ……。
○『後水滸伝』を読み始めるがすぐにやめてしまい、放り出して久しい『鉄花仙史』の読書を再開・読了。やはり筋が多すぎて構成が散らかっている感が否めないものの、だいたいは楽しめた。陳秋麟の惚れっぽさが笑える。符剣花がああいう結末になってしまったのは、彼女に惚れて第二回を訳出した人間としては痛恨の極みだ。これについてはちょっと作者を呪いたくなった。
『後水滸伝』は、『水滸伝』の登場人物三十六人が転生し、楊幺(宋江の転生)のもとで活躍する話なのだが、どうにも面白くない。まず第一にあだ名のセンスが良くない、というより最悪。「呼保義」宋江に対する「全義勇」楊幺、「玉麒麟」盧俊義に対する「金頭鳳」王摩、「智多星」呉用に対する「広見識」何能、「入雲竜」公孫勝に対する「活神仙」賀雲竜……と挙げればお分かりだろう。やはり『水滸伝』どころか『水滸後伝』と比べてもかなり見劣りしそうな印象。読み進めればストーリーは面白いんだろうかなあ……?
次は汪寄『希夷夢』を予定。別世界での大戦を壮大なスケールで描き出す夢オチ小説としてその筋では有名(かもしれない)。長いが頑張ってみよう。それと王昭君をヒロインとした『双鳳奇縁』も読書予定。短いし、こっちを先に読むかも。
今年の初めに「中国小説を原書で15作品読む」という目標を掲げた覚えがあるが、今のところ読んだのは『仙侠五花剣』『好逑伝』『銀瓶梅』『楊家将演義』『嶺南逸史』『説岳全伝』『雷峰塔奇伝』『緑牡丹』『常言道』『九雲記』『金台全伝』『花月痕』『後三国石珠演義』『鉄花仙史』の14作品。『希夷夢』『双鳳奇縁』のどちらかを今年中に読み切れれば目標達成だが、果たしてどうなるか。
2005/11/28:カダレ『草原の神々の黄昏』レヴュー。
○これでカダレの邦訳作品はコンプリート(ただし『夢宮殿』は再読候補作。私は睡眠不足のせいで楽しみきれなかった)。
……誰でもいいから『死の軍隊の将軍』を翻訳してください。
本当のところ、パヴィチ、カダレ、パムク、ケルテースといったあたりはもっと翻訳紹介してほしいと思う。世界的な作家で、欧米じゃちゃんと翻訳が進んでるんだから。
2005/11/27:レム『天の声』『枯草熱』レヴュー。
○この『天の声・枯草熱』と『宇宙舟歌』はほぼ同時に発売されたわけだが、ラファティのほうは購入早々に読み終え、レムは購入早々に挫折、今ごろになってようやく読了と。『枯草熱』はともかく、『天の声』は私のような通俗読者には読みづらくてかなわない。コレクションの次回配本『フィアスコ』と『変身病棟』に期待。『高い城』はどうだろう。読むべきか。
○東欧文学多読計画。とりあえずシュルツ、レムに続いてカダレ『草原の神々の黄昏』を読書中。
琴欧州が大関昇進を確実にしたところで(今場所はアルバイトのためにあまり相撲を見れなかったが)、ふとブルガリア文学はどれくらい訳されているのかと思い、Amazonで検索をかけてみる。すると意外と多くの作品が出版されているのにビックリ。ディミートル・ターレフ『鉄の灯台』ってのが面白そうだ。
相撲つながりでグルジア文学はどうだろうと思って検索してみると、比較的最近(2004年2月)、ノダル・ドゥンバゼという人の『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』という作品が出版されたらしい。これもなんだかかなり良さそう。
それにしても、ポーランドやチェコどころか、ブルガリアやグルジア、アルバニア、ルーマニア、アブハジアなどの作家のものが手軽に読めるとは、いい時代に生まれたものだ。
2005/11/22:現代の作家・書評ページでレイナルド・アレナスを紹介、『めくるめく世界』レヴュー。
○うーむ、この作家もただ者ではない。夭折してしまったのは本当に惜しいことだ。
アレナスの邦訳はほかに『夜になるまえに』『夜明け前のセレスティーノ』『ハバナへの旅』の三件。この中では作者自身の幼年時代に取材したという『夜明け前のセレスティーノ』が気になる。
○『後三国石珠演義』も読了。西晋衰退期を扱った歴史小説ながら、女主人公に虚構の人物・石珠を配し、架空史を描き出した珍しい作品。内容自体は『封神演義』の劣化版といった印象で、特に優れているとは思わないが、あまり虚構を語りたがらない中国古典の中にあって(虚構をさも事実であるように言うのが普通)、あからさまに架空史を創り出した本作は稀な存在と言えるそうだ。
文章は簡明で話がさくさくと展開するため、極めて読みやすい。240ページほどの作品ながら、読解精度を落とすことなく、わずか三日余りで読了できてしまった。
次は『後水滸伝』の予定?
○パステルナーク、シュルツと読んだついでに、ちょっと東欧文学をいろいろ読んでみようと計画中。読書予定リストに挙げているのは、既読作家ではカダレ、ブルガーコフ、ペレーヴィン、エリアーデ、レム。未読作家ではコドレスク、イスカンデル、ドヴラートフ。その他、「ちょっと気になる」レベルの作家は挙げればきりが無い。そういえばドストエフスキーも長らくご無沙汰なので、『悪霊』なり『虐げられた人々』なり、そろそろ何か手にとってみようかという気もする(面白いことが分かっている作家だから、何も躊躇することはないのだけれど)。
まあ中国小説と併読するので、一度にそう沢山は読めないけれども。
2005/11/20:20世紀の作家・書評ページでブルーノ・シュルツを紹介、『肉桂色の店』『砂時計サナトリウム』レヴュー。
○えらく時間がかかってしまった。『砂時計サナトリウム』のほうは輪をかけて読みにくい。
ゴンブローヴィチは自分とシュルツ、それにヴィトカツィという作家を挙げて、それぞれ「叛逆の狂人」「溺れた狂人」「絶望の狂人」と呼び、「ポーランド・アヴァンギャルドの三銃士」と称しているとか。さすがに雰囲気は伝わると思う。
ヴィトカツィのほうは今のところ翻訳が出版されていないけれど、訳者工藤氏の例のエッセイ『ぼくの翻訳人生』によれば『非充足』という作品の訳稿が完成している模様。ただし出版時期どころか出版社さえ決まっていないようなので、気長に待ったほうが良かろう。
ついでに言うと、件の『ぼくの翻訳人生』を開巻してビックリしたのは、ポーランド怪奇小説の古典、ポトツキ『サラゴサ手稿』の完訳が完成しているということ(国書刊行会から刊行されているものは抄訳)。出版社は東京創元社らしい。早く出せ(出来れば文庫で)。
○『後三国石珠演義』の読書を再開。妙に読みやすい。下手をすると翻訳書のシュルツより読みやすい。面白いかどうかはまた別の問題。
○買い物。国書刊行会の世界幻想文学大系(このシリーズはちまちまとでも買い集めていきたい)に収めるエーヴェルス『アルラウネ』を購入。さらにカダレ『草原の神々の黄昏』を注文。そろそろ資金がつきかけてきた。
さて何を買うべきか。比較的外れることの少ない私の勘が面白そうだと告げているグウィン『なつかしく謎めいて』も読みたいし、ハードカバーを持っているけれど大きすぎて読みにくいので文庫版が欲しいオースティン『マンスフィールド・パーク』も、幼年期の私のバイブル『ファーブル昆虫記』の完訳も捨て難い。買おう買おうと思っていたアリストパネスの喜劇も未購入……。それにあれとかあれとか。
2005/11/17:今日の更新はありません。
○シュルツ『肉桂色の店』読了。『砂時計サナトリウム』を読んだら併せてレヴューする予定。
……なるほど、こういう文章を書くわけね。眠気に満ちた頭で読み進めていくのはしんどいものがあるけれど、凄さは分かる。
○小説家、ジョン・ファウルズさんが死去
このサイトでは以前、彼の奇想小説『マゴット』を紹介したことがあります。合掌。
しかしサガン、ミウォシュ、クロード・シモン、巴金、ファウルズと、昨年から大御所の訃報が相次いでますな。前世紀はこうして消えていくわけですね……。
2005/11/15:20世紀の作家・書評ページでパステルナークを紹介、『ドクトル・ジバゴ』レヴュー。
○小説として楽しめたかと言われればちょっと首肯しかねるけれど、文章は本当に綺麗な作品。まさに詩人が書いた小説と言えるでしょう。パステルナークの本業である詩作のほうは、未知谷という出版社から詩集が出ているのでそれで読むことができます。中でも傑作といわれているのは『わが妹人生 1917年夏』。なんだか一部の人たちにウケそうなタイトルですな。
ロシア革命を扱った小説となれば、なんとなってもショーロホフ『静かなドン』は外せません。長いのでしんどいですが、未読の方は読んでおきましょう。ブルガーコフの処女長篇『白衛軍』もありますが、こちらは残念ながら未読。この革命についてさらに詳しく知りたい人はトロツキー『ロシア革命史』をどうぞ。
関連作品としては、パステルナークのノーベル文学賞受賞をめぐって物語が紡がれる、アルバニアの作家イスマイル・カダレの小説『草原の神々の黄昏』があります。これも読みたい。
2005/11/12:現代の作家・書評ページでイシュメール・リードを紹介、『マンボ・ジャンボ』レヴュー。
○10日の日記、書いたは良いがアップしてなかった。
○パステルナーク『ドクトル・ジバゴ』を読書中。アレナス『めくるめく世界』を併読。そういえばラテンアメリカ文学を読むのも久しぶり。前にマルケスやリョサを読んだときには、あまりの濃さと熱さ(暑さ?)のためにちょっと肌に合わない感じがしたけれど、この作品はコミカルで楽しめそうだ。ラテンアメリカものでは、評判高いアジェンデ『精霊たちの家』も積ん読してある。マルケス『百年の孤独』は、前に読んだときには魅力を味わいきれなかった気がするので、いつか再読したいと思っている。
○『シュルツ全小説』を購入。短編集『肉桂色の店』『砂時計サナトリウム』と、この二冊に収録されなかった短編四つを収める。ついでに訳者・工藤幸雄氏の自伝『ぼくの翻訳人生』も購入してぱらぱらとめくってみる。
――そもそも私が中国文学を志したのは、明清小説の翻訳の余りの少なさ(それを教えてくれたのは魯迅『中国小説史略』)への不満が原因で、当然翻訳というものへの関心はかなり強かったわけだ。多少は原書を読めるようになって、自分のためには翻訳書は必要なくなったのだけれど、関心は薄らがない。良い物はやはり人に薦めたいわけだ。が、しかしこれを読んでいると自分の甘さを実感させられて――痛い。
その痛みで発奮できないのが私のダメなところなんだよなあ。院試の勉強も就職活動もせず、気ばかりが焦る三年の秋。
○それにしても、ずっと疑問に思ってたんだが、どうして世の『三国志』ファンの間では、「ある程度読んだら『演義』は「卒業」、『正史』に当たって史実を知ろう」という空気が支配的なんだろう。あれだけ面白い話を読んだんだから、史実では実際どうだったのかなんてどうだっていい気がするのだけれど。それより私は羅貫中のほかの小説、例えば『残唐五代史演義伝』(そういえばまだ読んでないや)などに興味を惹かれたけれど、そんな人間は絶無、少なくとも極めて希少なんだろうか?
2005/11/10:今日の更新はありません。
○眠い。
○『花月痕』読了。しかし、う〜む……。
やはり世情小説は難しいね。清代の人々の生活の様子とかに関する知識が充分でないものだから。さすがに読むのがかったるい部分もあるし、それを読み飛ばしているといつの間にか筋がわからなくなる。読者の力量不足がはっきり露呈してしまった感がある。前からか。
『後三国石珠演義』をぱらぱらと読み始める。文章は結構淡々とした感じ。パステルナーク『ドクトル・ジバゴ』も合間に読み進めてみる予定(そういえば久しぶりなロシア文学)。それとイシュメール・リード『マンボ・ジャンボ』はもうじき読み終わる。レムは中断中。
○12月の文庫発売一覧。しかし、コレってものはあまりないかな。あえて挙げればカルヴィーノ『不在の騎士』文庫化(私はハードカバーを持ってるけど)。未読の方は是非。
2005/11/9:今日の更新はありません。
○最近の積ん読。

これは最近積ん読した本であって、前々から積ん読している書籍は含まれていない(^^;
どれも楽しみな本ばかりだが、中でも「ある意味」期待しているのが『後三国石珠演義』。『水滸伝』や『西遊記』と違って、『三国演義』は史実依拠の度合いが強く構成が厳密だ。これでどう続編をつくっているのか。前書きを読むと、思い切って虚構に走り、神魔小説に近くなっている作品のようだけれど。
『後水滸伝』『後西遊記』と併せて読んでみようかと思っているところ。
○ついでなので続編の話などを……。
どこの国でも、一つの作品がヒットすると、当然のように模倣作や続作がワラワラと現れるもの。中国の通俗小説でも同じで、四大奇書にはそれぞれ続作があるし、『紅楼夢』に至っては十数もの続編が著されているそうだ。
『三国演義』の続編としては、上で書いた『後三国石珠演義』のほか、『続三国演義』というものがある。これは三国時代の後・晋の時代を描いたもので、『東西晋演義』ともいう。しかし晋代を描いた小説でもって『続三国』というのはちょっとおかしな看板ではある(『石珠演義』の前書きでもそう指摘されていた)。
『水滸伝』の続作は主に三つ。『後水滸伝』『水滸後伝』『蕩寇志(結水滸伝)』。このうち『水滸後伝』が最も優れているとされ、翻訳もある。『蕩寇志』は百八英雄が最後には皆殺しにされるという、『水滸』の真逆の思想を持つ作品だが、文体が優れ評価は高い。『後水滸伝』はほかの二作品と比べて評価は低いようだ。実際に面白いかどうかは読んでから書こう。
『西遊記』には『後西遊記』『続西遊記』の二編の続作があるほか、外伝的な中編『西遊補』がある。『西遊補』は『不思議の国のアリス』より二百年も前にアリス的な世界を描いたことで評価が高い。これも翻訳あり。また達磨がインドから中国へ聖典を伝える話『東度記』も、『西遊記』の続編に数えてよいだろう。『東度記』の作者・方汝浩は、ほかに『禅真逸史』などを著した明末の小説家。
『金瓶梅』には『続金瓶梅』、さらにその続編『三続金瓶梅』がある。
『紅楼夢』には『続紅楼夢』『紅楼復夢』『紅楼円夢』『綺楼重夢』などのおびただしい続書があるが、どれ一つとして出来のよいものはないときく。
一番凄いのは侠僧・済公の活躍する『済公全伝』という作品で、なんと『続済公伝』から四十続まで続いたという。
○さて変わって現代文学の話題。群像社から、群像社ライブラリーの久しぶりの新刊『現代ウクライナ短編集』が刊行された模様。ウクライナの作家のものとかを読む機会はほとんどないので、これは貴重。こういうものを出してくれる出版社は応援したくなるね(しかし、もっとペレーヴィンを出せ)。
それと『シュルツ全小説』。BK1などではもう取り扱いが始まったようなので、今日の昼にマナハウスに寄ってみたけれど、まだ置いてなかった。いっそ生協に入荷するまで待つのも手か。
2005/11/6:今日の更新はありません。
○風邪を引いた。爪が割れた。
○魏秀仁『花月痕』、レム『天の声』を併読中。
タイトルの綺麗さでは明清小説中でも随一(と思う)な『花月痕』、三分の一弱ほど読み進んだ。筋はまあそう面白くないけれど、さすがは文人作家、文章は『金台全伝』などとは比較にならないほど端正(『金台全伝』の勢いある荒い文章もそれはそれで味があるけど)。魯迅は狭邪小説に分類しているけれど、『野叟曝言』『鏡花縁』とかの影響も多分に受けている。要するに知識をひけらかしてる部分が多い。
清代の小説とはいえ、魏秀仁は1818年生れで1873年に亡くなっているから、もう時代的にはほとんど近代小説といった感じがある。……はるか西のほうではまさに小説が黄金時代を迎えていた頃ですな。
レム『天の声』はと……苦労しつつ50ページほど。物語としても面白かった『ソラリス』に比べると、十倍も読みづらい感じがする(前置きが長いし)。正直なところイーガンより読みにくいよ先生。
あとイシュメール・リード『マンボ・ジャンボ』、クリストファー・プリースト『奇術師』もぱらぱらと。手を出しすぎな気もするけど仕方ない。
○ついでに最近、またぞろ国書刊行会の文学の冒険シリーズが気になりだしている。コドレスク『血の伯爵夫人』、イスカンデル『チェゲムのサンドロおじさん』、グランヴィル『火炎樹』、カーター『夜ごとのサーカス』、フラー『巡礼たちが消えてゆく』、カルペンティエール『春の祭典』といったあたり。とりわけ最初に挙げた二作品。どうやら東欧文学はわりと肌に合うらしい。
このシリーズの次の配本『寵姫』が出るのは当分先になりそうだから、それまでにちょこちょこと消化していければ良いかな、と。
2005/11/2:マアルーフ『レオ・アフリカヌスの生涯』レヴュー。
○レバノン出身の歴史作家・マアルーフの邦訳は三件。『アラブから見た十字軍』『サマルカンド年代記』そしてこの『レオ・アフリカヌスの生涯』。出版元のリブロポートが倒産してから、前二冊はちくま学芸文庫で復刊されたけれど、この作品だけは復刊されてないという不公平。
彼は『サマルカンド年代記』のあとも執筆を続け、マニの生涯を扱った『光の園』、エジプトとトルコが争った百五十年前のレバノンを舞台とする『タニオスの岩』(ゴンクール賞受賞)、17世紀の骨董商を主人公とする『バルダッサーレの旅』などを著している。――、と、未訳作品をわざわざずらずらと並べたのは、誰かに翻訳して出版して欲しいからで。
○本日の買い物。ブックオフ黒川店にてトルストイ『復活』、パステルナーク『ドクトル・ジバゴ』、ナイポール『神秘な指圧師』を購入。特にパステルナークは前々から読みたいと思っていたところだったのでまさにめっけもの。その他、最近はプリースト『奇術師』を買ったし、ネット古書店からアジェンデ『精霊たちの家』、レイナルド・アレナス『めくるめく世界』、ブラウリオ・アレナス『パースの城』、グラック『森のバルコニー』を、中国書『水滸伝』、『平妖伝』、『飛竜全伝』、『英烈伝』、『後三国石珠演義』、莫言『四十一炮』、賈平凹『白夜』を取り寄せ中。買いたい新刊が多いのに何を散財してるんだ。
2005/11/1:今日の更新はありません。
○閻連科『受活』を読み始め……読めねえ。
ただでさえ語学力が足りていないのに、文体に凝ったり奇天烈な展開をされたりするとついていけない。――これだから現代文学は難しい。莫言や賈平凹はもう少し読みやすいだろうか。もっと読めなかったりして。
まあこれはしかし、翻訳される可能性がないわけじゃないから……。
明日から『花月痕』読み始める予定。
○今月注目の新刊。多い。
一番楽しみなのはやっぱりシュルツかな。その次はドールヴィイ。子供のころ夢中になった『ファーブル昆虫記』を完訳で読み直してみるのもまた一興。角川の二冊は「世界の神話」というシリーズ企画で、世界各国で同時刊行となるそうな。……藤原書店のジョルジュ・サンド続刊はまだのよう。『黒い町』、果たして今年中に出るか。
○ちくま文庫復刊アンケート・集計結果
モーム『カジュリアーナ・トリー』落選した…… orz
セルバンテス『ペルシーレス』落選したぁ…… ○| ̄|_
ディケンズ『マーティン・チャズルウィット』落選し……た…… ○.....| ̄|_
一度に二十件まで投票できるようになってたから、二十点、あるいは気前良く三十点くらい一気に復刊するかと思ってたら、九点とは……。いや、どれも価値ある作品だとは思いますけどね……。
いっそ岩波みたく定期的に復刊してほしいなあ。毎月あるいは隔月一点ずつでもいいから。
まァとにかく、アリストパネス『ギリシア喜劇』は買うほかあるまい。サキ、ダンセイニ、デ・ラ・メア、キャロル、ブラッドベリはとりあえず購入検討リスト入りだな。それと12月の新刊は『星の王子さま』だそうで。
2005/10/30:現代の作家・書評ページでR・A・ラファティを紹介、『宇宙舟歌』レヴュー。
○ラファティというのもコアなSFファンの間では知られた名前らしいです(国書刊行会の「未来の文学」に入っている作家はみなそうらしいのですが、浅学にして私はこの間まで一人も知らなかった……)。イヤこれは面白い。かなり好みな作風でもある。他の作品もちょっと探してみるか……と思わせられました。
あわせて読みたい――『宇宙舟歌』と『オデュッセイア』と『カシオペアのΨ』、どれもおすすめ!(Amazon風)
『宇宙舟歌』単品でも面白いですが、『オデュッセイア』と併読することでさらに楽しめると思います。それとドフォントネー『カシオペアのΨ』も、宇宙を舞台に奇想の展開する作品ということで併せて推薦しておきましょうか。
2005/10/29:マキリップ『影のオンブリア』レヴュー。
○『影のオンブリア』、佳品ですな。この世界観、この文章、この登場人物、この情景、どれも非常に好みなのですが、ただどうにもちょっと物足りない感じが。もっと長く書いて欲しいなと。
○『金台全伝』も読了したのですが、まあ……。小説中でも言ってましたが、これは『金台伝』であって『平妖伝』ではないんですな。蛋子和尚の話が冒頭五回に渡って描かれているので、『平妖伝』ベースで話が進んでいくかと思いきや、ほとんどが別の内容(要するに金台の大活躍)となってます。
話はかなりマンネリの傾向があって途中から飽きてきたのですが、特殊な成立事情(『平妖伝』が民間の弾詞となり、その弾詞がまた小説となった)を持つ小説であるためか、普通の白話小説ではお目にかからないような言葉遣いをしている部分もあって、まあ読んだ価値がなかったわけではないなと思いますが。
○ラファティ『宇宙舟歌』を読み始め。を、これは面白い。カッコいいのかギャグなのか分からないあたりが特に。
○若い読者にわかりやすく、団塊リタイアも見込み
……うーむ。
これで古典読者が増えればいいのだけれど、正直なんだかなぁという気持ちも強かったりします。下にも書きましたけど、『ドン・キホーテ』は岩波文庫に最近の(1996年だったか?)翻訳が入ってるんだから、なにも新たに訳さなくても、という気が強くします。それよりも『アマディス』を以下略。
シャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』も、新潮文庫版は充分読むに耐える訳なのだし、こんなありふれたものを新たに出すよりは『シャーリー』と『ヴィレット』を。
トルストイの新訳は確かにそろそろタイミングだと思いますけど、それよりドストエフスキー『未成年』を復刊するほうが先だろう、とか。
うーむ、我ながら不満たらたら(苦笑)。今までもさんざん言いましたが、言いたいことは一つで。「余分な労力があるなら、未訳または入手できない古典を早く翻訳して出せ!」ってこと。20年前とか30年前の翻訳は古いとは言いません(70年とか100年とか経ってればそりゃ別ですけれども)。
○巴金氏:国民的作家、惜しまれて100年の人生に幕
巴金亡くなりましたか……合掌。
二十世紀が少しずつ消えていきますね。
彼の代表作『家』は積読になってます。そのうち消化しよう。
2005/10/27:今日の更新はありません。
○『金台全伝』は第五十回まで読了、残り十回。実は期待したほど面白くなかったので、さっさと読み切って次へ行きたいです。『樵史通俗演義』か『後水滸伝』が良いかなと。あと『鉄花仙史』を読みかけで放置してるので、それも。
○レム『天の声・枯草熱』入手。ただしラファティ『宇宙舟歌』は見つからず。同時刊行かと思ったけど、ラファティは一日遅れるんですかね。明日は学校へ行く前に本屋に寄ってみよう。
それと22日の日記で「新しい台湾の文学」もお忘れなくなどと書いてましたが、『天の声・枯草熱』に挟まっていた国書刊行会の新刊案内で、李喬の『寒夜』という作品の刊行が予告されてます。忘れられてはいなかったらしい。良かった良かった。
○平凡社、11月の新刊が公開されてます。
『シュルツ全小説』キター!!
……シュルツは二十世紀前半のユダヤ系ポーランド作家で、前々から気になっていました。新潮社から立派な装丁の全集が17000円で刊行されてますが、とても手が出ませんでしたので、この刊行は朗報。あと「朝鮮近代文学選集」というシリーズも始まるらしく、初回配本は李光洙『無情』。こちらも期待。
しかし来月は楽しみな刊行物が多いですな。文庫では岩波のビュトール『心変わり』、中公のオースティン『マンスフィールド・パーク』、筑摩のマクラウド『かなしき女王』、早川のディレイニー『ノヴァ』、ディック『スキャナー・ダークリー』、ヴィレッジブックスのバーカー『アバラット(1)』(ハリポタの後に続々翻訳されたファンタジーはどれも子供向けっぽい感じがして読む気がしなかったが、バーカーは『血の本』という著名なホラー小説の作者であるらしく、これには少し興味があった)、新潮の水村美苗『本格小説』(この人の名前は国内純文学のレビューサイトとかで良く見かけるけど、どんなものだろう)といったあたりが面白そうですし、単行本では国書のドールヴィイ『亡びざるもの』、角川のウィンターソン『永遠を背負う男』、アトウッド『ペネロピアド』(世界二十四カ国で同時刊行される「世界の神話」というシリーズらしい。どちらも一癖ありげな女流なので期待)、集英社の『完訳ファーブル昆虫記 第一巻上』などに期待が持てます。財布はとても持ちませんけど。
○ところで、シュルツのことを検索していたら、訳者である工藤幸雄氏のインタビュー記事を見つけたので張ってみます。この人の仕事量はほんとに凄い。私が読んだ作品はミツキエヴィチ『パン・タデウシュ』、パヴィチ『ハザール事典』といったあたりですが、いずれも間違いなく価値ある作品の貴重な翻訳となってます。
この記事、翻訳ってものにいささか興味ある私としては、色々と身につまされる話が多いですなぁ。これくらい勉強しないと、立派な仕事はできないってことですか、うぐぅ。
2005/10/22:自作公開ページに詩「秋雲流風」アップ。
○短い詩ですが、あまり「更新はありません」ばかりではアレなので。ま、枯れ木も山の賑わいというやつですな。
○国書刊行会のページ、久々に更新されてますな。そこで今日は名古屋の本屋を四件ハシゴしてレムとラファティを探し回ったのですが、まだ入荷してはいない模様(ウッドハウスは並んでましたけど)。では代わりに、スタージョン『ヴィーナス・プラスX』とかイネス『ストッププレス』とか、そのウッドハウス『よしきた、ジーヴス』あたり(全部国書の本だ)を買っていこうかと思いましたが、財布と相談の上で断念。レムとラファティで五千円飛んでいきますからね〜。
来月はドールヴィイの長篇『亡びざるもの』が出るらしいですし、「未来の文学」第二期の刊行も始まるわけで、いよいよ期待が高まります。しかし国書さんよ、「文学の冒険」と「新しい台湾の文学」もお忘れなく。
そのほか、最近刊行された注目の書籍というと、まずはブルガーコフの初期短編集『モルヒネ』。ケルトの英雄伝説『マビノギオン』のウェールズ語原典からの完訳とかも出てますな。それと『ドン・キホーテ』の函入美装本ですか(これを買うことはないと思いますが……)。『ドン・キホーテ』を新訳する余裕があるなら、『アマディス・デ・ガウラ』をお願いしたいと思っているのは私だけでしょうか。
○神田神保町のオフィシャルサイトが新装オープン、というニュースはちょっと話題になりました。ただ今のところ、古書データベースが貧弱すぎて使い物にならない(「ドストエフスキー」で検索して一件しかヒットしないってどうよ)のが残念。日本の古本屋やスーパー源氏くらいの規模に発展する日を待つとしますか。
○『金台全伝』、第二十五回まで読み進み。王則の乱は相当後半にならないと起こらない様子。
2005/10/19:今日の更新はありません。
○『金台全伝』第十五回まで読了。詳細な読書日記をつけるだけの余裕がないので、読んで思ったことはここに軽く書いておこう。まあ、主観的に。
指名手配犯・張其を捕えるよう命じられた王則と金台。ところが張其と旧友の間柄である金台は進退窮まり、ついに彼と義兄弟になってお上に背く羽目に……と、王則より先に主人公が道を踏み外してしまいました。あれあれ?
ここまでで一番派手な場面は張鸞と左黜児の妖術合戦。『平妖伝』でも最強クラスだったこの二人、勝負は如何と期待していると、初めのうちは張鸞が優勢。しかし聖姑姑がこっそり左黜を手助けしたので持ち直し。今度は蛋子和尚が登場して張鸞を支援して――結果は引き分け。まあここは、他の神怪小説に比べればそう派手ってほどではないかも。
むしろこちら。ここまでで一番滑稽な場面――何永児(『平妖伝』では胡永児)が言い寄ってくる男どもをからかうところ。軽薄で色好みなドジ野郎が美人に言い寄って、逆にたぶらかされるというのは中国小説の一つの黄金パターンですな。
何永児は気があるふうを装って、二人の男を床へ誘い寄せる。その上で、最初に忍んできた男は別の泊り客の男のベッドへ(「あ、痛い痛い、お嬢さん、どうして僕を殴るんだ!」)、二番目の男はその妹のベッドへテレポート(びっくりした姜四姐は顔色を失って、普通なら情が極まるときに、小三の頭を滅茶苦茶に噛みつけた。小三は顔中に血がしたたり……)。そして二人ともエラい目に遭うと。エロい上に笑える。
2005/10/17:今日の更新はありません。
○岩波文庫の新刊、クローデル『繻子の靴(上)』を購入。本文は250ページほどで、残り半分は訳注・年譜・解説という素敵な、もとい本格的な構成。下巻は来月にはまだ出ないようで、出るのは再来月かもっと後か。
それと中文書、『後水滸伝』『後西遊記』『樵史通俗演義』を入手。『後水滸伝』は、『水滸伝』の続作として最も有名な『水滸後伝』とはまた別な作品で、翻訳はない。『後西遊記』には翻訳があるらしい。『樵史通俗演義』は明滅亡を描いた歴史演義だが、史眼ある歴史小説として評価が高いと聞く。いずれも楽しみ。
○久々に中文書を読み始めた。『金台全伝』十二巻六十回。これは要するに『平妖伝』の改作と言っていいだろう。ただ『平妖伝』が民間の語り物(弾詞)となり、それがまた新しい小説として結実したという複雑な背景を持つ作品なので、文体もほかの白話小説とは一風変わっている。
現在巻二の途中まで読み進んだ。巻一は蛋子和尚の出生、天書の盗み出し、聖姑姑一家との出会いなどが描かれ、巻二で主人公の金台と王則が登場。張鸞も出て、次第に面子が揃いつつある印象。オリジナル主人公の金台と、平妖伝ではいまいちパッとしなかった王則の活躍に期待。
まあ『金台全伝』は訳されていないのであれだが(というか、あちらでもほとんど刊行されていない)、『平妖伝』は何種類かの翻訳もあるので、一度読んでみて欲しい。しっかりと構成の整った良作だから。
2005/10/14:現代の作家・書評ページで梁羽生を紹介、『七剣下天山』レヴュー。
○いくらか期待外れ……期待が大きすぎたか。
武侠の大家としては、残るは古竜。そのうちに読んでみたい。
○久々にブックオフへ行ってみた。ベスター『虎よ、虎よ!』、オースター『ムーンパレス』、それにマルタン・デュ・ガール『チボー家の人々』の端本八冊を入手。残り五冊は定価で買うか……。それとグラック『半島』をネット古書店で購入。グラックの本は『アルゴール』『シルト』以外どれもべらぼうなプレミア価格がついているけど、これは割合良心的な価格で入手できたのでラッキーだった。本当は『森のバルコニー』が欲しかったのだけれど。
○ノーベル文学賞はハロルド・ピンターが受賞。この人のことは名前すら知らなかったのだけれど、イギリスの劇作家で作風としてはベケットの系譜、かなりの大家らしい。日本でも、新潮社から全集が刊行されている(絶版)。これを期に文庫で復刊してくれると嬉しい。
○11月の文庫発売一覧。モームも推薦しているオースティン『マンスフィールド・パーク』が中公文庫ではじめて文庫化。ハヤカワ文庫SFでは、ディレイニー『ノヴァ』が復刊し、ディック『スキャナー・ダークリー』も刊行される(創元SF文庫で刊行されている『暗闇のスキャナー』と同じ作品だろう)。
岩波文庫の海外文学はビニトール『心変わり』という作品になっているが、これはビュトールの誤記じゃないか? もしそうなら、これはヌーボー・ロマンの作品。ひょっとするとヌーボー・ロマンが岩波文庫に入るのは初めてかもしれない。ヌーボー・ロマンさえも古典に分類される時代になったということだろう。
2005/10/11:現代の作家・書評ページでグレッグ・イーガンを紹介、『ディアスポラ』レヴュー。
○これがハードSFってやつですか……。
6日にも書いたとおり、イーガンはかなり前から勧められていて興味を持っていたものの、『順列都市』は絶版(99年刊行ですぜ! 信じられん)、『万物理論』は今一つタイトルに惹かれなかったので、とりあえず新刊のこれを読んでみた次第。まあ面白いですよ。きっちり読もうとすると大変だけど、楽に読みたきゃ楽に読めるし、楽に読んでも楽しめる。
○さてノーベル文学賞、他の賞に比べて著しく遅れましたが、13日(木)に発表とのこと。なんだかんだ言ってさすがにレベルの高い作家が選ばれますからまずは期待です。誰も知らないような作家が取って、日本で新たに翻訳が出ると嬉しい。――これについては東欧文学の沼野氏がうまいことを言っているから、引用させていただきましょう。「最近ではノーベル賞のありがたみも文学の分野ではあまり感じられないような気がしますが、それでも一つ具体的にありがたいことはある。それは、こんなふうに翻訳が出て、私たちの世界が少し広がるということです」(『200X年文学の旅』)。日本における海外文学の紹介は極めて不充分です(英米以外は特に)、ですから、まあ、そういうことですな。
2005/10/8:現代の作家・書評ページで李文烈を紹介、『皇帝のために』レヴュー。
○力無き正義は確かに無力だ。しかし無価値ではない。
○というわけで本サイト初韓国文学。いきなり大当たりでした。これは是非ともお読みください、ええ損はさせませんとも。
と言うものの、これももう品切れなんですよね。1999年刊行というのに。講談社さんよ、これは講談社文芸文庫で復刊すべきですぜ。したら重複承知で買うし、人にも薦めますぞ。
2005/10/7:レム『ソラリス』、再読したので感想書き直し。
○休みボケした頭に最初の一週間は辛かった……ぐふっ。
○3日の日記で生協で岩波文庫の販売領域が狭くなったことを書いたけれど、先日マナハウスへ行ってみたら、こちらも文芸書の売り場面積が縮小されていた。前は三階全部が文芸書のスペースだったのに、二階で法律や経済の本と売り場を分け合っていて、当然販売書目も減っていて。……ああ悲しいかな。
それはともかく、最近買った本を挙げてみる。
金庸『射G英雄伝』四巻・五巻
梁羽生『七剣下天山』上下巻
『泉鏡花集成(九)』
イーガン『ディアスポラ』
李文烈『皇帝のために』
イーガンは以前SFファンの友人から薦められていたんで、新刊が出てるのを見てじゃあ読んでみようと買ったもの。で最初のページを読んでみたところ……文系の俺に読めるのかコレ。李文烈(イ・ムニョル)は韓国の現代作家。こちらは文句なく面白い。読み終わったら感想を書こう。韓国の現代作家では、ほかに黄皙暎に興味ある。
そうそう、買ったわけではないけれど、いつの間にかゾラの『パスカル博士』が刊行されていた。これからの刊行予定は『大地』『生きる喜び』『ルーゴン閣下』となっている。ゾラの描く政治劇というのに興味があるので、『ルーゴン閣下』は出たら読んでみようと思う。
2005/10/3:今日の更新はありません。
○さー授業開始。しかし暑いのには参った。
久々に大学生協へ行ってみると、岩波文庫の棚が岩波新書の棚に侵食されているのを見て寂しくなったり。そうだろうさ、どうせ今時、大学生だって海外古典なんて読まんのだろうよ(といって海外の現代文学だって読んでるわけじゃなかろう)。へっ。
ふと思い立ってレム『ソラリス』再読。沼野充義氏による新訳・原典訳。感想を書き直すかどうかは未定だけれど、なるほどやはり傑作だ。――この本が出てからもう一年、二回目配本の『高い城』が出てから十月経つけれど、レムコレの続刊はまだ出ないのだろうかな。