星夢の舞

吉松隆・邦楽作品集

HoshiYume


星夢の舞(ほしゆめのまい)・・・邦楽アンサンブル
星幻譜(せいげんふ)・・・笙&二十絃箏
風夢の舞(かぜゆめのまい)・・・尺八&二十絃箏

 板倉康明 指揮 日本音楽集団、
二十絃箏:吉村七重/田村法子、尺八:三橋貴風、笙:三浦礼美

日本音楽集団の委嘱により2002年に作曲された話題作「星夢の舞」一具(全曲版)に
書き下ろしの新作(このアルバムが録音初演)「星幻譜」「風夢の舞」の2曲を加えた
21世紀の邦楽作品集。ついに登場!

2006年11月20日発売
(Camerata Tokyo CMCD-28116 ¥2,940)

録音
「星夢の舞」・2006年3月16日:田園ホール・エローラ(埼玉)
「星幻譜」「風夢の舞」・2006年9月6日:港南区民センター「ひまわりの郷」(神奈川)

ジャケット・デザイン:吉松隆


◆星夢の舞(ほしゆめのまい)
 邦楽アンサンブルによる星の夢解きの舞楽。「プレイアデス舞曲集」や「すばるの七つ」などの〈星のための舞曲シリーズ〉の姉妹作で、旋法(モード)による旋律片と変拍子のリズムによる短い舞曲から成る舞踏組曲である。
 当初は、北斗の七つ星によせる7つの舞曲として、序之舞(じょのまい)、流々(るる)、喜々(きき)、綺羅々(きらら)、点々(てんてん)、丁々(てうてう)、舞戯之舞(ぶぎのまい)…という七曲で構成されていたが、その後、織音(おりおん)の三つ星によせる3つの舞曲を追加。全10曲による一具となった。
 1.序之舞(じょのまい)
 2.流々(るる)
 3.喜々(きき)
 4.綺羅々(きらら)
 5.点々(てんてん)
 6.斗々(とと)
 7.浮流々(ふるる)
 8.旦多(たんた)
 9.丁々(てうてう)
 10.舞戯之舞(ぶぎのまい)

 日本音楽集団の委嘱により2002年初春より4月にかけて作曲。同年5月24日、7曲版として初演。その後、3曲を加え、2003年1月22日、全10曲版初演。19人編成によるフル編成版(横笛・尺八4・篳篥・笙・三味線・琵琶・十三絃4・二十絃2・十七弦2・打楽器2)および、笙・篳篥を省いた10人編成による小編成版(横笛・尺八2・三味線・琵琶・箏2・十七絃・打楽器2)があるが、今回の演奏はフル編成によるバージョンである。op.89。

HoshiYume

☆ひとこと・・・・・ 

 実はこの曲、書き始めた当初は「てけてんてん」というタイトルだった(笑)

 とにかく、邦楽器の「わび」「さび」とか抹香臭さをきれいサッパリ消去し、全編…てけてん…とか、すちゃらかちゃん…とか、おっぺけぺ…とかいう和風のノリのリズムに満ちた「和風ダンス組曲」にしたかったのである。

 ただし、イメージとしてはハイドンやモーツァルトの時代に夜のパーティなどで演奏された優美な舞踊組曲としてのセレナーデやパルティータ。だからと言うわけではないが、モード(旋法)やハーモニーの美しさにはこだわったし、変拍子も容赦なく登場させた。


 しかし、やはりと言うか…何と言うか、後半に行くに従ってだんだんタガが外れてきて、最後の「舞戯の舞」では完全にハメの大外しとなってしまった。舞戯はもちろんブギウギのことで、セレナーデどころか完全にビッグバンドジャズの世界。おかげで初演以来コンサートでは大ウケなのだが、拍手の後ろで「ここまでやるとは!」「アホか!」という罵声もちらほら聞こえるような気が・・・(笑)。

 ちなみに、各曲のタイトルである〈るる〉とか〈てんてん〉とか〈たんた〉というのは、すべてそれぞれの曲のリズムの感じから思い付いた造語&当て字。くれぐれも語源を調べたりなどいたしませぬよう・・・


        *


◆星幻譜(せいげんふ)
 笙と二十絃(風鈴を伴う)による星の雅歌。
 ふたつの楽器の呼び交わしによる音取(序)、雅楽風の緩やかなリズムによる舞歌(破)、風に乗って走り抜ける舞曲(急)…の3つの部分からなる。
 2006年春より夏にかけて作曲。この録音が初演となる。op.97。 

SeiGenFu

☆ひとこと・・・・・ 

 この曲は、吉村七重さんの二十絃箏によるヒーリング・アルバム?を構想していた時に生まれたアイデアによる一曲。箏が静かにソロを弾いている背後で、笙の和音や鈴の音がさやかに鳴っている…という「それだけ」の静謐で雅な世界である。

 このアルバムでは、「星夢の舞」「風夢の舞」というポップな曲の間に挟まれて、静かで上品な「間奏曲」として穏やかに微笑むように佇んでいるが、二十絃箏:吉村七重、笙:三浦礼美というお二人の「きれいどころ」による演奏は、ぜひ機会があれば生で堪能していただきたい。


        *
◆風夢の舞(かぜゆめのまい)
 尺八と二十絃箏のための風の舞楽七題。
 風によせる夢解きを語る急緩さまざまな短い7つの舞曲からなる。
 1.風の舞 I(かぜのまい)
 2.朝凪(あさなぎ)
 3.風色(かぜいろ)
 4.風唄(かぜうた)
 5.風早(かざはや)
 6.夕凪(ゆうなぎ)
 7.風の舞II(かぜのまい)

 三橋貴風、吉村七重両氏のために2006年春より夏にかけて作曲。同じくこの録音が初演となる。op.98。 

KazeYume

☆ひとこと・・・・・

 実を言うと、当初このアルバムでは「双魚譜」という尺八と二十絃箏による旧作(1996)を再収録する予定だった。しかし、今回の「非・邦楽的」なコンセプトからすると、20年前に書いたこの曲は結構「花札ニッポン」的なところがあって違和感があるのも事実。そこで、「どうせならいっそのこと新作を書いてしまおう」と、思い切って書き上げたのがこの曲である。

 セレナーデっぽい楽想の星の舞楽が「星夢の舞」なら、尺八が吹くのは風の舞楽ではないか…ということでタイトルもすんなり「風夢の舞」と決定。文字通りの「兄弟作品」ということになる。モード(旋法)とビートと変拍子…というコンセプトは星夢と同じだが、こちらはそれに加えて、尺八古典本曲の抹香臭さもコラージュして組み込み、二十絃箏は西欧風ワルツからプログレ風変拍子リズムまで繰り出してを夢の舞を刻む。

 この万華鏡のような「なんでもあり書法」は、尺八:三橋貴風、二十絃箏:吉村七重…という古典から現代まで自由自在の名手であるお二人だからこそ可能な技。しかし、おかげで二十絃箏はピアノ並みの複雑なパートとなってしまい、録音ではひそかに補助箏(田村法子)を加え部分的にバックアップしている。尺八と二十絃箏のDUO曲なのに演奏家の名前のところになぜか箏の奏者が二人書かれているのは、そんな事情があるわけなのである(…と、これは文字通りの裏話)。

 邦楽器との付き合いは、二十代の頃に尺八と琵琶を中心にしたバンドを組んでいた頃からだから、けっこう長い。その後、二十絃箏の吉村七重さんや尺八の三橋貴風氏と出会い、「双魚譜」(1986)を始めとする連作を書き始めてからも、もう二十年の月日がたつ。それでも、邦楽器が持つある種の難しさ(音そのものの存在感の強さや超アナログ的な構造、あるいは仏教臭さや伝統的な約束事)についてだけは、長い間どこか距離感を感じ続けていたことは否めない。

 ところが、雅楽「鳥夢舞(とりゆめのまい)」(1997)や「夢あわせ夢たがえ」(1998)あるいは「すばるの七ツ」(1999)といった作品を書いたあたりから、どことなく開き直った視点で邦楽器を見ることが出来るようになった。要するに、邦楽器から歴史的伝統や思想的背景や精神的風土を取り去り、純粋に〈日本製のエスニックな笛や竪琴〉として機能させることに頭が切り替わったとでも言ったらいいだろうか。

 その「開き直り主義」のひとつの成果が、今回収録された「星夢の舞」(2002)である。それまでは実を言うと、色々な邦楽器(横笛や尺八や三味線や琴など)が一堂に会して演奏する「和楽器によるオーケストラ音楽」というものを、自分の音楽としてはどうしても想像することができなかった。それぞれ音律も機能もまったく異なるし、作曲家が楽譜でコントロールできる部分というのがかなり限られていて、そもそもアンサンブルとして演奏するのは不可能なように思えたからだ。

 しかし、ある時ふと「邦楽アンサンブルによるエスニック・デジタル・ダンス」という(奇妙な)コンセプトを思い付いた瞬間、そういった呪縛から解き放たれたような気がした。それはつまるところ、邦楽器の持つアナログ世界とは別の次元で、デジタルな変拍子と旋法のダンスを(五線譜というプログラム言語によって)組み上げてしまおう…ということであり、早い話が「邦楽器で遊んで踊ってしまおう」というわけである(笑)。

 もちろん、変拍子や旋法にこだわる以上、楽器が本来持つ古典的機能からはかなり逸脱した(弾きにくい)パッセージの連続になっていることは否めないのだが、その代わりに曲のあちこちに自由な「即興的アドリブ」の部分を仕込み、自由度のバランスを取ることにした。結果として、新しい時代の演奏者たちのテクニックとセンスが炸裂し、この時代でしか生まれ得ない素敵な夢見る音楽に仕上がったと自負している(のだが、どうだろうか?)。

 今回が録音初演となる残りの2曲は、その「変拍子と旋法とによる星たちの夢の舞楽」から生まれ落ちた星の娘と風の息子。いずれも、星と風の夢をめぐる小さな舞楽であり、夢解き(あるいは夢語り)の呪法を秘めた細やかな寓話のかけらである。


◇ そのほかの邦楽作品のCD ◇

subaru   Yoshimura

■ すばるの七ツ ■
夢あわせ夢たがえ…Clarinet, Violin, Celloと二十絃箏のための
すばるの七ツ・もゆらの五ツ・なばりの三ツ

(Camerata Tokyo:28CM-578 ¥2,940)

■ タクシーム/吉村七重 ■
双魚譜…尺八と二十絃箏のための
(CamerataTokyo:25CM-208 ¥2,625)

◇楽譜集・すばるの七ツ◇
すばるの七ツ・もゆらの五ツ・なばりの三ツ
双魚譜…尺八と二十絃箏のための
(カメラータトウキョウ ¥2,100)
注文は:03-5790-5565:レコード販売部まで


Top