JaDoAura

曲目・・・・・

アトム・ハーツ・クラブ組曲第1番  吉松 隆
 …弦楽オーケストラによるROCK組曲

アメリカ Remix ドヴォルザーク(吉松隆:編)
 〜弦楽四重奏曲「アメリカ」によるピアノとオーケストラのための

BUGAKU  黛敏郎(1962)
 …舞楽をテーマにした現代日本音楽の名曲がよみがえる

タルカス キース・エマーソン(吉松隆:編)
 …プログレッシヴ・ロックの名作、オーケストラ版で登場

ピアノ:中野翔太  演奏:藤岡幸夫 指揮 東京フィル 監修:吉松隆

2010年 3月14日(日)15:00開演
東京オペラシティコンサートホール(初台)

入場料:S席¥5,000、A席¥4,000、B席:¥3,000、学生¥1,000
申し込み・問い合わせ:東京フィルチケットサービス:03-5353-9522

曲目解説・・・・・

Atomアトムハーツクラブ組曲第1番・・・(吉松隆)

 冒頭に前奏曲として演奏されるのは、ロック・ビートで書かれた弦楽アンサンブル曲。

 原曲は1997年に「70年代プログレッシヴ・ロック風の弦楽四重奏曲を」という依頼で書いた〈アトムハーツクラブ・カルテット〉という曲で、もとの題名は〈Dr.Tarkus's Atom Hearts Club Quartet〉

 その名の通り、ビートルズ「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」EL&P「タルカス」ピンクフロイド「原子心母」、そして「鉄腕アトム」へのオマージュでもあり、4つの短い楽章からなる10分弱の作品である。
(当然、元ネタとなった「タルカス」も隠し絵のように組み込まれている)

 1.プログレ風アレグロ。
 2.バラード風アンダンテ。
 3.コキュ(間男)風のスケルツォ。
 4.スラップスティック風ブギウギ。
 
 1997年に東京フィルのコンサートマスター:荒井英治氏率いるモルゴーア・カルテットの「ディストラクション」というアルバムに収録されて以来、弦楽アンサンブル(吉松隆作品集4「交響曲第4番ほか」)、ギター・デュオ(福田進一「アトム・ハーツ・クラブ・デュオ」)、ピアノ・トリオ(吉松隆/河村泰子「アトム・ハーツ・クラブ」)、サクソフォン・カルテット(トルベール・カルテット「デューク・エリントンの時代から」)のほか打楽器アンサンブルから邦楽合奏に至るさまざまな編曲版で演奏され、賛否両論・毀誉褒貶・抱腹絶倒の嵐渦巻く(知る人ぞ知る)迷作である。



AmericaアメリカReMix・・・(ドヴォルザーク/編曲:吉松隆)

 チェコの大作曲家ドヴォルザークが、アメリカに渡って新世界交響曲(op.95)に続いて作曲した弦楽四重奏曲(ヘ長調、op.96)が「アメリカ」。 
 全4楽章で20分ほどの作品だが、ボヘミア風の郷愁に満ちたメロディと、アメリカ(ジャズ)風のリズムに満ちた名品である。

 これほどの名曲を室内楽コンサートだけに埋もれさせておくのはもったいない!…と、原曲の構成はほぼそのままに、ピアノと2管編成オーケストラ用に「リミックス」したのがこのリミックス版。言わばピアノ協奏曲「アメリカ」である。

 第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ
 第2楽章:レント
 第3楽章:モルト・ヴィヴァーチェ
 第4楽章:ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ

 聴きどころは、所々に現れるジャズのテイストと、圧倒的なスピードで駆け抜けるフィナーレ。なにしろ名曲「新世界から」と並べて書いた曲なのだから、ノリに乗った名曲の香りも普通ではない。クラシック界屈指のメロディ・メイカーであるドヴォルザークの〈泣かせるメロディ〉も全開で、クラシックらしからぬリズムの歯切れの良さも含めて、現代の聴き手をも魅了すること請け合いの逸品である。

nakano 今回はアメリカ育ちの新時代の俊英:中野翔太がソロを勤めるのも楽しみのひとつ。

 中野翔太 Shota NAKANO。
 1984年生まれ。ジュリアード音楽院で学び、すでに国内外の多くのオーケストラと共演。2009年シューマンのピアノ曲集でCDデビュー。ジャズピアニスト松永貴志との共演など、クラシックの枠を超えた意欲的な活動も行っている。ニューヨーク在住。



MayuzumiBUGAKU・・・(黛敏郎)

「BUGAKU(舞楽)」は、戦後の日本を代表する作曲家の一人:黛敏郎(1929〜97)が1962年33歳の時に作曲した作品。

 もともとはニューヨーク・シティ・バレエ団の委嘱で書かれたバレエ音楽で、全2部からなる3管編成オーケストラによる23分ほどの作品。
 初演は衝撃と絶賛を持って迎えられ、現代日本の作曲家による新作がアメリカという国際的な舞台で大きく評価されたという点で、日本の音楽史上に残る歴史的名作と言える。

 曲は、雅楽の「舞楽」のサウンドをオーケストラでリミックスする実験作でありながら、日本音楽の繊細さと古代の呪術的なエネルギーを兼ね備えた不思議な音宇宙を広げる。このあたりの静と動のダイナミズムは、同じく全2部からなるバレエ音楽「春の祭典」を意識したものだろうか。

 聴きどころは、ストリングスやピアノやパーカッションが生み出す笙や篳篥、楽箏や鞨鼓などの神秘的な響き。日本の楽器を一切含まない西洋オーケストラから幻想的かつ東洋的な神秘的サウンドを引き出した天才:黛敏郎の圧倒的なイマジネーションが光る。

 第1部:レント
 第2部:モデラート

 ちなみにこの曲は、「のだめカンタービレ」(第21巻)で主人公の指揮者:千秋真一がパリのオーケストラとの共演曲として取り上げていることで(マニアのうちでは)有名。


Tarkusタルカス・・・(K.エマーソン/編曲:吉松隆)

 トリを勤める「タルカス」は、プログレッシヴ・ロックの大人気バンド:エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)が1971年に発表したセカンド・アルバム「タルカス」のメインナンバー。

 噴火/ストーンズ・オブ・イヤーズ/
 アイコノクラスト/ミサ/マンティコア/
 戦場/アクアタルカス
 …
という全7曲からなる20分ほどの組曲で、原曲の編成はキイボード、ベース(&ヴォーカル)、ドラムス。

 タイトルの「タルカス」は、火山の噴火の中から生まれ、世界を破壊し、最後は海に帰って行く…という空想の怪物。このタイトル曲は、プログレッシヴ・ロックを代表する名曲として知られ、当アルバムは全英1位、全米9位を記録した名盤。作曲は、キイボード担当のキース・エマーソン(歌詞:グレグ・レイク)

K.Emerson EL&Pは、この曲の前後にムソルグスキーの「展覧会の絵」やチャイコフスキーの「くるみ割り人形」からバルトークの「アレグロ・バルバロ」やプロコフィエフの「アラとロリー」。ヒナステラの「ピアノ協奏曲」などをロック化しており、変拍子によるスリリングなリズムとシンセサイザーを含む複数のキイボード・ワークによって生み出される音楽は、まさに新しい時代のオーケストラ・サウンドだった。

 初めて聴いたときから「この曲はオーケストラで演奏できる!」と確信していたが、それから40年、耳コピとネット上のMIDI情報などからようやく全曲の構成が完了。ついに今回、この作品の全曲をほぼ原曲に忠実にオーケストラ化(編曲:吉松隆)するという暴挙にチャレンジすることになった。

 原曲そのものが、バルトークやプロコフィエフそしてストラヴィンスキーからの影響を強く受けているので、ある意味では「先祖返り」と言うことにでもなるだろうか。

 敢えて無謀なアレンジ(リミックス)に挑戦したのは、もちろんキース・エマーソン氏へのリスペクト(敬愛)の念からだが、この曲は、20世紀初頭の「現代音楽」と20世紀後半の「ロック」とを繋ぐ〈ミッシング・リンク〉に当たる重要な作品であり、今回の演奏を機に、1970年代に生まれた「新しいクラシック現代音楽の名作」として音楽史に刻印されることを願わずには居られない。

 今回が世界初演であり、これを聞き逃したら二度と聴けない……かも知れないので、お聞き逃しのなきよう。


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