撮影:大竹静市郎
外観全景
主棟デッキ側外観
双海町は海に沈む夕陽が立ち止まる町である。四国の北西部、松山から海沿いに10数km南下したところに双海町がある。上灘の家は、海に面した尾根の裏手の谷あいの中で、奥になるにしたがって高くなった丘の上に立地している。海からは300mくらい高く、周りはミカンやブドウ園、そして雑木林に囲まれており自然の季節感の豊富なとても閑静なところである。附近には数件の農家と6〜7年前に手がけた上灘の家T、Uがあり、「上灘の家V」はこれらと雛壇状に連続した敷地に建っている。
ここには戦後まもなく建てられた母屋と、30年程前に施主自身の手によって造られた池と庭があり、西側には一段高くなった畑があった。母屋は撤去することにしたが、過去にここを訪れた人の目を和ませてきた池と庭は、施主の歴史を引き継いでいく意味もこめて残したいと考えた。高低差のある土地と、この池の組み合わせが設計上の敷地条件となった。
全体の平面計画は、低い土地に2階建ての主棟、高い土地に平屋の寝室棟、これらをつなぐ格好で水周りと廊下を配し、池を取り囲んだデッキで各棟が中庭に向かって一体となるよう、また高低差による立体的な人の動き、視線の動きを楽しめるよう意図した。
周囲の環境には無い直線的な緊張感と遠近感をもって空を、風景を既定しながら周囲との融合を図る方法として、高さをできるだけ低く押えた。水平方向を強調するために、規則正しく組み上げられた架構体の上にフラットで軽快な屋根、横張りの壁材を用いている。屋根を箱型の本体から浮かせたのもそこに起因している。内部平面は四国間において一般的な2間x2間(3.8mx3.8m)の組み合せで、立面は1間ピッチに立てられた柱と鴨居、梁によって構成した。4寸角の断面を基準とする連続したフレームを露出し明快さを強調させている。外観で目につくスレート壁やルーフデッキの屋根はコストダウンの目的もあって使ったものだが、表面の仕上材や断熱のグレード等には配慮している。
この家は植樹した木々によって周辺の緑と同化していくであろう。その変化がこの住宅に味わいを加えるものであることを願い、その過程を楽しみにしたいと思う。  (松永鉄快)

                          新建築”住宅特集”1995年11月号より

新建築”住宅特集”9511
□ 上灘の家V
   愛媛県伊予郡双海町

   1995年5月竣工
   敷地面積 684.41u
   建築面積 115.52u
   床面積   
      1階 100.17u
      2階  50.54u
   延床面積 150.71u
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