短歌行「ままごとに」の巻
平成十年八月、夫逝く
小さな家に、小さな仏壇を整えてー
ままごとに似たる仏具や冬立ちぬ 山羊
門清らかに石蕗の花 絢子
寒雀朝礼終えて散りて行き 宏子
熱く歌える「翼ください」 敏江
ウ
満月に昨日の嘘が影落とし 啓子
宙返りして猴酒(ましらざけ)飲む 瑞草
つづれさせ母の揃えし絹の糸 実枝
茶髪かき上げ海鼠壁塗る 靖子
靴ずれの痛みは告げず逃避行 純子
胃の左右する色つきの恋 手留
天仰ぐ猫に花びら降りかかり 節子
瀬戸の鰆を味噌漬けにする 節
ナオ
センバツの敗将の瞳(め)のかいやぐら 手
グレン氏軒昂来世紀にも 敏
「美味なり」の小書き明治の回春剤 敏
紡げぬままの陶枕の夢 宏
喜雨ありて百済観音高笑い 瑞
大魔神社をしまいわずらう 実
坂無月自動販売機を灯となせり 純
塩辛蜻蛉進路変更 啓
ナウ
釣り舟に霧の流れし湖(うみ)静か 絢
肩はずされし二人三脚 羊
リヤドロの遠きまなざし花の窓 宏
ウィーンの森にさえずるアムゼル 靖
(瑞草・手留 捌)
1998年11月9日 首尾
(注)アムゼル ヨーロッパにいる春の黒い小鳥
|