歌仙「西行花伝」の巻

 
                読み了えし遺稿ずしりと今朝の秋         宏子    

                    すがしく咲ける芙蓉くれない         実枝
                                                                    
                モビールの三日月小人腰かけて          純子

            迷走飛行ヴァーチャルでなく         手留

        空樽(あきだる)を水鉄砲の陣地とし         節子  
          
           次々鳴る駅の風鈴              宏

      
         黒猫は悲しからずや深夜便            さくら

            若き日のごと手をつなぎおり         山羊

        情死とう愛もありけり剣(つるぎ)ヶ崎        宏

          メールが来ないにらむパソコン        靖子
          
        処分場ゴミも会社も捨てられて          敏江  
            	
          はや二千年鬼苦笑い             啓子
              
        月凍るイーハトーヴの森の上           実

          しずれる雪を肩に受けつつ          敏

        介護保険錬金術の見せどころ           純
        
           右に左に揺れるこの世は           実

        辻邦夫「西行花伝」花の宴            さ

           未完のピエタ囀りの中            宏

      ナオ
         湖を見下ろす塔に蝶の舞う            実

            血の通わないキャッシュ・レジスター人間   手

         老躯には結核菌がサバイバル           敏
                    
            年の流れも加速年々             靖

        潔く剥けばらっきょう光りくる          実

           氷かち割り涙紛らす             啓

        恋いおればあばれ太鼓の高まりて         敏

            丸文字娘の三角関係             さ

        あるがままなさるるがまま土ひねる        啓

          刀架に眠る備前長船             実

        触終えて月は横衣を脱ぎ去りぬ          節

          葡萄たわわにヴァッカスの像         純

      ナウ
         石投げに水面の楓截(き)られいて           羊

          がき大将のおごりで四次会          宏

        旅先で訛似ている人に逢い            節

           スニーカーにはパイプ模様が         手

        横笛の高音にはずむ花の山            節

          春の疾風に押されゆく背(せな)         敏  
                      
      
                     (手留 捌)  

                1999年8月3日 首尾                  

            

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