『巌窟王』
原作:アレクサンドル・デュマ(『モンテ・クリスト伯』)
企画原案・キャラクター原案・監督:前田真宏
シリーズ構成・脚本:神山修一
キャラクターデザイン:松原秀典
美術監督:佐々木洋・竹田悠介
ディジタルディレクター:ソエジマヤスフミ
スペシャル3DCGIアニメーター:鈴木朗
音楽:ジャン・ジャック・バーネル
アニメーション制作:GONZO
作品公式サイト
放送期間:2004年10月〜2005年3月(テレビ朝日、アニマックス)
レビュー元:DVD(レンタル)
『モンテ・クリスト伯』のアニメなんて面白いのかと思ってたけど、観てみたらもの凄くエンターテインメントしてて楽しめました。
今まで3DCGに特化してきたGONZOアニメだけど、今回はペイントの代わりにテクスチャーを張り込んだ2D。こういう使い方があったか! やられた〜! これ、面白いよ。アニメの弱点である平面感を逆手にとったやり方に拍手。パチパチ。
舞台を未来にして、世界観を徹底して人工的・舞台的に作り込むことによって、復讐劇っていう大時代的なドラマツルギーを“逆に作り物だからこそ許せる”ように思わせる効果を生んでる。リアリズムとは逆の、異化効果を上手く使った手法だよね。
あと、モンテ・クリスト伯爵がキャラ立ちまくりなのがスバラシイ。大時代的なセリフ回しに大げさなジェスチャー。そして中田譲治ボイス。これで惚れなきゃ男じゃない!(?)
初なアルベール視点で話が進むことによって、話を知ってる視聴者も感情移入しやすくなってる。っていうか、気分はフランツ。アルベールが伯爵の思うまま翻弄される様をたっぷり楽しみたいと思います。
「待て、しかして希望せよ!」
第1話「旅の終わりに僕らは出会う」
脚本:神山修一・有原由良 絵コンテ:前田真宏 演出:紅優 作画監督:松原秀典
パリの貴族アルベール(福山潤)とフランツ(平川大輔)は、月面都市ルナでカーニバルの熱狂のなかにいた。そこで、最近ルナの社交界を騒がせている噂の人物に出会う。その人物の名は、モンテ・クリスト伯爵(中田譲治)。その出自の良く判らない謎の伯爵に、アルベールは強く惹きつけられる。
原作は、青い鳥文庫のリライト版を昔読んだくらい。たしかに「怒りのあまり、顔が青ざめた」みたいな描写があるけど、伯爵、初っぱなっから顔が青い!(笑)
青いといえばアルベールくん。その初なアルベールくんが怪しげな伯爵の魅力のとりこになっていく様子がタマラン萌え〜(笑)。
冗談はさておき、シリーズものの第1話としてはこれ以上ないほどケレンたっぷりでハッタリが効いてた。オモシロい! とくにBパートの、公開処刑でのゲームは緊迫感たっぷりでスバラシイ出来だった。ちなみに枢機卿は“閣下”ではなく“猊下”では?
テクスチャーでキンキンピカピカの画面も絢爛豪華で、演出のハッタリに負けてなかった。SFって聞いてた舞台設定も、そんなに未来っぽくなくてバロックな感じが内容に合ってた。オープニングは、曲アニメともに、過ぎ去った青春みたいな寂しさがにじんでてナイス。
補追:公式サイトのEpisodeの最後に「伯爵語録」が付いてるのを見てつい笑った。
第2話「月に朝日が昇るまで」
脚本:神山修一 絵コンテ:中山勝一 演出:前田真宏 作画監督:鈴木俊二
フランツは、アルベールの姿が見えないことに気付く。ルナの夜は危ないと聞きき、いても立ってもいられなくなりホテルへ戻る。そこへ待っていたのは、ルイジ・ヴァンパ(側見民雄)からの脅迫状だった。
フランツが助けを請いに行ったときの伯爵のウレシそうな顔といったら……(笑)。それと、伯爵の馬車が超シャコタン(?)だったのが笑った。
この辺の「伯爵参上!」みたいなところは、伯爵の三文芝居と判ってても盛り上がるねぇ。巌窟王に変貌するところもなかなかの見物。ベタでも、ドラマはこうじゃなくっちゃって思うよね。
ベッポは男だったのか……。しかし、アルベールくんのお坊っちゃんっぷりは徹底してるなぁ。
「裏切りの果実は、摘み取られなければならない」(by伯爵)
第3話「5/22、嵐」
脚本:神山修一 絵コンテ:窪岡俊之 演出:平池芳正 作画監督:石本英治
無事パリに戻ったアルベール。フランツやフィアンセのユージェニー(中村千絵)たちとドライブと洒落込む。そしてその日、あの人物が嵐とともにパリに降り立つ。
みんなでよってたかって、アルベールを世間知らずのお坊っちゃま扱いしてるのが、あまりにまんまで笑った。あと、貴族ならではの鼻持ちならないところも。
とりあえず、マクシミリアン(稲田徹)やユージェニー、アルベールの両親の顔見せって感じの回。
第4話「母の秘密」
脚本:高橋ナツコ 絵コンテ:福田道生 演出:唐戸光博 作画監督:Lee Jong Hyun・Kwon Eun Kyung
伯爵に両親を紹介し、晩餐をともにするアルベール。アルベールは、伯爵からシャンゼリゼの屋敷へ招待される。
伯爵、最大の宿敵に再会って回。前も言ってたけど、マルセイユってそんなに粗野な土地なのかしら。
母メルセデスの井上喜久子がまだまだ色気たっぷりって感じで良かった。父フェルナンの小杉十郎太も胡散臭げでイイね。脇をベテラン声優で固めてて、キャスト的にも見どころたっぷり。
キャラ作画もちと甘めで、話もまだこれといった展開もなく割とフツーな印象。
第5話「あなたは婚約者を愛してますか」
脚本:高橋ナツコ 絵コンテ:加藤敏幸 演出:山田弘和 作画監督:Kim Dong-joon
伯爵の邸宅の地下に広がる人工庭園。そこには、竪琴を弾く美しい少女(矢島晶子)がいた。その少女エデは、伯爵のためだけに仕えているという。そこにはたして愛はあるのか。
潔癖なマクシミリアンと純粋なアルベールとが、愛について青臭いケンカをするっていうお話。
さすがに今回の趣向はちとバカバカしいと思うけど、マクシミリアンとアルベールならしょうがないかなって思っちゃうね(笑)。伯爵的には、マクシミリアンにアルベールの両親の結婚の不実さを暴かせたいっていうのが隠れた趣向なんだろうけど。もう、伯爵ったら悪趣味〜。
「運命もまた、動かしがたい必然で成り立っているのです」(by伯爵)
派手さはないけど、アルベールがだんだん今までの日常を信じられなくなって来ちゃうってところが良かったな。そうしてひとり伯爵だけが本当のことを言ってるように感じてしまうようになるわけだ。
第6話「彼女の憂鬱、僕の憂鬱」
脚本:山下友弘 絵コンテ:福田道生 演出・作画監督:和田高明
ユージェニーの親で、大銀行家であるダングラール男爵(辻親八)のもとに伯爵が現れる。ダングラールの銀行に口座を開きたいと申し出る伯爵だったが、ダングラールは契約書の一文に目が止まる。
和田高明さん演出・作監回(原画も)。和田さんらしい、原画密度が濃そうな作画が全編に見られて大変眼福でした。アニメスタイルのインタビューで「『巌窟王』はキャラが難しそうだからやってみたい」って言ってたことが実現したのね(参照)。
ちょっとした芝居でも、ありえないくらい細かく原画で描こうとしてるのが判る。シートのタイミングの取り方も細かくコントロールしてるみたい。表情や動きを見てるだけで楽しいし、描いてて楽しいんだろうなぁって思わせる作画。
作画単独の面白さもさることながら、それがダングラールのキャラのコミカルさっていう演出の要請と合致してるところも良かった。『巌窟王』のコレまでの話と比べても特別浮いてるワケでもないし。いやいや、ご立派。
第7話「秘蜜の花園」
脚本:神山修一 絵コンテ・演出:鵜飼ゆうき 作画監督:熊膳貴志
オペラ座の桟敷席で卒倒したエデは何を見たのか、そしてアルベールの父フェルナンは……? 一方、マクシミリアンのヴァランティーヌ(三浦純子)への気持ちを知ったフランツは、すべてをアルベールに任せると言い身を引く。
マクシミリアンのヴァランティーヌへの純な愛と、伯爵のヴィルフォール判事閣下の妻エロイーズ(渡辺久美子)への不純な愛とが対比されて描かれる。
渡辺久美子さんは芸の幅が広いなぁ(『ケロロ軍曹』ケロロ、『あたしンち』母、『プラネテス』クレア、など)。今回の人妻役もちゃんとエロかった。
伯爵がいよいよ復讐に動き出したんで、観てるこっちにもワクワク感が。よしよし、面白くなってきた。
第8話「ブローニュの森」
脚本:神山修一 絵コンテ:若林厚史 演出:岡崎幸男 作画監督:濱川修二郎
アルベールは伯爵から、ぜひ家族揃ってと招待を受ける。オートイユにある伯爵の寂しげな別荘は、もとはヴィルフォール判事の持ち物だった。伯爵は、そこである余興を催すという。
モルセール、ダングラール、ヴィルフォール(秋元羊介)と、伯爵の仇がそろい踏み。若林厚史さんコンテ回。原画に『かみちゅ!』で有名になった藪野浩二さんが。
伯爵のもったいつけたやり方が、この過剰なアニメに良く合ってるね。今回の“余興”もそうだけど、ある程度お話の筋を知ってて見た方が楽しめると思うな。心底おびえるダングラールの奥さんとノーテンキな明るい声を出すアルベールが、巧まざるユーモアになってて面白かった。
「お前、お前は誰なんだ……?」(byヴィルフォール)
第9話「闇色の夢を見た」
脚本:高橋ナツコ 絵コンテ:若林厚史 演出:瀬尾康博 作画監督:瀬尾康博
ダングラールの奥さんが倒れる。ヴィルフォールは、伯爵に問いつめる「お前は何者だ? 何を知っている?」と。
結局あの箱の中身のハッキリとは説明はされないのね。え〜、ヴィルフォールとダングラールの奥さんが昔付き合ってたころ生まれた嬰児を、あの箱に入れて埋めたんですね。怖いですね〜、恐ろしいですね〜。
フランツとアルベールの仲、ヴァランティーヌとマクシミリアンの仲の、お互い代えがたい関係ってのが改めてセリフで確認。関智一演じるカヴァルカンティ侯が嫌味でイイ。この人は、エエもんより悪モンのほうが魅力的ね。
伯爵の策略進行中ってことで、暗い画面が登場人物の暗澹たる心中を表してて、雰囲気は出てました。
『巌窟王』
第10話「エドモンからの手紙」
脚本:山下友弘 絵コンテ:窪岡俊之 演出:唐戸光博 作画監督:Lee Jong Hyun・Kwon Eun Kyung
今度はヴァランティーヌが毒を盛られて倒れる。そうするうち、ヴィルフォール、ダングラール、モルセールに“エドモン・ダンテス”という人物から葬儀の招待状が届く。
もう一方は、マクシミリアンがヴィルフォール邸からヴァランティーヌを連れ出す話。エロイーズと息子のエドワール(鬼頭典子)が、イヤな人間に描かれてるのが判りやすいなぁ。
この話でも、ハッキリとした説明ってのはなされないのね。だいたいの筋は判るでしょ、ってことか。まあ、話は細々とした状況の積み重ねの連続なんで、とくにコメントなし。個々の演出はちょっと過剰な感じがこの作品らしくて、観ててウレシイ。