『佐武と市 捕物控』
原作:石森章太郎(現:石ノ森章太郎)
監督:林重行(現:りんたろう)
監修:松田定次
脚本:鈴木生朗・迫間建・阿部桂一・大原清秀・辻真先
演出:真崎守・村野守美・吉良敬三・りんたろう・鈴木伸一
音楽:山下毅雄
アニメーション制作:虫プロダクション、スタジオ・ゼロ、東映動画
放映期間:1967年10月〜1968年9月
レビュー元:VHS(レンタル)
罪は憎いが憎まぬ人を 斬るも縛るも人のため
闇を切り裂く男意気 おぼろ月夜の佐武と市
有名なこのナレーションで始まるこの作品。最初に思ってたより、ホントにちゃんと時代劇だった。佐武やんの十手に分銅がついてたりしてるくらいで、マンガチックなところは意外にもほとんどないんだよ。市やんも普通の仕込み杖の居合いだし。
スタンダードに徹したのが良かったのか、今観ても意外なほど古びてない。っていうより、今はこういう劇画タッチの作画って絶滅しちゃって久しいから、逆に新鮮な感じで観られたりするんだよね。
話の内容も、脚本に時代劇やってた脚本家を招いてるおかげか、ちゃんと面白い。しかも、大人が観てもしみじみ味わえる人情話になってたりする。
そんなわけで、軸はキチンとエンターテインメントしてるのが安心。
第1話「反逆者」(VHS版に依拠)
脚本:---- 演出:鈴木伸一 作画:----
あん摩の松の市(大宮悌二)は、魚河岸で浪人から子供を救ったことが縁で響京之助(広川太一郎)と知り合う。その頃、江戸ではスリが次々と斬られる事件が起きていた。下っ引きの佐武(富山敬)は、下手人捜しに奔走する。
スタジオ・ゼロ回。テロップに、クレジットが出ない(汗)。
関西ではこの「反逆者」が放送第1話だったそうで(WEBアニメスタイル、『佐武と市 捕物控』の新事実?(後編)より)。
実験的な映像が有名な『佐武市』だけど、今回も釣りの場面で本物の水面に絵を映して、池の写り込みを表現してた。今回の殺陣は、作画がどうと言うより、情緒に徹してた演出をしてたのが良かった。
お話も、ちゃんと時代劇で、市やんのつかの間の友情が破れてしまう悲劇をしっとり描き出してた。この話、明るい佐武やんが何も知らずに手柄を立てて、市やんだけが影の部分というか哀しさを引き受けるってのがポイントね。ふたりの関係が、ちゃんと最初から確立されてる。お見事。
設定から話から、ちゃんと時代劇。スリ役で永井一郎さんがいたり、京之助の手下で小林清志さんがいたり、今見るとすごいキャスト。
第2話「三匹の狂犬」(VHS版に依拠)
脚本:鈴木生朗 演出:りんたろう・真崎守 作画:村野守美・杉野昭夫・沼本清海
嵐の夜、茶屋が三人の島破りに襲われる。盗む犯す殺すと、そのあまりに残虐な手口に、佐武の若い心は大いに傷つく。
虫プロ回。今回は、ちゃんとテロップがあった。作りとしては、こっちが第1話って感じだね。ちゃんと冒頭で、佐武と市のスゴ技がさらりと紹介されたりしてたし。
肝心の内容だけど、なんか今回はスゴかったよ。まず、線の荒さが生々しい作画の迫力がスバラシイ。ゲストキャラの三人組たちもスゴい造形。映像主義的な画面構成も、イイ緊張感を出してたよ。カッコイイ! 残虐シーン(のイメージシーン)も堂に入ってた。
市やんの殺陣のシーンも、静的なロングのカメラワークが効果的に使われてた。間が良いね。
話は、佐武やんの若さ(18だっけ?)と、その純粋さを守るために汚れ役を買って出る市やんっていう、定番のお話。ハードなお話と裏腹に、市やんがコメディリリーフ的役割をしてたのが意外だったよ。
話作画演出と、三拍子揃った迫力の回でした。
第3話「般若」
脚本:阿部桂一 演出:りんたろう・真崎守 作画:村野守美・杉野昭夫・沼本清海
江戸の夜を血に染める般若の辻斬り。下手人を挙げるため佐武は、馴染みの八巻双心流道場に通う。
虫プロ回。「道場のお嬢さんに会いたいからなんでしょ」ってふくれるみどりちゃん(松島みのり)がカワイイ。
『佐武市』といえばコレ!という、実写の般若の面を動画に張り込んだカットが有名なのがこの「般若」の回。ああ! 本当に、実写の面が動いてる。動画に合わせてちゃんと面が振り向くのね。アナログな面白さ。あと、冒頭の将棋のシーンも、盤面と手のカットが実写だ。
お話の方も良かった。人間の残酷さを説く市やんのシニシズムが、後半のやるせない展開を予告しててナイス。それに対する佐武の若さってのも。
定型といえば定型なんだけど、かなりアダルトな感じの話になってたよ。ラストも、ハッピーエンドって感じじゃないのがまたイイ。話もちゃんと判りやすいし。
第4話「大江戸暮色」
脚本:鈴木生朗 演出:黒川文男 作画:----
大名火消しの加賀鳶と町火消しのは組とが、消し口を巡って火事場で諍いを起こす。その場はなんとか収まりをつけたが、加賀鳶の源次(立壁和也)が殺され、は組の小吉(峰恵研)が下手人として捕らえられる事態に。
「辰巳芸者の心意気、情け深川小いなの涙、市の心がふと揺れる」(byナレーション@小林昭二)
小林昭二さんの七五調のナレーションが、耳に気持ちいい。声に出して読みたいナレーション(笑)。え〜、スタジオ・ゼロ回です。作画のクレジットがないです。
芸者の小いな(来宮良子)にほのかな恋心を寄せる市やんの描写がイイね。市やん、意外と惚れやすい(笑)。惚れると自分を卑下した物言いになるのがカワイイんだよ。「あたしゃ、めくらですから、ヘッヘッヘ」みたいな。
芸者の小いなを巡る横恋慕から、加賀屋敷の公金横領にまで繋がる話の流が、まったく不自然じゃなくきっちりまとまってた。ラストの、ほのかな恋心が破れる市やん、萌え〜。
第5話「女スリを追え」
脚本:鈴木生朗 演出:小島英夫 作画監督:----
佐武はタチの悪い女スリを捕まえるが、その女、実は佐武の幼なじみのお京(坂井すみ江)だった。お京は佐武の情けに触れ心を入れ替えるが、スリの親分はお京がスリ稼業から抜けることを許さない。
スタジオ・ゼロ回。
みどりちゃん含めて、出てくる女の人が男以上にステレオタイプなのが、いかにも時代劇らしい感じ。今回のみどりちゃんは、完全にお京ちゃんの引き立て役だった。ラスト、佐武に「(お京に嫉妬した)私のこと、怒ってる?」なんて聞いたりする。
『佐武市』は、さすがに萌えこそはないものの、たまに着物からのぞく足の描写に強いこだわりが感じられるよ。今回もお京ちゃんの足が艶めかしかったです。
佐武やんの十手アクションが、かなりスゴいことになってた。映像美のセンスで殺陣を見せる虫プロと違って、今回のゼロはアニメ的なケレンが強く出てた。
第6話「死を呼ぶ子守唄」
脚本:迫間健 演出:真崎守・りんたろう 作画:村野守美・杉野昭夫・沼本清海
市は、死に神っ子と呼ばれる子(山本嘉子)を川で助ける。実はその子は、材木問屋の木曽屋の坊っちゃん。その子を可愛がったものは、程なく謎の死を遂げるという。父が無実の罪で投獄中に、悪い男(納谷悟朗)が母に取り入ってお店の乗っ取りを謀っていた。
冒頭の、死に神っ子がFollowで延々と歩き続けるカットが面白い。
今回は、虫プロ回だけど、いつもの映像美で魅せるってより、動画や背景引きでアクションのスピード感を出してるシーンもあったりしてちょっと新鮮。カメラを真上から構えてみたり背景動画を使ってみたり市の刀に子供を写し込んだり、いろいろ凝ってた。
市やんの殺陣シーンは、材木(Book)のマルチ手前ボケで市をフォローしてるカットがちょっと格好良かったよ。
話自体は、あんまりヒネリのないストレートな人情モノだった。市の「おっかさんが欲しいと思ったこと、ないかい?」との問いに、佐武、「おいらにぁ、市やんがいるからな」。
第7話「涙の逆手斬り」
脚本:阿部桂一 演出:りんたろう・真崎守 作画:村野守美・杉野昭夫・沼本清海
近頃、医者ばかりが狙われる殺しが江戸を騒がしていた。佐武を手伝って密偵をしていた市は、町医者の北岡(小林修)に「その目は手術をすれば見えるようになる」と告げられる。御典医の横井抱庵(大塚周夫)の口利きもあり、市は手術を受けられることに。
市やんの目が見えるようになるかも、ってお話。ああ、エエ話や。泣けるよ。
泣けるんだけど、市やんが、自分の目が見えるようになったときのことを夢想するシーンは、ちょっと乙女チックで泣き笑い。市やんも、心の底では仔犬と追っかけっこしたり恋をしたりしたいんだね。
「市やんのバカッ!!」(by佐武)
「そうかも知れねぇな」(by市)
市の佐武やん萌えが、ここに極まれりってーお話でございました。
いちいち、「めくら」ってセリフを無音にしちゃってるのがちょっと興醒め。DVDではどうなってるんだろう?
第8話「魔の当たりくじ」
脚本:迫間健 演出:吉良敬三 作画:飯野皓・石山卓也
湊川神社再建の富くじが評判を呼んでいる。一等賞金はなんと一千両。最後のくじを買ったふたり組がみごと一等を引き当てた。しかし、ほどなくふたりは何者かに殺されてしまう。
オープニングのアニメが微妙に更新。曲は同じだけど、微妙なアレンジ変更でハミングが女性に。やっと、スタジオ・ゼロ回に作画のテロップが出るようになったよ。
デザイン的な構図があったり、結構作画が頑張ってた。斬られた腕がぼとりと落ちるカットの腕がハーモニー処理(?)で、やけにリアルだったり。ラストの殺陣のシーンもカッコイイ。作画だけじゃなく、演出との連携がきちんと出来てたのが良かった。
殺された親の子の役で、清水マリさん(アトム役で有名な声優さん)。
ああ! エンディングも変わってる。っていうか、歌詞が付いてる! 面白いんで引用。「涙が燃える」ですぜ、旦那?(笑)
強く生きてゆこうよ 明日を信じてどこまでも
人の、人の情けを 絡めて取れば
見ろよ真っ赤な 朝焼け空に
佐武と市との 涙が燃える
第9話「恐怖の島送り」
脚本:迫間健 演出:村野守美 作画:杉野昭夫・森田浩光・沼本清海
佐武が引っ捕らえた佐渡常(滝口順平)は、佐渡金山で人足たちに暴動を起こさせたリーダー。厳重な警備を引き連れた囮を先にやり、本物は目立たぬよう佐武が護衛を引き受けることに。
オープニング・エンディング、ともに前のバージョンに戻りました。
この回が噂の、動画枚数1,200枚の回。そうは見えない。初っぱなの、佐武のロープワークとかよく動いてたし。構図がバッチリ決まってるんで、動かなくても画面が保つんだよね。キャラの顔も濃くてイイ。
佐武やんの屈託のない優しさが、佐渡常の荒んだ心を次第にとかしていくっていう人情話。いやあ、佐武やんはいい男だねぇ。佐武の身の危険を虫の知らせ(碁石が割れたってだけ!)で知って、いつもの襦袢一枚で冬山まで駆けつけてくる市やんの一途さも泣ける(笑)。
「佐武やんぐれえの年頃にゃあ、誰でも信じられるんだねぇ、なんでも美しく見えるんだ。いいこった……。出来ることなら、大人の汚ねぇ裏を見せたかねぇもんだよ」(by市やん)
この一言に、『佐武市』の(ドラマ部分の)すべてがつまってると言っても過言じゃないよ。佐渡常役の滝口順平さんの演技もナイス。
第10話「地獄の掟」
脚本:鈴木生朗 演出:小島英夫 作画:甲藤征史・後藤静夫
江戸を騒がす稲妻小僧(青野武)は、大名旗本大店から盗んだ金を貧民にばらまく義賊。しかし、ある大名の江戸屋敷お留守居役(高塔正康)が、公金使い込みを稲妻小僧のせいにしてしまおうと企む。
スタジオ・ゼロ回。
今回は、割とスタンダードに動画で殺陣を表現してた。そのせいか、稲妻小僧がやられるあたりは、バッサリとって感じじゃない分なんかミョーに痛そうだったよ。お留守居役が、市やんに斬られて死ぬときに「か、金、金〜」って言いながら死ぬのが、判りやすい悪者してて笑った。
あと、市やんの仕込み杖が、(『あずみ』の刀みたいに)柄の方にも刃がついてたのにはビックリ。
稲妻小僧こと新吉役で青野武さん、番頭の庄之助役で井上真樹夫さん。
第11話「うらみの天保銭」
脚本:大原清秀 演出:吉良敬三 作画:飯野皓・津野二朗
佐平次親分(北村弘一)の幼なじみの瓦職人が屋根から落ちて死んでしまう。親分の名代で葬式に出た佐武は、その死に様を見て、事故ではなく殺しとの確証を得る。
スタジオ・ゼロ回。
今回は、お話が良かった。娘を廓から請け出すために殺しまでするようになってしまう儀助(宮内幸平)ってのがね。下手人を挙げながら後味の悪い事件で、佐武やんが世の中の世知辛さの一端を知ってちょっと大人になるってお話。
元武家の娘役で、増山江威子さん。ラストの方の「お父さま〜ッ!!」の泣きの演技が、真に迫るものがあったよ。
捕まる前の義助の姿が、さながら銭に憑かれた餓鬼のようで迫力あった。折り鶴の実写映像も効果的に使われてた。
「どうだい、初めての酒は?」(by市やん)
「苦え……、おいらこの苦さを忘れねぇよ」(by佐武やん)
第12話「首のない死体」
脚本:阿部桂一 演出:上梨満雄 作画:杉野昭夫・森田浩光・沼本晴海
隅田川に、続けて首なし死体が上がるようになった。佐武が調べた死体の肩口の灸の跡から、円福寺に出入りしていた鍛冶屋の松吉だと判る。
前回から、オープニングの「行くぜ、佐武やん!」が叫ぶ感じに変更。
いつの時代でも、悪者は“越後屋”ってのが相場なのね(笑)。事件の手がかりをたどっていくと、どんどんと偉い人間に繋がっていくっていう、よくあるパターン。
後半の越後屋での殺陣は、止め絵を素早く入れ替える手法でスピード感を出していた。
第13話「黒い寺」
脚本:迫間健 演出:小島英夫 作画:甲藤征史・藤田真吾
女の土左衛門が上がる。しかし、番所に安置してあった仏が何者かによって持ち去られてしまう。追った先は寺町。寺方は寺社奉行の管轄であるため、佐武はそうそう手が出せない。
スタジオ・ゼロ回。大奥の陰謀に繋がるってお話。殺されたお浪の方役で、白石冬美さん。
「思案しなけりゃ首が飛ぶ、それを知らない訳じゃあないが、持って生まれた正義の血潮。佐武は十八、心がはやる」(byナレーション@小林昭二)
今回はとくにナレーションが良かったな。市やんの軽口もエスプリが効いてた(笑)。お話はスタンダード。市やんが助けに入るときの草履を脱ぐシーンがカッコイイね。殺陣シーンも、ネガポジ暗転みたいな処理で緊張感が出てた。作画自体も良く描けてたし。
ラスト、マヌケな番太(立壁和也)のコメディリリーフで落とすあたりは、正統派時代劇って感じね(笑)。
第14話「荒野の魔犬 シャマイクル」
脚本:阿部桂一 演出:村野守美 作画:杉野昭夫・森田浩光・沼本清海
※五円之助&アルデンテ、特別クロスレビュー
江戸は雪の正月。こたつで暖を取る市と佐武。市は、決して話すまいと思っていたという、長万部での体験を語り出す。
虫プロ回。動画枚数800枚で作られたって言う伝説の回。
市やんの静かな語りで淡々と話を進めていくんで、本当に語りで聞いてるように知らない間にストーリーに没頭しちゃう。
老人(田村錦人)の村の回想シーンも、背景・キャラともシンプルな線画で、余白の白さを上手く使ってたのが印象的(このシーンはほとんど動きナシ)。一枚絵に力があるんで、止めでもちゃんと間が保つんだよね。反対に、犬の走りの作画は、2コマ作画を使って贅沢に動かしてた。
しかし市やんは、どこへ行っても情を感じた相手を斬らなきゃならない、そういう辛い星の下に生まれてるんだねぇ。市やんが佐武やんをことさらに大切に思う気持ちが、ほんのちょっと判った気がしますよ(泣)。
VHS版では、ラストのシャマイクルと対峙する市のセリフがズタズタに切られて(無音になってて)良くワカラン。たぶん「めくらはめくら同士」とか言ってると思うんだけど。
※五円之助&アルデンテ、特別クロスレビュー
江戸、雪の正月。市(大宮悌二)は佐武(富山敬)にある話を語り始める。それは、シャマイクルと呼ばれる一匹のアイヌ犬と出会った話だった。
珍しいビデオが手に入ったので、今回は『佐武と市』をいってみたいと思います(レンタル店からは消えてしまって見られないんです)。この「荒野の魔犬」は昔から『佐武と市』の代表的なエピソードとして語られることが多い作品ですが、実際に見てみると、どちらかといえば異色作といったほうがいいかもしれない作品でした。
「あたしにとっちゃ生涯忘れられないやつに巡り会った話なんだ」。目を治すための金を手に入れるため蝦夷の地、長万部の近くにやって来た市やんは、エゾオオカミの群れに襲われるが、そこに現れたのが魔犬と呼ばれたシャマイクル。かけられた賞金は五百両。それを狙って多くの浪人が集まってきていた。
飢えたエゾオオカミの迫力、欲望をぎらつかせた浪人たちの面構え、一人で市やんがシャマイクルと相対した時の緊迫感、作画枚数がすごく少ないと聞いたのですが、とてもそうは思えないほど良く出来ています(一説によると800枚)。
アイヌの人たちが住んでいるハウチカラコタンの村の描写も止め絵を使っていますが、なかなか雰囲気が出てました(真崎守かな?)。この村に伝わるというコタンの財宝を狙って松前藩が村人を皆殺しにするのですが、どうもこのあたりのシーンが後になって差別的だとか放送禁止だとか問題になったようです。最後に生き残った裏切り者の老人が市やんに、シャマイクルを殺して楽にしてやってくれと頼むシーンが胸に迫るいいシーンでした。
実験的な画面作りやダイナミックな作画などが注目される『佐武と市』ですが、脚本が毎回きちんとしているのに驚かされます(時代劇専門の脚本家に頼んでいたそうです)。小林昭二のナレーション(いいねえ)や山下毅雄のBGMも含めて本当に「ちゃんとした時代劇」を作ろうとしているところが感心させられます。ビデオやDVDが手に入る機会があったらぜひ一度見てみることをお勧めします。
第15話「大江戸番外地」
脚本:阿部桂一 演出:上梨満雄 作画:杉野昭夫・森田浩光・沼本清海
平和な正月。しかし佐武は、流しの蕎麦屋を半殺しにし金を奪ったとの咎でしょっ引かれてしまう。入った先は、伝馬町の牢屋敷。
虫プロ回。佐武の牢入りは捜査のための潜入でしたって話。
ああ、佐武やんが新入りの歓迎を受けてる! 「“ねじりン棒”の次は“落下傘部隊”や」みたいな〜(笑)。
演出も作画もフツーだったな。話も、結局佐武やんがフツーに活躍するってだけで、あんまりヒネリもなかったし。ラストで珍しく(もないか?)佐武やんが市やんを助けてた。
第16話「捕物無情」
脚本:梅林貴久生 演出:吉良敬三 作画:飯野皓・山崎隆生
尾浜御殿に盗みが入る。身のこなしからただの盗人ではないと思われるふたり組(寺島幹夫・中村正)は、灯台守の一家を人質に尾浜灯台に立てこもる。それから、睨み合いはそれから何日も続くことになる。
スタジオ・ゼロ回。冒頭の、クルクル飛んでくる御用提灯をスパスパ切っていくイメージシーン(のような画面)は、なんかファミコンのゲームみたいで面白かった。
初っぱなから緊張感ある殺陣シーンの連続で、ちょっと新鮮。作画も、劇画風の荒い描線で気合いが入ってたよ。ゼロ回もちょっとこなれてきたのか、シーンによってはハッとするような画面が見られるようになった。
自らの保身にのみ関心がある無能なお上より、世のため甲賀一族のためと義理に命を奉じた忍者(寺島幹夫の方)に意気を感じる佐武と市ってお話でした。
第17話「しぐれの降る夜」
脚本:結束信二 演出:岡崎邦彦 作画:杉野昭夫・森田浩光・沼本清海
女手一つで店を切り盛りするおかよ(武藤礼子)は、十年前のある罪をネタに、大五郎(立壁和也)という男に三十両を用意しろと強請られる。おかよに惚れている無宿人の友吉(野沢那智)は、なんとかおかよを助けたいと思うのだが……。
虫プロ回は、劇中でナレーションを用いないことが多くなってきた。ラストをナレーションで締めるのは同じだけど。
十六のおかよ(松島みのり)の辛い身の上話がなかなか泣ける。おかよの作画(シンプルな線画)が、また儚げで良いんだよ。盗んだ一つの柿をのために、その身を汚され(泣)。
おかよと友吉の話、そして大五郎の用心棒の浪人(北村弘一)と市との話との両立が割と上手くいってた。市やんの決めゼリフ「あたしゃ、お前さんを斬りたくねェ」がまた聞けたしね。ラストがハッピーエンドになってたのも後味いい。
作画は相変わらず躍動感に溢れてて気持ちが良い。
第18話「なみだの縁切り榎」
脚本:猪俣勝人 演出:小島英夫 作画:甲藤征史・半田輝男
女が殺される。仏の足の裏には特徴的な二の字の傷があった。その傷は、中仙道の板橋の大黒楼の女郎につけられた“鎖”だという。
スタジオ・ゼロ回。ナレーションが、相模太郎さんに変更。文語調から打って変わって、べらんめえの江戸っ子口調の口語調に。検索したら、この方、浪曲の方ですか?
女郎のおしの(五月女道子)が情をかけた渡世人(小林清志)が、別れた亭主の仇だったって話。佐武やんの遊びなれてない初な感じがカワイイ。
「女ひとり請け出せねぇはした金で、このオレの男を買ったってェのかい!?」(by佐太郎@小林清志)
佐太郎の不器用で乱暴な正義感がなかなか魅力的だった。
「辛さ悲しさ、佐武ァきっと噛みしめていたんだぜェ、ありゃあきっと」(byナレーション)
第19話「子守やくざ」
脚本:迫間健 演出:林政行 作画:杉野昭夫・森田浩光・沼田清海
二の午の祭のさなか、小さな娘が駕篭にはねられる。連れの男とともに市が医者に連れて行くが、その男が行方をくらませる。
虫プロ回。ナレーションは、いつもの小林昭二さん。
誘拐してきた娘、おちい(栗葉子)と誘拐犯の下っ端三次(滝口順平)との心温まる交流っていう、ほのぼのした話だった。なんか昔のアニメらしいホンワカした感じと、後半のちょっとハードな展開が対照的で良かったよ。
市やんが誘拐犯の親分(立壁和也)を仕留めるところの、構図とタイミングが格好良く決まってた。
「雪も氷も情けで溶ける、か」(by市やん)
第20話「うらみ」
脚本:西川洋二 演出:黒川文男 作画:飯野皓・石山卓也
市はある夜、4人の浪人者に襲われる。4人のうちのひとりの目を斬って見えなくしてしまったことを知りショックを受ける。
スタジオ・ゼロ回。市を狙って浪人を雇う二人に、青野武さん、桂玲子さん。(盲目で)闇に生きる市やんが、先のショックと風邪とで、その心までも闇に呑まれてしまいそうになるってお話。市やんの話は、なかなか業が深くてイイねぇ。
作画も、目を斬られる浪人者や、ラストの強い浪人(寺島幹夫)が斬られるシーンなんかの残酷シーンを逃げずに(モロに)描いてて、市が人を斬ることに罪悪感を感じるってところにちゃんとリアリティが感じらさせるものになってたのが良かったよ。
お話のラストも、「あっ!」という仕掛けがしてあってちょっと洒落てたよ。
第21話「魔窟の罠」
脚本:阿部桂一 演出:上梨満雄 作画:杉野昭夫・森田浩光・沼本清海
首つりが見つかるが、同心の田辺によるとこの仏は阿片窟の密偵に入った配下の者だという。佐武は、仏が握っていたお札から、願掛け橋を見張ることに。そこへやって来たのは、天狗の面を着けた怪しい連中。
虫プロ回。情け容赦ない敵で、佐平次親分の家が襲われたり市やんが拷問を受けたり、いろいろ大変なことは起こるんだけど、ラストはいつものノリで人情話だった。ちょっと肩すかし? あと気になったんだけど、佐武って佐平次親分とこに居候してるんだっけ?
作画は、ラストの市やんの殺陣がいつもの様式的な殺陣と違って、動画で見せる感じだったんで新鮮だったよ。
「死ぬほど嬉しい佐武の胸、市の心も泣いている。これでいいのだ二人の胸に、通う誠を誰が知る。西に沈んだお天道様が、二人の情けを知っている」(byナレーション)
第22話「美しい獲物」
脚本:迫間健 演出:吉良敬三 作画:甲藤征史・後藤静夫
あん摩を頼まれたのが縁で知り合った明石屋の娘、おもん(五月女道子)。その娘さん、女だてらに剣の道場に通っている、「殺したいヤツがいるの……、冗談よ」。その夜、明石屋の主人、仁兵衛(加藤精三)が何者かに殺される。
スタジオ・ゼロ回。吉良敬三さん演出回。
ストーリーは、仁兵衛の死に際の言葉を鍵に謎を解いていく正統派のミステリ仕立て。神奈川の女郎に聞き込みに行ったと聞いて「そんなのいやいや〜」となっちゃうみどりちゃんがカワイかったな。
珍しく殺陣のシーンもあっさりしてた。面白くないワケじゃないけど、取り立ててこれといったポイントもないかな。
第23話「あいつを殺した子守唄」
脚本:北野真生 演出:岡崎邦彦 作画:杉野昭夫・森田浩光・沼本清海
「近く近江屋を襲う賊がある」とのたれ込みが佐武のもとにもたらされる。近江屋を張っていた佐武は無事賊を引っ捕らえる。その盗人は有名な六郎太(納谷悟朗)という蔵破りだったのだが、佐武の心は晴れない。
虫プロ回。サブタイ前の、子守唄の口笛吹きながらやってくる六郎太は、まるで『あしたのジョー』の第1話みたいだった。
話も、闇の世界に生きざるを得なかった六郎太と、弟を売ってお秋(松島みのり)を奪おうとしたその兄(近石真介)っていう、みなしごの兄弟の哀しい顛末って内容。
哀しい話を、イメージシーンぽいカットを多用して情感たっぷりに描いてた。派手さはないものの、なかなかアダルトな雰囲気の印象的な話に仕上がってましたよ。こういいう雰囲気のアニメって、最近ないよなぁ。
第24話「呪いの赤猫」
脚本:深山伸 演出:ひで・ぼお 作画:飯野皓・津野二朗
ある夜、西陣屋に「財産の半分をもらう」との矢文が打ち込まれる。西陣屋の主人(鈴木泰明)である父に内緒で佐平次親分を訪れたおその(沢田敏子)に請われ佐武と市は内々に調査を進める。
スタジオ・ゼロ回。
声優の演技の感じがいつもと違う感じがしたなぁ。緊張感を出すためか、せっぱ詰まって早口な感じ。それとも単に脚本のセリフの量が多いのか?
ラストのアクションシーンは、いろんな意味でダイナミックだった。作画も勢いがあって良かったんだけど、佐武やんの十手で忍術レベルの必殺技を繰り出したのには思わず腰が砕けました(笑)。今までそこそこリアルテイストを保ってきたのに、あんな技があったのか!?
全体に変な勢いがあって、それがミョーな味わいになってました。
第25話「涙の花吹雪」
脚本:鈴木生朗 演出:真崎守 作画:杉野昭夫・森田浩光・沼本清海
隅田川沿いは桜が満開。市はこの頃になると陰鬱になったり深酒をしたりと、情緒不安定になる。時を同じくして、長崎屋に“鬼火の源内”と呼ばれる押し込みの一味が入る。
虫プロ回。真崎守さん演出回。
市の昔破れた恋が語られるっていう珍しい話。市やんと佐武やんが珍しくケンカをしちゃうのもいいアクセントになってた。市やんはいろんな過去を背負ってて、なかなかに奥深いキャラになってきたなぁ。
表で捕り物がされてる中で市とおまき(来宮良子)とのやり取りのシーンも緊張感たっぷりだったし、市と源内(大塚周夫)との対決シーンもスローモーションが緊迫感を出してた。
来宮さんと大塚さんの演技も、アダルトな雰囲気作りに貢献してました。来宮さんのおまき、サイコー!
第26話「血煙り街道」
脚本:根岸雅雄 演出:棚橋一徳・黒川文男 作画:甲藤征史・石山卓也
ある夜、番所に手負いの侍(飯塚照三)が駆け込んでくる。市はその侍から、藩の乗っ取り計画の連判状を届けて欲しいと頼まれる。次の朝、市は佐武に「ちょっと旅に」と言い残し、ひとり出かけていく。
スタジオ・ゼロ回。
鹿沼藩へむかう街道を血に染めながら市やんがずんずん進んでいくって話。ってワケで、ほぼ全編にわたって殺陣の連続。市やんの(強すぎるぐらいの)強さが堪能できる。敵の“四本矢の青江”(寺島幹夫)は、最初の襲撃で自分の矢は通用しないの判ってたのに、もちっとなにか工夫できなかったものかね(笑)。
オーソドックスなカメラアングルで、正統的な時代劇風の殺陣シーンを目指してるのが判る。カット割りも細かく割って、緊張感をうまく出してました。作画も、虫プロ回と違って流線BGを使わず、動画で描いていこうと頑張ってたのが好感。
話の方は、ラストの国家老江戸家老を斬るシーンに象徴されるように、ちょっと大ざっぱすぎる印象が残ったなぁ。ま、今回は殺陣そのものが主役ってことだろうね。
第27話「地獄の用心棒」
脚本:阿部桂一 演出:上梨満雄・岡崎邦彦・沼本清海・りんたろう 作画:杉野昭夫・森田浩光・小川孝雄
ご禁制の鉄砲が大量に押収される。鉄砲の出所の鍵である証人が移送中に何者かの手で斬られてしまう。なんとか尻尾を掴もうと走り回る佐武は、ある荷に目が止まる。
虫プロ回。りんたろうさんコンテ回(?)。
虫プロ回らしい、流線BGや止め絵を使ったハッタリの効いた構図の連発で、観てて気持ちのいい回でした。玄馬(近石真介)と市やんが坂の上でにらみ合うシーンなんて、バックに飴売りの声をかぶせたりしてカッコイイ。
そんな静のシーンも良かったけど、白眉はラストの一騎打ちか。背景が実写の海岸で、走る足のカットも実写を織り交ぜたりして面白かった。BGMの尺八がまたカッコイイんだ。あ〜、これは重箱の隅になるけど、カットによって玄馬が裸足になったり草履になったりしてるのが気になった。
話も、気の弱い貧乏侍(峰恵研)の話が良いアクセントになってましたよ。
第28話「殺しの追跡」
脚本:迫間健 演出:吉良敬三 作画:飯野皓・半田輝男・高島鉄也
家人十三人が殺される押し込み強盗が起きる。佐武は現場で薬の処方を書き付けた紙を見つける。そこからひとりの女(松島ミノリ)が浮かぶ。女には、事件の日に旅に出ていったという浪人の兄(井上真樹夫)がいた。
スタジオ・ゼロ、吉良敬三さん演出回。
カメラワークに工夫がされてて、とくに前半、何気ない仕草から感情を読み取らせるような演出が細やかで良かったな。あと、クライマックスの船の上での立ち回りは、作画も迫力たっぷりだったし、限定された状況下での戦いっていう緊迫感もよく出てた。カッコイイです。
全体的にセリフやナレーションにあまり頼らないドライな演出が、ウェットな話をベタベタの浪花節にならないよう上手く押しとどめてた。表現的にも、時代劇のステレオタイプにとどまらないオリジナリティが感じられれて面白かったですよ。
第29話「座頭殺し」
脚本:阿部桂一 演出:林政行 作画:杉野昭夫・森田浩光・小川隆雄
座頭の金貸しばかりが狙われる殺しが続く。めくらばかりを狙う殺しに憤慨する市。そんな市のもとに、昔の仲間で今は坂下検校様とまで呼ばれるようになった金貸し、春の市(田村錦人)が訪ねてくる。
金貸しで財をなした昔の友人に対する市の複雑な思いと、春の市の娘の貧乏浪人との恋話が立体的に絡んで、ベタな人情話ながらそこそこ見応えのある話になってた。春の市が味わい深いイイキャラだったな。なんだかんだ言って情に弱い市やんっていうのも定番。
「目には見えぬが刃物のような、月の光が身にしみる。広いこの世に子はおろか、身寄りの影もない俺だ、にっこり笑って親子のために、刃の森へ死にに行く」(byナレーション@小林昭二)
ラストの添田典膳(立壁和也)を斬るシーンも、間の取り方が格好良かった。
第30話「野良犬の唄」
脚本:鈴木生朗 演出:ひで・ぼお 作画:石山卓也・半田輝男・長谷川淑子
神奈川の宿への道中、市は腕の立つ浪人(寺島幹夫)に出会う。このごろ、神奈川では代官も手出しできないほど腕の立つ五人の悪人がのさばっているという。酒場で再会した市と浪人。浪人は市を賞金稼ぎの競争相手と思い、仕込みを奪って出て行ってしまう。
市が正義と情に動かされて五悪人を討つ話なんだけど、どうも話のつくり方が大ざっぱな印象を受けたなぁ。市やんの動機付けがちょっと判りやすすぎるかも。
作画の方も、大ざっぱな感じがしました。冒頭の市やんの殺陣はカメラワークがダイナミックで良かったな。
五人組の頭が家弓家正さんだったんで、そこだけなんとなく重みが出るというか。やっぱり家弓さんは悪役が似合うなぁ。
第31話「神かくし」
脚本:鎌田房夫 演出:上梨満雄・岡崎邦彦・沼本清海・りんたろう 作画:杉野昭夫・森田浩光・小川隆雄
佐武は侍に殺されそうになっていた女を助ける。江戸では、若い女ばかりが消える“神かくし”の噂が絶えない。今回の事件により、一連の神かくしを組織的な人さらいと確信した佐武は捜査に血道を上げる。
虫プロ回。冒頭で狂っちゃった女が、袖と髪をひらひらさせながら踊ってるのが、なんとなくりんたろうさんっぽいなぁ、と。
珍しくみどりちゃんが事件に巻き込まれる話だった。下手人の大物ぶりといい、ラストの炎上するお台場での大捕物といい、ノーテンキな感じのするラストシーン含めてハリウッド大作ばりに王道を行くストーリー展開だった。
海から上がった市やんが「天狗退治に参りました」みたいなカッコイイセリフはいて登場するんだけど、そのカットの絵がよりによってフンドシ一丁で濡れた着物を絞ってるって絵なのが笑った。しかも、足が内股なのがまた情けない。
とはいえ、虫プロ回らしく毎度アクションシーンは完成度が高いです。影の部分を荒いタッチで塗りつぶしてる感じがまたワイルド。
第32話「斬らせて戴きます」
脚本:鈴木生朗 演出:棚橋一徳 作画:飯野皓・矢沢則夫・井上勝
ある夜、米問屋の旦那が辻斬りに斬られる事件が起きる。証人によると、下手人はあん摩。さらに刀傷からするに相当腕の立つ居合い、しかも逆手切りの使い手だという。
スタジオ・ゼロ回。偽物が出て市やんが殺しの疑いをかけられる話。市やんの疑い云々の話より、市やんの子供好きや優しさが印象に残るね。
偽モノ市やんとドヤ街に住む母子が、どちらも昔斬った仇関係だったていう市の業みたいな話だった。観た印象は、ユルいと言えばユルいんだけど、市やんの人柄の良さが嫌味なくて割と普通にエエ話でした。
第33話「母のない子の子守唄」
脚本:阿部桂一 演出:林政行 作画:杉野昭夫・森田浩光・小川隆雄
ある夜、逃げる女から赤ん坊を頼まれてしまう市。次の日、女はひどく痛めつけられ殺されていた。市はしかたなく赤ん坊の世話をするようになる。
虫プロ回。『江戸ゴッドファーザーズ』ってな話(“ズ”じゃないけど)。
話自体は良くある赤ん坊に情が移っちゃうって話だったけど、赤ん坊を狙う侍に怒った市やんが殺陣シーンでクルクル回りながら侍どもを斬っていく作画が面白かった。
「侍ェが、侍ェがよってたかって、赤ん坊を斬ろうってぇのかい? なな、なんてこったぁ!?
てめえたちみてぇな人間は、地獄へ行けえぇぇ〜〜ッ!!」(by市やん)
いつもの虫プロ的な止め絵での処理じゃなくて、素早いタイミングで見せるキレのあるアニメートがかなり新鮮だった。
アニメスタイルの記事(参照)で原口さんが「林政行が演出の回は、恐らくジャガードがやってて、荒木(伸吾)さんも描いていると思うんだけど、結構、凄い作画があるよ。」って言ってるけど、この回とかもそうなのかしら?
第34話「暗い殺しの夜が来る」
脚本:阿部桂一 演出:吉良敬三 作画:石山卓也・半田輝雄・所初恵
上州屋と遠州屋の主人が相次いで殺される事件が起きる。どちらの事件でも、当事者たちはおびえながら、人形に殺されたと口走る。
スタジオ・ゼロ、吉良敬三さんの回。『怪奇大作戦』の「青い血の女」みたいな話。今ならさしずめ『イノセンス』? 話としてはむしろ『巌窟王』か?
いつもながら吉良敬三さんの回は映像表現が独特で面白い。冒頭のサブタイ前の人形のシーンでグッと掴まれてしまう。人形自体の怖さは、いかんせん絵なんで実際の人形ほど怖さはないんだけど、効果音で使われる女の人の「ああぁぁ〜〜」って声が怖い。演出でちゃんと人形のホラーっぽい怖さを出してるのがお見事。子供のとき観たらオシッコちびったろうなぁ。
佐武やんの声が、いつもの富山敬さんから井上真樹夫さんに。そんなに違和感はない。真樹夫さんの方がやや声に色気があるかな。ドスをきかせたときのメリハリは富山さんのが上。
第35話「稲妻小僧参上」
脚本:迫間健 演出:田宮武 作画:木村圭市郎
この頃江戸の商家を荒らし回っている“稲妻小僧”。佐武も下っ引きながら佐平次親分の名代として捕り物に加わる。しかし、いざ対面した稲妻小僧、佐武の顔を見るや親しげに話しかけてくる。
ついに東映動画が入ってきましたね。木村圭市郎さん回。
ああ、佐武やんの走り方が『タイガーマスク』そっくりだ!(笑) 声は井上真樹夫さんだったけど。佐武やん市やんはもちろん、ザコキャラの顔の作りがまた全然違うね。細かい描線が入って、カットによっては必要以上に市やんとか怖い顔になってる。
佐武やんが公儀と情との間で揺れ動くって話。茅場町の親分(北川国彦)がまた憎たらしいんだ(笑)。真樹夫さんが声やると、佐武やんのどこか危うげな弱さみたいなところが心にキュ〜ンと来るね。コレって萌えかしら?(笑)
ラストの稲妻小僧こと佐右吉(野田圭一)との対決シーンというか、その前の市やんの殺陣がいかにも座頭市っぽくて格好良かった。斬った後の決めポーズ(?)が独特。
第36話「やっと見つけた親の仇」
脚本:鈴木生朗 演出:上梨満雄 作画:杉野昭夫・森田浩光・小川隆雄
上総屋の小番頭、伊之吉(岡部政明)は幼少の頃、疾風の弥造という押し込みに一家を殺された。佐平次親分(北村弘一)は弥蔵を捕らえられずにいたことを伊之吉にわびる。そんなある夜、上総屋の旦那(近石真介)が破落戸に因縁をつけられるのだが……。
虫プロ回。奉公してきた上総屋が、誰あろう疾風の弥造だったって話。今回は時代劇らしいストレートな勧善懲悪話でした。
冒頭の白黒反転の押し込みの回想シーン、ラストの弥造との殺陣シーンはいつもどおりの虫プロらしい迫力。
面白くないワケじゃないけど、これといった書くべきポイントもない回だったかな。
第37話「大江戸最大の捕物」
脚本:三芳加也 演出:勝間田具治 作画:木村圭市郎
近頃世を騒がせている猪鹿蝶の三人が押し込み強盗を働く。主人夫婦が殺されたとあって、佐武たち町方も必死で後を追っている。一方三人組の方では、猪十郎(小林清志)が逃げ遅れた鹿之助(永井一郎)を見捨てる算段をしていた。
東映動画、木村圭市郎さん回。この回から、オープニングのハミングが女性に変わって、エンディングに歌詞が付きました(詳細はこちら)。
司直に追いつめられていく猪鹿蝶の盗賊三人組の、打算と情とがせめぎ合う感じがなかなかイイ味わい。小林清志、永井一郎、小原乃梨子と声優陣が芸達者揃いで、コレまたオイシイ配役。
今回も佐武やんの情にほだされそうになる弱さってのが魅力になってた。
「十手獲り縄預かる身なら、私情絡みはさらりと捨てて、命を懸けろと言いたいが、ここは一番言わぬが花と市の胸」(byナレーション)
後半、市が猪十郎を浜で追いかけるシーン、アングルの大胆なデフォルメが面白い。アレは実際、崖っぷち走ってるシーン? ラストの猪十郎の大捕物のシーンも、なんかヤケクソかと思うくらいに動きまくってて、ただならぬ迫力だったなぁ(笑)。
なんか勢いがあってオモシロかったです。
第38話「市を殺(ば)らせ!」
脚本:迫間健 演出:岡崎邦彦 作画監督:杉野昭夫・森田浩光・小川隆雄
市の首に五十両の大金を懸けた女がいた。そのおけいという女(松島みのり)は、その昔賭場を仕切っていた親を市に殺された娘だった。若頭の亥之吉(田村錦人)は、市の思わぬ弱点を知り一計を案じる。
お上から咎なしと許されようと大山参りをしようと、人を斬った罪からは逃れられないっていう、市やんの業深き話。最後にちょっとだけ(大山様から)許されたのかもってところが救い。
ラストの市やんの容赦ない追いつめられっぷりがスゴイ。馬が入れ替わり立ち替わり襲ってくるシーンも、作画に躍動感があってダイナミックでしたよ。カミナリのシーンの荒々しい描線の迫力も必見。
カミナリもまあ予想通りだったけど、お話的には過不足なくキレイにまとまってた。虫プロらしい、手堅くまとめた佳作って感じで完成度高し。
第39話「だだっ子道中」
脚本:辻真先 演出:吉良敬三 作画:飯野皓・半田輝雄・神山美智子
母を殺された下町の子供(松島みのり)は、実は稲葉家の跡取りの双子の片割れ。畜生腹として捨てられたのだが城に残った兄が死んだため、お家の跡取り騒動に巻き込まれることに。佐武と市は同心の田辺からこの“松丸様”の警護を頼まれる。
スタジオ・ゼロ、吉良敬三さん演出回。子供話と来れば市やん。今回は口も挟まず遠くから見てるだけと思ってたら、ラストのラストでおなじみのシャウトが聞けた。
「いってぇオメェら、どんな面してやんがるんでぇ!? ど、どんな面してこの子の命をッ!!」(by市やん)
ラストの殺陣が、動きはそんなになかったけど、血の描き方がやけに生々しかった。だだっ子のキャラがだんだん憎めなくなってくるところが普通に良かったな。ラストのさらっとしたところも好み。