『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』

原作・協力:士郎正宗
監督・シリーズ構成:神山健治
ストーリーコンセプト:押井守
オリジナルキャラクターデザイン:下村一
キャラクターデザイン:後藤隆幸・西尾鉄也
メカニカルデザイン:寺岡賢司・常木志伸
美術監督:竹田悠介
音楽:菅野よう子
アニメーション制作:Production I.G
作品公式サイト
放送期間:2004年1月〜2005年1月(スカイパーフェクTV!)

レビュー元:DVD(レンタル)


◆ 2004年4月2日

第1話「再起動 REEMBODY」

脚本:櫻井圭記、絵コンテ・演出:橘正紀、作画監督:中村悟

 “笑い男”事件から発覚した厚生労働省疑獄事件により、当時の内閣が解散するという一大政界スキャンダルを巻き起こした。その後を受け成立した、憲政以来初の女性総理大臣、茅葺(榊原良子)を戴く内閣は、難民政策見直しを公約に掲げた“保守反動内閣”だ。そして、いまだ公安9課は武装解除されたまま無期限待機命令に付されていた。とある日、中国大使館の入った建物に“個別の11人”と名乗る武装テロリスト集団が立てこもるという事件の発生を受け、9課の面々にも非公式に招集がかかる。

 さて、今回のシリーズは、ストーリーコンセプトって役名で押井守さんが入ってるんだけど、その押井さんから監督の神山さんに出された宿題が、「難民問題をより掘り下げろ」ってことと「9課の敵を発明しろ」ってことだったらしい。んで、今回の話は、“難民とテロ”が中心テーマだって。この近未来の日本では、非核大戦のあとで大量発生した“アジア系招慰難民”を3百万人ほど(!)受け入れたという設定。でも不景気の世で、巷間に「国内にあふれる難民たちがオレらの職をうばってるんじゃねーか?」といった言説が流布し始める。そんな中、その大衆の不満を原動力にして一気に政権を握ったのが、“反動保守”の茅葺内閣ってワケ。ま、某イシハラ知事みてーなもんかな? んで、その茅葺内閣(と内閣情報庁)と公安9課との関係が、もう一つの大きな柱。アジア難民、テロ、戦争、そして競合する諜報機関…。う〜ん、お膳立ては完璧! 面白そう!

 実際観てみたところ、まず、オープニングがカッコイイ! 絵コンテ・作画監督が西尾鉄也さん。前のシリーズのオープニングは3DCGだったんだけど、やっぱり作画のがいいや。少佐の顔もちょっとカワイイ? 微妙に『イノセンス』っぽいところも。ちなみに、地上波バージョンは、オープニング曲が違うらしいけど、OPアニメーションも一新したのかしら? 曲は、ファーストと同じく菅野よう子さん。

 第1話は、公安9課復活の話。9課が、対テロ組織として急襲制圧のプロであることが再び描写される。荒巻の政治手腕もかいま見られて、ファーストシーズン第1話の再現。『攻殻』といえばこの絵という『GHOST〜』アバンタイトルの、“ビルの谷間の闇に消えゆく少佐”もツボ押さえてる。んで、謎のテロ組織“個別の11人”は、はっきりした首謀者がいるわけでもなく、個々のメンバーも特別突出しているわけでもないという、不思議な組織形態。しかも、メンバーのひとりは死に際に、「我々は“個別の11人”。ここで我々が倒れても、個別の自我が後を受け継ぐ。我々にとって死は意味をなさない!」と。想像するに、トップダウンのきっちりしたピラミッド型の組織ではなく、インターネットのような分散型ネットワークのような組織なのかな? NHK特集でもやってたけど、21世紀型のあらたな組織形態だ。それこそ、“STAND ALONE”(孤立)でありつつ、“COMPLEX”(複合)である、と。バックにだれか首謀者はいるのか? それとも、ユングのいう集合的無意識のようなネット上に自然発生的に生じた感情の複合体(ミームみたいな)のなせる業なのか? まだ、詳細はわかんないんだけど、この“個別の11人”が、ファーストでの“笑い男”と同じポジション(追うべき謎)になるんだろうね。ラストで、9課に“新人”が登場!? つかみはOK!

【コロッケ五円之助】

第2話「飽食の僕 NIGHT CRUISE」

脚本:菅正太郎、絵コンテ:安藤真裕、演出:竹下健一、作画監督:清水ひろし

 元サイボーグ部隊の傷痍軍人のギノ(平田広明)。腐りきった世の中に不満を抱くが、具体的な行動に移すでもなく、悶々と妄想を頭に思い描くボンクラ。街で見かけた高級コールガールヒララに密かに思いを寄せるが…。

 第2話は、語り中心の地味な話。っていうかコレ、『タクシードライバー』ッスね

 第1話で難民政策に反対するテロリストという極北を出して、第2話で一般市民の側の平均的な気分を描いてみせる。実はシリーズ構成に気を配った、神山監督らしい細やかな心遣い。シブい!

 セカンドシリーズもなかなか面白そうな出だし。『S.A.C.』のノリもすでに判ってるし、今回はより本来の『攻殻』らしいハードな話になりそうで期待。今後も要チェック! ビデオ・DVDは、月イチでリリース(各2話ずつ収録)。

【コロッケ五円之助】

◆ 2004年4月29日

第3話「土曜の夜と日曜の朝 CASH EYE」

脚本:佐藤大、絵コンテ:西村純二、演出:布施木一喜、作画監督:新野量太

 “怪盗キャッシュ・アイ”に財産を狙われた田所会長(水島鉄夫)、政界のツテを頼って公安9課の荒巻に警備を依頼してくる。なんでも、財政界の大物が集う秘密のパーティが近々あるという。そのパーティとは、愛玩用アンドロイドを自慢しあう“趣味のパーティ”だった。荒巻と少佐は、アンドロイドとその持ち主に偽装してパーティの警護に当たることにする。

 『攻殻S.A.C』の中では、割と遊び入ったエピソードッスね。『オーシャンズ11』みたいな、どこかユル〜イ金庫破りの話。メイキングでも言ってたけど、神山健治監督、ジョージ・クルーニー好きらしい。

 この話も、どっかユルくてそれこそ『攻殻』らしさはないんだけど、そこはかとなく面白いんだよね。大笑いもしないけど、全体的に漂うユーモアが笑える。ストーリー自体も、なんかとてつもなくベタ。でも嫌いじゃないな。とくに、次のちょっとハードなアクションと対比すると際だつね。ラストもほのぼの。

【コロッケ五円之助】

第4話「天敵 NATURAL ENEMY」

脚本:藤咲淳一、絵コンテ・演出:吉原正行、作画監督:丸山宏一

 先の大戦で廃墟となった地区で極秘裏に行われていた自衛隊の演習中、一機のヘリ、“ジガバチ”が暴走を始める。

 サブタイトルにあるとおり、9課の天敵登場。内閣情報庁戦略影響調査会議代表補佐官、合田一人(ごうだ・かずんど)(西田健)。戦争の古傷か、一度見たら忘れられない顔。さしずめ、『劇パト2』の荒川みたいな胡散臭さ。

 今回は顔見せ程度だったけど、ここから9課と、ゴーダ率いる内閣情報庁の確執が始まるんだろうね。茅葺総理も第1話で出てきたっきりだし。しかもまだ、“決断の鈍いお飾り首相”って感じ。声が榊原良子さんだし、実はもっとしたたかな性格のキャラだと思うんだけど、まだ爪を隠してるんだろうか。エピソードを重ねてじっくり描いていくって事なんだろうけど、願わくはもうちょっと最初の方からシリーズ通しての見所みたいな分かりやすいフックを作って欲しいな。30分1話のエピソードも良くできてるんだけどね。

 今回は、アクションもアリってことで、作画もなかなかの出来。スパイダーマンみたく飛んでヘリと戦うタチコマはカワイイ。原画に井上俊之さんがいたよ。演出のテンポも良くて、アクションもいいし、面白かったよ。これこそ『攻殻』って感じ。ああ、続きが観たい!

【コロッケ五円之助】

◆ 2004年6月2日

第5話「動機ある者たち INDUCTANCE」

脚本:佐藤大・神山健治 絵コンテ:布施木一喜 演出:竹下健一 作画監督:後藤隆幸

 茅葺首相の下に暗殺をほのめかす脅迫状が届く。9課には“捜査”ではなく、首相の“警護”の任務の命が下る。その脅迫状には、あるマークが入っていたのだが…。

 ちょっとずつではあるんだけど、“個別の11人”の正体が明らかにされてきたね。というより、証拠が出てくるたびに、その実行犯同士の共通性が薄れていくといったところかな?

 残されたマークから探るに、共産革命に関する50年前の本を元ネタにしてるらしい。トグサくんの指摘で、こないだのヘリ暴走事件のときにも同じマークを見たことを9課が知るんだけど、「え!? 今さら気づいたの?」って感じ。トグサくんだって、脳は電脳化されてるんだし、もうちょっと効率的にデータ共有&検索できてもよさそうなんだけど…。

 共産革命の情熱。あと、暗殺実行犯人のクゼ(小山力也)が語る能楽の一回性に価値を見いだすウンチク、5.15事件の青年将校の言動に呼応する当時の民衆の熱狂的なナショナリズムの高まりなどが語られる。鈴木邦男先生云うところの、“情念の連鎖”ってヤツですか?(よくは知らんけど)

 どうも、内閣情報庁のゴーダが裏で一枚噛んでそう。もしかしたら、首相もろとも自作自演の大芝居とか? 地味に面白いよ。

【コロッケ五円之助】

第6話「潜在熱源 EXCAVATION」

脚本:藤咲淳一・神山健治 絵コンテ:下司泰弘 演出:河野利幸 作画監督:浅野恭司

 エネルギー省脅迫の犯人がトラックにひかれ死亡。義体は新品だが、不審な点が多い。課長はトグサを東京へ向かわせる。

 東京、先の大戦でほとんど水没しちゃってたのね。新浜って確か関西だったよね。つーか、神戸?

 東京で出会った犯人コタンの婚約者、アサギ役で林原めぐみ。相変わらず、そつない演技。

 新しい義体がもらえるという怪しげな仕事に犯人の男は関わっていたらしいんだけど、フィルムが黒く感光しちゃう仕事場…。東京のど真ん中(ウチカンナナ!)で怖すぎ! 生身で現場に潜入したトグサくんピ〜ンチ! カメラが引いて、その建物を写す。って、誰もが知ってるあの建物だ〜。わっはっは。あの人、怒らないかな? 「オレの足下に、ンなもん作らすわけねーだろ、バカヤロ!」。

 この話って、“個別の11人”とは関係ないのか? でも、徹底的に練り込まれたシナリオが、話の密度を濃くしてて相変わらず見応えあるよ。

 ところで、トグサくんは東京まで新幹線で来てたけど、タチコマはどうやってきたんだろう?

・オマケ
 今回のインタビューは、作品のキャラデザイン・作画監督で、I.Gの設立者の“G”の方でもある後藤隆幸さん(“I”はもちろん石川光久さん)。ぼそぼそしゃべる人だな。後藤さん、素(す)の絵はやっぱり、『ポポロクロイス物語』みたいな丸っこいカワイイキャラだそうで。5話のクゼは、金城武がモデルだったのか。似てる…、かな?

 次回は、キャラデザイン(後藤さんとの共同)の、西尾鉄也さん。

【コロッケ五円之助】

◆ 2004年7月5日

第7話「狂想は亡国の調べ Pu239」

脚本:藤咲淳一・神山健治 絵コンテ:西村純二 演出:川崎逸朗 作画監督:村田俊治

 第6話で明らかになった“新宿原発”。そこからの燃料棒搬送計画が漏洩。急遽9課が請け負うことに。しかも、現場にはまたしても内閣情報庁のゴーダが出しゃばって、タチコマは連れて行くなという。

 「オレたちゃ、いつから首相の使いっパシリに落ちぶれたんだ!?」とバトー。答えて少佐、「9課の最大の敵、それは数だ。今の状況が我々への攻撃だとしたら、どこかで何かが動き出してる可能性がある、って考えられない?」

 最初の予想とは違って、茅葺首相(榊原良子)にはあんまり指導力はなくて、官房長官(武藤与志則)はじめ、官房主導で動いてるみたいね。その裏で9課を牽制してるのがゴーダ率いる内閣情報庁。神山監督が言ってたとおり、9課の弱点が上手く設定に生かされてるね。

 ゴーダはいいキャラだな。ラストの大見得も決まってる。「お前らこそ、自分を何だと思ってるんだ!? 少数精鋭か? そんなもの、武装した難民どもが大挙して押し寄せてきたら手も足も出なかっただろう」(byゴーダ)。ついに、ゴーダが9課に正面切って宣戦布告。かといって、倒すべき敵でもない、ってところがミソ。

【コロッケ五円之助】

第8話「素食の晩餐 FAKE FOOD」

脚本:佐藤大・神山健治 絵コンテ・演出:布施木一喜 作画監督:新野量太

 荒巻により招集されるミーティング。その中で荒巻は、内閣情報庁と一連のテロ事件“個別の11人”とが裏で繋がっている可能性に言及する。とりあえず、南陽新聞銃撃事件に関わっているカワシマ・ショーを追うこととなった。

 イシカワの検索で、ゴーダの卒論を発見。その内容は、電脳化による個の消失とそれに伴う無意識下での協調性願望を利用して、大衆を操作しようとする理論だという。「“笑い男事件”を構造解析したような論文ね」(by少佐)。やっぱり、“個別の11人”は集合的無意識のような大衆の感情的噴出として起こる(起こされる?)モノなのかな?

 そうしているうちに、TVの討論番組のパネリストのひとりが、“個別の11人”についての極秘情報であるマークについて話し出す。「こうした“感染例”もあるのだな」(byゴーダ)。

 そして、荒巻は1課もウォン・チューレンとしてカワシマを追っているとの情報を得る。が、すんでの所でカワシマは1課の捜査員に射殺されてしまう。「コイツは、ウォン・チューレンじゃねー。アンタら(1課)もハメられたってことだよ、俺たちと同じにな」(byバトー)。

 ひさびさにフリーハンドで捜査できた9課なんだけど、得意の情報戦で見えない敵(=内閣情報庁)に先手を打たれるという体たらく。今のところ、ゴーダの手のひらの上で遊ばれてる状態。こんな9課は初めて。

 そういや、ファーストシーズンでよくあった、センチメンタルな話がセカンドになってめっきり無くなったね。最初はあのおセンチさが違和感あったんだけど、アレはアレで神山さんなりの『攻殻』になってて吉と(最終的には)思ってたんだけどね。でも、セカンドもオモシロいよ。


・オマケ

 インタビューは、西尾鉄也さん。キャラデザインは、実在の人物を参考にすることが多いという。官房長官、まんま上岡龍太郎だもんな。あと、オープニングについても。オンエア前日納品だって。自分以外の他人が読むコンテを描いたのは、初めてだったらしい。そうだっけ? 意外。でも、セカンドのオープニング、カッコいいんだよな。好き。

【コロッケ五円之助】

◆ 2004年8月11日

第9話「絶望という名の希望 AMBIVALENCE」

脚本:佐藤大・神山健治・松家雄一郎 絵コンテ:岡村天斎 演出:竹下健一 作画監督:浅野恭司

 新浜で連続して起こる自爆テロ事件。予告にある最後のテロを未然に防ぐため9課は出ずっぱり。そのころ、素子は内閣調査庁の巨大端末“デカトンケイル”にダイブする。そこには、仮想人格のゴーダの部屋があった。

 脚本が3人もいるだけあって、素子とバーチャルゴーダとの問答は、押井節とは一線を画するものの、情報密度が高くてまさに『攻殻』的な快楽。欄外に注が欲しいね、コリャ。

 「本来変質しないはずの情報の変質と、個性という名の幻想的オリジナリティが、今の社会システム内において、いとも簡単に並列化を起こしてしまうという欠陥だ。私はそれを、“消費という名のクリエイト行為”と名付けている」(byバーチャゴーダ)。「ネットに引きこもった子がたどり着きそうな結論ね」(by素子)。こういうセリフに思わずニヤリとなるよね。

 バーチャゴーダによれば、民衆は無意識に求めているのは「第三者を消費することでのみ成立する桃源郷の再現だ。かつてこの国はそれを体現して見せた」と。バブルの夢よ、もう一度ってか? こういう現実世界との地続き感が味わえるフィクションってのはスリリングで面白いね。

 少佐が、“デカトンケイル”にダイブするのに、物理的な手段で建物に侵入するあたりはリアルっぽい。『GHOST IN THE SHELL』では意図的に排除されてたネットダイブの描写も、3DCGのおかげでちゃんとカッコよく仕上がってるよ。この回観て、ギブソンの『ニューロマンサー』のラストはやっぱり映像で観たいと、そう思ったね。結構ぼくの頭にある通りの映像に仕上がってるよ。適度に陳腐でさ。

 ゴーダの仕掛けた“憎しみの連鎖”を、9課は止めることが出来るのか!?

★★★★・

【コロッケ五円之助】

第10話「イカレルオトコ TRIAL」

脚本:櫻井圭記 絵コンテ・演出:河野利幸 作画監督:村田俊治

 非番の日、帰り道で若い女性に助けを求められるトグサ。犯人の男は銃を持っていたため、トグサは発砲。しかし女性は男に殺される。正当防衛で堅いと思われていた事件は、義体専門のやり手弁護士ウエダ(上田祐司)によって法廷に持ち込まれる。

 今回は、法廷アニメだ。

 9課唯一の家族持ち、トグサくんの話。第1シーズンでも出てきたけど、家族には警備会社勤務って言ってあるんだよね。トグサくんはそういう意味でも、一番人間らしい人間。素子は、暗に法廷内で電脳通信をするようほのめかすんだけど、トグサくんの青臭い正義感はそれをさせないんだよね

 トグサくんの実直な正義感がよく出てて好きだなぁ。ねちねち追いつめるウエダもいい味。ラストは、トグサの青さをたしなめつつもそれを微笑ましく思ってる9課の面々の愛が感じられてイイ。その愛の結果は? しっかし、9課は怖いなぁ(笑)。

★★★½・

・オマケ

 アニメの役職の中で、一番なにやってるんだか判らない役職、演出さんのインタビュー。受けるのは9話と10話の演出の、竹下健一さんと河野利幸さん。デジタルが、演出の意図したい画面の実現可能性を大幅に広げたって話。

 特効にこだわる山内重保監督も言ってたけど、演出が技術的なことを知らないだけで、実は各現場とコミュニケーションしたらちゃんと演出の要望に応えてくれるものだ、って。各話の演出さんにも、その辺もっとどん欲にやってもらいたいね。

【コロッケ五円之助】

2004年9月14日

第11話「草迷宮 affection」

脚本:大松裕・神山健治 絵コンテ・演出:松本淳 作画監督:中村悟

 9課の新規採用の試験で追跡術のターゲットを務める少佐。どの候補も見込み薄。そんな少佐は、試験の最中に忽然と姿を消す。少佐の方も、バトーらと通信が取れず、電脳ハックを疑う。と、少佐はとある古い骨董屋に目が止まる。「ここがゴールってわけ」。

 『夢枕莫 とわいらいと劇場』で同じような骨董屋が出てきたような。過去の思い出を閉じこめた、タイムカプセルのような空間。これまた、『攻殻』らしからぬメルヘンチックなエピソード。こんなのもアリなんだ。

 まだ初期の頃の全身義体にまつわる少年と少女の話なんだけど、これがまた、泣ける話なんだよ。折り鶴を折り続ける少年…。ああ(泣)、こういう話弱いんだよ。神山さんらしい(?)、リリカルさが沁みる。全身義体化推奨のプロパガンダ映画みたいな気もするけど…(笑)。

 折り鶴を折るシーンの作画はスバラシイ。地味だけど、こういう細かい積み重ねがリアリティというかシンパシィを呼ぶ。音楽もイイ(この曲、地上波版のエンディングだよね?)。

★★★★½

【コロッケ五円之助】

第12話「名も無き者へ SELECON」

脚本:大松裕・神山健治 絵コンテ・演出:橘正紀 作画監督:後藤隆幸・古川尚哉

 ボーマ、イシカワはネットで“Individual 11”という怪しいファイルを発見。同時刻、課長から長崎のパーキングエリアのカメラがクゼを捕らえた。少佐たち実力班は長崎に飛ぶ。

 個別の11人の“感染”経路、そして“発症”条件が明らかに。どうやら、シルベストルが記した著書『個別の11人』(初版?)がキーになってるらしい。

 福岡に向かうトラックの中で11人が、自分がいかに“奉仕”したかを自慢し合うシーンは面白いね。中学生の自慢合戦みたい。今回も、ゲストキャラが多数登場するんだけど、オッサン顔のバリエーションがスバラシイ。オヤジキャラ好きの西尾鉄也さんの仕事。エエ顔がいっぱい。

 発症するボーマ、福岡の電波塔の上に集まる11人、トグサの前で自殺を図る三橋(評論家)。とりあえずワケわかんないうちに、エラいことになっていってるってのが描かれる。神山さんも言ってるように、この第2シリーズでは、9課は後手後手に回ってしまって、気付いたときにはコトが終わってるってパターンが繰り返し描写されてる。

★★★½・



・ハーフポイント

 『攻殻』のセカンドシリーズもちょうど半分を終えたところで、短評でもやってみようかと。

 第2シリーズの敵はゴーダなんだけど、国民の不満不安に乗じて、“難民解放”という名の難民排除を煽って、感情の連鎖をドミノ的に発生させてるワケだ。第1シリーズの“笑い男”とその模倣子っていう構造に似てる。さっきの12話のクゼだけが、ある意味バグ(ゴーダの思惑からはずれた)として異質だった、と。神山さんも言ってたけど、このクゼが今後の鍵になっていくんだろうね

 最初の頃、個別の11人が難民の味方なのか敵なのかよく判んなくて混乱したんだけど、それは計算だったのね。レンタルで一ヶ月空くとさらに忘れる。もうちょっと判りやすくしても良かったかも。

 『華氏911』とかでも言ってたけど、国家による情報統制や思想誘導のテクニックが以前と比べてよりマイルドで洗練された形になってきたんで、誘導されてる側はあたかも自分で主体的にそれを選んでるような気になってるのね。だから、こういう今日日的な題材ってのは観てて結構スリリングで面白い。小林よしのりさんのマンガなんかでもそうなんだけど、実際の経験じゃなくて、メディア化(データ化)された情報に基づいて描かれてて、読む側もそのメディア化された情報を吸収して影響されていくんだよね。これって、まんまゴーダのいう“情報による個人の並列化”ってヤツじゃない? いろいろ考えさせられて面白いね。情念の連鎖ってのも、いろいろあったよな〜。

 ゴーダの個人的な思想の実験として“個別の11人”を作り上げていったワケなんだけど、ゴーダは一体なにを最終的な目標にしてるんだろうか? 9課がどう状況を打破するのかも気になる。引き続き面白い。

【コロッケ五円之助】

◆ 2004年10月1日

第13話「顔 MAKE UP」

脚本:大松裕・神山健治 絵コンテ:布施木一喜 演出:川崎逸朗 作画監督:新野量太

 「英雄の誕生はその死をもって完結とす」(byパトリック・シルベストル)

 “個別の11人”は自決したが事件が終わったわけではない。9課は、ターゲットを内調(内閣情報庁戦略影響調査会議)に絞る。まずは自決から生き残ったクゼを探すことに。ある造顔作家が調査線上に浮かぶ。

 9課で一番影が薄いだろうパズ(小野塚貴志)にスポットライトを当てた回。パズっていわれて、即座に顔が浮かぶ人が『攻殻』ファンの中に何人いるんだろう?(笑)

 渋い顔の通り、ハードボイルドな男ッスね。口癖は、「俺は同じ女とは二度寝ることはない」だそうで(笑)。実は趣味が編み物とか、そういう意外な一面があったら面白いんだけど、あまりに外見通りすぎてやっぱり印象に残らない。ちょっと格好良すぎ。

 「パズを殺したいって女は結構多いかもね」(by少佐)。

★★½・・

【コロッケ五円之助】

第14話「左眼に気をつけろ POKER FACE」

脚本:櫻井圭記・神山健治 絵コンテ・演出:吉原正行 作画監督:西尾鉄也

 仲間とポーカーをするサイトー(大川透)。「俺は一度、腹の底から震えが来るような相手と一対一のスナイピングを経験したことがある。あのときほど、心理戦を怖いと思ったことはない」(byサイトー)。

 9課で3番目くらいに影が薄いサイトーさんの昔話。多国籍軍時代の少佐、イシカワ、バトーも。バトーが若い! っていうか、バトーくんって全身義体だから外見は老いないはずなのに。義体化の前なのか? でも、目は今と同じレンズ目だし。

 「あの雌ゴリラを見ておけ。ああいうのを本当のプロってんだ」(byイシカワ)。

 吉原・西尾コンビ回。滅多にされない少佐たちの昔話が聞けて面白かった。微妙に納得しきれないところもあるけど。『カイジ』とかと同じく、考えすぎた方が負けってことかな?

★★★★・

・オマケ
 巻末インタビューは、神山監督と、サイトー役の大川透さんとパズ役の小野塚貴志さんとの鼎談。どうせだったら、オーディオコメンタリーにして欲しかったな。『ミニパト』のコメンタリーは、神山監督の話面白かったし。

 どうでもいいけど、『タチコマの日々』のオープニングがMGMからユニバーサルピクチャーに!(笑)


【コロッケ五円之助】

◆ 2004年11月1日

第15話「機械たちの午後 PAT.」

脚本:櫻井圭記・神山健治 絵コンテ:布施木一喜 演出:竹下健一 作画監督:中村悟

 メンテナンス中のタチコマたち。メンテもそっちのけで、個別の11人事件についてあれこれ議論をする。個と集団、精神と肉体…、「シナプスぅ? そんな有機的なアナロジーはやめてよ」(byタチコマ)。機械たちの午後は長い。

 前半、延々タチコマたちの議論を見せるんだけど、タチコマ役の玉川紗己子さんの微妙な演じ分けの苦労が泣ける(笑)。ラボの赤服(研究員)、もっと活躍して欲しいな。「赤服が、赤福食べて…」(byタチコマ)。

 後半、タチコマのA.I.を開発した有須田博士(土師孝也)の話に。「あの〜、あなたはボクのお父さんですか?」(byタチコマ)。

 有須田博士、1話で終わらせちゃうのはもったいないなぁ。まあ、個別の11人とは関係ないんで、あんまり話数割けないってのはあるんだろうけど。もちょっと積み重ねがあったら、泣ける話になってたろうに

★★★・・

【コロッケ五円之助】

第16話「そこにいること ANOTHER CHANCE」

脚本:神山健治 絵コンテ・演出:橘正紀 作画監督:後藤隆幸

 今回の個別の11人事件について責任の押しつけ合いに終始する閣僚たち。疲れ切った茅葺総理の元に、荒巻と少佐が“ハブ電脳”というものについての報告にやって来た。

 ハブ電脳ってのは、ネットの中である種のバイアスを自らの電脳に誘導することによって、分散が本義であるネット上に共同体的なものを構築するってものらしい(よくワカラン)。

 リアルワールドでは、米帝に追従することで自らの利権を守る勢力(高倉官房長官)が内閣に居座っていることが総理の悩み。高倉官房長官。あの上岡龍太郎みたいな顔した眼鏡で白髪の人ね。今まで存在感なかったけど、ここに来て重要キャストに格上げか?

 自衛軍と米帝、日米安保とアメリカからの自立。う〜ん、押井さんっぽい戦後史のねじれにフィーチャーしたエピソード。アメリカの轍(ベトナム)を50年遅れで再現したようなトラウマ的な海外派兵の話が渋い。その戦闘に一兵卒として参加してたクゼの、不思議に魅力的な人物像の話に。なるほど、面白いなぁ。

 一人前の国になるだの何だのというノーテンキな言説が流行ってる今にこういう話やるのはホント渋いなぁ。カッコイイッス。アジア難民を受け入れて、共同体的ぬるま湯に緊張感を持ち込んで、国民的トラウマになるような戦闘体験を経て真の国防(含む外交)のかたちを議論の俎上にあげる。

 言ってることに全面的に賛成なワケじゃないけど、いっぺんこういう劇薬的な処方でもしない限り、日本にはマトモな外交センスが身に付かないのかもって思っちゃうね。ねえ、小室直樹先生。そういう意味では、この『2nd GIG』って、歴史シミュレーションとしては最高にスリリングで面白い。


 後藤隆幸さんの作監回で、茅葺総理がカワイく描けてました。まさか、総理に萌える日が来ようとは(笑)。

 「もっと早く気付くべきだったわ。茅葺総理って、課長のタイプそのものよね」(by少佐)。

★★★★・

・オマケ
 ゲストは、イシカワ役の仲野裕さんと、タチコマ役の玉川紗己子さん。

 仲野さんの息子さん(24才)は、マンガ版からの『攻殻』ファンらしくて、仲野さんの演技の採点をしてくれるそうな。彼、オタクだな(笑)。

 あと、TV版の『攻殻』は業界でも人気あるそうで。そういや、DVDも売れてるみたいだし、ファンとしてはウレシイ限り。

【コロッケ五円之助】

◆ 2004年12月6日

第17話「修好母子 RED DATA」

脚本:菅正太郎 絵コンテ・演出:川崎逸朗 作画監督:浅野恭司

 台湾でクゼの過去を調べる少佐。ロウ(狼、朗、浪)と呼ばれ、地元難民のカリスマ的指導者になっていたという。時間が余って街をうろつく少佐は、たまたま助けた少年チャイ(高山みなみ)につきまとわれる。「オレもロウみたいに全身義体になる予定なんだ」(byチャイ)。

 こまっしゃくれたガキがいっちょ前のマフィア気取りでロウの手法を使ってコカインを捌いてて、本チャンのマフィアとトラブルに。少佐とガキの取り合わせが、まるでサザエさんとカツオみたい。耳引っ張られてるし(笑)。メーテルと鉄郎、…ではないな。「日本に行ってメガテクボディ社の機械の体をもらうんだい!」。

 「アンタ、電脳化もしていないようだけど、どうやってロウの思考と並列化したの?」、「簡単さ、彼と話せばそれでみんな好きになる」。

 クゼ(=ロウ)って、単に人好きのするいい人ってこと? 実はメチャクチャアナログな話なだったりして。並列化だスタンドアロン・コンプレックスだと、少佐たちが深読みし過ぎとか? もしそうだったら面白いなぁ。

 チャイみたいな難民たちは、日本でも台湾でも邪魔者扱いだけど、たくましく生きてるってのが描写される。クゼは、難民たちに何を見出したんだろう。電脳もウイルスソフトも何も関係ない、難民たちの生身の人間同士の濃厚な共同体ってのがキーワードなんではないかと、勝手に予想。それこそが、21世紀の日本がなくしてしまった“匂い”だったのだ、と。20世紀博へようこそ!(@オトナ帝国)

 思わずチャイ少年を助けちゃう少佐が、「私にもこんな感情が残っていたなんて」っていう話。マフィアの大ボスが、納谷悟朗さんだった。

★★★・・

【コロッケ五円之助】

第18話「天使の詩 TRANS PARENT」

脚本:神山健治 絵コンテ:吉原正行 演出:河野利幸 作画監督:芝美奈子

 バトーと少佐は雪の降るベルリンで、国際テロリスト、“天使の羽”を確保するための多国間の協同作戦に参加する。光学迷彩で姿を消し、街を俯瞰するバトー。と、バトーは、ある車いすの少女(林原めぐみ)と目が合う。「何なんだ、あの娘。オレの存在に気付いてるのか?」。

 イメージは、ヴィム・ヴェンダースの『ベルリン 天使の詩』ッスね。話自体はほとんど関係ないけど。有名なカットとまんま同じカットも。コロンボは出ません(笑)。

 神山さんが、ファーストシリーズの頃からやりたくて寝かせていたっていうプロット。それだけあって、いかにも神山さんらしいリリカルなお話。でも、結構好きよ。またしても、バトーくんの意外なセンチメンタリズムがいいんだよね(もう意外でもないか?)。少佐に怒られるバトーくん、萌え〜(笑)。

 ラストがまたイイ。「パパ、天使は今日、何をしに行くの?」(byテレジア@林原めぐみ)。

 背景美術が素晴らしく良かった。夜のベルリンが綺麗。原画に安藤雅司さん、井上俊之さん、濱洲英喜さん。

★★★★・

・SUPPLEMENT
 ゲストは田中敦子さんと大塚明夫さん。

 電脳とか義体とか、『攻殻』的ジャーゴンがゲストのキャストさんにはイマイチ理解できない世界だって。確かに、ファンやレギュラーキャストにはもう常識だけど、ホントなら一から説明がいるよね。


【コロッケ五円之助】

◆ 2005年1月10日

第19話「相対の連鎖 CHAIN REACTION」

脚本:神山健治 絵コンテ・演出:布施木一喜 作画監督:新野量太

 クゼは、難民を急速に組織化し武装化していった。国民はまだ楽観している状態だが、内調は次なる布石を狙っている。9課は、まずクゼの身柄確保を最優先にする作戦を立てる。

 日米安保をめぐる政治と利権のドロドロ、ゴーダ率いる内調の仕掛ける反難民ナショナリズムへの思想操作、クゼの人並みはずれたカリスマに引きつけられる難民たちの独立運動。いや〜、対立構造がはっきりしてきて、いよいよ本格的な戦いが始まった感じ。ワクワクする。

 今回、決してミスなんてしないプロ中のプロの少佐が、ミスを犯しちゃうってところがポイントだよね。クゼの電脳に潜った少佐、「私はあいつを知っているぞ!?」。急襲したアジトにクゼはいない上に待ち伏せに遭い、新人ひとりが殉職するという体たらく。「少佐、どうなってんだ!? こんなザマァ、初めてだぜ!」(byバトー)。

 いや〜、毎回言ってるけど、こんなご時世にこんなテーマのドラマ、よくやるよな。まあ、ある意味隙間産業的なCS放送でのオンエアだから為し得たってのもあるんだろうね。アニメはもちろん、実写ドラマや映画でさえこんな政治色の強いストーリー観たことないよしかも、ちゃんとエンターテイメントとして抜群に面白い! これはスゴイことッスよ、旦那。

★★★½・

【コロッケ五円之助】

第20話「北端の混迷 FABRICATE FOG」

脚本:神山健治 絵コンテ:松本淳 演出:竹下健一 作画監督:中村悟

 クゼが択捉にいることをつかんだ9課は択捉に飛ぶ。課長の情報によると、ロシアのマフィアが択捉でプルトニウムの取引を予定しているという。クゼの目的はこのプルトニウムだと目星を付け、少佐たちは地元のやり手ハッカーを訪ねる。

 クゼのカリスマは、その頭に宿した壮大な誇大妄想が源泉だ、と。「アドレナリンの分泌量は常人の致死量に達していた。クゼはすでに、“聖域”に入っていると考えるべきだろうな」(by少佐)。それがハブ電脳を介して難民たちに“感染”して、魅入られていく、と。とはいえ、クゼは理性を失ってるワケじゃなく、それどころか天才的なハッキング技術と冷静な戦略に基づいて合理的に行動してるってのが面白い

 構図としては、最強のナチュラル・ボーンな天然系英雄(=クゼ)と、英雄を自らの手で作り出すことを夢見ている暗い元妄想少年(=ゴーダ)ってのが対比されるんだろうね。

 今回、『イノセンス』と同じく択捉が舞台なんだけど、『イノセンス』より原作マンガの猥雑な電脳犯罪都市のイメージ(『ニューロマンサー』のチバ・シティみたいな)。

 元ロシア軍基地の地下施設に潜入したバトーたちを待っていたのは、陸自のアームスーツ。またしても内調の後手を踏んだ9課。ついにクゼと対峙するバトー。つづく! 

 があぁ、続くんか〜い! 気になる〜! 最初は反発してた難民の若いメンバーが、クゼの理路整然とした説明に次第に引き込まれていくのが印象的。男の子って、こういうスケールのデカい夢語られると弱いのよね〜(笑)。惚れます。


今回の名言:「オレは単なるテロリストだ。ただ、今は少しヒロイズムに酔ってはいるがな…」(byクゼ@小山力也)

★★★½・

・SUPPLEMENT

 今回ゲストは、トグサ役の山寺宏一さん、ボーマ役の山口太郎さん。

 山ちゃんの話は普通に面白いなぁ。ボーマ役の山口さんは太ってなかった。キャラの話から、ストーリーの話までポイント押さたトーク。ラストのオチは綺麗すぎるくらい落ちてた。山口さん、お見事!(笑)

【コロッケ五円之助】

◆ 2005年2月11日

第21話「敗走 EMBARRASSMENT」

脚本:神山健治 絵コンテ・演出:吉原正行 作画監督:小西賢一

 択捉の地下基地跡でグゼと対峙するバトー。動じないクゼ。「PKF仕様の義体を過信してるのか!?」(byバトー)。

 吉原さんコンテ演出回。作画陣も豪華。

 クゼとバトーのアクションは、さすがに気持ちいいね。もうちょっとケレンがあってもいいけど。CGのタチコマの動きも、さらに滑らかな動きになってない?

 アクション的には気持ちいいんだけど、9課としてはさらにストレスのたまる展開になってる。「もはや完敗と言っていいだろうな」(by荒巻)。

 今までもそれとなく匂わされてたけど、クゼの正体が少佐の知ってる意外な人物だったってのがイイ。もちろんセリフには出して言わないんだけど。いや〜、あの話がこんな重要な形で本編と繋がってたとは。渋い!

 クゼの偽装船と海保との映像は、例の北朝鮮の偽装船のアレ。この辺も、現実の映像を模倣することにより観る者にある種の感情・認識を共有させ、その結果虚構(ドラマ)にかなりの精度でほぼ共通のリアリティをもたらすことに成功している…、ってのはさすがに出来すぎな解釈?(笑) まあ、こういう不穏な話がリアリティを持っちゃう今の情勢ってのもいや〜んなものがあるけどね。ホント良く作ったよね、こういう話。

 もう一人の黒幕、上岡龍太郎似の官房長官、まだ動かないね。いやいや、こんなややこしくなりそうな話を、きちんと判りやすく見せる手腕はスゴイ。さすがにセリフの分量がかなり多いけど。話はちゃんと、“Stand Alone Complex”というモチーフをなぞってるし。

 ラストの、ブラックアウトしていく長崎の街のシーンは、展開的に鳥肌モノ。カッコイイ。

★★★★・

【コロッケ五円之助】

第22話「無人街 REVERSAL PROCESS」

脚本:佐藤大・神山健治 絵コンテ・演出:川崎逸朗 作画監督:後藤隆幸

 今回のプルトニウム取引が内調のシナリオだとすると、クゼはプルトニウムを入手していない、と少佐は読んでいる。その仮定にそって9課は作戦を立てる。

 事態は確実に難民との戦争に向かって進んでて、9課はまだまだゴーダの後手を踏んでるってのが描写されてる。少佐も、クゼの狂気に当てられてちょっといつもと違うってところが気になるし。

 前回がアクションと状況描写で魅せた回なら、今回はセリフ芝居で魅せる回。えんえんバトーとゴーダが喋ってる。でも、押井作品ほどペダンチックな物言いになってないんで、(押井ファンにとっては)とても理解しやすいよ。

 ゴーダが生みだした偽りの英雄である“個別の11人”が、クゼという不確定要素によってゴーダの手を離れつつあるんじゃねーかと指摘するバトーくん。この辺のやり取りは、やっぱりニヤリとしてしまうね。やっぱりゴーダは、思春期の肥大化した自我をもったままオトナになっちゃった存在だ、と。

 ゴーダが、「私が犯人なら」と提示した“個別の11人ウイルス”の最後の発症因子は笑った。「きさま、人が悪いにも程があるぞ」(byバトーくん)。いや〜、なんだかスゴいんだかスゴくないんだか(笑)。みうらじゅんもビックリ。ゴーダってホント良いキャラ。

 作画監督は、茅葺首相係の後藤隆幸さん。

★★★★・

・SUPPLEMENT

 ゲストは、荒巻役の阪脩さんと茅葺首相役の榊原良子さん。

 茅葺首相、声が榊原さんだから、もっとバリバリのやり手で9課も翻弄されるくらいのキャラかと思ってた。でも実際は、理想は持ってるけど古狸にいいようにあしらわれてるってなキャラだったのは、最初観たとき意外だったなぁ。

 電通(電脳通信)のシーンは絵に口パクがない分、自分の呼吸で芝居できるから好きだと、阪さん。なるほど〜。

【コロッケ五円之助】

◆ 2005年2月28日

第23話「橋が落ちる日 MARTIAL LAW」

脚本:神山健治 絵コンテ・演出:河野利幸 作画監督:浅野恭司

 核を楯に独立を宣言をした出島の難民たち。閣議では、官房長官(武藤与志則)の主導で軍の出動が決定される。茅葺首相は、荒巻の助言で国連の関与を要請し、軍出動まで2日の猶予をひねり出す。

 今度は、クゼが老人相手に語る語る。「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる」(byクゼ)。上部構造と下部構造。(電脳の)ネットも下部構造となり、上部構造へシフトする準備段階へ来ているという。すみません、判りませんよクゼさん! レインみたいなこと言わないでださい。

 いよいよ『2nd GIG』も佳境って感じ。ネットを断線されてスタンドアローンになった難民たちが、クゼの考えを離れて暴走してしまう。9課もそれぞれスタンドアローンに。スタンドアローンになってこそ、模倣者じゃないオリジナルの強さが試されるってところか。

 茅葺首相対高倉官房長官の政治劇の行方も気になるね。今までいいようにされてた茅葺首相の反撃が始まりそう?

 とりあえず、緊張感持ったまま続く。

★★★½・

【コロッケ五円之助】

第24話「出島,空爆 NUCLEAR POWER」

脚本:神山健治 絵コンテ・演出:橘正紀 作画監督:新野量太

 局所的に開かれた戦端は次第に広がりを見せる。そして出島に、無人攻撃ヘリ、ジガバチが投入される。少佐たちも決死の覚悟でプルトニウムを持って出島に降下。

 いよいよ戦闘が始まって、いやがおうにも盛り上がるね。市街戦ですよ市街戦。

 一方で、出島を取り巻く状況が胡散臭い流れに。衛星の映像とかを前に、タチコマのおしゃべりでこの辺の説明をしちゃうのは上手いなぁ。いやあ、なんかスゴイ話になってきたね。「すべてを極秘裏にリセットしようとする思惑を持つ者たち」(by荒巻)と、米帝の思惑。やっぱり最後に核が出てきちゃうのね。

 整備班のプロトくん(杉山大)、ご退場。カワイイ顔の青年だっただけに残念。

 とりあえず、話は続いてるんでコメントとか特に書くことないんだけど、ちゃんと面白いです。「次巻を待て!」、って感じで。

★★★½・

・SUPPLEMENT

 今までのゲスト対談の未公開部分のダイジェスト。

 神山監督曰く、現場のスタッフとかが言うには、クゼは格好良すぎてワカラン(感情移入しにくい)けど、ゴーダは判る、と。ゴーダは、厨房っぽい妄想を持ったままオトナになっちゃったキャラだからねぇ。

 ゴーダはホント良いキャラだよ。

【コロッケ五円之助】

◆ 2005年4月4日

第25話「楽園の向こうへ THIS SIDE OF JUSTICE」

脚本:神山健治 絵コンテ・演出:松本淳 作画監督:中村悟 メカ作画監督:寺岡賢司・玄馬宣彦

 衛星から、米帝の原潜に核攻撃の準備を見て取ったタチコマたち。少佐はついにクゼと接触するが、そこに海自のミサイル攻撃が開始される。

 明らかに戦後史のカリカチュアとして描かれてる今回のTVセカンドシリーズなんだけど、やっぱり最後は核にたどり着くのね。まあ、ある意味ここ以外にたどり着く結末は無いのかもね。

 クゼの“革命”ってのが本人の口から語られるんだけど、判ったような判らんような。言葉通りの意味だとすると、意外とベタな内容だ。「人の上部構造への移行、硬化したシステムを捨て、人とネットとが融合するということだ」(byクゼ)。

 僕が予想したのは、逆にネットや電脳を介さない生の共同体の再評価みたいなところに落とすと思ってたんだけどね。結局クゼの出発点は、人間の心の弱さというか流されやすさへの落胆だったのね。

 「どうだ、オレと一緒に来るか?」(byクゼ)。

★★★★・

【コロッケ五円之助】

第26話「憂国への帰還 ENDLESS∞GIG」

脚本・絵コンテ:神山健治 演出:吉原正行 作画監督:西尾鉄也

 クゼの案を容れた少佐は、出島の難民たちのゴーストをネットに避難させる指示をタチコマに与える。「ねえみんな、難民の記憶をネットに上げたところで、本当に難民のゴーストが保持されていると思う?」(byタチコマ)。

 「クゼ、お前鶴を折れるか? それも左手だけで…」(by少佐)。少佐とクゼとが、孤独だった過去という共通点を持ってることが描かれてる。クゼが鶴のことから少佐を思い出したかというと、どうも違うっぽいんだけど。

 タチコマといいバトーくんといいプロトくんといい、みんなリリカルだぁ。とくに、少佐(とクゼ)がこんな一面を見せるってのは、『攻殻』ファンにとってはかなり意外。とはいえ、このリリカルさこそが、神山『攻殻』たる証だと思うな。今だから判るけど。見終わった印象も、なんだかもの悲しい喪失感が漂う。でも、悪くないです。予想してたラストとは違った印象だったけど、こういうのも味わいがあってイイね。しんみり。

 あと、今までお飾り首相だった茅葺首相が、ラストのラストで格好良かったのが救い。愛国を騙る売国奴は連行され、茅葺首相の目指す一国独立はいばらの道だ。

 ラストの桜の24時間監視は、マンガ版へのオマージュ。

★★★★★


 第1シリーズの成功を受けて、満を持してのセカンドシリーズ。

 日米安保とアジアでの労働搾取によって築かれてきた日本の平和と繁栄、外交をアメリカに丸投げしてきたことで、アジア問題を外部化してきた日本のツケ。渋い舞台設定だねぇ。本当の愛国は、自国に対する根拠のない自信を育むことじゃなく、問題点を直視する批判的精神にこそ宿る。

 戦後史テーマは押井さんっぽさが出てたけど、人間ドラマ的には各話レビューで書いたとおり、結果としてかなりエモーショナルなラストになってた。これぞ神山節って感じ。今回は、英雄の孤独感というか、天才の孤独感というか、そういうところの哀しさってのがポイントね。常に人を引きつけるカリスマを持っていながら、誰ひとりとして根っこの部分では解り合えない。

 作画は、アクションシーンに不満のあったファーストの欠点を『イノセンス』組が埋めてくれたんで、全方位で文句のない出来だったね。キャラ作画も、セカンドの方が良くなった気がする。あと、西尾鉄也さんが担当したオープニングアニメもかなり格好良かった。

 『ライ麦畑』なファーストも好きだったけど、より政治色が強くなって、より現代への視点が強調されたセカンドはかなりの意欲作だと思う。こういうの大好きなんです。あと、大事なことだけど、きちんとエンターテイメントとして面白いってところがエライ。

総合評価
★★★★★

【コロッケ五円之助】