静岡県企画部情報政策室主査 河井 孝仁
● はじめに
静岡県は、東海地震による大きな被害が予想され、災害時の情報収集等に、常に身近にある携帯電話によるメール及びwebの活用が有意義であると考慮していた。
そのため、平成12年7月から携帯電話向けホームページを作成し、情報発信を開始。その際、必ずしも災害情報に限らず、普段から利用してもらえる内容を心がけ、観光情報、県民だよりお知らせ情報、富士山画像など多様なコンテンツを掲載した。こうした努力により携帯電話及びPHSの全社から公式コンテンツへの採用を受けることとなり、日々、情報は充実していった。
しかし、災害時に大きな影響を受ける高齢者にとっては、携帯電話は必ずしも一般的な道具ではない。
高齢者や、出先で音声情報が利用できない聴覚に障害のある方が、こうして発信された情報を的確に利用するとともに、相互のメール連絡を十分に行えるための方策が必要となった。
静岡県情報政策室では、当時、実施していた「静岡県一万人インターネットスクール」を参考に「講習会」の開催ができないかの検討をはじめた。
しかし、十分に予算的な裏打ちはない。
当時、担当者であった私は、携帯電話各社を訪問し、講習会の趣旨を説明、協力を依頼。各社でも社会貢献の意義も含め実施に前向きとなった。
以上を踏まえ、県は「静岡県モバイルIT推進会議」を県及び携帯・PHS各社により組織、講習会実施の主体とすることとし、平成13年2月からの講習会開始を可能とした。
● 「つなぐ」講習会
講習会を地域に根づいたものとするため、情報化をミッションとするNPOとの協働により講習会を実施することを検討。県内3つのNPOを訪問するなどして、それぞれのNPOにとっても意義あるものとして講習会を位置づけられるよう協議を行い、協力事業として成立した。
これにより、幅広い参加者や、携帯電話各社からの講師を支援する講習補助者の確保にも役立った。
さらに、多様な人が互いを知り合いながら講習を行うことが、講習を「楽しく」「意義あるもの」にすると考え、聴覚に障害のある方についてもあえて別立てとせず、他の方と同じ場での講習を行った。参加した聴覚に障害のある方からは、当初、不安の声もあったが、講習終了後には、「私たちが何に困っているのかを知ってもらうことができてよかった。」との手紙を戴くなどの成果もあった。
また、高校生を中心とする若い方を講習補助ボランティアとして募集、県内高校長あてには、講習会の趣旨及びボランティア募集についての文書を発送した。
これには、延べ20人以上と予想以上の高校生の応募があった。ボランティア募集の広報を見て学校の了承を得て単独で参加される方や、協働NPOの紹介で参加される方、高校福祉科として先生の引率で参加される方など。
講習会場では、高齢者や聴覚に障害のある方が若い高校生に機器の動かし方を習いながら、双方とも笑顔で話している様子が見られた。 静岡県携帯メール&インターネット講習会は、気がつけば、いくつもの存在を「つないで」いる。講習参加者を情報につなぐことはもちろんであるが、NPOと企業と行政をつなぎ、聴覚に障害のある方と一般参加の方をつなぎ、ボランティアの高校生と高年齢者の世代をつなぐことともなった。静岡県携帯メール&インターネット講習会は、単なる講習に終わらず交流の場となったことが実感された。
(写真:携帯メール&インターネット講習会 略)
● 今後の展望
「携帯メール&インターネット講習会」は、3年度目を終え、延べ27市町村、参加者約570名により実施してきた。
当初は、県情報政策室が事務局を務め、実質的な事務運営を行いながらNPOとの協働により事業実施をしてきたが、平成14年度には、会場市町村を共催とすることで、講習会運営に携わっていただいた。
直接、市民と接する事業としては、県という中間自治体より先端自治体である市町村が担うことが適切であろう。今後、本講習会を継続する場合には市町村の役割を大きくしていくことが望ましいと考える。
一方で、協力事業として取り組んでいただいたNPOが個別に携帯事業者と協働し、行政の枠にとらわれず、それぞれのミッションに応じた講習内容とする方向性もある。静岡県モバイルIT推進会議としては、そのためのコーディネーターとなることも考慮している。
実施体制についての展望は前述のとおりであるが、講習内容について今後の可能性を述べれば、従来の「個←→個」のメール、「公共→個」のweb情報収集についてに加え、それぞれが持つ情報を地域や、より広い”場”に発信していく「個→公共」のベクトルを持った、携帯情報発信リテラシー講座とでも云うべき講習内容を検討したい。
この点については、静岡県は平成15年8月から「地図活用地域プラットフォーム〜どこどこ・ぷらっとふぉーむ」を運営し、携帯電話からも見られる地域開放型の地理情報システムをスタートさせる。この「どこどこ・ぷらっとふぉーむ」はNPOや地域のグループに無償で貸与され、それぞれがミッションに応じた情報を登録することで、地域があらためて見直され、地域への愛着にもつながることが期待される。
このシステムの活用については、利用希望者によるワークショップの実施を検討している。ワークショップが十分に機能すれば、まさに「個」→「グループ」→「公共」というベクトルをもったものになるだろう。
行政が、公共を支える情報の「場」づくりを担う。これもまた、そうした試みとも考えている。
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『月刊 視聴覚教育 2003年8月号』