日本NPO学会第5回年次大会における報告概要(報告)
河井孝仁(静岡県庁/特定非営利活動法人パートナーシップ・サポートセンター)
【報告趣旨】
静岡県がNPOと行政の協働の一環として実施している「NPOアイデア提案事業」の概要について、NPOからの政策提案という先進性に基づく積極面及び、Webという開かれたツールを利用しながら十分な事業展開に至っていない現状等の消極面等を紹介した上で、特に情報化を活用した部分に注目し、「政策協働市場」の可能性について分析を行う。
【キーワード】
NPO・アイデア提案・政策提案・政策提言・アドボカシー・政策連携・政策協働市場・政策データベース・地域情報化・インターネット・電子掲示板・電子市民会議室・Web・WWW・ネットワーク・公共経営・NPO評価
【静岡県NPOアイデア提案事業の概要】
◎県は、NPO等から施策アイデアの提案を募集。
◎希望するNPO等は、インターネットを利用して県ホームページに施策アイデアを提案。
◎提案された事業はWebに掲載され、県民から提案事業に関して意見の募集を行う。
◎上記を経て、提案事業は県NPO推進室から各事業担当部局に振り分けられる。
◎各事業担当部局は、県総合計画との整合性等を踏まえたうえ県事業として実施する可能性について検討を行う。
◎検討結果は「実施の必要性を認める」「既に施策化されている」「県施策化の必要を認めない」に区分。
◎各部局が県事業として実施の必要性を認めたものは、財政担当との調整を行い、県全体の中での施策優先順位についての検討を経たうえ、予算化を図る。
◎予算化された事業について、各部局はNPOの自主性・ 先進性を尊重しながら、NPOへ委託するなどの方法により事業を実施する。
◎事業実施後には事業成果の検討を行い、検討結果もホームページ上に掲載。
【分析の視点・結論への期待】
●「静岡県NPOアイデア提案事業」と、行政による地域情報化において注目されている「電子掲示板」「電子市民会議室」(藤沢市市民電子会議室・三重県eデモ等を主な参考事例として)との異同を分析し、より限定した手法・内容をとったことによる利点・難点の指摘を行う。
●「静岡県NPOアイデア提案事業」が「県民からの提案事業への意見募集」等の"仕掛け"を持つことにより、単発的(静的)な「アドボカシー」(政策提言)に止まらない、動的な「政策形成」につながることへの可能性と現状での課題について分析する。
●「静岡県NPOアイデア提案事業」に基づく施策実現と、従来から市民代表としての機能を持つ地方議会との関係について、「政策提案」、「政策決定」、「政策討議」等のタームを利用して分析、結論を得る。
●「静岡県NPOアイデア提案事業」が止まっている「NPO発信・行政(県)受信」という施策発想を飛躍させ、プリンシパルとしての市民、エージェントとしての行政、企業、NPOが「政策」という土俵で出会う場としての「政策協働市場」を構想する。
●「政策協働市場」が社会資本としての「政策動的データベース」としても活用しうるための条件、課題について、インセンティブとしての「地域通貨」の活用を含めた可能性を提案する。
●「静岡県NPOアイデア提案事業」を飛躍発展させた「政策協働市場」において、政策提言の「質」を、それぞれの参加者、閲覧者が「判断」し、さらには意見を投げかけることにより、Web上の「市場」が、一元的基準に依拠しない「NPO評価の場」となりうることへの可能性について検討する。
【参考文献抄】
河井孝仁「NPO 評価にかかる「場」概念の明確化について」(静岡大学人文社会科学研究科修士論文)2001
河井孝仁「電子自治体化への志向と課題−静岡県を題材として」(『都市問題』2002年8月号 東京市政調査会)
(社)行政情報システム研究所『公共サイバースペースにおける双方向型情報交流手法に関する調査研究報告書』2002
J.ハーバマス『公共性の構造転換−第2版−』(細谷貞雄・山田正行訳)未来社 1994
鷲田豊明『環境評価入門』勁草書房 1999
野方宏「企業のエイジェンシー理論について−その批判的検討−」(『神戸外大論叢』第36巻第4号 1985)
安田雪『ネットワーク分析』新曜社 1997
山岸俊男『信頼の構造』東京大学出版会 1998
E.S.レイモンド『伽藍とバザール』(山形浩生訳)光芒社 1999
上山信一『政策連携の時代』日本評論社 2002
R.レッシング『コモンズ』(山形浩生訳)翔泳社 2002