ホ・ジノ監督オリジナルインタビュー

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「八月のクリスマス」監督インタビュー1


ホ・ジノ監督

☆「アジア映画フォーラム」で、「八月のクリスマス」のホ・ジノ監督にオリジナル・インタビューをしたものの転載です。
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ホ・ジノ監督インタビューから(前) 99/03/01 06:36     

★Q1:「8月のクリスマス」拝見させていただき、哲学的なものを感じました。ところでホ監督は延世大学の哲学科出身だそうですが主に何哲学について勉強されたんですか? また、実学志向が強い韓国においてとくに哲学を勉強された動機というのは?
★A:うーん、実は大学に進む時、特に行きたい学科てなかったんですよ。そんな時、チェ・イノの「広場」という小説を読んだんですけど、その小説の主人公が哲学科の学生だったんです。それでなんか哲学科がかっこいいなあとおもいまして(笑)。
 特に哲学科を選んだ理由ってないんです。大学在学中も所詮学部生ですから、そんなに深く哲学の研究をしたいうわけではなかったですし、ま、そこそこ遊んでましたしね。そんなに真面目な学生じゃなかったんです。好きな哲学者ですか? 強いていうならばイギリスのビトゲンシュタインかな。

★Q2−1:今米韓通商協議でアメリカ側が「スクリーン・クウォータ制」の撤廃を要求したようですが。
★A:その「スクリーン・クォータ制」の撤廃に反対し、昨年の12月12日、映画人が集まってデモを行い、非常対策委員会も結成しました。私もスクリーン・クウォータ制反対を訴える文化分科委員をつとめました。ダンサー、小説家、詩人、ミュージシャンなど、各分野の文化人と協力しあって公演をしたんです。
 現在、映画は韓国文化の中心になっている、と考えます。以前そういう役割をしてきたのが小説などの文学であったわけで映画はその従属物に過ぎなかったんですが、今では映画が韓国文化をひっぱっていく重要な媒体になっているのではないか、と思うんですね。
 それなのに韓国の文化、つまり韓国映画が「スクリーン・クウォータ制」撤廃によって滅びてしまうのは実にやるせないことだと、各方面の文化人達が集まって訴えたわけなんです。自国の文化というのは大変大切なものですから。そして私の意見なんですが、「スクリーン・クウォータ制」というのは“韓国映画を守る”為の政策というよりもむしろ“アメリカ映画の独占を防ぐ”役割を果たしているのではないか、と思うんです。資本主義社会において「独占禁止法」という法律があるようにアメリカ映画の市場独占によって韓国映画の製作が苦境に陥ることを防ぐための無くてはならない制度だと思うんです。
 「スクリーン・クウォータ制」は絶対に必要であると思います。

★Q2−2:日本では「スクリーン・クウォータ制」の様なものがないため、そうなのかわかりませんが、日本で「日本映画が好きだ」というとちょっと変わった人という風にみられるのですが。でも、韓国でも「韓国映画が好き」というとやはり・・・
★A:そうですね。韓国でも似たような感じです。韓国の映画市場の占有率が以前は16、7%程度だったですが最近23%まで上がってきたんです。観客が韓国映画を見るようになってきてるんです。

★Q:監督も貢献されたんじゃないですか?
★A:ハハハ。アメリカ映画が世界を席巻している中、韓国は自国の映画が発展している国ではないかと思います。 それでも日本における自国映画の占有率は高い方だと思います。
最近落ち込んだと言ってもそれでも30%位だと聞きました。日本では大手の映画会社、松竹ですとか、東映、東宝があってそれぞれ映画館を持ってますよね。韓国ではそうではないんです。大衆映画の場合、配給が大変重要ですよね? もちろんどんな映画をいかに作るかも重要ですが配給をどうやって行うかが大変重要なわけなんです。なのに韓国では配給の能力がある会社がない。 「女高怪談」(1998年作品)という韓国映画を例にお話してみましょう。あくまでも例なんですが。この作品は韓国で人気が高かった作品なのに四週目位で上映打ち切りとなり、あるハリウッド映画が代わりに上映されました。そのハリウッド映画には人が入らなかったのにも拘らず、なんです。
 これはなぜかといいますと、ハリウッド映画には「タイタニック」とか「ゴジラ」というヒット大作ばかりでなくそれほどヒットしない、有名でない作品ももちろんありますよね? だからもし、そういう有名でない作品を上映しない場合は“「タイタニック」を上映させてあげないよ”というような抱き合わせ商法的な‘配給論理’がまかり通ってる。そして韓国ではビデオの版権がとても高いんです。「8月のクリスマス」の場合でも4億ウォンくらいでしたが。で、そうしたヒットしない作品も映画館での上映の実績を作ることによってビデオの版権を高くしよう、というわけなんです。そういうハリウッド映画のために「女高怪談」が追いやられてしまった、というわけだったんです。
 なのでもし、韓国で「スクリーン・クウォータ制」がなくなってしまえば韓国映画が苦境に立たされることになってしまうのではないでしょうか。つまり(「スクリーン・クウォータ制」がなくても問題がないといえる)日本と韓国の違いは配給のシステムのためなんです。韓国では配給を中小企業が行っており、日本では大手映画会社が行っている。

★Q:ところで日本だと興行成績がいい場合、予定を延長してロングラン上映をしますが、韓国ではロングランをしないんですか?
★A:いや、しますよ。「女高怪談」もロングランをしました。
★Q:それでも途中で打ち切られてしまった・・・?
★A:いつもそうだというわけでなくそういうケースも実際ある、という話です。
「八月のクリスマス」監督インタビュー2


 「八月のクリスマス」より  写真提供:パンドラ

ホ・ジノ監督インタビューから(中) 99/03/01 06:38

★Q3−1:小津安二郎がお好きだと聞きました。小津監督は平凡な日常生活のエピソードの積み重ねが上手い監督ですが、映画を拝見してホ監督もその点において似ているな、思いました。
さて小津監督は「ローアングル」と呼ばれる独特な手法で映画をとりましたが、ホ監督もそういう手法をとりいれてみたいと思ったことはありますか?
★A:次回作で、ということですか? うーん。
(「ローアングル」については)よくわからないです。私が小津監督が好きなのはそういう(日常生活のエピソードの積み重ねかたの上手さ)理由のためです。日常生活を繰り返す中にもキラッと光る瞬間がありますよね? これからも私自身、そういう瞬間を描いた作品を作っていきたいです。日常生活の中のささいな出来事に秘められた深さ、とか美しさとか。小津作品は難しいストーリではなく、一日一日を生活していくというだけの話なのに感動させられ、人生についてとかについても考えさせられます。ストーリーは本当に単純なのに深みがある。

★Q3ー2:「東京物語」、「秋刀魚の味」をご覧になったそうですが、その後なにかご覧になりましたか?
★A:福岡アジアフォーカス映画祭で「晩春」を見ました。他にも黒沢作品も見たんですけど。
 あの「晩春」の中で足の爪を切る場面がでてきますよね?「8月のクリスマス」にも足の爪を切るシーンが出て来るんですけど(自分との)共通点が見つけられてすごく嬉しかったんですよ。

★Q3−3:ではあの爪を切る場面が共通したのは偶然だったんですか?
★A:ええ。そうなんです。映画を作り終えた後「晩春」をみたわけなんですから。「晩春」で爪を切るシーンは一瞬ちょっとだけ出て来る場面に過ぎないのにそのシーンを見つけた時は(自分と小津監督の)共通点を見つけたようで本当にうれしかったんですよ(笑)

★Q4−1:日韓の文化交流がこれからより活発になると考えられます。ホ監督は日本の映画とかドラマを見たことがありますか?
★A:この間「HANA-BI」が正式に韓国で公開されました。 正式にこの作品が公開される前にはビデオで岩井俊二の作品や「幻の光」なんかを見たんですけど、それもちゃんとしたビデオではなくて画質なんかがあまりよくないものでした。まあ多分海賊版だとおもうんですけど。
最近韓国でも日本文化に対する関心が高まっています。チョ・ヨンウォンという日本への留学経験もあり、小さい時から子役としても活躍してた俳優がいるんですが、彼が日本の映画を韓国に紹介する仕事をしてます。岩井俊二、周防正行、北野武・・・などの作品
を紹介したそうです。こうゆうことからも韓国の若者の間で日本映画の関心が高まっていることが分かると思います。

★Q4−2:それにも拘らず、正式公開された 「HANABI」や「影武者」の評判は芳しくなかったとか?
★A:いや、評判は良かったんです。ただ観客の入りが悪かったのは、韓国の独特の配給制度に問題があったせいだと思われます。
「HANA-BI」は大規模な映画館12館で上映されました。私の聞いた話によると日本での公開時「HANA−BI」は2館で上映されたとか。韓国での上映時に大きい映画館で、しかもあちこちで上映されたため観客が分散してしまったんですね。「影武者」や「HANA−BI」はむしろそういう風に商業映画やハリウッド映画のように大々的に上映されるのではなくアートシアターのようなところで長く上映する形式をとればよかったのではないか、と思います。その上、韓国では大規模な映画館で上映するとなると宣伝費がかかるんです。日本と違って韓国では新聞広告を沢山うたなければならないので費用もかかるため長い間上映するのが大変なんです。
それでも初めてのわりにはまずまずだったのではないか、と私は思います。日本映画の関心が高くなっているとはいっても、ハリウッド映画ほどには及ばないわけですし。今は映画祭で賞を取った作品だけが上映されてますけど、これから段階的に公開の基準も変わっていきますよね。噂では岩井俊二の「ラブレター」が公開されれば大ヒットするのではないか、と言われてますし、だんだん観客数が増えていくのではないかと思います。韓国の市場占有率もアメリカ映画、韓国映画、日本映画、という順番になるのではないか、と予測してます。

★Q4−3:是非一緒に映画を作りたい、と思わせる日本の俳優やスタッフがいたら教えて下さい。
★A:ええ、そうですね。まだ具体的に考えたことはないのですが、いますよ。うーん、北野武かな?(笑)もちろん彼を使いたがっている人は多いんですけどね。今回の夕張ファンタスティック映画祭でも日本の俳優を何人かみたんですが、きれいで魅力的でした。
日本映画受け入れに関し韓国では、日本映画は暴力的で扇情的だという先入観があるようです。皆がそう思っているわけではなく特に年配の方々が特にそういう先入観をもっているんですけど。
 でも、日本映画が解禁されて昔の映画や韓国で行われた日本映画祭で上映された作品、例えば小津安二郎ですとか溝口健二とかが韓国で公開されればいいのではないかと思います。日本映画は韓国映画の根っこ、また柱ともいえますので残念です。
 日本の古典映画を韓国で一刻も早く紹介されればと思います。私もそういう作品を見たいので。

「八月のクリスマス」監督インタビュー3


 「八月のクリスマス」より  写真提供:パンドラ

ホ・ジノ監督インタビューから(後) 99/03/01 6:40

★Q5−1:次の作品についてなんですが。
★A:ええ、今シナリオを執筆中です。
★Q5−2:幸せがテーマだとちらっと聞きましたが。
★A:ええ。まだまとまってないので具体的にはお話できないのですが、今回の映画も大きなストーリを展開してゆくのではなく小さなエピソードを重ねながら作っていくスタイルにしようと思ってます。或る男女の出会いにまつわる幸せと悲しみを描く映画になりそうです。
 「8月のクリスマス」は愛が生まれる前の予感を描いたんですけど、今回は互いがもうちょっと親しい関係になった状態を描きたいです。
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★Q6:映画に何かを洗う場面がよく出てきました。窓とか葱とか万年筆などを洗ったり、ヒロインが手を洗ったりとか。それは何か意味があるんですか?
★A:特別な意図はなかったんです。ただそれが反復されることで何かの意味が出て来るだろうとは思いました。そういうシーンを見てどう感じられましたか?
★Q:自分をきれいにしたい、ということかなと思ったんですが?
★A:ええ、自分をきれいにしたいとか、時間が限られている人なので身の回りを少しずつ整理しているとか、そういうのはあると思います。

★Q7:よく雨がふっている場面が出てきたのですが、水や雨がお好きなんですか?
★A:情緒を表わす時に、すごくいいお天気の日もあるけれど雨の降って憂うつな時もあるのでそうゆうのを表現したいです。いい時ばかりじゃなくて悪い時もあるしで、その対比を表わしたいのです。

★Q8:静かな止まった場面も多いのですが、移動する場面−バスとかジェットコースターとか運動場を走るとか。そういうのは意図的に入れているんですか? なにかユ・ヨンギル撮影監督の意図でもあるのでしょうか?
★A:あくまでも自然らしさ、自然の動きを狙ってました。カメラが付いてまわるというのでなく、動きが必要であれば動きをつけるというふうに自然なカメラで撮影するのがユ撮影監督と私の意図だったんです。

★Q9:犬が出て来る場面があったのですがあれは偶然ですか? それとも意図的に出したものなんですか?あれがかわいかったというひとがいたので…。
★A:偶然出てきたものなんです。まるであの犬が映画に出たくて出てきたみたいです(笑)町でうろうろしている普通の犬なんです。

★Q10:監督は映画の登場人物の中で思い入れがあるのは誰ですか? 故郷の友達、昔の恋人、お父さんなど…。
★A:特に父親にビデオの操作方法を教えるシーンなんかも実際あったことで、すべてにおいて少しずつ思い入れは反映させてます。あと、昔の恋人ですね。過ぎ去った時間の出来事が心の中でどう変化するのか興味があります。

★Q11:ニフティのパソコン通信で映画の人気投票をして、監督の「8月のクリスマス」がダントツ一位でした。パソコン通信のファンへ一言。
★A:私の映画を愛して下さってとても嬉しいです。パソコン通信は出会いの場としてもなかなかのものですし、機械を通じて心を通じ合えるというのは素晴らしいことだと思います。お金を一生懸命稼いで(笑)これは勿論冗談なのですが…私も早くパソコンを買って皆さんの仲間に入りたいです。

 取材日:1999.2.24(WED)
 場所:銀座ホテル・アルシオン/プルゥテン・トラウム
 通訳:尹春江さん
 主な質問と翻訳(テープ起こし):田辺友美さん
 取材協力:パンドラ・増川直美さん
※ お忙しいところ、ありがとうございました。

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