ホ・ジノ監督トーク

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「八月のクリスマス」ホ・ジノ監督vs写真家・青木透

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青木透氏/ホ・ジノ監督/マンマさん

 先日参加してきた、横浜の青木透写真展のホ・ジノ監督トークの概要です。
 例によってオアポケの口述筆記ですので、細部の異同はご容赦を。
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★青木透vsホ・ジノ監督トーク  99/12/10 横浜関内アカデミーギャラリー

青木/写真を見た感想は、いかがでしたか。
ホ/昔のアルバムを見るような感じがした。
自然体で取られた写真だ。私の次回作もそんな感じでとりたい

青木/自分で写真は撮るか。
ホ/自分ではあまり写真は撮らない。撮ったり撮られたりする。撮られた写真
も、いいなと思うこともある。たいていは飲んでいるところだ。

青木/映画と写真の違いはどこにあるか。
ホ/写真は濃縮されたエッセンスだ。
一枚で、映画1本くらいのものがある。
僕はそうした写真が撮れないので、映画を撮っている。
青木/北野監督は最初の頃の映画はずっとカメラが固定されていた。
スチル写真を何枚かを並べて、その間にストーリーがあればいいというような
ことを言っていた。その後カメラが動き出すが、その前のほうが良かった。
 私は、制止された動きの写真を撮ることが多い。スポーツ選手などを撮るの
はなかなか難しい。その意味では映画のほうが面白そうだ。

青木/「八月のクリスマス」と写真についてはどうか。
ホ/写真とこの映画は関係がないことはない。主人公は写真の話だ。
一枚の写真に多くの思いがこめられ、エピソードがある。

青木/映画現場にはスチルカメラマンがいるが、どういう指示するのか。
ホ/いつも「ちょっとどいてくれ」と言うことが多い(笑)。
青木/現場では、カメラマンはどいてくれと言われることが多い。
そういう意味では、監督と友達として行ったほうが、撮れるかもしれない。
来年の5月くらいには新作をとるので、みなさんも行ってみるといいかもしれ
ない。私も韓国の撮影現場は知らないので行ってみたい。
ホ/ぜひ来てください。

青木/他の国は行っているのだが、韓国になかなか行く機会がない。
映画現場では、国ごとにかなりシステムが違っている。
 まず食べるものから違う。「家族シネマ」の時は、韓国からまかないを連れ
てきていた。それが毎日キムチのように辛い料理を作っていたので、他の日本
のスタッフか根をあげた、というようなことがあった。
 香港では、まず時間がルーズで、また誰がチーフかわからない。また食う時
間になると、いくらスケジュールが混んでいてもまず中断して食う。それから
シナリオがない。なぜなら、シナリオを完成させておくと隣のスタジオですぐ
パクられるからだ。キン・フー監督は撮影当日の朝に絵コンテを渡していた。
 ハリウッドは完全な8時間、どんなにスケジュールが押していても、時間に
なると必ず帰る。ユニオンの力が強くて、逆らえない。メイベル・チャンも、
ノン・ユニオンの人たちを集めて撮った。そうでないと予算が足りなくなる。
時間が費用という感じだ。その中で自由にやっていける監督は限られている。

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青木透氏/ホ・ジノ監督

ホ/日本で映画を撮る時は、あらかじめプランしないと無理なのか。
青木/あらかじめ決まっているが、当日、ほして天気を待ち、雲の流れを見て
考えるというようなこともあった。ずっと待ちになることもある。
 ハリウッドはもっとシステマチックだ。モニターで確認し、無駄なシーンが
ない。監督は建築現場の監督と同様だ。
 ジョン・ウー、香港でそういう撮り方をしていなかったので、ハリウッドに
行って大丈夫か、と心配した。香港では、1本撮るのに30万フィートも撮っ
ていた、ハリウッドでは8から10万くらいだろう。
「フェイスオフ」くらいまで最初は大変だったようだ。

青木/韓国の撮影現場ではどうなのか。監督の権限などはどうか。プロデュー
サーとの関係などはどうか。
ホ/現場では監督が強い。いったん撮影に入れば監督に任される。
ただあまり撮らないと、早く撮れと言うふうに文句を言われることはある。
だが、あまり干渉はせず、口は出さないようだ。もちろん、出す人もいるが。
青木/北野監督は自分で編集するが、これも人による。一般に、ハリウッドで
は、プロデューサーが強く、編集権も明確に持っていたりする。

青木/映画を撮って、良かったと思ったことは。
ホ/以前は海外旅行もできなかったが、できるようになった。映画のおかげで
日本にも来られた(笑)。

青木/助監督をやっていて、そういう立場で来たのか。
ホ/当時はスタッフとして、パク・クァンス「ジョン・テイル」の映画で、そ
のシナリオを一緒にやって、参加していた。

ホ/さっき写真を見ていて、青木さんもご存じなかった人がいたが。
青木/その時は私もわからないことがある。
 人数が多くて顔見知りの人と飲んでしまうからだ。
 フルーツ・チャンみたいに、後で突然有名になる人もいる。彼ほど、映画と
本人のイメージが違う人もいない。「メイドインホンコン」以前に、B級作品
を撮っていて、もう一人同名の人がいるのかなとと思ったくらいだ。
 ホ・ジノ監督の場合は、映画とイメージは合っている(一同うなづく)。

青木/映画をやっていて、会って良かったという人はいるか。
ホ/シム・ウナに会えて良かった(笑)。
青木/次の作品の女優は考えているのか。
ホ/まだ、考えていない。「八月のクリスマス」は先にシナリオを書いていて
女優は考えていなかった。次は、女優を考えてから、作っていきたい。
青木/次の映画はどんなものか。
ホ/主人公が、音を、例えば鳥の音、水の音など集める人、というものだ。
その結婚、家族の話などを描こうと思う。

ホ・ジノ監督vs青木透andファンたち

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 ファンにサインする監督

青木/会場の方で、何か質問があればどうぞ。
A/「八月のクリスマス」は写真を扱っていて、監督は写真好きと思ったが。
ホ/大学では写真部だったが、今はそんなに撮っていない。

B/哲学科だったそうだが、映画をとる上で何らかの影響があるのか。
ホ/学生時代はあまり勉強しなかった。
 ただ映画を撮る上で、「ひと」を撮るということで、影響はあるかも。

C/映画の中のうちが、とてもいい感じの、主人公とお父さんだった。
 あの家は、古い家を使ったのか。日本式のうちを使っているのか。
ホ/家自体はそこにある、群山(グンサン)という港があり、韓国から日本に
荷物を積み出していたところで、カラスの窓など日本家屋になっている。今、
残す残さないという話になっているが。
青木/台湾に行くとのと、韓国に行くのとだいぶ違う。
 オリンピックの前とはだいぶ違った。反日的な感じが、ノ・テウあたりから
はゆるんできた。台湾の場合はだいぶ違い、親日的だった。韓国は分断されて
しまっているが、台湾はその後国民党が来てひどい政治をしたから。
 しかし、韓国でも10年前くらいは考えられないほど、雰囲気が変わった。
若い世代の考えは違ってきた。日本の映画はだめだったのを、釜山映画祭の時
には見た。それまでは海賊版どしか日本映画が入らかったのだが。

D/日本映画はそれまでどういうところで見られていたのか。
ホ/ほとんどビデオだった。しかも海賊版で、そんなに何本も見ていない。
それから、学生どうしの上映会のような場所でのビデオ上映などはあった。
構内のビデオ上映などあった
青木/世界中で、韓国ほど日本車が走っていないところはない。
香港などどこに行こうと必ず日本車が走っているのだが。
ホ/まず韓国で今の若者は二面性の考えを持っている。
マスコミでは、右翼的なこと、賠償や慰安婦の清算のことなどを言う。
しかし、文化的な面は違い、アニメやカラオケなどどんどん入っている。
文化面では、これからも交流していくのが良いと思う。
 今「ラブレター」がソウルでかかっていて、1位のようだ。日本映画の影響
力は強い。日本の人たちにももっと関心を持ってもらいたい。
 また、日本映画は感情的なものが我々に似ている。

青木/日本の俳優は知られているか。
ホ/高倉健などは知られているが、俳優などはまだあまり知られていない。
これまで監督は知られていたが、俳優はまだまだだ。しかし、これからは俳優
のファンクラブもできるだろう。
青木/韓国で香港映画のファンクラブはあるようだが。
ホ/それもあるが、日本映画にも関心がある。「シャル・ウィー・ダンス」の
役所広司、「ラブレター」の中山美穂などが有名になっている。

青木/日本で韓国映画が受入れられにくいのは、偏見があるのではないか。
アジアのものは西洋に比べてチープという見方がどこかにあるのではないか。
ぼくは大阪生まれだから、特にそう感じるのかもしれないが。
E/地域的なものがあるだろう、私は東京生まれだから、あまり感じないが。
日本の場合は、香港のような映画スターはいない。先日のハン・ソッキュ来日
の時もファンか集まったが、日本にはそういうスターはいないかもしれない。

F/韓国のドラマが好きで見ている。韓国では、テレビでもラジオでもスター
がいるようだが。
ホ/テレビの俳優は、交替のサイクルが早い。流行ってもすぐすたれる。テレ
ビに出ても映画ではだめのようだ。ハン・ソッキュや、シム・ウナのような、
映画でもテレビでもいい俳優というのは貴重だ。
G/日本でスターが出ないのは、作品が良くないのではないか。
H/作品自体は面白いが、スターは韓国のような人はいないようだ。

青木/ぼくがアジアを回って思うのは、高倉健や、吉永小百合のような俳優
は、日本に興味のない人も知っているということた。それに対して日本では
韓国のアン・ソンギ、香港のチョウ・ユンファといったクラスの大俳優でも
アジアに興味のない人は知らない。一般の人は、ジャーキー・チェン以外は
知らないかもしれない。
I/心にしみる映画があれば、国対国てはなく個人対個人でいけばいい。
青木/やはりいい映画があれば、と思う。
 インドの監督が言っていたが、アジアと日本の歴史もふまえたものをまとめ
ていきたいが、日本はアメリカに向いている、という感じが強いのだと言う。
 今、ウォン・カーウェイのようなものが入ってきて、初めて一般の人の間で
も香港映画が有名になったが、その前の70,80年代にほんとにいい映画が
あると思うのだのだが。

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ホ・ジノ監督と

J/今、普通の人の間でも、ヨーロッパやハリウッドよりアジアの映画が好き
な人が増えていると思う。そのひとつか「八月のクリススマ」だ。
青木/先進国の映画はいったん衰退した。
 その間に出てきた、第三世界の映画に、ブラジルなどいいものがある。
 ホ・ジノ監督の作品のように人気が出れば、また次が入るが、そうでないと
その後が続かない。
 今、ほんとにいい映画がどのくらい公開されているだろうか。公開されてい
ない映画の中でもいいものがある。釜山映画祭で、「スリーフレンド」という
いい映画があった。高校生が卒業した後のモラトリアムのうちに、兵役に行っ
たり働いたりして成長していくというとてもいい話だ。そういう良い映画が、
どこでも紹介されていかないというところがある。
 もっともそれは他の国ても同じで、もう少しなんとかできないかなと思う。

K/最近、韓国映画が好きになった人の中には、三百人劇場で特集を組んで、
それが好きになったきっかけという人もいる。
青木/あれは昔のいい映画など公開された。またそういう機会があればいいの
だが。また、ただ映画を上映するだけでなく、どうやって映画を見た人たちが
係わっていけるか、そういう場所づくりがほしいように思う。

ホ/今、韓国で「ラフレター」は人気だが、昔のものでいいものがある。
小津、溝口といった古いものは紹介されていない。そういう形でどこかで昔の
日本映画のいいものをやってほしい。日本映画の古くいいものを見たい。

青木/最後に今回の感想を一言。
ホ/青木さん、通訳の土田さん(マンマさん)に感謝したい。
 みなさんの応援で、いい映画を早く撮りたい。
青木/このために来ていただいて、感謝している。

L/もう一言言わせてほしい。「八月のクリスマス」が大好きだ。この主人公
が「アジョシ(おじさん)」と呼ばれていることが、すべてを表していると思
う。今、監督と、主人公のアジョシの姿が重なる。
ホ/自分がアジョシと呼ばれると、ちょっと複雑な感じだ(笑)。
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 会場の方も参加して、和気あいあいとした和やかな雰囲気でした。何よりも
監督の控えめで温かい人柄、青木さんのアジア映画への情熱が感じられます。
 なお、青木透さんの写真展「アジアの映画人たち」では、今週末にもまた、
ゲストを迎えてトークが催される予定。みなさん、どうぞおいでください。99/12/10

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