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5時46分 何よりも先に妹の悲鳴で僕は気がつきました。 僕の部屋から階段をはさんで隣の妹の部屋は5メートルほど離れていましたが、壁越しにその声は聞こえてきました。 「あ〜ん!」 妹に何があったんやろと僕はぼんやりとした頭で考え始めていましたが、その直後、大きな揺れが身体を持ち上げるように襲ってきました。 「これかあ!」と思ってみてもどうすることもできません。 ただ、布団にもぐり込み揺れがおさまるのを祈るように待つしかないのです。身体を揺れに任せるしかないのです。 家の建物全体が何かとてつもなく大きな存在に持ち上げられ、ゆさぶられている感覚です。 部屋のガラス戸がバンバンと激しく叫んでいます。 僕は南に頭が来るようにベッドで寝ていました。そして揺れは南北に大きく揺れています。 今までに感じたことのない揺れ。それは何もかもが破壊されてしまう恐ろしい予感がありました。 ものすごい長い時間がようやくに終わり、揺れは一応おさまったようです。 僕はとっさに妹の部屋の方へ行こうとしましたが、部屋の出口にステレオのスピーカーが落ちていて、進路をふさいでいます。 そのスピーカーの脇には額縁が落ちてガラスが粉々に散乱しています。 そういう光景を徐々に感じ取り、僕は恐怖心がつのるのでした。 「ここにいては建物が壊れて家族もろともつぶれてしまう!」 あんなにもゆさぶられて建物が無事でいられるはずはないと緊迫感が襲ってくるのです。 僕は一刻も早く逃げなければと思いました。 ダウンジャケットだけを手にして、横たわるスピーカーを乗り越えて部屋を飛び出しました。 廊下に出ると妹も恐怖心に震えて立っていました。 「公園に逃げよう!!」と言い、二人は1階に降りました。 父のいるのがわかったので、「児童公園に逃げるよ!」と告げました。 父は冷静なのか、放心状態なのか、「あ〜」と了解したという返事をしていました。 僕と妹はかなりのあせった状態で、僕はスリッパのまま玄関に降り、妹は素足のままでした。 「靴は履いたのか?」と叫ぶようにして尋ねると我にかえったようにして妹は靴をつっかけるのでした。 外に出てみると意外と静かでわずかに人の気配を感じる程度でした。 商店街に出て公園に小走りで向かう途中、ガスが大量にもれて臭いがしました。また凍りつくような気分になりました。 公園にたどりついても他に人はほとんどいませんでした。 心細げに二人でいろいろと話し合っていましたが、僕はあることに引っかかっていました。 母の声を全く聞いていない。母の寝ているそばには大きいタンスがあった。 それらを連想するにつけ、母の安否が急速に気になり始めました。 「おかあちゃんの声を聞いたか?」と僕は妹に尋ねまし田。 不安げに妹は、「いいや。」と言いました。 二人で家に戻ることにしました。 わずか100メートルほどの距離ですが、そろそろ人も外に出始めていたので、行きかう人に妹は「母を見ませんでしたか?」と声をかけたりしていました。 皆自分のことで精一杯で答えは返らずでした。 それより家に行くのが先決だ。そう思った二人は速足で家に戻りました。 玄関を開け放ったままにしていたので、玄関先から中に向かって声をかけます。 「おかあちゃんは大丈夫なんかあ?」 父は少し活気を取り戻したように母の無事を教えてくれ、その父に公園にまた逃げることを告げて家を後にしたのです。 公園にいると母がまず来ました。母は落ち着いた表情にはなっていましたが、揺れの直後は怖くて布団から出られなかったと教えてくれました。それで僕たちは母の声が聞けなかったようなのです。 しばらくすると父も公園に来ました。 近くの公園では小火が起きたのか切迫した数人の叫び声と気ぜわしく作業している様子が聞こえてきます。 その騒ぎが収まると、僕は「これは大変なことになってるぞ。」と事の重大さに初めて気づかされたのです。 公園に立っている間にも地面からドンッ!と突き上げるような揺れを感じました。 でも、妙に周りは静かで息を潜めているかのようにも思えるくらいです。 行き交う車もごく普段のように静かに通り過ぎます。 やがて父が指差しながら言いました。 「あっ、夜が明けてきたみたいやなあ。空が明るくなってきたわ。」 でも、父が指差したのは西の空でした。 それが大変なことになっていると後から知らされるとも知らないで。 ![]() |