足音

 それはある秋の夜のことです。
 僕はいつものようにパソコンでメールをするなどしていたらすっかり遅くなり、午前1時になっていました。
 明日も6時半には起きなければいけないので、早く寝なきゃとあせりながらベッドに横たわりました。
 なるべく寝る時は考え事をしないようにしていたので、ぼんやり横になっていると、やけに気になる音がするのです。
 うちの家の2階は、妹の部屋と僕の部屋とが窓側に廊下のような通路があって行き来ができるようになっています。
 その廊下を妹の部屋から僕の部屋へと向かって来る足音がするのです。
 妹は嫁いでいますので、妹の部屋はおろか2階には僕しかいないはずなのです。
 グイッ、グイッ、グイッ・・・
 それはとてもゆっくりと僕の部屋へと着実に近づいて来ます。
 我が家は以前に空き巣に入られたこともありましたから僕はすっかり泥棒だと思っておりました。
 グイッ、グイッ、グイッ
 近づいて来るたび僕の鼓動はバクバクと鳴り、まさに心臓が喉元から飛び出してきそうなほどでした。
 泥棒だとしたら、こちらの存在を相手に知らせてやれば、逃げ出すかもしれないと思って、僕は「誰や!」と大声で叫びました。
 しかし、その音はテンポも変わらずこちらに近づいてきます。
 僕はあまりに恐ろしくなり、1階で寝ていた父に助けを求め、2階に上がって来てもらい、様子を見てもらいました。
 父も血相をかいて棒切れを持って来てくれたのですが、廊下に出てみても誰もいないし、何の様子も変わっていないようでした。
 「変だなあ・・・」
 あんなにもリアルに足音がしてたのにと僕は首をかしげていました。
 父は他の部屋もすべてチェックしてくれて侵入者はいないことを確認してくれました。
 僕は金縛りや幽体離脱など経験したことがありますが、それらはたいてい夢か現実かわからないような半分寝ているような時に体験していました。
 でも、この時ばかりはまだまだ眠りにもついていない状態だったので、何の疑いもなくそれは人の足音だと思いました。
 廊下のカーペットを擦るような音も聞いた気がしました。
 結局は庭にある木が窓に寄りかかり、風に揺られるたびそういう音がしたのだろうと言うことで話はまとめられました。
 でも、母は、その数ヶ月前に亡くなった親戚のおじさんが僕に会いにきたのかもしれないと言うのでした。

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