オレたちひょうきん族?

 マッサージ屋さんで勤めていたころは、同じ年代の同僚が何人かいて、ふざけるのが好きな僕などはいろいろとだじゃれを言ったり、軽いギャグなどを言っては周りの人たちを笑わせるようなことをしてました。
 ある日、またもやくだらぬだじゃれが頭に浮かび、いつもふざけるのに相手をしてくれるH君にある提案をしたのでした。
 「お客さんを揉んでいる時になあ、表の筋肉ということで、表筋(ひょうきん)、奥の方にある筋肉ということで、陰筋(いんきん)と言って、まじめにお客さんに説明してくれへんかあ?これを実行してくれたら、リポビタンDを1本あげるよ。」
 表筋や陰筋など存在しない筋肉の名前ですし、お客さんに対して嘘をつくのですから、罪なことです。
 まあ、それでも冗談のつもりですから、本当にしてくれるなど期待してなかったんですよ。でも、H君は「ほんまに?」と、意外と乗り気でした。
 本当にしてくれるのかどうかわからなかったですが、もし先輩などに見つかって、それをけしかけたのが僕だとわかったら、えらいことになりますからねえ。ちょっと怖いところもありましたねえ。
 そして、ある時、彼がお客さんを揉んでいる隣の部屋で僕もお客さんを揉むという機会が巡ってきたのです。部屋と言ってもカーテン1枚で仕切っているだけなので、小さな声でも隣から聞くことも十分できたのです。
 彼は僕が仕事について早々、例の命題を実行し始めたのです。
 「ここの表にある筋肉、表筋っていうのがあるんですがね。これを揉んでやるとこちらの内側にある筋肉の陰筋がほぐれるんですよ...。」などと、ごくまじめに説明しています。
 彼が揉んでいるお客さんも、まじでその話を「ホーっ」とえらく感心しながら聞いているものだから、僕は隣にいて死ぬほどおかしくなって、でも、笑うわけにもいかずお腹をかかえて必死で笑いをこらえてました。口元も必死で唇をかみ締めていましたが、「ブーっ」と噴き出しそうでたまりません。仕事中だからふざけた笑いを出してはいけないと、思えば思うほど、たったこれだけのネタにもおかしくてたまらなくなるのです。
 その苦しそうに笑いをこらえている気配を感じたH君は、もっと笑わせようとまたその説明を繰り返すのです。僕は笑い死にしそうで、ギブアップ。「も、も、もうええ。」と彼にそっとやめるように告げました。
 彼の話術は日ごろからすごいなあと感心させられていましたが、見事でした。お客さんを笑わせることなく、僕だけを笑わせたんですからねえ。

 その時に、彼に揉まれていたお客様、ごめんなさい。もし、いまだに表筋や陰筋を信じておられたらどうか忘れてくださいませ。
 ここで懺悔、水が僕の頭に降りかかってきたりして・・・。ザッバーン!!


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