帰って来た飼い犬

 平成9年11月、我が家に11年飼われていたポメラニアンのロッキーが亡くなりました。
 誰でもそうなんでしょうが、我が家でも家族のように大切にしてきた犬ですから、家族みんなが涙を流し、彼の死を悲しみました。

 亡くなったロッキーは、ペット専用の墓地に埋葬されることになりました。
 僕はその現場に行くことができず、その日の朝、仕事に出る前に、犬の亡骸をに「ゆっくり休んでな。」と声をかけ、軽く手を振るようにしてさよならを言いました。
 前夜に涙は出尽くしてしまったのか、なぜだか爽やかな気分でした。
 その時、僕は目が見えませんから、犬の姿を見てはいないのですが、スッと犬が身体を起こしたイメージが僕の頭に浮かんだのです。
 片方の前足をまるで手を振り返すようにして掲げている姿に一瞬ハッとしましたが、僕の中では爽やかに別れができてよかったという満足感に似たものがありました。

 そして2〜3年立ったある日のことでした。
 僕は夕食を終え、テーブルの前で座ってぼんやりとしていました。
 こうやって座ってると、ロッキーは膝の上によく上がってきたなあと、ロッキーの姿を思い浮かべて、床から僕の膝に飛び上がってくるまでの様子をリアルに思い出していたのです。
 そして、そのイメージの中のロッキーは僕の膝から飛び降りて、隣の部屋でテレビを見ている母の方へゆっくり歩いて行きました。
 その直後、母が突然ロッキーの話をし始めたのです。
 どんな話をしてたのかは忘れてしまいましたが、母はごく普通な感じて冗談っぽく話してましたね。
 でも、僕はあまりに偶然過ぎて寒気を感じてしまいました。このことはその時には母にも話すことができませんでしたね。
 単なる偶然だとお笑いになるでしょうが、タイミングのよさといい、そこには絶対にロッキーがいたんだと思えてならなかったですね。


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