紙人形

 小学3年生の冬休みの最後の日、僕はI君の家で遊んでいました。
 子供のころって誰が好きで誰がきらいってはっきりしてますよね。
 その日もI君と、「Kのやつ、偉そうでいややなあ。」などと、優等生のK君のことをあれやこれやと悪口を言ってました。
 K君って頭がよくて、子供にしては冷静で、一緒に遊んでいても、「こんなことしてても切りがないよ。」と、急に現実的なことを言い出すような子でした。鋭く人の弱みにも付け込んできていたようにも思います。
 だから、その日も明日からK君とまた顔を合わせなければならないのかと、I君と二人で愚痴っていました。
 そして、どちらからともなく、わら人形の話になったのです。テレビなんかで話題になっていたことを僕もあれこれと話したような気がします。
 今から思えば恐ろしいことなんですが、わら人形でもあれば、K君を呪ってやりたいなどと二人で話していたのでした。
 もちろん、わらも五寸釘もろうそくもありませんし、子供のことですから、聞きかじりな話を膨らませていただけに過ぎません。
 それがどういうことからか、I君の家にあった画用紙を使って簡単な人形を二人で作り始めたのです。
 頭と手足がわかるだけのもので、それこそ「大の字」の形だけのものです。
 そして胴体にK君の名前を書きました。わら人形の代用品のつもりだったのです。
 そしてその人形を二人でいじめては日ごろのK君への不満をぶちまけるのでした。
 I君と僕は爽快な気分になり、笑い合って他の遊びに切り換えて冬休み最後の日を楽しみました。
 そして何事もなくその日が終わり、翌日の3学期の始業式を迎えたのです。
 久しぶりにクラスメイト全員に会えるのですからウキウキはしていました。K君のことはすっかり忘れていたのです。
 そして先生が入って来られ、ごく普通な感じで、「今日はK君はかぜでお休みです。」とおっしゃいました。
 かぜで休むくらいのことは驚くことでもないのですが、僕とI君は顔を見合わせ蒼ざめました。昨日の紙人形のことが二人の頭に浮かんだからです。
 周りには聞こえない声で「あ〜、こわ〜い!」とつぶやき合いました。
 本当に紙人形がK君をかぜで休ませることになったのかどうかはわかりませんが、あまりにもタイミングがよすぎたというか悪すぎたというか、本当に怖くなりました。
 これがほんもののわら人形を使っていたらどうなっていたんでしょうか?
 僕は心でわびて反省し、それからというもの、そういうまねごとは絶対にしなくなりました。
 中学に上がったころ、こっくりさんもクラスではやったりしましたが、それに加わるのは控えました。
 「人を呪わば穴ふたつ」という格言があります。人を呪っても必ず自分も同じめに合うものらしいですから、こういう行為は冗談でもしないことですね。


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