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あの世から引っ張られた その夜も僕は自分のベッドで寝ておりました。なんとなく目が覚めたようで、ふと意識が自分の部屋の入口に向きました。 すると、閉まっていた引き戸がスーッと音を立てて誰かに開けられたのです。 僕はこんな深夜に誰が入ってくるのかと不安に襲われビクビクしていました。身体は動かず寒気がするのです。意識はかなりはっきりしています。 仰向けに寝ている僕の左側は壁で、右側に部屋が広がる形になっています。 入口から足早にベッドの脇に誰かが近寄って来ます。そしてベッドの右脇にその人が立ち、僕を見下ろすのでした。 僕は目が見えてはいませんから、実際には見てはいないはずなんですが、映像が直接脳に送られているのか入口の扉が開けられたところから、その人物がベッドに現れるまでリアルに思い浮かべることができます。 最初は霊的な怖さではなく、不審者が自分の部屋に現れたことへの恐怖心が先に立っていました。 でも、こうして映像がはっきりと見えてしまったり、この後に起こった出来事でその恐怖心の形が一変したのです。 よく見ると、その人物は首から上がやみに溶け込んでいるかのように陰になり、まったく見ることができません。 それに対して首から下は、とても色鮮やかで、しかもスポットライトが当たっているかのようにまぶしいくらいに浮き上がって見えます。 とてもやせた体型で袖なしの服を着ています。 その服は赤や黄色、茶色、黒色などはっきりとは区別のわからないまんだらな模様でした。 そしてとても色白な腕がまぶしく見えます。 しばらくすると、その白い両腕が僕の方へ伸びてきました。 やがて僕が自分のお腹の辺りに置いていた両手をその白い手がつかんだのです。 そしてその手は僕の身体を右側のその人物の方へ引っ張り始めました。 予想もしていなかった展開に一瞬あっけに取られていた僕は、少し身体が浮くくらいに引っ張られてしまいました。 どうやらその人物は老女のようで、しゃがれた低い声が聞こえてきます。 「ひろまさ〜・・・」 エコーがかかったような響きで何度か僕にそう言いながら手を引っ張り続けています。 その手の力は弱々しいもののどこか執念深いものを感じ、僕はハッとしてその手を振り払いました。 「僕はひろまさなんかじゃない!!」 そう叫びながら必死でその手から逃れ身体を反対側にかわしたのです。 相手は意外とあきらめが早くその後は姿をスーッと消してしまいました。 僕はその老女から違う名前で呼ばれたことで人違いだなと安心できましたが、これが本当の名前を呼ばれていたらと思うとさらに怖くなるのです。 ![]() |