'97.8カナダ旅行記

97.8.6(水)第5日目

カナディアンロッキー観光 バンフ(泊)



大陸横断鉄道(貨物列車)
 この日はカナディアンロッキーのヨーホー国立公園の観光である。
 ヨーホー国立公園の目玉は「エメラルド湖」。エメラルド湖の観光と、レイクルイーズそばの「モレーン湖」の観光が主である。
 とにかくカナダは広いため、あちこちの湖を見に行くだけで、すぐに一日がたってしまう。しかし、この両湖は、大変美しいとのこと。世界一美しい湖、といっても過言ではないそうだ。何があっても見たかった。
 バスでしばらくボウ川沿いの道を走る。バンフ─レイクルイーズ間は、おとといから何度か走っている道。かなり見慣れてきた。レイクルイーズを過ぎてまもなく道路を左折。カナダ大陸横断鉄道に沿って走る。
 大陸横断鉄道は、飛行機が手軽に利用できるようになった現代、すっかりすたれてしまっている。飛行機の何倍も時間がかかり、さらに値段も高いことから、利用客は激減、旅客車は観光列車として走っているだけで、不定期運転となっている。ただし、貨物(穀類を運ぶものが多いらしい)列車はそれなりに走っており、偶然目にした。

湖に飛び込む人も。冷たかろうに。
 キッキングホース峠をこえて、まずは、タカカウの滝へ。狭くて急な道を上って滝へ向かう。あまりに道が急なため、途中スイッチバックが設けられていた。鉄道ではよくみかけるものだが、道路では初めてだった。しかし、バスの運転手さんは慣れたもので、スイッチバックの区間、上手にバックで運転していた。
 滝自体は、水量豊富といえど、ナイアガラの滝を見たばかりの身としては「ふーん、こんなもの」程度であった。人間、贅沢にはすぐ慣れてしまうものである。
 タカカウの滝を観光の後、いよいよエメラルド湖へ。
 カナダの湖は、氷河に含まれた鉱物がとけているため、どれもエメラルドグリーン色をしているが、エメラルド湖は、その名のとおり、もっとも緑色にちかい湖だった。ただし緑色といっても、日本のダムのような色ではなく、あくまでも「エメラルドグリーン」である。
 エメラルド湖のまわりにはコテージが建てられており、長期滞在もできるようになっている。また湖畔はハイキングコースとなっており、一周できるようだ。ただし、木がうっそうと茂っており、歩いている人の姿は見えなかった。
 ここでもまた、北海道一美しい(と私が思っている)然別湖を思い出してしまった。然別湖も二時間ほどで、湖畔を半周できる。雰囲気は非常によく似ていた。

 レイクルイーズのすぐそばで昼食。
 私はあまり食べ物にはこだわらない方で、だいたいどんな料理もおいしく食べられ(家庭で食べている料理がひどすぎる、という話もあるが)、カナダ旅行の間もほとんど「おいしいおいしい」で過ぎていた。しかしこの日食べたのは「カナダ風チャーハン」これは、変わった料理であった。ごはんをバターでいためて、その上にやはりバターでいためたピーマンとか玉ねぎとかの野菜を乗せたもので、うーん、カナダの人は、普段こういうものを食べているのだろうか?と思ってしまった。それとも、日本からの観光客だから、ごはん物を用意してくれたのだろうか?

 昼食後はモレーン湖へ。レイクルイーズのそばの湖であるが、往復すると二時間近くかかってしまうので、一般のツアーは、通常、エメラルド湖といっしょに組まれている。


モレーン湖。絶景! 絶景!! 絶景!!!
 さて、モレーン湖。
 旧20ドル紙幣の図案に使われていたことからもわかるように、まさに「絶景」というにふさわしい湖であった。私が今回のカナダ旅行で見てきた湖の中で、もっとも美しいと思った湖である。
 湖を囲む岩壁──10の山「テン・ピークス」。氷河をいだいた山肌が連なっている。湖はエメラルドグリーンというよりは、深い水色、といった方が近い。他の湖に比べれば、藍色が濃い。この山肌と湖のコントラストが、「絶景」を生み出しているのである。
 モレーン湖を見るには、湖の前にある岩にのぼって見下ろすのがいい。この岩から湖を見、それから後ろを振り返ると、こちらには、濃い緑色の樹海が広がっているのが見える。湖と氷河をいだいた山と樹海が楽しめる──この多彩さも、私が「カナダベストシーン」としたゆえんである。

 バンフのホテル「リムロック」へ戻る。ホテルはサルファー山という標高2285メートルの山のふもとにある。時刻は16時半。日没まで4時間以上ある。山頂まではゴンドラで行けるので、この山に上ってみることにした。
 ゴンドラは大変な混雑で15分待ち。4人乗りのゴンドラに乗り合わせたのは、たまたま日本人の中年夫婦で、ニューヨークで仕事をしているけれど、夏休みで遊びに来たとのこと。「神奈川から来たんですよ」とか「私の姉もニューヨークのそばに住んでいるんですよ」とか、そんな話に花が咲いた。


中央の建物が「バンフ・スプリングス」

柵がないので、すごい所に立っているように見える
   頂上からのながめも、これまた絶景であった。目線の高さにゴート連山の山頂が見え、またバンフの町並みを一望の元に見下ろせた。町を横断するボウ川。湖畔に立つシャトーホテル「バンフ・スプリングス」……
 特に柵が設けられていないので、写真でみると「どこに立っているの?」という感じ。実際はそれなりの足場があり、落ちる心配はないが、ちょっと怖かった。少し雲がでていたために、今一つ景色がはっきりしていないのが残念。
 下りのゴンドラは相変わらず混んでいた。
 ゴンドラを待つのならば歩いて下っちゃえ──そう思った私たち。実際、ゴンドラに乗らず、歩いて上っている人もかなりいた。
 ところが、である。
 トレッキングコースは2つあって、1つはゴンドラの下のコース、バンフの町並に面した道である。これが表の通常のコースである。しかし私たちが選んだコース(正確に言うと「過ってしまったコース」)は、サルファー山の裏道コースだった。

裏山コース
 裏コースなので、道を歩く人は誰もいないし、町と反対側を歩くので、どんどん町から離れていくようで心細く「下山口はどこになるのだろう」「今ここで遭難しても、誰も見つけてくれないだろうな」「下山前に日没になったらどうしよう」などと、不安をいたきながらのトレッキングとなってしまった。道自体はしっかりしたもので人足もついているし、まわりの景色を見る限りではバンフの郊外だったので、方向的には間違ってはいない、と確信してはいたが。(教訓:地図は正しく読み取ろう。「道を間違えた」と思ったら、すぐに引き返そう)

 かなり下山したところで「バンフ市街へ」という看板を見つけて一安心。時間的にも、日没までまだ2時間以上ある。ほっとする私たちであった。
 さらに1時間近くかけてバンフの町の中心まで歩いていき、改めてサルファー山を振り返ると、かなり遠くに見えたので(頂上なんて点のように見えた)「ああ、こんなに歩いたのか」と我ながら驚いてしまった。
 どきどきのトレッキングであったが、「人間がいない」ということで得をしたこともあった。左の写真。この動物に出会えたことである。私たちがすぐそばを歩いても特に逃げたりしなかったので、写真をとることができた。これ、ビーバーだろうか? 本で調べた結果、ビーバーに一番近いように見えたのだが……。ビーバーというと水辺にいる動物なので、他の動物なのだろか? それともビーバーが山に遊びに来ていたのだろうか。山肌をかけおりていく姿は、非常に身軽ですばしこかった。
 そのほか、野生のリスが岩場を走りまわる姿とか、高山植物とかをゆっくり楽しめたのは、やはり、人のいない静かな山を歩けたせいであろう。
 

  
バンフの町へ下山したついでに、少し足を伸ばしてバンフ駅を見に行った。
 冒頭に書いたとおり、カナダ大陸横断鉄道は、旅客は観光列車のみである。よって、駅のホームには人影はまったくなかった。まるで廃線跡のようである。
 ホームはでこぼこしているし、タイムテーブルは空白。「EASTBOUNDO」「WESTBOUND」と枠だけが残されていた。往時は、行き交う列車の時刻が書かれていただろうに。とてもさびしいながめだ。
 廃駅と唯一違うのは、ぴかぴかと光るレールである。列車が走らなければレールはさびついてしまう。レールがさびていないということは、まだこの駅は、この鉄路は、使われているという証拠だ。なんとなくほっとする。
 なお、駅舎は現在、レストランとして使われている。ステーキとロブスターの店、となっていた。レストランの前には車が何台も停まっていたので、それなりに繁盛しているのだろう。さびれるにまかせるよりは、レストランとしてでも使われる方がよっぽどいい、と思った。
 

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