*はじめに
 このSSはセイバールートのネタバレを含みますので、まだ未プレイの方にはお勧めいたしません。

 




夢の果てに在る――――

        ココ   そして私は戦場へと帰還した。   聖剣の返還は成った。   私を看取るようにして立つ騎士は一人。長身の彼は私が瞼を閉じると確かな足音を遺してこの場を去った。   きっと彼は私の死を伝えに行ったのだろう。   独り、木漏れ日の中で唯穏やかにある夢の続きを望んだ。   思えばどうして彼のような主に呼び出されたのか。   魔術の腕は未熟。敵に情けはかける。他人をすぐに信じてしまう。剣の素質は良い物を持っているとはいえ、あそこまで正直では  きっと騙されることも多いだろうに。この時代にはないが、彼の時代には詐欺師などというものが跋扈しているという。彼なんかは  いい獲物になってしまうだろう。他人の心配しかしないあの性格は、きっと転生したって直らないはず。  (けれど・・・)   そう、けれど彼はあのままが一番強い。きっと誰よりも。   暖かで、危なっかしくて、それでいて鈍感で。何処まで行っても自分を騙さない。   だから彼は強い。   もう、私が守る必要もないほどに。  (・・・望めば、夢の続きが見れるのであったな)   私を看取った騎士は言った。   強く念じれば、必ず叶うと。  (ならば、せめて最期にもう一度・・・)
――――――――――――彼に出逢う夢を見たいと叶わない夢を願った――――――――――――   ――――――――――――その望み、しかと承った。騎士王よ――――――――――――   意識が沈む寸前。   何処かで聞いたことのある老人の言葉が聞こえた。
 「衛宮、お前最近おかしいぞ」  「え?」   その言葉は唐突だったように見えて、その実言っている方にしては言い飽きているものだったらしい。三年になっても同じクラス  になった柳洞一成は軽い嘆息をついて、  「まあこの陽気だ。惚けたくなる気分はわからんではないのだが、あまり気を抜くと手元が空になるぞ」  「あ」   間抜けな声を挙げて手にした弁当箱に目を落す。そこには俺が朝早くに作った弁当箱があるわけなのだが、まだ二口しか食べてい  ないはずのその箱は大分寂しくなっていた。首を巡らせて、犯人と思しき連中を睨む。   教室の中央にある机を組み合わせて仲良くおしゃべりしながら昼飯を食っている女子一同。その中にいる顔見知りの美綴を半眼で  睨んだ。  「くっ・・・あいつら日に日に気配を絶つ技が巧妙になってないか?」   弁当を取られて悔やむべきか、級友達の食い意地の悪さに呆れるべきか、微妙な線なのでとりあえず悔しがってみた。視線の先に  いる『はげ鷹軍団』は俺の視線に気づいて「ごちそうさま〜」なんて宣っていやがる。  「まあまあ。そうカリカリすんなよ衛宮。ほれ、交換としてうちらのサンドイッチを少しずつ分けたげるから」   美綴はおかしそうに笑みを浮かべながら悪びれた様子もなく、見るからにコンビニで買ってきました、と言う感じのビニールに包  まれたサンドイッチを渡してきた。どうやらこれで弁当をチャラにしろと言っているらしい。  「くっ、背に腹は代えられないか」   と言って美綴からサンドイッチを頂いて、買っておいた烏龍茶で喉を潤すとまた視線を窓の外に向ける。外からは暖かい光が差し  込み、心地よい風が吹いて、少し気を抜くとすぐに微睡んでしまいそうになる。   一成の言葉ではないが、確かにこの陽気ならば多少惚けていても気にはならないだろう。   それが例え、陽気に関係のないことであったとしても。  (まったく、未練たらしいと言うかなんというか)   一人で苦笑をして、窓から見える冬木の街を見下ろす。   俺こと、衛宮士郎はここ最近、こうして窓の外から見える街並みを見下ろしていることが多い。   そこには、二ヶ月前とまるで変らない冬木の街が広がっている。   季節は春。あの馬鹿げた聖杯戦争からはや二ヶ月が過ぎていた。その爪痕は今ではほとんど見られない。  (って、言っても元から街にそう大した被害が出てなかったみたいだけどな)   今回の聖杯戦争で召還された英霊たち、そしてそのマスターはそれなりの人格者が揃っていたのか、街の住人達から魔力を絞り取  ろうとする連中は慎二とキャスターくらいだった。慎二の場合は酷い症状の人は後遺症が残るかと思われたが、心霊医術を得意とす  る教会の女性が派遣されてきて全て完治させたらしい。キャスターの場合は被害者こそ多いが、人命を奪うものではなかったそうだ。   それ以外の、戦闘によって出来た大穴だのは言峰の代りに来たという教会の老神父が上手く立ち回ってくれたおかげでいまではほ  とんど話題に上がらなくなっていた。   本当は聖杯を破壊してしまったことについて何か言われると思っていたのだけど、意外にもそれはなかった。聖杯そのものが完全  な形と成らずに消滅した。遠坂のその説明で魔術協会からきたという調査隊は酷くあっさりと引き上げてしまった。聞いた話では、  第一回、第二回の聖杯戦争もそのようなことがあったそうだ。   おかげで俺や遠坂はそれ以前と同じように、平和に暮らしていられるというわけだ。   いや、正確には俺自身はまるで平和に暮らせていなかったりするのだがそれはまた別の話だろう。   例えば野良虎と悪魔ッ子が揃って朝夕襲撃に来るせいで食費が今までにないくらいかかっていたり。   あの一件以来、俺の魔術の師匠となった赤いあくまに「修行が足りないわね!!」なんて毎日魔術と体術をしごかれていたり。   何が気に入らないのか一年下の可愛い後輩にはたまに無言でプレッシャーをかけられたりと経済的にも身体的にも精神的にもなに  かと大変な目に遭うことが多い。   休んでいたアルバイトも開始したことで、思った以上に疲労は溜っているのかも知れない。   けれど、本当は疲労なんて関係ない。  (ほんと。どうかしてる)   今もこうして、彼女と一日だけ過ごした、殺す殺されるなんて関係なく、守る守られるなんて意味もないような。   ただ一人の少年と、ただ一人の少女として過ごした一日の思い出に。   こうしていまも街を見下ろしながらいまだにそれに浸っているなんて。  (未練がないって言うのは、嘘じゃなかったんだけどな・・・)   遠い街を見下ろす。   彼女を連れ回して回った場所。彼女を連れいていきたかった場所。                                 ユメ   もしも、本当にもしも望んでいたら、叶ったかも知れない幸せな幻視。   太陽に霞む街を見下ろしながら、俺はずっとそのことだけを考えている。   これでは未練たらたらもいいところ。   遠坂には未練なんて無いと言い切ったのに。これでは格好がつかないったらありはしない。  (だからって言って――――――――)   あの記憶がそう簡単に消えてしまってたまるか、と心の中で呟いた。  「――――おい。聞いているのか衛宮」  「え?あ、いや。すまん。ちょっとぼうっとしてた」   憮然といた一成の言葉に気が付いて、慌てて顔をそちらに向けると、一成は呆れたため息をついて、  「まったく。処置無しか。そのような体たらくではさきほどのホームルームでの話も聞き流していたな?」  「むっ。当ってるけど、どうせ午後の話だけだろ。だったら大して問題ない」   片目で問われたことにはその通りですと頷くしかない。今日は午後から部活紹介があるので、昼で終り。部活がある人間は新入生  を獲得するのに奔走するのだろうが、何処にも所属していない俺には関係がない。ホームルームが終れば今日はこの後バイトが入っ  ているだけだ。まあ、弓道部の新入生歓迎会にだけはバイトが終ってから顔を出す予定だけれど。   だが、実際には他にも色々と連絡事項があったらしい。   一成はやれやれと肩を竦めて、  「明日、編入生が来るこという話だ。人見知りする子だから仲良くするようにと、藤村先生が念を入れいていたぞ」   と、やはり大して興味の引かれない話をしてくれた。   今日のバイトは以前から何度か仕事をさせて貰っているコペンハーゲンでの商品整理。   入学やら進学やら卒業やらが重なるこの時期は一時的にアルバイトの数が減るので、例年この時期だけはコペンハーゲンで仕事を  しているのだった。  「それにしても四時間で二万は貰いすぎたかも知れない・・・」   手にした封筒にあるお金の重さに少しだけ顔をしかめた。   時刻はまだ五時。本来ならばもう少し働くのだけれど、今日は弓道部の方で絶対顔を出せと言われているので、この時間で上がら  せて貰うことになっていた。その帰り際、今日の分の給料として渡された額はいつもの四倍。こんなに貰えないと言ったのだけれど  も親父さんには『進級祝いだから。貰っておいておくれよ』なんて言われてしまい、結局は火の車な家計のためと納得して受け取っ  てしまったのだ。  「はあ。情けない」   ため息をついて、深山町行きのバス停に向かう。会社帰りの人もぽつぽつと見え始めるこの時間、少し急がないともろにラッシュ  に巻き込まれてしまうので、少しだけ歩く足を早めようとした。   その老人と出会ったのはその時だった。  「もし。そこな青年」  「ん?」   声に反射的に反応して首を動かすと、そこには一目で易者と分かる老人が椅子とテーブルを構えて座っていた。ご丁寧にテーブル  には『易』の一文字。間違いはないだろう。  「あ、占いとかは興味ないんで」   下手に会話をしていつの間にか占われている、なんてヘマをしたくないので逃げるようにしてその場を後にしようとした。  「ぬ?その態度は心外じゃのう。儂はお前さんを祝福してやろうと思うて呼び止めたと言うに」  「祝福?」   思いもよらない言葉に肩越しに老人を見てしまった。老人は、皺だらけで埋まってしまいそうな表情をなにか、酷く面白いものを  見るような笑みに変えて、  「うむ。お主、近々極上の、左様、喩えうるならば天女の如き娘と結ばれるであろうな」   いや羨ましい限りなんて言いながら呵々っと笑う老人。   だけど、今の俺には酷く質の悪い冗談だ。  「そうかよ。でも、生憎と俺にはもう好きな奴がいるから、その未来はあり得ない」   そう、セイバー以上の女性が現れるはずがない。   だから、そんな未来はあり得ない。   俺が俺である限り、正義の味方になると言う誓いと、彼女への想いだけは、決して忘れないはずだから。   きちんと振り向いて言い切る。老人はドングリみたいな小さな目をくりっと見開いて、やはり面白いものを見るように笑った。  「ふむ。その意志の強さ。このまま行けば、救世主となることも可能であろう。いや惜しい。世界は一人の救世主を失うか。まあ、  それひとつの可能性。他の世界ではお主は既に辿り着いておるかも知れぬしの。じゃが――――――――」   この世界でのお主は既にあれの虜よ。   愉快で溜らないと言う表情の老人の、そんな呪いめいた言葉を無視して俺はまた歩き出した。   老人は青年を見送り、その背中にまだ笑みを送り続けた。  「ふむ。たしかに、あれはなかなかいい男だのう」   儂の若い頃にそっくりじゃ、などと独り言を言いながらテーブルや椅子を片付ける。この場で易者のふりをするのは楽しいが、そ         ・・  ろそろ帰らねば孫娘である彼女が怒り出す。えっちらおっちら小型のテーブルやら椅子やらを巨大な鞄にしまう。が、どれほど大き  かろうが入るはずのないテーブルや椅子はまるで魔法でも使ったかのように鞄の中に入っていく。  「英雄は英雄に惚れる、か。さもありなん。己を剣であろうとするものが、剣そのものに惹かれるというのは必定か」   呵々とまた笑いながら道具一式をいれた鞄を軽く持ち上げる。知り合いの魔法使いから教わった空間制御の魔術は思いの外便利だ。  「半分は夢魔といえども年にはかなわんからの」   そこでぱちんと。                               ・・・・・・   一度だけ指を鳴らしてそれまで止まっていた世界が動き出す。そこで初めて、大通りを歩く人々は莫迦みたいに大きな鞄を持った  絵本に出てくる魔法使いのような姿をした老人に気づいた。だが、それは所詮その程度。彼らはまた彼らの時間と意識の中を歩いて  いき、奇妙な格好をした老人のことなどすぐに忘れてしまうだろう。  「ふぃ〜。大勢の人間の無意識に滑り込ませるというのは、難儀なもんじゃ」   肩を回し、鞄を持ち上げて老人も歩き出す。  「まあ、望みし夢を与えるのも夢魔の役目よ。未完の英雄。我が愛孫を預ける以上は、幸せにせなんだ時、一生悪夢を見せてしんぜ  よう」   悪戯を思いついたような、そんな笑みと一緒に呪い以外の何者でもない言葉を遺して、夢魔と人の混血であった魔術師は歩き出す。   さて、明日になったらどうなるか。  「ふむ。それは見てのお楽しみとしておくか」   良く晴れた空。夕焼けに隠れて見えそうな星を視ないように、老人はその場を去った。      翌日。   いつものように五時を少し過ぎたあたりで目が覚めた。  「・・・・・・・・・夢、みなかったか・・・・・・・・・」   ぱちりと目を覚まして、同時に布団から起きあがる。ここ最近はセイバーのことを良く夢に見ていたから、どうにも夢の中でだけ  なら彼女に逢えると思ってしまうまっていた。その夢も、昨日の夜には見なかった。ただそれだけだというのに、どうしても落ち込  んでしまう自分を止められない。   夢の中ですら逢えないのなら、俺は一体どうしたらいいのだろうか?  「バカ。そんなの決まってる」   彼女と、いつか、どこかで、万が一にも出会ったときに胸を張れるように。   あの時の選択が間違いではなかったと誇れるように前に進むしかない。   元からそんな複雑な思考が出来る頭なんて持っているわけじゃないんだから、せめてそれだけは欠かしてはいけないと思った。  「さてと、飯を作って学校行かなくちゃな」   気合いを入れるために両の頬をぱちんと叩いて立ち上がり、いつもの制服に着替えて居間へと向かう。   一人で住むには広すぎる屋敷は朝の綺麗な空気と静寂だけが包んでいた。半同居人の桜や藤ねえ、それにイリヤはまだ来ていない  らしい。朝食や夕食の度に大騒ぎになる衛宮家は、その実、酷く静寂に包まれている家なのだ。  (そういえば、彼女はこの家が暖かいって言っていたっけか)   ふと思い出して、またため息。こんな所にも、彼女の影がある。あの爺さんの台詞じゃないけど、俺が既に虜になっているという  のはあながち間違いではないと思った。   だって、こうして思い出してしまったら、もう彼女を捜したいという気持ちが抑えられなくて、二人で良く竹刀を振った道場にま  で来てしまったのだから。  (毎朝の日課が誰もいない道場を見て回ることなんて聞いたら美綴あたりは腹を抱えて笑いそ――――――――)   一歩だけ、道場に足を踏み入れて、それだけで俺の時間は止まってしまった。  「――――――――――――」   きちんとした正座を組み、朝の空気を体の隅々に送るような、落ち着いた呼吸。   清楚で上品な白と青の、自分が似合っていると言った服。   窓から入ってくる朝日に負けぬほどの輝きを放つ、金糸の髪。   静謐な空気のなか、その凛々しい面立ちを伏せて瞑想にふける少女。   既視感。   あり得ない。あり得ない。あり得ない。あり得ない。あり得ない。あり得ない。あり得ない。あり得ない。あり得ない。あり得ない。   こんな奇跡はあり得ない。   だってそうだ。こんな都合の良い、本当に夢見たいなことが現実だなんてとても信じられない。  「セイ、バー・・・」   それでも――――――――   これが現実であるようにと。   全ての思いを込めた願いに答えるように、彼女はゆっくりと目を開いた。     アオ   その碧い瞳で、どんな剣よりも真っ直ぐに俺を見つめて。   幾度も願った、もう一度でも良いから見たいと思った、満面の笑みで。   彼女は夢から覚めたように。  「おはようございます。シロウ」   と。   どんな魔法よりも、これが現実なのだと教えてくれる声が聞こえた。  「――――――――でも、セイバーはどうやって現界しているんだ?」   嬉しさで真っ白になっていた頭が再起動してから十秒ほど。真っ先に思い出さなければいけない疑問を思い出した。   つまり、どうして聖杯の無くなった今、セイバーがこうして現実の世界に存在していられるのかと言う疑問。サーヴァンドであっ  た彼女はは存在するだけでも莫大な魔力が必要になる。セイバーほどの存在を維持できるほどの魔力など、どこから手に入れている  のか?いや、そもそも、俺は彼女が消える瞬間を見ている。   だから、彼女は一度はこの時代から消え、そのあとでまた召還されたと言うことなのだろうか?   その疑問を口にすると、彼女はポケットの中からある欠片を取り出した。それは、見間違えることがない、それこそ、俺にとって  はセイバーの次くらいに大切なものだ。  「鞘の、欠片?」                    アヴァロン   それはセイバーが持つ聖剣の鞘『全き遠き理想郷』の欠片だった。   彼女はそれを愛おしむように握りしめながら、  「はい。これが私の命を救ったものです」                                   アヴァロン   聞けば、英雄王との最期の決戦の時、セイバーは俺が創りあげた『全き遠き理想郷』を使って乖離剣の一撃を防いぎ、起死回生の  一撃を持って最大の敵である彼を切り伏せたのだそうだ。真名をもって放たれた鞘は、その主を守りきることで粉々に砕け散ってし  まったのだが、その先端、拳の大きさほどだけはかろうじて残った。  「人の手によらず、妖精の力で作られた鞘はこのような形になっても私に不死の力を与えてくれたのです」   両手で抱きしめるように鞘の欠片を懐くセイバー。   最期の戦い。王として、彼女が戦ったその戦いで彼女は致命の傷を負った。けれど、神話にある聖剣の鞘は不死の力を持ってその  主の傷を癒し、蘇らせたのだ。  「え!?じゃ、じゃあもしかしてその頃から生き続けているんじゃ・・・」   彼の騎士王の伝説が正しければ、西暦でいう五世紀頃からずっと、彼女は俺が生まれ、聖杯戦争を勝ち抜くまでの間を生き続けた  ことになる。   が、セイバーは俺の考えを見抜いたのか、不満そうな表情をして、  「シロウ。貴方は私が千年以上の時を一人で生きてきたのではないかと考えていませんか?」  「うっ・・・そ、そうだけど。でもそうでないと説明が・・・・・・」   と言いかけて、ある可能性が頭によぎった。   騎士の王が謳われる伝説の最期。カムランの戦いのあと、王はその理想郷へと連れられて眠りにつき、未来において復活を約束さ  れていたはずだった。   これがどういう意味を持つのか、今の俺ならば簡単に分かってしまった。   それを肯定するように、彼女は頷いて、  「はい。私はこの鞘の創り出す結界の中で永い時を眠り続けました。そして一ヶ月前。私に眠りの魔術を施してくれたマーリンの手  で眠りから起こされ、この時代での戸籍などを手に入れてようやく貴方の下に来たのです」   その間、ずっと貴方の夢を見続けて。   その不意打ちみたいな笑顔に、けれど慌てもせずに静かに頷けたのはどうしてだろう?  「セイバー」   そんなこと――――  「もう一度、君に誓いたいことがある」   分かり切ってる。  「俺は君の鞘になって、ずっと守り続けた。俺の剣に、またなってくれるか?」   だってこんなに――――――――  「はい。シロウ。私をずっと離さないで下さい」   こんなに、幸せすぎて、それだけで慌ててる暇なんてなくなったんだから。      エピローグ  「はあ。でもちょっとだけ悔しいな」  「??何が悔しいのです?」   一緒に居間へと向かおうとするセイバーが振り返る。  「いや、特にどうって事はないんだけど悔しくてさ」   訳が分からないといった表情のセイバーに昨日出会った老人の話をした。  「それはきっと、マーリンでしょうね」  「マーリンってたしか、セイバー付きの魔術師だっけか」  「はい。私に眠りの魔術を施した混血の魔術師です」   夢魔の混血である彼の老魔術師は眠りや夢を扱う魔術は得意中の得意なのだそうだ。  「私の夢の中をのぞき見て貴方の事をし――――――――――――」   と、そこまで話して彼女はぼん、と音がしそうなほど一気に顔を真っ赤にした。  「ん?どうしたのセイバー?」  「い、いや、特別なにもこれっぽっちもシロウには関係のないことですのでお気にしないで下さいというか今の話は忘れてくれると  たすかるというかなんというか――――――――――――」   歯切れの悪い調子でまくし立てるセイバー。彼女が取り乱すなんてどんな夢を見たのだろう。  (あ、もしかして・・・・・・・・・)   思い当たってしまってから後悔。俺もセイバーに負けないくらい顔が熱くなるのが分かる。   夢魔の力を持つという老人。   夢魔と言ったら、多少の差違はあれど、魅せる夢はその、決まってきているというかなんというか・・・。  『若いとは良いのう〜。かっかっか』   聞こえないはずの老人の声が聞こえたような気がした。  

あとがき
 
  初めましての方は初めまして。
    Fateにどっぷりはまって各所では既に数多くあるセイバーハッピーSSです。
  ううっ・・・。セイバーの可愛さの万分の一も出せませんでした(無念)
  ちなみに、筆者が一番好きなカップリングは凛×アーチャーだったり。
  いつか書いてみたいけれど、きっと無理でしょうね(汗)
  それでは此処まで読んで下さった皆様、真にありがとうございました。