■7月29日(土)
122<335>「人狼」。
沖浦啓之監督。
押井守原作そして脚本。
懐かしくも哀しいポリティカル・ラブ・アニメである。
戦後間もない昭和30年代の風景。といって、東京であるが。
そのトリヴィアルな部分への拘りがとても郷愁を誘う。
雨に濡れる電車、はしけの浮かぶ川面、古い木造の家々。
川面を飛ぶ鳥に僕らは心を奪われるだろう。
そして60年安保闘争と70年代市街戦を彷彿させる大衆武闘。
とびかうモロトフ・カクテル、ガス弾、投石、爆弾。
決してそれは遠い日の物語ではない。
だが、なによりも報われない非情の愛こそがメーンテーマである。
首都警察の特別部隊に属す人間の皮を被った狼たる男・伏一貫。
セクトの平坦部隊たる赤ずきんのメンバーでありながら公安警察に操られる雨宮圭。
2人に一瞬、対幻想が芽生えるが、それは政治の論理と組織の暴力の前に崩れ去る。
新宿のテアトルは炎暑で地下までも熱気に満ちていた。
これをオタクの目で見るか、政治の目で見るか、ラブストーリーとして見るか。
満員の観客は混沌としている。
「君よ、外に出て歩道を割れば、昭和が露出するぜ」
■7月16日(日)
121<334>「レインデア・ゲーム」。
ジョン・フランケンハイマー監督。ベン・アフレック。シャーリーズ・セロン。ゲイリー・シニーズ。
どんでん返し、いっぱい。
刑務所で女性と文通していた相棒が出所直前に刺殺されてしまった。
そこで、相棒になりすまして女性と接触したのはいいが、
カジノ強盗の手引きを頼まれてしまう。
断ると命があぶない。
そこで、必死のサバイバル騙し合いが始まる。
ベン・アフレック。この人は知性的なのかアホなのか。
そしてシャーリーズ・セロン。どうもワシはアシュレイ・ジャッドと見分けが着かない。
ちょっと、かわいいのか憎いのか、わかりにくい役だ。
なんか、面白みのない脚本なんだなあ。疲れてきた。短くて良かった。
120<333>「M:I-2」。
ジョン・ウー監督。トム・クルーズ。ダグレイ・スコット。サンディ・ニュートン。
ご存じ「スパイ大作戦」シリーズ。
ブライアン・デ・パルマ監督から、2丁拳銃のジョン・ウー監督にバトンタッチ。
腕利きのスパイ、イーサン・ハントの使命は
金のために細菌兵器と治療薬を奪った元スパイとの戦いだ。
そこにナイアという女盗賊が絡む。
彼女は元スパイの恋人だったが、ハントも恋してしまう。
おやメロドラマ・アクションだわな。
もっとも、後半に入り、思う存分のアクションが炸裂する。
カー(バイク)チェイスあり、銃撃戦あり、カンフーあり。
あっ、冒頭のロッククライミングもカッコイイです。
でもスパイ映画より二役ありの恋愛物語。惚れた女にゃ、命懸け、ね。当然。
■7月6日(木)
119<332>「シーズ・オール・ザット」。
ロバート・イスコーブ監督。フレディ・プリンツJr。レイチェル・リー・クック。マシュー・リラード。
青春映画です。学園映画です。
最もイケテナイ女の子を恋に破れたイケテル男が賭けで学園の女王にしようとするが。
プロムっていう卒業パーティーってのはアメリカでは大変なのだなあ。
それはともかく、今回の映画の注目度一番はレイチェル・リー・クックちゃん。
小柄で日本人好みのカワイコちゃん。
彼女がださいアート娘から、プリティ・ウーマンになるかどうか。
確かにいいかもしんない。
どうでもいいことついでにキーラン・カルキンら「マイ・フレンド・メモリー」組も大活躍。
もっとひねりが欲しいところだが、青春映画としては合格点か。
■7月5日(水)
118<331>「クール・ドライ・プレイス」。
ジョン・N・スミス監督。ヴィンス・ボーン。ジョーイ・ローレン・アダムズ。モニカ・ポッター。
子育てを巡る男のドラマかあ。
ある日突然、奥さんは妹のところに行ってしまいそのまま帰ってこなくなった。
敏腕弁護士はやむなく一人っ子を連れて仕事と子育てに。
だが、仕事はクビになり、平和な田舎の法律事務所に都落ち。
可愛いバツイチ女性との恋が芽生えたと思ったら、
子供恋しさの別居妻が戻ってきて一悶着。
さあ、どうしょう。
結果は当然の方向に進むのですが。
まあ、元妻に「愛していなかった」なんていわれたらショックだな。
それにしても、子供のために生きる男って、別にカッコよくないぜ。
だから、オレにはあまり共感が沸かなかったのだ。
ジョーイ・ローレン・アダムズは「ビッグ・ダディ」に引き続き活躍。
モニカ・ポッターはなんか寂しい役で、今ひとつかな。
■6月24日(土)
117<330>「エドTV」。
ロン・ハワード監督。マシュー・マコノヒー。ジェンナ・エルフマン。ウッディ・ハレルソン。エリザベス・ハーレー。デニス・ホッパー。
ぱっとしないケーブルテレビ局が起死回生の企画。
それは普通の人間の生活をリアルタイムで放送すること。
選ばれたのは30歳を過ぎてもうだつのあがらないビデオ店員のエド。
最初こそ受けなかったが次第に人間模様が絡み合って視聴者は中毒症状に。
だが、有名になったもののプライバシーはなくなった。
そこで男が番組をうち切るために取る最後の作戦は。
テレビが24時間監視する映画といえば「トゥルーマン・ショー」 。
あちらは、何も知らされなかったのに対し、こちらは契約です。
ですから、最後はどうやって契約違反にならないで円満に終われるかです。
作り事と知っていながら、結構リアルに見えてきます。
やはり現代はテレビ社会ということでしょうか。
カメラが入ると人間は変わるようですね。
それにしてマシュー・マコノヒー、「評決のとき」と全く違ったイメージでした。
■6月23日(金)
116<329>「ビッグ・ダディ」。
デニス・デューガン監督。アダム・サンドラー。ジョーイ・ローレン・アダムズ。ロブ・シュナイダー。
法学部を出ながらフーテン暮らしをしているソニー。
ひょんなことから親友の隠し子の面倒を見る羽目に。
恋人には逃げられ、ちょっと危ない友人たちと悪銭苦闘の子育てが続く。
アダム・サンドラーが相変わらず大活躍。
この人は不思議だなあ。
「ウォーターボーイ」 にしろ 「ウェディング・シンガー」 にしろ
完全に普通じゃない人間を普通にやっているのがおかしい。
本作は、その毒がやや弱いか。
ジョーイ・ローレン・アダムズは 「チェイシング・エイミー」 のほうが魅力的でした。
■6月22日(木)
115<328>「千里眼」。
麻生学監督。水野美紀。黒木瞳。根津甚八。柳葉敏郎。
松岡圭祐原作。
「ミドリの猿」という謎の組織のメンバーが日本国内で破壊活動を続けていた。
それを「千里眼」を持つ心理科医師が阻止しようとしていた。
だが、それでも事件は収まらなかった。
ひょんなことから医師を知った女性自衛隊員。
次第に彼女に惹かれていくが、ある陰謀が進行していた。
水野美紀は 「現実の続き夢の終わり」 でも活躍した売れっ子だ。
明らかに「マトリックス」に影響を受けたカンフーアクションはみものだが、
水野の存在感は今ひとつだなあ。
一方、謎のセラピストに黒木瞳。 「破線のマリス」 のほうがよかった。
ちょっと悪役はどうなのかなあ。
これは 「催眠」 の作者の作品だそうだが、ならば菅野美穂ちゃんが出て欲しかった。
■6月20日(火)
114<327>「2番目に幸せなこと」。
ジョン・シュレジンジャー監督。ルパート・エベレット。マドンナ。ベンジャミン・ブラット。
どうもなあ。
シングルマザーのマドンナ。ゲイ系のルパート・エベレット。
2人が自分の適性を出しながら、そんな2人の幸せの形を求める。
男と女はセックスなしにも一緒になれるよね。
でも、心の嫉妬は止められない。そこだな、問題は。
だから、結構、面白いドラマなんだけど。
子供がキーワードになっているのは、つまらないな。
これじゃ、家族戦争だもんな、最終的には。
最初に子供ありき、で、失敗かな。
結局、1番の解決策なんてないのを描いたのは正解だと思うけど。
■6月18日(日)
113<326>「NAGISA」。
小沼勝監督。松田まどか。稲坂亜里沙。片桐夕子。根岸季衣。芦川よしみ。
村上もとか原作漫画の映画化。
12歳の少女が過ごす江ノ島の一夏の経験。
レコードプレーヤーが欲しくて始めた海の家でのバイト。
入り江での水泳と、漂着物を集める少年との出会い。
不良の兄さん姉さんたちとの背伸びしたパーティー。
居酒屋を営む母とのこころの触れあいと揺れ。
バックに流れるのは60年代のポップス。「恋のバカンス」である。
いい映画だけど、風俗だな。
もっと、女の子の心をざらっと描き出せたのに、浮力がついている。
まあ、これはないものねだりだけど。
112<325>「鬼教師ミセス・ティングル」。
ケビン・ウィリアムスン監督・脚本。ヘレン・ミレン。ケイテイ・ホームズ。バリー・ワトスン。
「スクリーム」「ラストサマー」の青春サスペンスの鬼才が初メガホン。
奨学金をもらいたい秀才の女生徒がふとした弾みで試験問題泥棒に。
相手は誰もが恐れる歴史の鬼女教師。
クラスメート2人と頭と体を使っての戦いが始まる。
しかし、これは舞台劇か何かにすれば面白かったのだろうが。
映画としてはなんとも散漫で、つまらないな。
本当は辛辣なディベートが隠蔽したがる常識を砕いていくのだろうが。
そのラディカルさが出ていない。
友情やら優等生やら、鬼教師のインチキぶりがもっと徹底的に暴露できただろうに。
鬼も怖くないし、だめですね。
111<324>「グラディエーター」。
リドリー・スコット監督。ラッセル・クロウ。フォアキン・フェニックス。コニー・ニールセン。
グラディエーターとはローマ帝国の剣闘士のこと。
市民のための享楽の道具となったコロセウムで命をかけて闘う戦士たちだ。
将軍マキシマスは皇帝アウレリウスの後を継いだコモドゥスに厭われる。
妻子は殺され、本人も危うく逃げ延びたが、奴隷とされ最後はグラディエーターに。
次第に人望を集めながらローマへと入城。
ついに残虐な皇帝と対決することになる。
壮大なスペクタクルというやつだ。
物語はわかりやすいし、結末も想定される限度というレベルだ。
いやあ、こういう映画はNHKの大河ドラマを見た後のようなものか。
金かけたね、凄いね、勉強になるね、って。
■6月11日(日)
110<323>「クロスファイア」。
金子修介監督。矢田亜希子。伊藤英明。桃井かおり。原田龍二。吉沢悠。
宮部みゆき原作の映画化。
超能力パイロキネシス(念力発火能力)を持つ女性、青木淳子。
恋人の妹を殺されたことから復讐に立ち上がる。
刑事と別の超能力者に挟まれ戦い抜いていくが。
事件の裏にはさらに複雑な陰謀が渦巻いていた。
あたしゃ、超能力など信じていませんから、あんだけ火が燃え上がるとなあ。うそっぽい。
ストーリーがちょっと、荒唐無稽かなあ。
主演の矢田亜希子さん。超能力者の暗い感じをうまく出していたか。
顔は今ひとつなんですが、スタイルがカッコイイのですよ。
警官役の永島敏行や石橋蓮司が「過激派」なんていうと「お前だろ」って突っ込みたくなります。
でも破壊願望みたいのは、よく分かる気がしますので、気分は悪くない映画です。
■6月10日(土)
109<322>「マン・オン・ザ・ムーン」。
ミロシュ・フォアマン監督。ジム・キャリー。コートニー・ラブ。ダニー・デビート。
ローレン・ホリーを見た後に元夫のジム・キャリーだ。うーむ。
札幌・帝国座の地下と地上で「インサイダー」と「エニイ・ギブン・サンデー」やっているのと
同じようなつながりか。
アメリカのエンターテイナーのアンディ・カフマンを知らないのでなんとも仕方がない。
でも面白かったし、泣けましたね。
世間い対して笑いを武器に生きていく変人がたどる自己悲劇のような。痛み。
作用があれば反作用があるというわけだけど。
この人のパフォーマンスが先駆的だったかどうかはよくわからない。
そうありたかったことだけは、ジム・キャリーの熱演で伝わった。
ジム・キャリーって、凄い役者だ。「トゥルーマン・ショー」や「マスク」ではわからなかったけど。
笑ったのは分身のトニー・クリフトンの芸って ? だけど ! って感じだね。
108<321>「ノー・ルッキング・バック」。
エドワード・バーンズ監督・脚本・主演。ローレン・ホリー。ジョン・ボン・ジョビ。ブライス・ダナー。
ウェートレスをしながら、同棲している女性が一人。
でも夢は町を出てはばたくこと。
そこに昔の彼氏が戻ってきて、心乱されながら
本当の自分を探していく。
アメリカ映画のようですが、ちっともそうでない。
寂れた町の風景や冷厳な海辺などは、どうみてもイギリスかアイルランドのノリ。
シンプルですが、結構、ハートにきます。
製作総指揮はロバート・レッドフォードさん。うーん。
個人的には対幻想が好きなのですが、時代はやっぱり女の自立なんですかねえ。
■6月9日(金)
107<320>「エニイ・ギブン・サンデー」。
オリバー・ストーン監督。アル・パチーノ。キャメロン・ディアス。デニス・クエイド。ジェイミー・フォックス。
アメラグに生きる男たちの美学を熱く熱く。
「無駄に生きるな、熱く死ね」って、か。
個人プレーに生きる若い選手に、チームの生き方を説くコーチ。
勝った、負けたと騒ぐじゃないよ、男にはもっと大切なものがある。
プライドって奴だな、きっと。
オリバー・ストーン監督はこんなにストレートだったかしら。
とにかく賑やかにテンポ速くたたみかけます。
飽きませんが、ちょっと疲れます。
それにしてもアル・パチーノ。語りまくっています。エライ!
あっつ、ワシは体育会系ダメなのね。で、熱くなれませんでしたね。
■6月8日(木)
106<319>「ジェネックス・コップ」。
ベニー・チャン監督。ニコラス・ツェー。スティーブン・フォン。サム・リー。グレース・イップ。仲村トオル。
武器の横流しと香港の黒社会の抗争。
その裏には日本人ヤクザが絡んでいるらしい。
犯人探しの特別任務に就いたのは、ちょっと精神の不安定な刑事と3人の新人類デカ。
殺された潜入刑事の妹も加わり、激しい戦いに突入する。
香港のニューウェーブらしいのですが、今ひとつこなれていません。
なんか安っぽいアイドル映画っぽさもあって、いけません。
でも俳優はよかったなあ。
「メイド・イン・ホンコン」のサム・リーはすっかり印象が変わっています。
Y2Kという名前のグレース・イップちゃんは内田有紀ちゃん似です。
仲村トオルもニヒルなヤクザを演じています。
それにしても日本人って、人殺しの末裔ですね。そのことが痛い。
ジャッキー・チェンは無理して顔を出さなくてもよかったのに。
■6月7日(水)
105<318>「プロポーズ」。
ゲイリー・シニョール監督。クリス・オドネル。レニー・ゼルウィガー。ジェームズ・クロムウェル。
男はみんな野生馬だって。足かせされて生きるなんてまっぴらだ。
んん? なんか違わない? 最近の女権時代にそんなアホなこと言ってていいのか。
うむ。これはそうした時代に背を向けた男のしたい放題のコメディである。
一応、最後に女にオマージュを捧げるのですが。
それにしても、これだけの脳天気な映画が成立したのは奇跡だな。
ブルック・シールズにしてもマライア・キャリーにしてもキョーレツですが、困るな。
レニー・ゼルウィガー嬢、 「母の眠り」 で頑張っていましたね。
本作はつまらない男と、よく結婚する気になったのが不思議です。
■6月6日(火)
104<317>「ナインスゲート」。
ロマン・ポランスキー監督。ジョニー・デップ。エマニュエル・セイナー。ジェームズ・ルッソ。
本の探偵が悪魔の祈祷書の謎を追って、ヨーロッパを旅する。
コルソはコレクターから「ナインスゲート」と題された希覯本を見せられる。
それは世界に3冊しかない悪魔の書だが、その真贋を調べて欲しいと頼まれる。
だが、訪れた蔵書家は次々と謎の死を遂げる。
周囲には怪しげなヒットマンがうろつき、また正体不明の美女が彼を助けるのだった。
なんというか、本の世界のフェティシズムがよく伝わります。
でも物語はつまらないす。
ミイラ盗りがミイラになる。っていうとネタバレかしら。
もう少しエロスの香りが濃厚なほうがうれしいのだが。
むしろ死を臭わせているのだが、それがなんとも中途半端でした。
■6月4日(日)
103<316>「インサイダー」。
マイケル・マン監督。アル・パチーノ。ラッセル・クロウ。クリストファー・プラマー。
米国CBSの人気ニュース番組「60分」のディレクターにアル・パチーノ。
米国大手たばこ会社の元幹部の科学者にラッセル・クロウ。
その2人ががっちりとぶつかり合う。
たばこ会社の健康被害を省みない姿勢に怒りを覚えた元幹部は内部告発を決意する。
それに対して、内外からの膨大な圧力が加わるが、2人は時にはくじけそうになりながら
真実を伝えようと進んでいく。
うーむ。米国ってのはわからん。
こんな告発ものが映画化されるとは、商業主義は侮れない。
告発者と報道者との人間ドラマが見事だが、
なんとも男の生き様がカッコイイ。とりわけアル・パチーノは背が低いのに最高だね。
ワシらも、ちょっと日和すぎの毎日かなあ。
過去を振り返るおじじキャスターになっちゃ、おしまいだね。
■6月3日(土)
102<315>「ピンチランナー」。
那須博之監督。モーニング娘。=中澤裕子。安倍なつみ。飯田圭織。保田圭。矢口真里。市井紗耶香。後藤真希=。押尾学。松坂慶子。
まあ、アイドル映画なんだろうな。
「モーニング娘。」主演の駅伝に挑戦する少女たちの物語。
学校や家庭などに問題を抱えながら、走ることを通じて成長していく。
ここでは、かつてのスポ根モノにありがちな、がむしゃらな鍛錬はない。
淡々とやって、結果的には参加することに意義あり、というレベルで終わる。
クライマックスの駅伝シーンも迫力なく、むしろギャラリーの追っかけ小僧がにぎやか。
まあ、旬だからいただきます。
でも時期を外れたら、まずいな、きっと。
■6月2日(金)
101<314>「スティグマータ/聖痕」。
ルパート・ウェインライト監督。パトリシア・アークエット。ガブリエル・バーン。ジョナサン・プライス。
ワシはキリスト教徒でもないし、知ってのとおり信仰心もない。
だから、ね。キリストの傷を再現するスティグマータなんてケケケだ。
でもね、スティグマという言葉は好きで、今風のトラウマなんかより使っているのだ。
どうでもいいか。
だいたい信仰をめぐる映画ってのは、裏に別のシナリオがある。
こちらは、誰が見ても文句なしにパトリシア・アークエットのセクシーショーだね。
匂い立つような裸身、誘う唇。そして痛みが絶頂に変わっていくエクスタシー。
言葉を伝える者なんかに憑依されて、なんか言ってはいけない***を口にする。
禁忌を超えてエロスが立つって、わけさ。
それにしても 「グッバイ・ラバー」 にしても目立つなあ。
これはオカルトでも信仰映画でもない。アークエットを楽しむ映画なのだ。
■5月31日(水)
100<313>「ミッション・トゥ・マーズ」。
ブライアン・デ・パルマ監督。ゲイリー・シニーズ。ティム・ロビンス。ドン・チードル。コニー・ニールセン。
2020年火星の旅。
しかし、第1陣は謎の砂嵐に巻き込まれて遭難してしまった。
そこで、急遽、生き残ったと思われる1人のクルーを救うべくミッションを派遣した。
だが、彼らもまた飛行中のトラブルに遭い、犠牲者を出す。
それでも火星に到着した彼らは、この星に残されたメッセージを発見するのだ。
なんとも不思議な映画だ。
「未知との遭遇」の火星版というのか「ルーツ」というのか。
いやあ、とにかく火星の雰囲気は出ていましたよ。
神聖な気持ちにもなりましたよ。だから? いやあ、なんというか。
反則技のヒールがクリーンファイトのベビーフェイスを演じて見せた。
あやしいぞ、ブライアン・デ・パルマ!
■5月30日(火)
99<312>「現実の続き夢の終わり」。
陳以文監督。水野美紀。柏原崇。葵岳動。段釣豪。李立群。
台湾人マフィアと取引中の日本人ヤクザが襲われた。
金を奪われ、1人が殺された。
マフィアの中の思惑が交錯して事件が闇に葬られようになったところに女が一人。
殺されたヤクザの愛人・加奈子だった。
彼女は日本人フィクサーの高橋に助けられ、銃を手に復讐の戦いへと進む。
ヤクザ映画らしい。しかし、なんとも盛り上がらない。
話がトロトロして、なんともスカッとしないのだ。
その原因はたぶん、日本人がどうも風景になじめないのだ。
浮いたまま下手な演技をしている。
これが台湾マフィア同士の復讐戦なら、もう少し面白くなったろうに。
日本人を主役にした企画の失敗だろうか。
■5月28日(日)
98<311>「エリン・ブロコビッチ」。
スティーブン・ソダーバーグ監督。ジュリア・ロバーツ。アルバート・フィニー。アーロン・エッカート。
ついてない女。結婚と離婚2度、子供3人、無職。
そんな彼女は交通事故で車をぶつけられても賠償金を取れない。
やむなく押し掛けた弁護士事務所で見つけた奇妙な不動産売買。
そこからエネルギッシュな活動が始まり、紆余曲折ありラストでめでたしめでたし。
なんだかんだと言って、これはジュリア・ロバーツ賛歌です。
いかに彼女が燃えているか、これでもかこれでもか、と進みます。
こんなイケイケ女にかかったら、みんな負けます。
そういうイケイケ女の映画になっています。実話だそうです。
似てますが、トラボルタの 「シビル・アクション」 のほうがきっといい映画のはずですが。
■5月26日(金)
97<310>「発狂する唇」。
佐々木浩久監督。三輪ひとみ。阿部寛。大杉漣。鈴木一真。
少女連続殺人の猟奇事件が発生。
犯人の青年の妹たちはマスコミの餌食にされて、晒し者にされている。
そこで、妹は霊媒師の力を借りて真犯人探しを始めるが。
超能力、スパイ映画もどきのFBI登場、そしてカンフーまで入り乱れる。
なにより凄まじいのはエログロでしょうか。
何考えているんだろうか、ってな破壊衝動がノンストップで展開します。
三輪ひとみちゃん。よく知りませんが、将来が心配です。
FBIの大佐役の大杉漣さん。レオタードで遊びます。
面白いというべきか、アホらしいというべきか。
どちらとも言える作品です。意欲作というより、まさにクレージーな一品です。
■5月22日(月)
96<309>「マイ・ハート,マイ・ラブ」。
ウィラード・キャロル監督・脚本。ショーン・コネリー。アンジェリーナ・ジョリー。ライアン・フィリップ。
ちょっと 「マグノリア」 を思い出せます。
でも、あの衝撃的なカタルシスは訪れず、ハッピーなエンディングが待っています。
それにしても地味な映画の印象です。客もあまり入っていません。
とはいえ、出演者は豪華です。
ショーン・コネリーから始まって、「ボーン・コレクター」 で人気のアンジェリーナ・ジョリー。
ライアン・フィリップ、ジーナ・ローランズ、デニス・クエイド、ジリアン・アンダーソン・・。
その他いっぱい。あれだけのメンバーが勝手に恋愛して最後に丸く収まる。
まあ、昔風に言えば「世話物」って奴でしょうか。
だから、どうなんだ。人それぞれ。それだけです。
いい映画なんだけど。「ちぇっ」と心の中のどこかで自分が叫んでいます。
■5月21日(日)
95<308>「ウィング・コマンダー」。
クリス・ロバーツ監督・脚本。フレディ・プリンゼ・Jr。マシュー・リラード。サフロン・バローズ。
西暦2654年。
そこで繰り広げられる地球連邦軍と宇宙生命体キルラティとの戦い。
奪われたコンピュータ「ナブコムAI」を取り返さなければ地球は破壊されてしまう。
その任務に当たるのは、超能力の故に地球人と対立してしまった
冒険者ピルグリムの血を引いた若者だった。
スペースオペラでおなじみのワープ航法やら宇宙海戦、空中戦などがもりだくさん。
決して悪くはないのだけれど、盛り上がらない。
ドラマがいささか中途半端で、ゲーム感覚しかないのだなあ。
ちなみに監督はその名も「WING COMMANDER」シリーズのデザイナーとか。
なんかせっかくの素材を生かし切れていない不満が残る。
94<307>「ラスト・ハーレム」。
フェルザン・オズペテク監督・脚本。マリー・ジラン。アレックス・デスカス。ヴァレリア・ゴリノ。
オスマン・トルコ帝国が1922年に崩壊する直前の後宮の女模様を描く。
イタリアの少女サフィエはスルタンのハーレムに売られてきた。
彼女は美しさと才気に溢れていた。
宦官のナディールは彼女に友情以上のものを見出し、後ろ盾となる。
2人の協力で彼女はついにスルタンの寵愛を独占するまでになる。
が、次第にハーレムには暗い影が落ち、帝国も崩壊していった。
彼女も落ちぶれて、ショーで生きていくことになるのだった。
ハーレムには愛と権力と恐怖があるとか。でも人間は成長しないのでは。
すなわち、歴史の勉強にでもなるか、と思いきや、全く役に立ちません。
大河ロマンというよりむしろ、メロドラマのような物語です。
音楽がなんか感傷的でクサイんですよね。
豪華絢爛のハーレムは今ひとつで、ソフトポルノの印象だなあ。
いやあ、美形の裸体を目一杯見させてもらったというありがたさだけ残ります。
■5月20日(土)
93<306>「カリスマ」。
黒沢清監督。役所広司。池内博之。大杉蓮。風吹ジュン。洞口依子。
いやあ、宗教臭いぜ。
「世界の法則を回復せよ」だとか。
みせかけの対立を超えて、共生を提起して
「あるがままに生きよ」という諦念への到達。
ビートルズのメッセージ、作業療法で知られる森田正馬の世界だぜ。
なんか、そんなことを言われると鼻白んでしまうのだ。
森の中の一本の木は破壊者なのか、生の意志なのか。
なんか下手な小劇団のアングラを見せられている感じになるのだ。
役所広司は熱演しているが、どうもぴりっとしない。
「CURE」 も 「ニンゲン合格」 も、今回もオレにはうまく伝わってこないままだ。
92<305>「アンドリューNDR114」。
クリス・コロンバス監督。ロビン・ウィリアムス。サム・ニール。エンベス・デイヴィッツ。オリバー・プラット。
近未来の家庭にやってきた召使いアンドロイドのNDR114。
下の娘のリトル・ミスは訛ってアンドリューと名付け親しくなる。
父親はアンドリューのロボット離れした個性に気づき、さまざまな知識を与える。
そこで、アンドリューはいつしか人間に恋する感情を持ち
自分の体を人間に近づけていくのだが・・。
アンドロイドが人間になるというのは現実的な問題ではないだろう。
いわば異物が共同体に入ってくるときの難しさを提起しているといえる。
エイリアンと人間がうまくやっていけるかという問題でもない。
異なる文化を持った人間たちが出逢うとき、「飛ぶことが出来るか」どうか。
受け入れる側も、飛び込む側も、何かを変えなくてはならないのだ。
恋愛を通して、さまざまなことを考えさせてくれる娯楽作だ。
ロビン・ウィリアムスがしつこくないのもいい。
91<304>「ニコラ」。
クロード・ミレール監督・脚本。クレモン・ヴァン・デン・ベルグ。ロックマン・ナルカカン。
12歳の少年ニコラはスキー合宿に行くことになった。
しかし、両親はバス事故を恐れて、自家用車で200キロの道を送ると言い出す始末。
おねしょ癖のあるニコラは夢かうつつか、次第に恐怖の蟻地獄にはまっていく。
この映画はやはり父親が怖い。
彼の病める精神が少年の心に歪みを映しているのだ。
そしていつしか死を夢想する。
少年の浮遊感をうまく捉えているが、心にはうまく響いてこなかったのは何故か。
■5月19日(金)
90<303>「遠い空の向こうに」。
ジョー・ジョンストン監督。ジェイク・ギレンホール。クリス・クーパー。ローラ・ダーン。
1957年10月の空はきっと澄んでいたんだ。
ソ連の人工衛星スプートニクが飛んだ。
いやあ、確かに6歳になる少し前の僕も見たはずだが。
その後、スプートニクスという北欧のバンドが奏でるインストルメンタルはよく覚えているが。
でも。こちらはアメリカのロケット・ボーイズのお話。
炭坑町の高校生ホーマーは星の間を飛ぶスプートニクを見て
自分たちも世界の一部であると知る。
そして、炭坑ではなく宇宙で住みたいと考える。
激しい恋愛騒ぎは出てこないが、これは文句なしの青春映画である。
父と子、この対立と和解を、妥協することなく描ききった。
ホーマー役のジェイク・ギレンホールの瞳は本当に未来に向かって輝いている。
父ジョン役のクリス・クーパーは誇りに満ちた一徹な炭坑の男のガッツを伝えてくれる。
いや、最後はアメリカそのものだけど。
この映画、生活者の描き方にイギリスっぽい雰囲気もあって、媚びていない。
ちょっと泣ける。しばらく心に沁みている。
■5月14日(日)
89<302>「完全犯罪」。
マイク・バーカー監督。アレッサンドロ・ニボラ。リース・ウィザースプーン。ジョシュ・ブローリン。
友人を罠に掛けたらどうなる? そりゃあ、いかんだろう。
だが、自分勝手な人間たちが罠を仕掛け合ったら、
そこには隠されていた感情が露呈する。
ニックとリサ、そしてブロイス。
この3人の立場それぞれで映画の見方はずいぶん違ってくる。
良くできた脚本といえるだろうが、どうも面白くない。
解放感がないためさ、と言っていいのかどうか。
それにしてもブロイスの人格ってのはエゴイストにしてもひどすぎるなあ。
88<301>「どら平太」。
市川崑監督。役所広司。浅野ゆう子。宇崎竜童。片岡鶴太郎。石倉三郎。
監督は市川崑だが、脚本は黒沢明、小林正樹、木下恵介という巨匠で作った
「四騎の会」の作品。
山本周五郎の原作を元に、ある小藩の町奉行になった武士の姿を描く。
主人公のどら平太は、城内と城下の澱みを省くよう城主に命じられていた。
そのために、奉行所には出仕せず、
悪場所に入り浸っての捨て身の行動に出ている。
それに対して、若い武士たちは怒り、古狸たちは胡散臭く思っている。
どら平太を助けるのは2人の旧友。
だが、2人の仲はうまくいっていない。
孤立無援のどら平太。
しかし彼には人間的魅力があふれ、剣の達人でもあった。
一種の痛快時代劇だろう。
役所広司の演技が圧倒的に光る。
これに比して、助っ人たちや悪役の動きがやや鈍い。
安心してみられるが、何か物足りないのはなぜか。
正義と悪の戦いに今ひとつ緊迫感がないからのように思える。
■5月13日(土)
87<300>「ロミオ・マスト・ダイ」。
アンジェイ・バートコウィアク監督。ジェット・リー。アリーヤ。アイザイア・ワシントン。
マトリックスのVFXとカンフーがミックスした映画だそうで、
期待してみたが、看板に偽りありだな。
X−rayバイオレンスなんて、笑ってしまうな。
マトリックスには世紀末感覚みたいなものがあった。
それがVFXとして生きていたのだが、ここにはただの甘い技巧しかない。
脚本が今ひとつ、よろしくないのだ。
チャイナ・マフィアとブラック・アメリカンが縄張りを争っているオークランドの湾岸。
そこで、密かに利権再配分の陰謀が進められていた。
弟を殺されたハンは身代わりで服役していた香港の刑務所を脱獄。
黒人ギャングの娘トリシュと真相に迫っていく。
主演のジェット・リー。どうです? あたしゃ、××でしたが。
■5月7日(日)
86<299>「ミフネ」。
ソーレン・クラウ・ヤコブセン監督。アナス・ベアテルセン。イーベン・ヤイレ。イエスパー・アスホルト。
主人公クレステンは勤め先の社長令嬢と結婚して幸せの絶頂にあった。
しかし、その時、捨ててきたはずの田舎が顔を覗かせた。
父親の死。そして残されたのは荒れ果てた農家と知恵遅れの兄だった。
やむなく頼んだ家政婦にやってきたのは美しい娼婦。
彼女には放校処分になった弟がいた。
これは日本でおなじみの知識人の大衆回帰のデンマーク版だろう。
捨てたはずの故郷に復讐される中で、いかに近代的自我の自立を守るか。
日本の知識人はそれに敗れた。
実はクレステンもまた。
だが、そこに単純な回帰とは違う清々しさがあるのはヨーロッパだからか。
差別に屈しない主人公たちこそ「ミフネ」なのだ。
「7人の侍」の陽性遺伝子がこんなところに露出したとは驚きだ。
■5月6日(土)
85<298>「オール・アバウト・マイ・マザー」。
ペドロ・アルモドバル監督。 セシリア・ロス。マリサ・パレデス。ペネロペ・クルス。
「女」というよりは「母」に対する大変なオマージュである。
もっとも実在の、というよりは、あるべき存在への、というのは男のひがみだろうか。
臓器移植のコーディネーターをやっていながら、
息子を事故で亡くし、臓器提供しなければならなかったマヌエラ。
失意の中、マドリードからバルセロナへ。
そこで、彼女は少しずつ人生からそれている女たちと出逢う。
女優、修道女、女になった男、ぼけた夫と暮らす妻・・。
彼女たちを助けるうちに静かに自分を取り戻していく。
映画は偏見に冒されたり、事実を見ない人たちの偏狭さを鋭く突く。
やさしさって、なんだろう。
マザーシップだぜ。それは本当は結構きつい答えのような気がする。
■5月5日(金)
84<297>「ベリー・バッド・ウェディング」。
ピーター・バーグ監督。キャメロン・ディアス。クリスチャン・スレーター。ジョン・ファブロー。
困った男たちと美人で高ピーな女の結婚までの物語。
でもね。こりゃ、主役は神様だね。それもユダヤのね。
バカな男たちは神様に試されるように、次々と悪事を重ねる。
いやあ、見えざる手がちゃんと案内してくれているのだが。
見えざる手ってのはもちろん、物質化するとカネになるんだが。
そして、最後に笑うのは、神様にも手に負えないものだろう。
ユダヤ人をダシにかくも人間の業を描いてみせるのはなんともスリリングである。
大人のおとぎ話かな。
83<296>「玻璃の城」。
メイベル・チャン監督。レオン・ライ。スー・チー。ニコラ・チェン。ダニエル・ン。
凄いなあ、こんなに大時代的なメロドラマ。
「宋家の三姉妹」 の監督だから、それくらいは簡単だったか。
1971年の香港の反日学生運動の渦中にあったラファエルとビビアン。
2人は愛し合いながら別の結婚を歩むが、
再会して密かに青春を取り戻そうとしていた。
だが、香港中国返還の年の1997年を迎える大晦日、ロンドンで事故死する。
それをきっかけに2人の遺児がやはり出逢い、返還の日に恋はクライマックスを迎える。
ブラザーズ・フォーやプロコルハルムなどの懐メロ。青年たちの抗日デモ。
そこに2つの恋が重なるから、なんとも濃い。
何がって、て? そりゃあ、香港のナショナリズムだろう。
「宋家の三姉妹」の根底にあったものも、それなのかと思う。
ナショナリズムにはメロドラマがよく似合う。
それをひどく想起させられた。
■5月4日(木)
82<295>「イグジステンズ」。
デイヴィッド・クローネンバーグ監督。ジェニファー・ジェイソン・リー。ジュード・ロウ。イアン・ホルム。
しかし、がっかりだな。
そうとうひねっているだろうと期待したワシがアホやった。
コンピュータゲームを映画で描いてみただけ。
そんな印象しか残らない。
もっといろいろな作戦はあっただろうに。
なまじゲームマニア的なセンスがあだになったような気がする。
強いて言えば、突然変異の両生類や魚類、ゲームポッドがユニークだったけど。
コンピュータゲーム映画としてはやや正攻法だったかもしれないが、
「13F」 のほうがはるかにいい。
81<294>「サマー・オブ・サム」。
スパイク・リー監督。ジョン・レグイザモ。ミラ・ソルビーノ。エイドリアン・ブロディー。
1977年ニューヨークの夏は暑かったらしい。
そこに「サムの息子」を名乗る連続殺人犯が登場。
暑い夏はますます狂気じみていく。
イタリア系のコミュニティの濃い世界を映画は風俗をたっぷり取り入れ描く。
人間関係の崩壊していく姿は今に通じているということか。
まあディスコブーム、セックスとドラッグなんて懐かしい。
そしてパンクキッズとゲイが同じようにバカにされているのも時代か。
これまで、ミラ・ソルビーノをあまり魅力的に感じたことはないのだが、
この作品の赤いドレスが妙によかった。時代のせいか。
■5月1日(月)
80<293>「アメリカン・ビューティー」。
サム・メンデス監督。ケビン・スペイシー。アネット・ベニング。ソーラ・バーチ。ミーナ・スヴァーリ。
アメリカの美ですよ。その美学が百花繚乱に咲き乱れ、散っていく。
いやあ、ロマンチック・コメディなのに、悲劇ですからねえ。
42歳の冴えない男が美少女に一目惚れ、マッチョ目指してウェイトリフティング。
幸せになるんだ、成功するんだって、肩肘張って生きている妻。
両親の偽善にも親友のエゴにも飽きている娘。
風に舞うビニール袋に感動する盗撮青年。
モデルになるんだ、平凡なんか嫌、男はみんな私とセックスしたいのよと考えている美少女。
人間はルールに従って生きるべきだというナチ・フェチの元大佐。
みんな少しずつ自己実現をするようで、次第に崩れていく。
怖いです。痛烈な人間凝視に溢れています。
でも、ヤリマンの美少女が実は処女だって。いうのが最高に怖いブラック・ユーモアかしら。
ワシも明日からは体を鍛えねばならんな。
79<292>「スティル・クレイジー」。
ブライアン・ギブソン監督。スティーヴン・レイ。ビリー・コノリー。ジミー・ネイル。
70年代はよかったか?
いやあ、みんな内ゲバばっかりやっていたよ。
おかげで、みんな新しい時代に乗り遅れてしまった。
要するに、ワシらだよ。
音楽だってそうだべ。
みんな小さな差異にこだわって喧嘩ばっかりやって先細ってしまった。
そんなロック・グループが「ストレンジ・フルーツ」。
ビりー・ホリディじゃないんだぜ。
そいつらが夢よ再びって、オジサン・バンドのリベンジを始める。
そりゃ、失敗するはずだが、映画だから見事に復活する。
そのドラマはかゆいところに手が届くくらいに人間像を見事に描いていく。
イケテルぜ。
■4月30日(日)
78<291>「アナザヘヴン」。
飯田譲治監督・脚本。江口洋介。原田芳雄。市川実和子。柏原崇。松雪泰子。柄本明。
どうも世の中、悪意って奴は伝染するらしい。
あ、これって、「破線のマリス」 からの受け売りだけど。
人間の心の中にある悪意を<未来からの人間>でもなんでもいいんだけど
具象化すると、こうなるようだ。
こうした悪意に打ち勝つものは無垢な人間の愛というか真心らしい。
映画は若干の新しい意匠を凝らしているが、こうした古い構図を打ち破るものではない。
謎の猟奇連続殺人事件。
追うのは昔気質の刑事と、元犯罪マニアの若い美男刑事。
だが、超能力者らしい犯人は次から次へと姿を変えて事件を起こしていく。
そして、犯人は若い刑事が好きなのだ!
テーマは愛だから、当然、悪意を愛が破るように犯人に打ち勝つ結末は当然か。
映画が面白くないかって、言えばそうじゃない。
次から次へと続くスピーディーな展開に飽きることない。
だが、それまで。
ただ、天使役の市川実和子の体当たり演技にはヘタウマな味があった。
■4月24日(月)
77<290>「ボイスレター」。
デヴィッド・カーソン監督。パトリック・スウェイジ。ジア・カリデス。キム・マイヤーズ。
アメリカには死刑囚を励ますボイスレターというのがあるのだそうだ。
差出人と囚人はいわば聖母と迷える子羊。まあ、擬似母性愛に包まれる。
だが、囚人が差出人を裏切り、自由になって監獄を出てきたら?
どうやら恐ろしい復讐劇が始まるらしいのだ。
でもねえ、なんかピンと来ないんだなあ。
仮に囚人が別にボイスフレンドを持っていたからって怒るか?
文通の世界って、たいてい多くの人とやっているんじゃないの?
だから、怖い映画だけれど、リアリティを感じないのだなあ。
ついでながら、途中で犯人も、結末もわかってしまったのだ。
この小道具はきっと後で使われるぞ、って思ったもんね。
かなり鈍いワシにもわかるようじゃ、少し甘いぞ。
■4月23日(日)
76<289>「ヒマラヤ杉に降る雪」。
スコット・ヒックス監督。イーサン・ホーク。工藤夕貴。ジェームズ・クロムウェル。マックス・フォン・シドー。
「シャイン」 の監督によるヒューマニスティックな力作というべきか。
第2次世界戦争の際、日系人が強制収容所に送られたことはよく知られている。
その傷が癒えない戦後間もない頃、ワシントン州の小さな島で一人の漁民が死んだ。
容疑者になったのは日系人の青年だった。
その妻ハツエを密かに見守っている白人青年がいた。
彼はハツエの幼なじみで新聞記者のイシュマエルだった。
映画は戦争に於ける日系人差別とそれがまだ消えない現実を。
そして、そのことで報われない2人の愛を描きます。
差別告発はもちろん軸にはなっています。
でも、基本的には人間を愛することの難しさを描いた作品といえます。
人種や民族によって、それから波及するいわれのない偏見によって。
理解し合うことの難しさ。
その困難をしっかり見据えた上で、でも、それを超えようとすることの大切さを示します。
暗い映画です。たぶんしばらく苦労します。
でも最後に、ちょっとだけですがカタルシスが来ます。
監督の優しさを感じました。
75<288>「ハーモニーベイの夜明け」。
ジョン・タートルトーブ監督。アンソニー・ホプキンス。キューバ・グッディングJr。ドナルド・サザーランド。
ルワンダの密林でゴリラの群れと行動して人間を2人殺した人類学者。
精神鑑定をすることになった若き医師は次第に彼の行動に興味を持ち始める。
彼は「支配する者」と「奪う者」に対して戦い自由を得ていたのである。
そのテーマはよく分かるのだが、精神を病む者を虐げる刑務所の実状。
あるいは出世競争に生きているエリートの自省など、いずれも中途半端だ。
たぶんもっと奥が深いのだろうが、いささか描き切れていない感じがした。
■4月22日(土)
74<287>「シャンドライの恋」。
ベルナルド・ベルトルッチ監督。サンディ・ニュートン。デヴィッド・シューリス。
アフリカからローマに来たシャンドライ。
夫が政治活動のため捕らえられ、家政婦をしながら医学を学んでいる。
雇い主はキンスキーという冴えないピアニスト。
だが、彼はシャンドライにひとめぼれ。
夫ある身と知らずプロポーズ。
ならば苦しい恋は尽くすことにある。
いやあ、尽くして尽くして竹の子生活。
そこまでやられりゃあ、女だって許しますわなあ。
そういう意味ではいい映画ですが、夫の立場もなあ、あるわなあ。
そういう意味では困った映画です。
取り敢えず、音楽がとってもいいです。
73<286>「ザ・ビーチ」。
ダニー・ボイル監督。レオナルド・ディカプリオ。ティルダ・スウィントン。ロバート・カーライル。
「トレインスポッティング」の監督のパラダイス探しの物語。
それにしてもタイって国には楽園がつきものなのか。
放浪の旅人たちが憧れているビーチがあると聞かされたリチャード。
フランソワーズとエチエンヌを誘い、探検を始める。
そこにはサルという女性が指導する旅人共同体があった。
ひととき、時間の止まった楽園の快楽に酔いしれるのだが。
やがて、そこには暴力が隠蔽されていることに気づく。
楽園は次第に悪夢の地獄と変わっていく。
この作品が高く評価されないだろう失敗作であることはいうまでもない。
陳腐な結末を知れば、若いときのハシカというイメージを吹っ切ることができないだろう。
しかし、この作品を見てある世代が必ず思い浮かべるのは、連合赤軍事件だろう。
いや、宗教的コミューンのなにがしかでもいい。
いずれにしろ、外部に開かれない共同性はそのテンションが高いほど
内部に対して必ず抑圧的に機能していく。
そのことを痛いほど、この作品は見せつける。
ロバート・カーライルのダフィが自死するだけに印象的だ。
私はなんとも暗い気持ちで映画館を出たのであった。
72<285>「スペーストラベラーズ」。
本広克行監督。金城武。深津絵里。安藤正信。渡辺謙。大杉蓮。浜田雅功。中山仁。
閉店間際のコスモ銀行に3人組が強盗に入った。
幼なじみの3人はいつの日か、パラダイスのビーチに行くことを夢見ていた。
銀行で人質を取ったが、中にいたのは結婚直前の女子行員やらテロリストたち。
彼らをまとめてスペーストラベラーズをデッチあげ警察との戦いが始まった。
3人はパラダイスを掴むことができるか。
ご存じ「踊る大捜査線 THE MOVIE」の本広監督がメガホンを取った。
「踊る」同様に小さな部分に徹底的にこだわっている。
小話やらエピソードが機関銃のように繰り出す。
そのリズムが次第に心地よくなってきたら、作品は成功か。
ソバカス顔の深津絵里が可愛らしく感じる自分って何なのか、困った。
テロリストの渡辺謙に、ひと暴れしてもらいたかったのだが。
■4月21日(金)
71<284>「フェリシアの旅」。
アトム・エゴヤン監督・脚本。ボブ・ホスキンズ。エレイン・キャシディ。アルシネ・カーンジャン。
フェリシアはイギリスに行くと行ったまま消息を絶った恋人を追ってやってきた。
だが、バーミンガムの町には男の姿はなかった。
工場の近くで親切にしてくれたチビデブの中年男に親切にされた。
彼の案内でフェリシアの旅の旅は続くが、次第に危険な匂いが漂いはじめていた。
アイルランド娘の運命は?
主演のボブ・ホスキンズがいいです。
つまり、人生失敗しちゃった男を見事に魅せます。
そして、その人生がいかにきれいに見えても砂糖菓子のような壊れ物であることを。
フェリシアはどうだろう。
彼女はアイルランドの持つ運命に、すなわち彼女自身に無頓着すぎるように見える。
その無垢さがついに男の狂った人生に終止符を打たせるのだが。
面白いとは思わないが、不思議な気持ちになった作品だ。
■4月19日(水)
70<283>「マーシャル・ロー」。
エドワード・ズウィック監督。デンゼル・ワシントン。アネット・ベニング。ブルース・ウィリス。
アラブ人テロリストによって、爆破事件が相次ぐニューヨーク。
FBI捜査官のハバードはその対策の先頭に立っている。
そこにアラブと通じているらしいCIA工作員のエリース、軍を動かすタヴロー将軍が現れる。
彼らに振り回されながら、ハバードはいかに事件を解決するか。
カメラは戒厳令下のアラブ人狩りを非情なまでに描きだす。
ここには軍事国家に対する批判が徹底的に込められている。
その意気やよし、というべきだが、作品の出来はよくない。
ニューヨークに下された戒厳令が、今ひとつピンとこない。
なんか締まらないのだ。
果たして戒厳令を指揮する将軍に、FBIやCIAが簡単に逢えるものか。
どうもうまくかみ合わないのだ。残念である。
■4月16日(日)
69<282>「グリーンマイル」。
フランク・ダラボン監督。トム・ハンクス。デヴィッド・モース。マイケル・クラーク・ダンカン。
スティーヴン・キング原作。
死刑囚が通る最後の緑色の廊下が通称グリーンマイル。
そこで看守主任として勤めていたポール・エッジコム。
彼は多くの人間を電気椅子に送ってきた。
だが、いつまでも心に残っているのが1935年のこと。
ひどい尿路感染症に悩んでいた年。
一人の黒人の大男の死刑囚ジョン・コーフィがやってきた。
彼は2人の女の子をレイプし、殺したという。
だが、暗いところが怖いというコーフィは優しく、不思議な癒しの力を持っていた。
ポールはコーフィの冤罪を信じていたが、処刑を避けることはできなかった。
いい映画ですが、長い映画です。
癒されるようですが、私は見終わって熱が出て寝込んでしまいました。
トホホ。
人間は愛を利用して人を殺し合っている。それが訴えているポイントです。
そして差別問題が色濃く出ています。
黒いからってぶち込まれ、フランスだからっていじめられ、先住民だからってからかわれます。
その痛みが伝わってきます。
人間の仕方なさ。
その上で、人間はどこかで捨てたもんじゃない、そういっている気がします。
いずれにしてもよくできたお話でしょうか。
もちろん、「ショーシャンクの空に」 のほうが傑作です。
■4月15日(土)
68<281>「ボーン・コレクター」。
フィリップ・ノイス監督。デンゼル・ワシントン・アンジェリーナ・ジョリー。クイーン・ラティファ。
ジェフリー・ディーヴァー原作の映画化。
事件捜査中に事故に遭い寝たきりの警官ライム。
彼が科学捜査をリードしてNY市警の堅物の掣肘を超えて真実に迫る。
奇妙な連続殺人。
骨を抜かれた犠牲者たち。
古びた証拠に残された犯人からのメッセージ。
これをいかに解き明かすか。
もちろん動けぬライムを助ける人間が必要で、手足となるのはアメリアという女性警官。
彼女がいいんだなあ。
ちょっとアシュレイ・ジャッドに似ているし。
ジョン・ボイトの娘さんでアカデミー助演女優賞を「17歳のカルテ」でもらったそうです。
デンゼル・ワシントンも皮肉屋の作家にして警官役を見事に演じています。
犯人がなあ、ちょっと意外だったというか。困る感じがしました。
もっと殺人にのめり込んでいる人物でいて欲しかったのですが。
67<280>「はつ恋」。
篠原哲雄監督。田中麗奈。原田美枝子。平田満。真田広之。佐藤允。
母親が25年前に書いたまま出されなかった一通のラブレター。
それを見つけた娘が、母親の初恋の相手を探す冒険を始める。
そして見つけた男に母親との再会を勧める。
うーむ。
もう少し頑張れば面白い作品になったのだと思うな。
17歳の娘は恋に破れて、母親の初恋に興味を持ち始めるのだが。
もっぱら探偵ごっこに熱中してしまう。
母親の初恋とパラレルに、娘の恋愛を転がすとテーマが重なり合っていくはず。
それが冒頭のシーンで娘のすべてが終わってしまうからだめなのさ。
母親と同じ相手を好きになるというわけでもなさそうだし。脚本が弱いと思う。
田中麗奈ちゃん。きれいでも可愛くもないけど、いいぞ。
佐藤允さんも田舎の白タクおじさんを好演しています。
失敗といえば真田広之さん。背景を捨象したのでしょうが、正体不明でした。
■4月14日(金)
66<279>「コヨーテ」。
ジョン・G・アビルドセン監督。ジャン・クロード・ヴァン・ダム。パット・モリタ。
これは誰が見ても西部劇である。
しかも映画の中でもサムライ映画の「用心棒」が出てくるほどだから。
言ってみれば「荒野の用心棒」である。
元戦士だったエディが先住民の血を引く旧友のジョニーに赤いバイクを届けに行った。
しかし、そこで見たものは無法者が我が物顔で支配する荒廃する町だった。
エディは2つのグループを対立させて、町に平和を取り戻そうとする。
ヴァン・ダムは頑張っていますが、今ひとつ脚本にアクというか粘りが足りません。
娯楽作であることは間違いありませんが、盛り上がりません。
■4月10日(月)
65<278>「ロルカ、暗殺の丘」。
マルコス・スリナガ監督・脚本。アンディ・ガルシア。イーサイ・モラレス。ジェローン・クラッペ。
スペインの革命詩人ロルカは内戦のスペインで殺された。
誰が彼を殺したのか。
スペインからプエルトリコに脱出した青年リカルドがその真相を探るため
故郷グラナダに戻る。
しかし彼を待ち受けていたものは、フランコ独裁の政治的な影たちであった。
そして、再会した人たちは誰もがロルカを崇拝するか畏敬していた。
その一方で、誰もが手を汚していた。
真実に最も深く傷つくのはリカルド自身だった。
この映画はロルカの物語というより、
人間が全体主義に囚われた時の怖さを鮮やかに映し出している。
そして体制が変わったときの人間の変節をも。
絶対の悪も善もない。
だからこそ人間は自分を、個を失ってはならないのだ。
作品以上に、その思想的メッセージが心に響いた。
■4月8日(土)
64<277>「真夏の夜の夢」。
マイケル・ホフマン監督。ルパート・エベレット。キャリスタ・フロックハート。ソフィー・マルソー。
うーむ。これはおとぎ話だな。
なんとも美術も音楽が素晴らしいし、映像がとってもしっとりしている。
そして、豪華なキャスト。ソフィー・マルソーはいいしミシェル・ファイファーも。
それでいて、なんでこんなに退屈なのか。
恋のから騒ぎも、この程度ではなんとも魅力不足なのだろうか。
いろいろ勉強にはなるけれど。
63<276>「スリー・キングス」。
デイビッド・O・ラッセル監督。ジョージ・クルーニー。マーク・ウォルバーグ。アイス・キューブ。
1991年湾岸戦争。
あれってなんだったんだ?
我々もそう思ったが、兵士もメディアもそう思った、らしい。
そこで、最後の戦いを始めたのが特殊部隊のゲイツ少佐。
狙うはフセインがクェートから強奪した金塊の山。
それに3人の兵士が従って、本部に内緒で独自作戦を敢行した。
彼らがそこで見るのは、イメージではない本当の生身の戦争だった。
これは戦争映画らしくない。くそリアリズムを振っ切っている。
でも、それでいて戦争の真実をたぶん描いている。
それにしてもアメリカをはじめ、フセイン、ルイ・ヴィトン、ベンツ、トヨタ、日産など
すべてのブランドを茶化しているのが画期的だ。
結局はアメリカ万歳となるのは仕方がないが、戦争の批評としては異色だ。
62<275>「NYPD15分署」。
ジェームズ・フォーリー監督。チョウ・ユンファ。マーク・ウォルバーグ。
ニューヨーク市警15分署で、チャイナタウンの事件を担当するチョウ・ユンファ。
そこに新人の白人刑事としてマーク・ウォルバーグがやってくる。
ユンファのチェン刑事はチャイナタウンのボスとつきあいがあり、裏も表も知り尽くしている。
だが、それはFBIもにらむ黒い交際らしかった。
友情と疑念の間を、非情な銃弾が飛び交うハード・ボイルド。
なかなか期待して見たのですが、なんか締まらないな。
この2人の刑事に本当の友情は芽生えたのか。
なんか疑わしいんだな。説得力が足りないっていうか。
香港映画なら、男たちの友情と非情をもっとうまく描くだろうなあ、って気がした。
61<274>「奇人たちの晩餐会」。
フランシス・ヴェベール監督。ジャック・ヴィルレ。ティエリー・レルミット。フランシス・ユステール。
おバカさんの中のおバカさんを晩餐会に集めて、おバカぶりを笑ってやろう。
上流階級のお遊びに、フランスの大蔵省に勤めるマッチ棒細工男が招かれることになった。
招待主のピエールは大喜びだったが、ゴルフのスイング中にギックリ腰に。
晩餐会は断念したが、家にやってきたピニヨンと話をしているうちに、大騒ぎに。
バカを笑っている人間が次第にバカになっていく。ここに真実を知る恐ろしさ。
でも大バカはやっぱり大バカ?
とにかく笑えてしまいます。見ているうちに次の笑いが沸いてきます。
人間喜劇にして、こりゃ、舞台劇ですね。
ピエールのリビングで繰り広げられるネバーエンディング・トラブル。
不幸のメビウスの輪っていう奴でしょうか。
そして、大団円と思えた瞬間の大どんでん返し。
脚本も役者も本当にいいですね。
もう少し女優陣も暴れて欲しいのですが、
ともかくバカの主人とバカの掛け合いが最高です。
■4月2日(日)
60<273>「U.M.A/レイク・プラシッド」。
スティーブ・マイナー監督。ビル・プルマン。ブリジッド・フォンダ。オリバー・プラット。
メイン州の湖に不思議な生物が住んでいました。
それを知っているのは、湖畔で暮らすおばあさんだけだったとさ。
ところがある時、湖底を調査していた人間が襲われたことから
警察や学者や森林監督官やら変な男やらがやってきて大騒動になりました。
そして、そこに集まった人たちは謎の生物を探しながら
お互いに心をうち解けあっていくのでした。
めでたしめでたし。
そんな物語です。
監督官には惚れるニューヨークの博物館の学者にブリジッド・フォンダ。
変な男にオリバー・プラットが扮しています。
これはホラーなのか、アドベンチャーなのか、ラブコメディーなのか。
なんかホームドラマみたいと言ったら誉め過ぎか。
■4月1日(土)
59<272>「スクリーム3」。
ウェス・クレイブン監督。ネブ・キャンベル。デイビッド・アークェット。コートニー・コックス。
例によって騒がしいホラーの完結編?です。
シドニーはウッズボロー事件を忘れるべく山中に暮らしているのですが、
ハリウッドがマネッコ映画を作りはじめたところに、
またしても連続殺人事件が発生。
ロスに降りてきた彼女は再び事件の標的にされるというわけです。
今回のテーマは人間は過去に復讐される−です。
怖いことは怖いのですが、大したことはありません。
できれば、もう少しお色気場面を増やすとかしなければもちませんね。
もともと青春映画なのですから、
「ワイルド・シングス」的にしなければだめでしょう。
トリックもホラー度も中途半端で、寂しいものがありますね。
58<271>「守ってあげたい!」。
錦織良成監督・脚本。菅野美穂。宮村優子。杉山彩子。白川みなみ。宮下順子。古尾谷雅人。
くじらいいく子の人気コミックの映画化。
自衛隊に入ったオチこぼれ娘たちの青春群像。
いや、アタシは菅野美穂ちゃんのファンですからねえ。
作品がどんなにつまらなくても、自衛隊のプロパガンダであろうと見ますよ。
盛り上がらないんだなあ。
この種の物語って、ダメな人間がいかに再生していくかがテーマですよね。
でもそれを見事に裏切って、人間的に成長するのかしないのか。わからんのだ。
「自衛隊はこれで大丈夫か」って?
いやあ、だめでしょう。
それがせめてもの救いか。
観客にはやはりその筋の制服系も見え、防衛庁の協力ぶりがわかります。
天才・菅野美穂。全く天真爛漫にやっています。
菅野ファンのオタクにはたまりませんね。
■3月27日(月)
57<270>「救命士」。
マーチン・スコセッシ監督。ニコラス・ケイジ。パトリシア・アークエット。ジョン・グッドマン。
フランクはニューヨークの救急救命士。
彼は自殺、他殺、麻薬中毒など死とギリギリの場所にいる人間たちと日々接している。
だが、彼の脳裏には助けられなかった人間たちの霊が取り憑いている。
とりわけ冬の道で倒れた少女ローズのことが忘れられない。
街の女たちを見てもすべてローズに見えるときがある。
そんなとき、心拍停止になった老人を運び、その娘メアリーに出会う。
ニコラス・ケイジとパトリシア・アークエットの夫婦共演だとか。
テーマは好きですね。
オレは唯物論者だが、成仏できぬ霊が地上を彷徨っていることを疑わない。
たぶん、恨みを残して死んだ人たちの思いはどこかに残っているはずだ。
それくらいは世界の善意を信じているというわけさ。
でもね、この映画はいかんな。
フランクの葛藤がやっぱりわからないんだ。
一人勝手に追い込まれているだけで、その深まりがないんだ。
メアリーとのやすらぎの時も、なんかご都合主義的に見えた。
監督の 「クンドゥン」 にも感心しなかった。
「カジノ」 にしろ名作は最高なのに。
最近作はどうも相性がよくない。
パトリシア・アークエットも 「グッバイ・ラバー」 のほうがよかった。
■3月25日(土)
56<269>「ストレイト・ストーリー」。
デビッド・リンチ監督。リチャード・ファーンズワース。シシー・スペイク。ハリー・ディーン・スタントン。
アイオワに住む73歳の頑固爺さんアルビン・ストレイト。
ウィスコンシンにいる兄ライルが倒れたと聞いて会いに行くことを決意する。
兄とは10年間も絶縁していた。しかもアルビンは足が悪く、運転免許もない。
そこで彼はちっぽけなオンボロのトラクターで560キロの旅を始めるのだ。
そこで出合う様々な風景、そして人々。見上げれば広がる満天の星空。
なんとも美しく感動的だ。本当だぜ。
デビッド・リンチらしくないとまじめさが評判のこの映画だが、そうだろうか。
オレはこれは気の触れた人間の相当怖い物語だと思った。
だいたい車で行くよりオンボロ・トラクターで560キロ旅行するほうが、体に悪いだろう。
普通そんなことしないだろう。高速道でリヤカー曳くようなもんだ。かなり危ない。
しかも、この爺さんは戦争中はスナイパーで、自軍の偵察兵を誤射し殺した経験を持つ。
その良心の呵責のようなものがいつまでも消えない。いや消そうとしていないのだ。
戦争の記憶を消そうとしている人間を糾弾するのだ。つらい。
そして娘は火事を出して、保護者失格となり子供4人を手放している。
その娘をしっかりものだという。優しすぎる。全く。
美しい物語の背後には、残酷な現実と、狂気がある。この美しさは怖い。
■3月21日(火)
55<268>「ナビィの恋」。
中江裕司監督。西田尚美。村上淳。平良とみ。登川誠仁。平良進。
東京から沖縄・粟国島のに戻ってきた奈々子。
しかし、一緒の船に乗った中に謎の老人がいた。
実はそれは祖母ナビィの60年前の恋人サンラーだった。
村の占いで引き離された大悲恋の過去を持つ2人は再び再び恋の炎が燃え上がりそうだった。
祖父はその大恋愛を知っているのか三線を弾いて自分を慰めている。
村は再び、2人を引き離そうとする。
一方、奈々子は居候の風来坊に次第に好意を持ち始めていた・・
ということで、物語はもの凄い結末になるのです。
あたしゃあ、たまげました。
70過ぎたじいさまとばあさまが愛があれば船酔いも平気だなんて。
そんな物語の凄さよりは、音楽ですか。
祖父役の登川誠仁さん、仕事に行くときは三線で米国国歌を弾くわ、なんでも唄にするわ。
スーパースターぶりを見せつけます。
このほか、沖縄オペラの兼島麗子さん、沖縄民謡の嘉手苅林昌さんらが堪能させてくれます。
主役の西田尚美ちゃん。「ゴジラ2000ミレニアム」もよかったが、こちらは自然な感じでかわいいです。
■3月20日(月)
54<267>「ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY」。
村石宏實監督。長野博。吉本多香美。高樹澪。芳本美代子。川地民夫。
いや、見るつもりはなかったのだけれど。つい、出来心で・・・。
この種の特撮モノってコスプレ系のフェチにはたまらないというけれど。
巨人カミーラも、ホットパンツの看護婦?も、なかなかよかったなあ。
お話はウルトラマンティガが最後の戦いを終え、人間のダイゴとしてレナと結婚直前に。
しかし、超古代遺跡で邪悪なカミーラ、ダーラム、ヒュドラの闇の戦士が復活していた。
3000万年前、ティガもまた闇の戦士とともに古代文明を破壊していたダークだった。
果たしてティガは光の戦士に戻れるか、それとも闇の戦士のままになるのか?
そこにはカミーラとレナのティガを巡る愛の葛藤があった。
当然、愛の力で光の世界に戻るんですが。
特撮はぎこちないのですが、楽しめますね。
それになんちゅうか、暗黒舞踊やアングラ舞台を見ているような感じがあるのです。
「皆月」 で体当たり演技の吉本多香美さん。熱烈キス・シーンありで頑張っていました。
おや、芳本みっちょん、必死の悪役ですが、今ひとつ迫力不足でした。
■3月19日(日)
53<266>「アイ・ラヴ・ユー」。
大澤豊&米内山明宏監督。忍足亜希子。田中実。岡崎愛。不破万作。黒柳徹子。宍戸開。
実は偏見があった。
正直言って、世界で初めてろう者と聴者の監督が共同演出した、なんて宣伝されても。
こうした部分は表層的な差別であり、映画的には素材以外のものではない。
それを踏まえた上で、なかなかの感動作だ。
聴者の夫と子供のいる、ろう者の主婦。
彼女が周囲の偏見や自分の弱さに格闘しながら友人たちと、ろ者劇団を成功させる。
ラストシーンまで引っ張っていく脚本もうまい。
子供の視点、聴者の視点、ろう者の視点、家族の視点などが重層的に提示されている。
手話の演技というものが新鮮でもあった。
主役の忍足亜希子さんの芝居は、熱演であった。感情表現も十分すばらしい。
ただ、黒柳徹子やら、その筋のエライさんが出てくると興ざめであった。
いろんな意味で不愉快であった。
劇場はピカデリー2であったが、この小屋では珍しい大入りであった。
普段の劇場では声もあがらない部分で笑い声もきけ、うれしかった。
■3月18日(土)
52<265>「クッキー・フォーチュン」。
ロバート・アルトマン監督。グレン・クローズ。リブ・タイラー。チャールズ・S・ダットン。ジュリアン・ムーア。クリス・オドネル。
米国南部の小さな町。至る所に南北戦争のメモリアルが残っている。
そこで、クッキーおばさんが愛する夫の後を追って自殺した。
ところが、欲に目がくらんだ姪のカミールが殺人事件にデッチ挙げたから大騒ぎに。
身辺の世話をしていたウィリスが犯人にされてしまう。
家出していた姪のエマも戻ってきていて一緒に留置所に入る。
そこで、犯人探しとともに隠されていた事実が次々と明かされていく。
なんともディープな南部の物語。
黒白の差別あり、ブルースあり。
白い爺ちゃんの34人目の孫が黒い肌だなんて!
でも本当はみんな知っているらしいところが、一種の共同体的だ。
田舎の保安官事務所はいつのまにかゲームセンターになっていたり。
劇の「サロメ」を狂言回しに、話は面白く転がっていくのだが、
登場人物のなんとも濃い人生観が心地よい。
「ガープの世界」 のグレン・クローズ、健在なところを見せてくれました。
■3月16日(木)
51<264>「ロッタちゃん はじめてのおつかい」。
ヨハンナ・ハルド監督・脚本。グレテ・ハヴネショルド。リン・グロッペスタード。
えっへん。わたしはロッタちゃんよ。
ママはいじわるだから。家出することにしたの。
ぜったい、帰ってやるもんか。
ということで、始まった大冒険。
「ロッタちゃんの引っ越し」「ロッタちゃんのクリスマス」「ロッタちゃんの復活祭」という
3つのお話からなる。
スーパー5歳児は「いやだもん」「なんでもできるもん」ってチャーミングに決める。
おにいちゃんもおねえちゃんもロッタちゃんにはかなわない。
スキーのスラロームは下手だけど、お色気たっぷりツイストツイスト。
パパもママも困り顔が、明るく変わります。
なんたって、ロッタちゃんは楽しいから。
ブタのぬいぐるみ片手に、天衣無縫にいっちゃうのだ。
■3月15日(水)
50<263>「破線のマリス」。
井坂聡監督。黒木瞳。陣内孝則。山下徹大。篠田三郎。辰巳琢郎。中尾彬。
テレビはただの現在に過ぎない。ああ、これは昔のテーゼね。
テレビはただのシミュレーションにしか過ぎない。これが今のテーゼだ。
付け加えると、それも悪意のこもったシミュレーションというわけさ。
このテレビ業界に於ける編集マジックを題材にしたサスペンスはどうかな。
ミイラ捕りがミイラになる。因果応報。
だけど、本当に怖いのはその人間たちを操る大きな手だよ。
この作品が弱いのはそこをやり過ごしてテレビ屋と視聴者を自戒させようとしていることさ。
黒木瞳のラストシーンはいけない。闘う女はあそこで笑っちゃだめさ。
このおさまりのいい場面が作品の失敗を語っている。
せっかく黒木瞳が全力疾走し、陣内孝則が迫真の狂気を演じたのに。
逃げてしまったよ、これでは。
オレってまだ「破線のマリス(悪意)」に気づいてないのかって?
■3月13日(月)
49<262>「氷の微笑」。
ステファン・エリオット監督・脚本。ユアン・マクレガー。アシュレイ・ジャッド。ジェイソン・プリーストリー。
困った映画だなあ。
なんちゅうか情報部員変じてストーカーになってしまったお兄ちゃんEYEと。
美貌だが満たされていないが故に男を殺してしまうお姉ちゃんジョアナと。
それぞれが欠落感を共有しあって接近していく。
いや、そう思うのはお兄ちゃんだけなんだけど。
お姉ちゃんはなんで簡単に人を殺してしまうのか。
わからない。わからないけど、いいんだ。美人なんだから。美人に謎はつきものだ。
文句あるかって。いや、ありません。
アシュレイ・ジャッド、七変化。カツラと衣装を変え、惜しげもなく肢体をさらします。
ちょっと、おばさんになる瞬間が気になりますが、
さりげないメガネのウエートレスが一番知的だった。
結局、最後は悲劇なのかハッピーエンドなのか。それもわからん。
でも、いいんだ。オレはアシュレイ・ジャッドのファンだから。
■3月12日(日)
48<261>「ブギーポップは笑わない」。
金田龍監督。吉野紗香。黒須麻耶。酒井彩名。三輪明日美。清水真実。
謎の女子高校生失踪事件。それに絡む死に神「ブギーポップ」伝説があった。
映画は残された4つの断片的な記憶を提示し、それがつなぎあわされていく。
地球の危機を救うという女生徒から変身したブギーポップを演じているのは吉野紗香。
ちょっと小柄だけれど、中性的な魅力がいっぱい。
なんか壊れる前の内田有紀ちゃんみたい、ったら失礼か。
宇宙的な存在のエコーズとか、いささか超現象的な部分はどうでもいい。
結局は高校生たちの不安な心を、断片として巧みな比喩で捉えているといえる。
それにしても女子高校せー勢揃い。
青春映画だけれど、グラビアを見ているような楽しさがある。
不純ですけれど。取り敢えず、とても新鮮で、そこに星一つです。
47<260>「オサムの朝(あした)」。
梶間俊一監督。中村雅俊。手塚理美。石田ひかり。石橋蓮司。榎木孝明。原田隆二。
森詠の原作を奥山和由がプロデュース(たぶん)。
時は今と昭和29年。
技術者としてやてきた修は突然、子会社に配転された。
なんとも得心のいかない彼は子供時代を過ごした那須への旅に出る。
その途中で競争社会に追われて一人旅をしている少年直樹と出会う。
修はオサムだったころの彼の少年時代を語るのであった。
少年の日は輝いていたとは、誰もが感じる昭和的な回顧だろう。
リストラの風が吹き荒れる平成の今だからこそ思い出は美しくなる。
だが、この作品への印象を言えば、そうした甘さは確かに隠しきれない。
その一方で、、貧しさからはい上がろうとする半面、
ひたすらに生きていたことの輝きは、あのころ日本には確かにあったと思うのだ。
もちろん、2つの時代を比較して何かを語ることの優越性は失効している。
現代の困難さの中で未来を語るのでなければ、凡庸さを超えることはできない。
それにしても、あの野山を駆けめぐった少年たちは今どこにいるのだろうか。
■3月10日(金)
46<259>「アメリカン・ヒストリーX」。
トニ・ケイ監督。エドワード・ノートン。エドワード・ファーロング。ビバリー・ダンジェロ。
泣いた。そりゃ、みんなが泣くとは思わん。だが、オレは泣いた。
まず。<信>ということの難しさについて。
父を黒人に殺された兄はナオナチのアジテーターとなる。
だが、彼は黒人2人を殺して入獄した後、自らの誤りに気づき組織から脱会する。
ところが、彼をカリスマと崇めていた組織は彼を裏切り者と糾弾する。
そして弟もまた組織に入ってしまっていた。
彼は自らの業の深さを感じるのだが、自らの力では引き戻ることができない。
オレはここに泣いた。40、50代で泣いた人間は多かったのではないか。
「我が心のよくて殺さぬにはあらず」ってのが親鸞の言葉だったと思う。
逆に、自分の心が悪くて殺したわけではないのだ。でも死んだ者は帰らない。
すべてを決めるのは関係の絶対性だけだ。
でも、事実はついて回る。オレたちは逃げられない。だから泣いた。
2つ目。<組織>というもののアポリアについて。
組織は本来、人間を解放し、自己実現を助けるためにあるはずだ。
しかし、いつか、組織が人間を束縛するものに変わる。
オレは今なお内ゲバや内々ゲバを続けている人たちがいることに泣いた。
悲しいことだ。
これはアメリカの話だろうが、それ以上に我々のもう一人の物語Xである。
45<258>「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」。
アナンド・タッカー監督。エミリー・ワトソン。レイチェル・グリフィス。
ワシは音楽に疎い。だから、本当も嘘もジャクリーヌ・デュ・プレについて無知識。
だが、人間ドラマとしては最高に面白い。というか感動した。
ジャクリーヌは天才じゃないんだね。もの凄い努力でチェロ奏者となった。
だが、彼女は音楽家になることで、普通の愛と、そして健康を失っていく。
それをライバル心を抱きながらも、優しく見守る姉。
これは2人の葛藤と姉妹愛の物語である。
病に苦しむエミリー・ワトソンの熱演、痛々しい。
オレも最近は病人には優しいのだ。
レイチェル・グリフィス。さて、今回はやや性格俳優になってしまった気がする。
■3月6日(月)
44<257>「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」。
ヴィム・ヴェンダース監督。ライ・クーダー。イブライム・フェレール。ルベーン・ゴンサレス。
これはメイキング・ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ・アルバム・ムービーである。
もちろんドキュメンタリーを装っているが十分に計算されている。
なにしろヴィム・ヴェンダースである。
「ベルリン・天使の詩」の作家である。
音楽と人生のコラボレーションによって見事にドラマを生み出していく。
登場人物はいずれも老ミュージシャンだから年輪たっぷりの生き様はある。
だが、それ以上にVBSCが魅力的なのはそれらの個性が集まった時に
生まれる得も言われぬ共同音楽空間である。
思うに、キューバ音楽とは労働歌が源流にあるだろう。
一人の働く男が声を上げると、周囲から合いの手が入る。
それが、ポリフォニーとなって広がっていく。
そして、労働は洗練されると舞踊となる。それが心地いい。
背後に写るカリブ海、そしてチェ・ゲバラの看板がさびしいハバナの町。
「われわれの革命は永続的だ」というスローガンのむなしさ。
アムステルダム、ニューヨークのカーネギーホールの歓声の落差。
それって本当にブルースだ。ちょっと泣けるぜ。
■3月5日(日)
43<256>「ケイゾク/映画」。
堤幸彦監督。中谷美紀。渡辺篤郎。鈴木紗理奈。田口トモロヲ。大河内奈々子。
なにしろテレビドラマなんか見ないのだから予備知識が不足している。
「踊る大捜査線」もそうだったが、これはテレビの延長で見られているらしい。
そのせいか、説明不足ばかりなのに、多くの若い観客にうけている。
捜査弐係の係長・柴田と真山のコンビが繰り広げる刑事ドラマ。
謎解きの最後にはしつこいほどの観念ドラマ延々と続く。
超常現象と現実がクロスするのがいいのか悪いのか。
スラップスティックに超能力やらサイコやら青春ドラマやコントやらが展開する。
いや、説明不足だから分からないのではなく、実はよく分かるのだ。
そのセンスの良さがこの映画の人気なのかもしれない。
42<255>「橋の上の娘」。
パトリス・ルコント監督。ダニエル・オートゥイユ。ヴァネッサ・パラディ。
パリの名もない橋の上に自殺しようとする娘がいた。
それを止めたのは中年のナイフ投げの男だった。
捨てる命ならと、娘はナイフ男の的となった。
モナコ、サンレモと2人の旅が始まった。
しかし、娘は若い男に走り、中年男は捨てられてしまう。
モノクロームの世界で繰り広げられる濃密な愛の形。
「ハーフ・ア・チャンス」という映画でドロン&ベルモントの大物の娘役だった。
そのヴァネッサ・バラディが陰があるがセクシーな女を演じている。
<ナイフ>はどう見ても男根である。
それが体を貫くイメージはセックス以外のものではないだろう。
馬鹿な女と、止める男。
だが、本当は男のほうが弱く夢見ているのだ。
そんなことをドラマチックに描いて官能的であった。
■3月1日(水)
41<254>「シビル・アクション」。
スティーブン・ザイリアン監督。ジョン・トラボルタ。ロバート・デュパル。ウィリアム・H・メーシー。
示談金を稼ぐのが得意の辣腕の弁護士シュリクトマン。
ある時、彼はラジオ番組で公害被害に苦しむ女性からの電話を受ける。
乗り気ではなかったものの、背後に大企業がいるのを見て、金になるとにらむ。
しかし、被害者たちの目的は金ではなく、謝罪と責任の明確化だった。
大企業は示談での取引をちらつかせる。
それを拒んだ法律事務所は破産状態に追い込まれるのだった。
「正義の味方」ってのは別に最初からいるのではなく
一種の必然のように生まれてくるものだ。
そしてその根底には勇気があるのだ。
映画はそう言っているように見える。
訴訟社会の米国を典型的に描きながら、その最良のスピリッツを忘れない。
これが実話に基づいているとすれば、米国はやはり凄いというべきか。
40<253>「マグノリア」。
ポール・トーマス・アンダーソン監督。トム・クルーズ。フィリップ・シーモア・ホフマン。ウィリアム・H・メーシー。
これはなんとも一言では言えない。
なんか本当に新しい映画が登場したと感じるね。
映画の心を日本語にしちゃうとチンケだけど、
要するに「愛を乞う人たち」だろう。
セックスのカリスマや心優しい警察官や天才クイズ少年や元天才少年や
そのクイズ司会者やプロデューサーやらいろいろな人が出る。
彼らは全く関係なく動いているがみんな過去への悔い・本当の自分への渇望に囚われている。
その彼らの姿を通して、人間の忘れ物を探してみせる。
クライマックスの同時進行的な<雨>がショッキングというかシュールだ。
こんなまとめ方ってあり? っていう強烈な一撃だ。
3時間を超す超大作。それでいて飽きない。テンポがいいのだ。
監督のポール・トーマス・アンダーソは「ブギーナイツ」のメガホンを取った。
そのブギーナイツ組が多数、出演しているのは当然か。
それにしてもブギーナイツの主役の35センチ砲も凄かったが、
セックスのカリスマ役のトム・クルーズのパンツ姿も凄い。さすが大物か。
シークエンスがどれも良くできていて、監督のストーリーテラーとしての才能が光る。
ちなみにマグノリアとはモクレンの仲間の南部の花だとか。
■2月29日(火)
39<252>「スリーピー・ホロウ」。
ティム・バートン監督。ジョニー・デップ。クリスティーナ・リッチ。
18世紀末米国はニューヨーク郊外の村スリーピー・ホロウ。
そこでは首なしの騎士が村人の首を刈るという恐ろしい事件が起きていた。
NY警察の捜査官イカボッドはその奇妙な事件を解決すべく乗り込んだ。
しかし、村人たちは非協力的だった。
その中で地主の娘カトリーナと被害者の子供マスバスの力を得て真相に迫っていく。
ジョニー・デップが神経質な探偵役をきっちりと演じています。
そしてクリスティーナ・リッチも娘魔女役を演じて光ります。
いやあ、それにしてもわかっていても怖い。
こんなに簡単に首を切っていいのでしょうか。
監督はある瞬間から首切りの快楽に溺れてしまったかのようです。
一番怖いのは「鉄の処女」ですか。
デップの両手に残された傷跡。フラッシュバックして「鉄の処女」が開いた瞬間が怖い。
これってマザコンの男が少女に母を見いだす物語とも読めます。
マザコンは科学の力が及ばないってことか。
いやあ、取り敢えずはホラーであり探偵小説的ではありますが。
金をかけていながら、気負いがなくコンパクトにまとめられたのも気に入りました。
■2月27日(日)
38<251>「ノイズ」。
ランド・ラビッチ監督・脚本。ジョニー・デップ。シャーリーズ・セロン。ジョー・モートン。クレア・デュパル。
NASAの宇宙飛行士スペンサー・アマコストは地上200キロ上空で事故に遭遇した。
船外作業中に2分間交信が途絶えたのである。
地上に戻ってきたスペンサーに対して妻のジリアンは奇妙な感じを抱いていた。
事故にあった同僚のアレックス夫妻は悲惨な死を迎えていた。
「彼は夫と違うのではないか」
そういううちに双子を妊娠してしまう。
夫が夜ごと聞くノイズ。その秘密は何か。
てな具合で絶妙なミステリーが展開します。
そして「やっぱりね」的な怪しい結末となるのであります。
つまり、これは<他者>をどう受容していくかという問題でしょう。
そして最終的には自分自身が本当は<他者>であることに気づくのですね。
この主題はとても重いのですが、作品は語り切れていない憾みが残ります。
ジョニー・デップは相変わらずカッコイイです。
シャーリーズ・セロンもオッパイが気になるほど魅力的です。
なんか肩すかしを食らった終わり方だけが残念です。
■2月25日(金)
37<250>「13ウォリアーズ」。
ジョン・マクティナン監督。アントニオ・バンデラス。ダイアン・ベノーラ。オマー・シャリフ。
アラブから北方の未開の地に大使として行くことになったイブン。
だが、彼は途中で恐ろしい魔物によってその地が破壊されていることを知る。
しかも、その地を救う13人の助っ人の一人として選ばれてしまった。
文人であるイブンは次第に言葉を覚え、戦士として成長していく。
ノースランド版の「7人の侍」というところでしょうか。
砦を作り、襲いかかってくる騎兵たちとの闘いが大きなスケールで描かれます。
戦闘シーンは重厚でお金がかかっている感じはします。
ただ、それだけかなあ。
ロマンスもありませんし。
アニミズムとか、一神教と多神教とか、ヨーロッパとアラブの文明度が逆転しているとか。
結構珍しいところはありますが、それほどのインパクトはありません。
ちなみに「13ウォリアーズ」ですが、原題は「13番目の戦士」ですので、
当然バンデラスが主人公と言えます。彼だけは分かりやすい。
でもね、13人の個性がわかりやすく差別化されているわけでもなく、
やっぱり「7人」というキレのいい数字には及ばないのではないでしょうか。
■2月24日(木)
36<249>「ガラスの脳」。
中田秀夫監督。小原裕貴。後藤理沙。名取祐子。河合美智子。榎木孝明。林知花。
手塚治虫の原作を映画化した。
中田監督は「リング」シリーズでおなじみだ。
飛行機事故に遭遇しながら奇跡的に誕生した由美
一方、喘息で入院していた少年・雄一。
彼は病院で眠り続ける由美を見つけ、キスを贈り始めた。
眠り姫の目を覚まさせる王子様になるのだ!
由美が17歳になったとき奇跡は起こった。
彼女は目を開き、言葉を話し始めたのである。
しかし、彼女が意識を保てるのは、わずか5日間だけだった。
切なくも密度の濃い2人の時間が生まれた。
これはメルヘンだと思う。
愛の奇跡というこの物語が信じられない人は多分子供だましだと感じるだろう。
僕は信じた。人間の無限大の奉仕はいつか実る日があることを。
しかし、小原少年はよくやったが、なにしろ後藤理沙ちゃんがダメだった。
ちょっと間が抜けた感じがして、愛の切実さを出し切れなかった。残念。
中田監督によって随所に「リング」の貞子ポーズを垣間見ることができる。
もしかして、由美が貞子になっていたら−と不安が走る瞬間もあった。
榎木孝明を含めキャスティングに失敗した。
清冽な物語を惜しいところで描ききれなかったように思う。
■2月23日(水)
35<248>「スパイシー・ラブスープ」。
チャン・ヤン監督。リュイ・リーピン。プー・ツンシン。シュイ・ファン。シャオ・ピン。
中国インディーズ映画だそう。
韓国の「シュリ」が評判ですが、こちらも捨てがたい。
高校生?の初恋、熟年の再婚、倦怠夫婦の玩具狂い、
そして両親の離婚を阻もうとする少年、トレンディな2人の出会い。
5組の愛情の揺れをオムニバスで描く。
シンプルな物語ですが、結構、いいです。でも。
中国って、もう西欧ですね、って感じで都市化してしまっています。
しかも政治的な臭いが全くない、妙な透明感があります。
中流気分がみなぎっています。これは嫌いだ。
こんな作り方は結局、中国的限界のような気がします。
一番好きなのは第1話の音フェチ少年と白い服の美少女の初恋です。
この女の子が本当に純粋な可愛さがあります。もちろんオヤジの幻想だけど。
34<247>「13F」。
ジョゼフ・ラスナック監督。クレイグ・ビアーコ。グレッチェン・モル。アーミン・ミュラー・スタール。
製作は「インデペンデンスセイ」「ゴジラ」のローランド・エメリッヒ組です。
ダグラス・ホールはボスのフラーとともに、ロスのビルの13階で
コンピュータによる仮想体験ソフトを開発していた。
だが、ある日、ボスは何者かに殺されてしまい、彼は重要容疑者にされる。
実験では1937年のロスが仮想世界で作られていたので、彼は自らそこに移動する。
だが、その実在の世界と仮想世界の間には怪しげな双方向性があった。
そしてボスの娘を称する謎の女性が現れては消える。
調べていくうちに、この世には果てがあることもわかった。
そのことを知った彼もまた何者かに狙われ始めるのだった。
なかなかスリリングな、そしてとても良くできたSFという気がします。
コンピュータゲームの登場人物たちが自らの運命に気づいたら?
そんな想像力がとっても魅力的です。
現代をシミュラークルの時代と考えれば、この発想は現代を撃つものでもあります。
私って誰?
それは幻−。
そう言っているような感じがします。とてもいい作品です。
■2月19日(土)
33<246>「ホーク」。
ブルース・ロー監督。沢田謙也。三船史郎。三船力也。チャン・チーラム。スー・チー。テレサ・リー。高嶋政伸。
カルト宗教団体の最高指導者が香港で拘束されていた。
その身柄を巡って、テロリスト化した宗教団体と
香港警察そして一匹狼の日本の捜査官との壮絶な戦いが繰り広げられる。
舞台はテレビ局に移り、ギリギリの攻防が続く。
率直に言います。
これは明らかにかのオウム真理教のテロリズムを題材にしています。
その彼らもどきが香港で化学物質を作り、香港を潰そうとします。
日本人テロリストたちは徹底的に残虐で非道です。
そのせいか日本公開には手間取っているとか。
香港スタッフによる日本人キャスト映画。
日本人が作ったら、こんなに歯切れよくいかなかったと思うほど、面白い作品です。
32<245>「GO!GO!L.A.」。
ミカ・カウリスマキ監督。ジュリー・デルビー。デイヴィッド・テナント。ヴィンセント・ギャロ。ヴァネッサ・ショウ。
スコットランドで葬儀屋をしている青年リチャードは旅の女性に一目惚れ。
彼女はロサンゼルスから来た女優の卵バーバラだった。
そこで、すべてをなげうってL.A.へ。
作家と名乗ったものの、死亡記事を書いているだけ。幻の作品「湿った自殺」(?)を持っているだけ。
2人はプールの掃除人(ヴィンセント・ギャロ)に助けられ、結婚する。
しかし、なかなか芽のでない2人には、さまざまな人間関係がからみトラブルが絶えない。
だが、落ちるところまで落ちた青年には逆転の一発が待っていた。
面白い映画です。
ハリウッド周辺にいる人間の生態をシニカルに描いています。
もちろんジョニー・デップまで本人の役で登場します。
そしてヴィンセント・ギャロが「虚飾の世界」を存在感たっぷりに撃ちます。
プライバシーまで商売にしてしまう映画業界って。
きっとビョーキです。
31<244>「中華英雄」。
アンドリュー・ラウ監督。イーキン・チェン。ニコラス・ツエー。スー・チー。クリスティ・ヨン。
両親の仇を討ったものの殺人犯にされ米国に渡った青年、華英雄。
しかし、待ち受けていたのは中国人を奴隷同然に扱う過酷な労働だった。
そこを逃げ出した彼は「孤独の星」の元に生まれたことを知り、姿を消すのだった。
凄いです。
基本的にはカンフー・アクション映画。
敵役には日本忍者もどきが登場。壮絶な水芸のマトリックス的な対決シーンもあります。
そして自由の女神上でのクライマックス。
これでもかこれでもかというサービス精神いっぱいの作品。
香港映画のやる気を感じさせてくれます。
ちょっと大河ドラマ風の一代記的な語りがしつこいのが気になりますが、堪能できます。
■2月18日(金)
30<243>「ゴッドandモンスター」。
ビル・コンドン監督・脚本。イアン・マッケラン。ブレンダン・フレイザー。リン・レッドグレイブ。
名作「フランケンシュタインの花嫁」の監督でありながら、謎の引退をした伝説のジェームズ・ホエール。
発作を起こし、死を身近に迎えつつある老人の最後の輝きに迫る。
主演はなにしろイアン・マッケランさん。まさに男色家の役を本物が演じてしまうところが凄い。
相手方の元海兵隊員の庭師にはブレンダン・フレイザー。
こちらは「ハムナプトラ」のマッチョマン。絵のモデルを依頼される。
でもマッケランが言う。「君はオレの好みじゃない」。
確かに、こうしたアホくさい顔はインテリジェンスいっぱいのゲイとは無縁だよなあ。
主人公は貧しかった少年時代や映画監督時代を思い出しては錯乱する。
ちょっとホモセクシャルな挑発が多すぎて困ります。
正直いって疲れました。
29<242>「蛇女」。
清水篤監督。佐伯日菜子。夏生ゆうな。石橋保。諏訪太郎。大川浩樹。
モデルの平野文が出合う不思議な体験。
ある時、仕事先で皮膚の老化防止を研究している科学者の一樹と一緒になる。
誘われて彼の家を訪ねるが、あやしい気配を感じるのだった。
そして、再び訪ねた家には「妹」という謎の女がいた。
一樹に惹かれながらも、次々起きる奇怪な現象に心が揺れるのであった。
そして、真実を知ろうと最後の決着をつけようとするが。
怖いです。一種の都市の伝説みたいなものです。
なんせ蛇女ですから。基本的にはネタバレです。
怖い怖いといって楽しむのがいいのでしょう。
冒頭のシーンを見ただけで、最後の運命もわかってしまいます。
佐伯日菜子さん。実物が超カッコイイです。映画もいいですが。
監督は「ウルトラQ」系の出身。こちらもなかなか、いい男です。
28<241>「トイ・ストーリー2」。
ジョン・ラセター監督。声:トム・ハンクス。ティム・ロス。ジョン・キューザック。
「トイ・ストーリー」の第2弾。
例によって3DCGが冴える。
主役のカウボーイ人形・ウッディと宇宙戦士のバズのコンビが繰り広げる友情の冒険ファンタジー。
ウッディはご主人のアンディ坊やに、ちょっと見放され気味になり、ひょんなことから変態オモチャ屋の元に。
そこで、かつての仲間たちに出合う。
一方、バズたちはウッディを取り返すべき冒険の旅を開始する。
物語としてもよくできているうえ、やはり3Dが素晴らしい。
やっぱりコンピュータの力と人間の想像力ってのは凄い。
いかにもディズニー的な映画ではあるが。
■2月17日(木)
27<240>「アンナと王様」。
アンディ・テナント監督。チョウ・ユンファ。ジョディ・フォスター。バイ・リン。
シャムのモンクット国王の元に一人の家庭教師がやってきた。
英国人の軍人の夫を亡くしたアンナ・レオノーウェンズ夫人だ。
彼女はインドから子供を連れてやってきた。
そして、慣れない風習に戸惑いながら、献身的に国王の子供たちの教育に当たる。
さて、とはいえ彼女はイギリス人である。
バックには大英帝国と、東インド会社が付いている。
一方、タイはフランスを加えた列強に囲まれ、いかに独立を守り近代化するかの岐路にある。
そうした歴史の緊迫感が残念ながら、この作品からは感じられない。
むしろ男と女の物語にポイントが置かれている。
その流れで言えば、チョウ・ユンファは圧倒的な存在感がある。
でもね、一人の女性がシャムの近代化を進め、王をも動かしたってのはどうかなあ。
やっぱりイギリス(米国=西欧)が一番っていう感覚が隠しようがない。いやだね。
たださえ、アジアはグローバルスタンダード=IMF体制の押しつけに苦しんでいるのに。
実在の国じゃなくておとぎ話にすればよかったのに、と思うのだが。
■2月16日(水)
26<239>「季節の中で」。
トニー・ブイ監督。ハーヴィ・カイテル。ドン・ズオン。ゾーイ・ブイ。グエン・ゴック・ヒエップ。
ベトナム戦争も遠い過去の出来事になりつつあるホーチミン市。
病に冒された詩人の元に、蓮売りの少女がいた。
高級娼婦に恋した輪タク(シクロ)の青年がいた。
缶拾いの少女と物売りのストリート・キッズがいた。
自分の娘を捜す元米国兵がいた。
これらの4組のエピソードを転がしながら、映画は最後に大きな流れのように合流する。
きれいな映画である。
惜しむらくは癖がない。
ベトナムってやっぱりもっと毒がないと。
世界の反動たる米帝国主義に勝利したにもかかわらず、そのツケを背負った国。
そのやりきれなさってあるだろうに。
欠けてしまった悲しみを<蓮>と<火炎樹>で象徴したのだろうが。弱い!
■2月15日(火)
25<238>「釣りバカ日誌イレブン」。
本木克英監督。西田敏行。三国連太郎。浅田美代子。桜井幸子。村田雄浩。余貴美子。谷啓。
おなじみハマちゃん、スーさんコンビ。
今回は沖縄に行って愛を見つける物語。
ハマちゃんはウサギを縁に若い会社員同士のキューピッド役に。
スーさんは戦争経験を反芻しながら女タクシー会社社長を通じてやさしさを実感する。
グローバルスタンダードを名目にリストラを迫る外人コンサルタントに対して
自分は終身雇用を守り社員を守るとスーさんは宣言する。
ありゃ、これって反米愛国・自主独立じゃん。
いかにも代々木路線ですな。
でも、オレは反対じゃない。社員を信じられない経営者ってのは金の亡者だな。
経済過程の世界性に対して1国主義は反動である。
そのためには政治のヘゲモニーこそ必要である。
小ブルジョア的な日共路線は反動である。しかしそこに囲い込まれる精神を、
労働過程の世界性を通じて、資本の世界性に対抗する路線が問われているだろう。
■2月13日(日)
24<237>「ストーリー・オブ・ラブ」。
ロブ・ライナー監督。ブルース・ウィリス。ミシェル・ファイファー。ティム・マシソン。
離婚寸前の夫婦。
過去の15年を振り返ると喜びもあるが、意見の食い違いばかりが目立つ。
結婚はロマンスの抑圧装置となっている中で別居を始めた2人だったが。
いやあ、これはなあ、って映画です。
結局は「子はかすがい」ってところが結論のような気がします。
あたしゃ嫌いです。
それなのに「私たちの物語」だなんて。こだわらず離婚してもいいだろうが。
時にブルース・ウィリス。ヅラ被って長髪も見せます。
でもそれがいかさない。前髪のないロングヘアーってダサイぜ。
■2月10日(木)
23<236>「母の眠り」。
カール・フランクリン監督。メリル・ストリープ。ウィリアム・ハート。レニー・ゼルウィガー。
このところ見るべき映画がなくて、なんとなく避けていた作品だけど、劇場にゴー。
やっぱりというべきか、いけない。
何がって、病妻の孤立がいらだたしいからだ。
みんなこの母の気持ちが最後まで分からない。
新聞記者をしているキャリアウーマンの娘も
大学で文学を教えている夫も。
落第生のくせにコンサーバティブな息子も。
このコミュニケーション不全の中で母は自ら死を選ぶ。
救いがあるか? ない。
単調な物語。単調な死。それがなんともやるせない。
■2月8日(火)
22<235>「あ、春」。
相米慎二監督。佐藤浩市。斉藤由貴。山崎努。富司純子。三浦友和。藤村志保。
証券会社に勤める夫。家付き母付きの妻。かわいい男の子。
そんな家庭にある日、夫の父親という男が紛れ込んできた。
まるでトリックスターのような男の登場で家庭は静かに変わり始める。
いい映画ですね。
なにがって縁側と庭のある家がいい。ああ、あの日差しの優しさ。
典型的な小市民映画ってことだけど。
それを揺さぶるのが自由人の山崎努。勝手放題に生きてだれにも好かれてしまう。
ルンプロのガイストって奴が存在の根を揺するってわけさ。
一番反応するのが妻の斉藤由貴。いいな、少し太って。いい感じだ。
夫とのコミュニケーション不全で不眠症と発作が続いていたが、精神がやわらいでいく。
藤村志保と富司純子、三林京子。この3人のおばさんが凄い。うぶな=やりて婆。
それに山崎努がからみ、佐藤浩市がおろおろする。
当然ながらトリックスターは消えていくが何かが残る。ひよこだ。
いや、生きることの中にある<コク>のようなものだ。
それを夫婦がしみじみと感じながらジ・エンド。
ああ、渋いお茶が飲みたいって気分か。
■2月6日(日)
21<234>「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」。
マイケル・アプテッド監督。ピアース・ブロスナン。ソフィー・マルソー。ロバート・カーライル。デニス・リチャーズ。
旧ソ連で開発を進める石油王の娘エレクトラ。
頭の中に銃弾が残り感覚が麻痺したテロリストのレナード。
核兵器の解体を進めているドクター・クリスマス。
それにボンドが加わり、パイプライン利権をめぐる陰謀と攻防が続く。
昔の007の敵役のソ連や悪の組織が倒れたこともあって、
今回の攻防はいささか人間ドラマくさい。
でもロバート・カーライルには今ひとついつものオーラがない。
ソフィー・マルソーも気品ある美しさが活かされていない。
半面、ヤンキー娘なのにドクターのデニス・リチャーズだけブイブイ言わせてしまって。
それって結局、ブロスナンと演出が問題なのかって思ってしまう。
もちろん見どころ十分たっぷり楽しめましたけど。
■2月5日(土)
20<233>「コンフェッション」。
ローディ・ヘリントン監督。キューバ・グッディングJr。トム・ベレンジャー。マリアンヌ・ジャン・バチスト。
オレは弁護士。時に依頼人に対して不信を抱いてしまうときがある。
本当にワルの犯罪者と分かっていながら弁護するときだ。
そんな気の迷いから弁護士資格を失ってしまった男が小説で一発逆転を狙う。
しかし、さっぱり筆が進まない。悩んでいるところにじいさんがやってきて
「カラス殺人事件」なる小説を残してぽっくり。
そこで盗作したところ小説は大ヒット。だが、それは連続殺人のシナリオだった。
まあしゃれた出来上がりだが、いささか物語が浅薄で緊迫感が盛り上がらない。
登場人物が中途半端なのがいけない。
でも弁護士に対する不信みたいなものは米国にもあるのかなと感じた。
■2月4日(金)
19<232>「迷宮のレンブラント」。
ジョン・バダム監督。ジェイソン・パトリック。イレーヌ・ジャコブ。イアン・リチャードソン。
よくできたラブ・ミステリーです。
NYの贋作画家の青年がある時、日本人画商らにレンブラントの絵を頼まれる。
韓国人のコレクターに売りたいのだという。
青年はヨーロッパで作品を研究しているうちに美術教授の女性に出会い恋に落ちる。
描き上げたレンブラントは父親をモチーフにした見事なものだったが、
欲に目がくらんだ画商らは特注の約束を変えて競売にかけようとする。
青年は絵を奪い、女性を道連れに逃走するが。
画廊オーナーらによって殺人犯にされる謀略にはまっていく。
美術映画はいつも結構凝っていて勉強になるが、贋作づくりがリアリティがある。
そして腐れ切った画商の世界を痛烈に批判しつつ
それへのしっぺ返しのオチも見事に決まっている。
それぞれ名前=肩書きを隠した2人が恋するところがミソか。
ハッピーエンドってのがいかにもアメリカ映画的なのが、減点か。
■2月3日(木)
18<231>「リング0 バースデイ」。
鶴田法男監督。高橋洋脚本。仲間由紀恵。田辺誠一。麻生久美子。田中好子。
井戸に突き落とされた山村貞子。だが、彼女はなぜそうなったのか。
そのナゾを解くのがこの「リング0」である。
時は昭和43年に遡る。山村貞子18歳。彼女はとある劇団の研修生だった。
そこで、彼女はいつしか主役を勝ち取り、記録係の青年と恋仲になる。
だが、その周辺では奇妙な死が相次いでいた。
そして、山村静子の超能力実験で死亡した記者の恋人の女性記者が真相究明に動いていた。
恨みを買った貞子はいったん殺されるが・・。
「学校の怪談」「シックス・センス」そして「キャリー」なんかを思わず思い出す。
超能力少女が社会に容れられないという意味では「キャリー」が一番近い。
これは持論であるが、超能力者は子供時代をこそ生きられるが、大人にはなれない。
大人の超能力者はいないし、死すべきものとして存在している。
それがなおも生き残った場合、それは怨念のような形にしかならない。
「リング」はようやくそのことを明らかにしたような気がする。
仲間由紀恵は演劇少女の貞子を透明感たっぷりに演じていていい。
そして田辺誠一も豊川悦司と佐藤浩市の約数のような感じでオーラがある。
その2人のひたむきな愛だから、主人公が疎外される青春映画らしい魅力もある。
それにしても怖い。恐怖とは反復であるとのテーゼを実践している。
リングは本作で本当に終わったのか? いや・・・
■2月1日(火)
17<230>「狂っちゃいないぜ!」。
マイク・ニューウェル監督。ジョン・キューザック。ビリー・ボブ・ソーントン。ケイト・ブランシェット。
NYの空の安全を守る管制官たちのスリルに満ちた日々。
そして人間関係をドラマチックに描く。
似たような作品にキーファー・サザーランドの「グランド・コントロール」があったか。
なんでも一番のニック。先住民の血を引くラッセル。美人妻のコニーとメリー。
4人のライバル意識が炸裂するところが面白い。
個人的にはエリザベスのケイト・ブランシェットよりも
メリー役のアンジェリーナ・ジョリーさんが好きですね。
無意識に濃厚な妻と悟った哲学者のような2人の組み合わせがいい感じでした。
■1月31日(月)
16<229>「ラスベガスをやっつけろ」。
テリー・ギリアム監督。ジョニー・デップ。ベニチオ・デル・トロ。クリスティーナ・リッチ。
原作はハンター・S・トンプソンだが、
かの「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」の変人監督の大傑作であろう。
1971年ボロボロの米国。
アメリカン・ドリームを追って作家と弁護士がやってきたのはラスベガス。
当地で行われるバイクレースを取材することである。
しかし2人はあらゆるドラッグをトランクいっぱいに詰めて完全武装。
ラリパッパで豪華ホテルに乗り込み大暴れ。
凄いのだ。酒場は爬虫類だらけの動物園になるし、妄想の大洪水。
ベトナム戦争はテレビを飛び出して眼前のものとなる。
「クスリなしにはやってられない」。そんな気持ちがよく分かる。もちろんオレはやらんが。
確かに体制なんて権威なんて糞食らえ!
ジョニー・デップ。横山やすしのようで、完全に飛んじゃって最高の禿頭俳優ぶりです。
15<228>「アナとオットー」。
フリオ・メデム監督・脚本。ナイワ・ニムリ。フェレ・マルティネス。
8歳の時、僕は人生で一度だけ運命の人に出会った。
OTTOとANA。パリンドローム(回文)を名前に持つ2人の恋。
監督は偶然を繰り返し繰り返し描くことで運命(必然)を浮かび上がらせる。
2人は物理学の定理のように、経験を共有しながら実は別のものを見ていたことがわかる。
舞台はスペインというが2人はどこかクールな印象がする。
案の定、白夜の国フィンランドで終わりを迎える。
恋は成就したのかしなかったのか。2つの結末が示される。
監督が求めた<輪廻>のイメージがとても見事であった。
■1月30日(日)
14<227>「雨あがる」。
小泉堯史監督。寺尾聡。宮崎美子。三船史郎。吉岡秀隆。仲代達矢。原田美枝子。
剣の達人・三沢伊兵衛は素浪人である。
長雨のため足止めをくらい安宿で愛妻たよと旅の荷を解いている。
貧しいがゆえに諍いの絶えない同宿の人々を慰めるため、
彼は賭試合で金子を稼ぎ、人々に酒肴を振る舞う。
また若い武士の争いを止めたことから藩主に見込まれ指南番の口もかかる。
だが、あまりに優しすぎる男ゆえに他人の自尊心を傷つけてしまう。
夫婦人情物語に、民衆のフォークロアを重ねた。
それにしても宮崎美子がいい。
なんか、こういう女性が細君だと悪いことはできないなあ。
三沢伊兵衛も所詮はお釈迦様の手の上で暴れている孫悟空のようなものか。
近代的自我ってのは強者の論理であり、
一見前近代的な共同体のなかに大切なものを発見する。
これは背筋をピンと伸ばした現代批判の作品でもある。
13<226>「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」。
サム・ライミ監督。ケヴィン・コスナー。ケリー・プレストン。ジョン・C・レイリー。
ビリー・チャペルはデトロイト・タイガースのエース。
19年に及ぶマウンド人生は最後の時を迎えていた。
オーナーは球団の売却を決め、彼はトレード要員となるか引退するか迫られていた。
優勝目前のニューヨーク・ヤンキースとの試合。それが彼の最後の舞台だった。
痛む肩には、恋人との思い出と野球人生がのしかかっていた。
だが、言ってしまうと彼は40歳最後の試合で完全試合を成し遂げるのだ。
甘い映画である。しかも長い。でも飽きない。
分かりやすく見事に涙腺を刺激する演出はソツがない。
いいじゃないか。野球は国民的娯楽だ。こんな幸せな奴がいたって、ってそう思うのだ。
■1月26日(水)
12<225>「マトリックス」。
ラリー&アンドリュー・ウォシャウスキー兄弟監督。キアヌ・リーブス。ローレンス・フィッシュバーン。キャリー・アン・モス。
世上、日本政府機関のコンピュータにハッカーが入ったとかで大騒ぎである。
しかし、ハッカーは正義の騎士。悪いのはクラッカーである。
とはいえ、この世界が実はマトリックスであるなら、もちろんそれは正義の戦いである。
マトリックスが描いているのは、恐ろしいほどリアルなバーチャルワールドである。
人間を資源として扱うコンピュータの発想の根には実は人間の悪魔性がある。
そして幻想に安住して真実を見ようとしないのも人間の性である。
アンダーソン=ネオ=キアヌは、それらと格闘しつつ覚醒していく。
超能力とかカンフーとか戦闘とかはコンピュータのシミュレーションと考えたほうがいい。
もちろんそこにこそ映像は渾身の力を込めたのだが。
コンピュータ社会の中でも、大切なのは人間の五感である。
「バウンド」の監督はその解放を愛を通じて表現して見せた。
ちょっと体を動かして世紀末をリセットしようぜ。そんな気分になった。
なお、初めて見た99年の感想はこの「マトリックス」をクリックしてほしい。
■1月24日(月)
11<224>「シュリ」。
カン・ジェギュ監督・脚本。ハン・ソッキュ。キム・ユンジン。
いやあ、スケールのでっかいメロドラマ見せてもろた。
前宣伝に曰く「ハリウッドを超えた」韓国映画である。
そうかな。いろんな意味で韓国エンターテインメントだと思う。
いや、別に悪口なんかじゃないぜ。
朝鮮戦争が50年前にあった。南北分断が50年も続いている。
2つの国は今も一緒になりたいのになれないでいる。
そうした「38度線」状況があって生まれたエンターテインメントである。
女は北朝鮮の工作員。男は韓国の情報部員。
2人は任務に忠実な組織活動員である一方、お互いに恋している。
女工作員の上司(若いときの火野正平?)も実は女工作員を愛している。
女工作員の上司は腐敗した指導部(金日成−金正日体制)を倒し
朝鮮半島に戦争を起こし祖国を統一したいと考えている。
おっ、革命戦争論だね。2・26事件の青年将校みたいなもんだ。
そのために欺瞞的な南北和解のシンボル・サッカー統一チームの試合を吹き飛ばし
両国の首脳を叩きのめすことだ。奪った「液体爆弾」でスタジアムを火の海にせよ。
それを阻もうとする韓国情報部員との必死の攻防に突入する。
もちろん韓国映画だから北朝鮮工作員の計画は失敗。女も死ぬ。
でも彼女は事前に、爆弾を仕掛けたことを教える電話をしていたのだ。
任務より愛を選びながら、最後は任務のために女は死んでいった。
しかも彼女は子供をお腹に宿していたことを隠して。
だから、女工作員はいけないが、彼女は恋人だったと男は思うのだ。
いっやあ、メロドラマだね。メロドラマにいつも政治は格好の材料だもんな。
男と女は愛し合っていることの意味は、南と北が愛し合っていることだ。
だが政治の顔は2人の愛を奪い、生まれようとした子供(統一)まで死なせてしまう。
でも民族の心の奥では求め合う愛は決して破れることはない。
つまり、この映画は壮大な入れ子状態で<愛>が絡み合っている。
それがこの映画の魅力であると同時に、<韓国>的限界だろう。
エピローグが長すぎるのとか、プロローグが宣伝映画っぽいとか、
ビルを壊すのがやっとという新兵器「液体爆弾」ってセコすぎるぞとか、
「サッカーで統一なんてお笑いだぜ」なんて気の利いた台詞がうますぎるとか、
ハン・ソッキュは「8月のクリスマス」のほうがよかったとか、
いろんな毀誉褒貶があろうが、日本のエンターテインメントより上質だと言っておこう。
わが高倉健さんの「ゴルゴ13」はどこにいったんだ?
■1月18日(火)
10<223>「M/OTHER」。
諏訪敦彦監督。三浦友和。渡辺真起子。高橋隆大。
妻子と別れた中年実業家とCGデザイナーの若い女性の自由な暮らし。
そこに、事故のため前妻の元から8歳の男の子が飛び込んでくる。
にわかに形成された新しい家族。
当たり前だが、自由な暮らしは少しずつ崩れ始める。
その新しい感情と生活の揺れをドキュメントタッチの濃密さで描く。
一種の私小説である。それだけに、ちょっと息苦しい。
繰り返される<間>と、ヴァイオリンの音は成功かどうか。
2時間27分という長さに耐えられなかった。
私小説はもっと無駄をそぎ落としたほうがよい。
■1月16日(日)
9<222>「地雷を踏んだらサヨウナラ」。
五十嵐匠監督。浅野忠信。川津祐介。羽田美智子。ロバート・スレイター。
カンボジアで死んだ戦場カメラマン一ノ瀬泰造。その人生。
72年のインドシナは戦争と革命の時代だった。
そこに特ダネ写真に憑かれたフリーカメラマン一ノ瀬泰造がいた。
彼はアンコールワットを撮影するべくクメール・ルージュの解放区に入っていくが。
なんとも胸くその悪い映画だぜ。
戦争をやっている人間が愚かしくて。
カンボジアの戦争と革命では数百万人が死んだ。
その重みと一人の日本人の重みが釣り合わない。このアンバランスがかなわない。
妙に甘ったるい感傷も不快だった。
8<221>「カーラの結婚宣言」。
ゲーリー・マーシャル監督。ジュリエット・ルイス。ダイアン・キートン。トム・スケリット。ジョバンニ・リビージ。
軽い知的障害を持つカーラは裕福な家庭に生まれた。
が、彼女を心配するあまり母親は普通の生活をさせようとしない。
そのカーラが次第に自立し、恋をして結婚していくまでを
ほのぼのとしたヒューマンドラマとして描く。
いやあ、分かっているだが、それなりに泣きましたねえ。
実際の知的障害者の家族は一つの希望を見たかどうかわからないけれど。
あたしゃ、同性愛も障害者もみんな差別されないようになってほしいと思いました。
■1月12日(水)
7<220>「聖なる嘘つき その名はジェイコブ」。
ピーター・カソヴィッツ監督。ロビン・ウィリアムス。アラン・アーキン。マチュー・カソヴィッツ。
最近は映画界に於けるユダヤイズムがちょっと気になるわたしです。
でも「ライフ・イズ・ビューティフル」はよかったです。そう評価しました。
しかし、これはダメですね。
ジェイコブはトリックスターなのでしょうが、ちょっと無理です。
だから、ポーランドのゲットーのユダヤ人も救われるんだか救われないんだか。
中途半端で、終わってしまいます。
なんかフェイクですね。
■1月10日(月)
6<219>「ゴジラ2000ミレニアム」。
大河原孝夫監督。村田雄浩。阿部寛。佐野史郎。西田尚美。
僕が最初に思い浮かべた言葉かい。
「死んだ者は殺せ」って奴さ。本当に。
ゴジラが復活した。彼は根室に上陸。太平洋岸を南下し、東海村の原子力発電所へ。
一方、日本海溝から引き上げたナゾの巨大隕石。それはエイリアンのUFOだった。
ゴジラの生命力はオルガナイザーG1に秘められていた。
エイリアンはその力を借りて自らの体をつくろうとしていた。
自衛隊とエイリアンとゴジラの三つどもえの戦いが続く。
正直言って、これは失敗作でしょう。
なんか「科学の暴走」「ゴジラは人間の中にいる」とか言うが
どうも無理があるんじゃないか。
素直に戦い、壊す、荒ぶる神がゴジラ様じゃろ。
そのカイカーンがないのだ。
ピカチュウちゃんやガメラちゃんに負けた?
■1月8日(土)
5<218>「シュウシュウの季節」。
ジョアン・チェン監督。ルールー。ロプサン。ガオ・ジエ。シャン・チェン。
中国文化大革命の末期。
共産党の下放政策で少女の秀秀は成都からチベットへと送られた。
そこで遊牧民の老金と一緒に牧場作りをすることになる。
しかし、文革は中央で挫折。地方官僚だけが残っていた。
都に帰りたい秀秀は次々と甘言に載せられ彼らに体を許してしまう。
そして彼女は未来をも断ってしまう。
監督のジョアン・チェンはツイン・ピークスやラスト・エンペラーの女優。
文革の悲惨さをここまで描くとつらいものがある。
ワシは一度たりとも毛沢東派だったことはないが、
文革シンパだったと言われればその通りである。
転向したとしても世界革命派はこの痛みをまだまだ受け止めて行かねばならない。
畳の上で死ぬことに夢見てはならない。
4<217>「トゥルー・クライム」。
クリント・イーストウッド監督・主演。アイザイア・ワシントン。デニス・リアリー。リサ・ゲイ・ハミルトン。ジェームズ・ウッズ。
オークランドの新聞記者エベットは女にはだらしがない。家庭は顧みない。禁煙論などどこ吹く風。
ありゃ、ワシみたいですね。でも鼻が利く。そこがワシと違う。
冤罪の臭いにピンとくる。今回は死刑まで半日あまりの殺人犯。
だけど走り出したら止まらない。
いやな奴なんだけど、きっとみんなどこかでそういう人間を気にしている。
クリント・イーストウッドはそんなおいしいところをがっちり演じて魅せた。
■1月7日(金)
3<216>「ゴースト・ドッグ」。
ジム・ジャームッシュ監督・脚本。フォレスト・ウィテカー。イザーク・ド・バンコレ。カミール・ウィンブッシュ。
なにしろサブタイトルは「サムライへの道」だもんな。
「羅生門」「葉隠」を通じて主君に尽くし身を犠牲にする古式の倫理=テイストが
がっちりと漂っているのである。凄いぞ。
主演のウィテカーはピストルを刀を納めるように腰に差すのだ。
そして、オールドファッションのマフィアとの渡世の義理と人情に挟まれて
戦い、そして死んでいくのだから。
伝書鳩が連絡役になってニューヨークの空を舞い、
ビルの屋上には鳩小屋と自由に生きる人間たちがいるんだぜ。
そして、言葉の通じないアイスクリーム屋、黒人の少女、ネイティブアメリカンなどが
それぞれに自分流の生き方を貫いている。
それを悲劇であるとは知りつつ静かに共感している監督は凄いぜ!
フランスのセンスとニューヨークの町、日本のハートが真正面からヒートした傑作だな。
■1月4日(火)
2<215>「ハイロー・カントリー」。
スティーヴン・フリアーズ監督。ウディ・ハレルスン。ビリー・クラダップ。パトリシア・アークェット。
第2次大戦後のニューメキシコ。
ピートは相棒のビッグボーイと牧場をやっている。
しかし、大企業化をめざすジム・エドが2人の前に立ちはだかる。
そして2人はエドの手下のレスの妻モナに心惹かれていた。
カウボーイは車なんかじゃなく、やっぱり馬に乗り、広野を駆け回らなくちゃ。
そんな熱い男の生き様と、秘めた優しさがいっぱいに漲っている。
メルヘンである。そんな全ては幻だから。
■2000年1月3日(月)
1<214>「エンド・オブ・デイズ」。
ピーター・ハイアムズ監督。アーノルド・シュワルツェネッガー。ロビン・タニー。ガブリエル・バーン。
1000年紀の最後の日に悪魔は選ばれた女性とセックスして子供を作ると
それからは闇の王国が開かれるのだそうな。
ほんまいかな。ってなこと言ってはお話は成立しませんがな。
その選ばれた女性と、ひょんなことから関わり合ったアル中ボディガード、そして悪魔。
壮絶な戦いが始まる。
いやあ、思うにキリスト教ってのは怪しい宗教だな。
結局はゾロアスター教だとかなんだとか変わらないな。
絶対神と同時に悪魔を信仰しているんだから。
いやあ、悪魔ってのも結構いい奴なんだが。盛り上げてくれるし。
どっちにしろ神と悪魔とがセットで消えればいい、とオレは思っていたりして。