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     あとがき


 今まで、書きたいと思ったものをマイペースで書いてきました。一編ができあがると、「詩とメルヘン」という月刊誌に送るということをつづけてきました。そして何年かがたち、それらの中から選んでいただいたものを中心に、十九編を集めて、この作品集ができあがりました。
 一つひとつの作品は種々雑多なものになっていますが、共通性を見つけるとしたら、どれも想像力によって生まれた虚構と非現実の世界を描いているということです。
 非現実の世界というと、荒唐無稽な絵空事、夢物語として、現実とはかけはなれたものに思われるかもしれませんが、実は非現実な世界を垣間見ることによって、現実世界が活性化して、その輪郭がいっそうはっきりと見えてくるということもあるのです。
 現実に見えている世界は、氷山の海面から上に出ている一部分にしかすぎません。海面下に隠れているものを見ることによって、全体の象が姿を現わしてくるのでしょう。
 子供の時に見たTV番組に、「ミステリー・ゾーン(原題トワイライト・ゾーン)」というアメリカ製のシリーズがありました。毎週、不思議な物語が展開するのですが、その中でこういう話を記憶しています。
 地球の軌道が狂って、地球は太陽に近づいていく。気温が上昇して、人々は極地方をめざして移動をはじめる。ところがこれは夢で、目を覚ますと窓の外には大雪が降っている。
ほっと安心したのもつかの間、現実は、地球が太陽から遠ざかっていくところで、どんどん寒冷化していく、という物語でした。この物語を見て、子供ながらに、夢と現実、どちらの世界が本当なのだろうと奇妙な感覚を覚えたものです。
「この世の現実の出来事は、私にとっては単なる幻影にすぎない。夢の国のみが、私にとっての全実在である」と言った作家さえいます。
 もしかしたら、現実世界には幻想が満ちているのかもしれません。
 夢や幻想を見ることには、現実逃避や、現実と幻想の混同というあやうい一面もありますが、それ以上に、現実の世界や生の意味を考えることができるという面があることも忘れてはならないでしょう。
 私自身、健康な身体であったものが、一瞬の出来事を境にして、車椅子が必要な身体になるという経験を持っているので、現実と非現実の逆転の物語をただの夢物語と思うことはできないでいます。または、この現実こそ、私にとって、もっとも奇異な幻想物語であるとも言えます。
 「詩とメルヘン」のやなせ・たかし編集長と、この本の装画をしていただいた東逸子さん、編集を担当していただいた小林潤子さんに、お礼を申し上げます。
  一九八九年十二月                       すやまたけし
 

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