親族名称の不思議
吉川 武時
2009.2.5
親族名称でがまんならないのは
西洋の言語では兄と弟、姉と妹を区別しないことだ。
elder brother、younger brother と区別できるじゃないか、
と言う人がいるかもしれないが、ちょっと違う。
例えば、太郎(20)、次郎(17)、三郎(14)の3人兄弟がいて、
三郎から次郎(兄)を指すのに younger brother と言う。
若いほうの brother というわけで、必ずしも日本語の「弟」を意味する
わけではない。
また、日本語では
「おじ、おば」と言っても、自分の親より年上か、年下かは分からないが、
漢字では「伯父、伯母」(年上)、「叔父、叔母」(年下)と区別する。
「伯」という「叔」より易しい字のほうが年上を指す。
スウェーデン語はすごい。祖父、祖母をそれぞれ次のように区別している。
祖父 farfar morfar つまり、父の父、母の父
祖母 farmor mormor 父の母、母の母
日本語にはこれらの区別をする単語はない。
必要なときは「父方の〜」とか「母方の〜」とかと言う。
フィンランド語では
祖父 isoisä
祖母 isoäiti であるが、
スウェーデン語になぞらえて
祖父 isänisä 父の父 äidinisä 母の父
祖母 isänäiti 父の母 äidinäiti 母の母 という語もある。
「甥」と「姪」
フィンランド語、スウェーデン語では「甥、姪」もそれぞれ区別する。
| | フィンランド語 | スウェーデン語 | |
| 「甥」 | veljenpoika | brorson | 兄弟の息子 |
| sysarenpoika | systerson | 姉妹の息子 |
| 「姪」 | veljentytär | brordotter | 兄弟の娘 |
| sysarentytär | <systerdotter | 姉妹の娘 |
英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語で
はこうなっている。(この順に並べる)。
甥 nephew Neffe neveau sobrino nipote sobrinho
姪 niece Nichte niece sobrina nipote sobrinha これだけである。
フィンランド語では「娘」と「少女」には別々の単語があるが、
「息子」と「少年」には同じ語しかない。
娘 tytär
少女 tyttö
息子 少年 poika
さらに調べてみると、poika には3つの意味があるらしい。
『8 kieltä』という本で
スウェーデン語、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語の順
に挙げると次のようになる。
poika(1) gosse boy Knabe garçon muchacho ragazzo rapaz
poika(2) pojke boy Junge garçon niño ragazzo rapaz
poika(3) son son Sohn fils hijo figlio filho
poika(3)は「息子」で、これははっきりしているが、(1)と(2)の区別は
よく分からない。
スウェーデン語、ドイツ語、スペイン語では区別しているが、
英語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語では区別していない。
「孫」は
フィンランド語、スウェーデン語、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語で
lapsenlapsi barnbarn grandchild Enkel petit-enfant nieto nipote neto となる。
フィンランド語、スウェーデン語では「子どもの子ども」という語構成になっている。
イタリア語で「孫」と「甥、姪」が同じ単語で表されるのが、
不思議である。コミュニケーションに不便はないのだろうか。