英語の無生物主語 構文

吉川 武時
2003.10.1
先に日本語の「無生物主語・他動詞構文」について調べた。同時に英語の「無生物主語 構文」についても小規模な調査を試みた。英語教育の専門家でもない私がこれを発表しても、「それがどうなの?」と言われるだろうと思って、そのままにしておいた。
しかし、「無生物主語の構文」という点で日本語の場合と英語の場合とを比べるのは無益なことではないと確信したので、今回 敢えて発表することにした。

英語において「人」以外を主語とする文のタイプにはどんなものがあるか。述語が自動詞のものも他動詞のものも取り上げることにしたが、述語が be動詞のものは除くことにした。これを含めると、論点が当初の目的からそれるからである。
資料として中学校の英語教科書 "Everyday English 3"(中京出版)を用いた。内容が比較的やさしく、かつ重要な構文が大方 含まれていると思われるからである。

「人」以外を主語とする文では、主語となるものを「時」「場所」「物」「こと」とに分けることができる。「物」を主語とする文はやや多様で、中に人の関与が認められるものもある。そして、その関与の仕方もさまざまである。
それで、「人」以外を主語とする文はおよそ次のように分類することができる。
  1. 「時」を主語とする文
    • 時の到来を表す文    
    • 時の始まりを表す文    
    • 時の経過を表す文    
    • その他
  2. 「場所」を主語とする文
    • 変化を表す文
    • 所有・内包を表す文
    • 作用を表す文
  3. 「物」を主語とする文
    • 存在を表す文
    • ありさまを表す文
    • 変化を表す文
    • 動きを表す文
    • 働きを表す文    
    • 人の関与が認められる文
      • 交通機関を主語とする文    
      • 伝達の媒介をする物を主語とする文……間接目的語として「人」が現れる場合がある  
      • 直接目的語として「人」が現れる文    
      • 主語たる「物」が「人の生産物」「人の性質」である文
      • 機関・団体を主語とする文    
      • 従属節に主語として「人」が現れている文……「人」の動作を条件とする物の動きを表す
  4. 「こと」を主語とする文

1.「時」を主語とする文

これには(1)時の到来、(2)時の始まり、(3)時の経過を表すものがあり、 さらに(4)その他として残るものもある。
(1)What month comes after December? (p.105)
(2)The rainy season usually begins in the middle of June. (p.108)
(3)Three years have passed since my brother went to the United States. (p.101) (4)How fast time flies! (p.106)
  Lost time never returns. (p.14)
 以上の例では、述語はすべて自動詞である。

2.「場所」を主語とする文

これには(1)変化、(2)所有・内包、(3)作用を表すものがある。
(1)Australia became famous for its gold. (p.104)
The city grew large. (p.104)
(2)it [=our town] has big redwood trees around it. (p.33)
(3)the canals carry the water back to the sea. (p.57)
 例(2)(3)の述語は他動詞(have、carry)である。

3.「物」を主語とする文

これには物の(1)存在、(2)ありさま、(3)変化、(4)動き、(5)働きを表すものがある。
(1)a beautiful building standing on the west side of the Thames. (p.19)
[a building stands ...]
(2)That stone looks like a peach. (p.72)
The sun was shining brightly, ... (p.88)
(3)everything changed. (p.10)
(4)sea water comes into the land. (p.57)
Something white is flying above the woods. (p.101)
When it's [=the boomerang is] thrown, it flies through the air. (p.9)
Almost all the buildings fell down, and ... (p.34)
The door shut after them. (p.99)
The moon has risen. (p.84)
they [=the clouds] were driven away by the wind. (p.69)
[the wind drove away the clouds]
(5)Henry fixed a pump which did not work. (p.107)
[a pump did not work]

(4)の最後の例文の述語は他動詞(drive away)である。were driven away と受身形になっている。その他の例文の述語は自動詞である。
 ここで次のような文について考えてみよう。
 In old days windmills were used for pumping the water. (p.57)
この文で pumping というのは
 We pump the water with windmills.
という文を想定して使われているのか、
 Windmills pump the water.
という文を想定して使われているのか。もし前者であれば、「人」を主語とする文であり、 もし後者であれば、「物」を主語とする文となる。

◎「物」を主語とする文で、「人」の関与が認められる文のタイプがいくつかある。
 まず「交通機関を主語とする文」である。
 Cars move very slowly, because the streets are too crowded. (p.112)
 Some cars are coming out of the tunnel. 表紙@
 A train is going to stop at the station. 表紙@
 Big ships were going up and down the Thames. (p.58)
 The plane flew a long way across the Pacific. (p.22)
 これらの例で、表面上は「人」は現れていないが、読み取る方は運転・操縦する「人」を思い浮かべるであろう。

次に、情報を伝達するための「手紙」や「辞書」などを 主語とする文である。
 Your letter says that Japan is a country of earthquakes. (p.34)
 The dictionary says that Halloween is the evening before Holy Day. (p.68)
 It [=one of the most interesting posters] tells us some of the traffic safety rules.(p.55)
 your letter has taught me more about your country. (p.32)
 Here is an episode which shows his humor. (p.47)
 [an episode shows his humor]
 ここに用いられた動詞は、元来「人」を主語とする動詞であるが、 このように英語では「人」から「人」へある情報を伝達することを表すのに、 媒介物を主語として表現することができるわけである。 上の例文中の tells us とか has taught me とかのように、 「人」が間接目的語として現れる場合がある。
 この例文の直訳は「あなたの手紙は日本は地震の国だと言う」となるが、 「あなたの手紙には日本は地震の国だと書いてある」というのが 自然な日本語であろう。

次に「直接目的語として『人』が現れる文」を挙げよう。
 That made him feel very sad. (p.85)
 Three rules will keep you safe. (p.104)
 ...it pleases me. (p.90)
 この例文の直訳すると、おかしな日本語になる。
 ?それは彼をたいへん悲しくした。
 そのため彼はたいへん悲しくなった。

主語たる「物」が「人の生産物」 「人の性質」である文には次のようなものがある。
 Helen's speech moved us deeply. (p.55)
 Abe's honesty made him give back the few cents to the woman. (p.100)

「機関・団体を主語とする文」として次のようなものがある。
 The South wanted to keep the slaves. (p.86)
 The North wanted to make them free. (p.86)
 Our school will have a traffic safety week from October 1. (p.55)

以上の他に、やはり「人」の関与が認められる 次のような文について考察してみよう。
 the gate will open and close when you pull the rope. (p.41)
 この文では、主文の述語は自動詞で、 間接目的語も直接目的語も取らない。 その代わり、従属節に主語として「人」が現れている。 「人の動作を条件とする物の動き」を表す文と言えよう。

The church was lighted by candles. (p.3)
 これは受動態の文である。この文が Candles lit the church. からできたものであるとすれば、「物」の働きを表す文 と考えられるが、We lit the church with the candles. という文と関連付けて考えると、「人」が関与する文となる。この関連付け、あるいは変形はフィルモアの格文法の出発点とも関係がある。