「〜ておく」の意味 再考

吉川 武時
2004.3.6

「〜ておく」の意味:「準備」と「後始末」は文法用語か?
教授上は重要なよく使われる文脈について。
「〜ておく」の意味の展開はアスペクト的意味から。

風呂から出ようとするとき、いつも家内が「窓、開けといて」と言う。 「窓、開けといた よ(=開けておいた よ)」と言いながら、 いつも、これは準備じゃないな、と思う。 どう考えても、これは後始末だ。

「〜ておく」は準備を表す、と言われている。 一旦、「〜ておく」は準備を表す、と説明されると、 人は、どんな例でも、準備と解釈しようとする。 上の例でも、浴室が湿らないように、 明日も室内を快適に保つために、そして、 明日 以後に入浴するための準備ではないか、と。 しかし、風呂から出るとき、そんな明日 以後の入浴 のことなど考えていない。 ぬれた室内の湿り気を取るためにしばらく 窓を開けておこうとしか考えない。 やはり、風呂を使ったあとの後始末だ。

「準備」にせよ「後始末」にせよ、これは文法用語だろうか。
教授上ある形がよく使われる文脈に 言及することは重要である。 ある形式の文法的な意味だけを教えてそれで終わり、と するよりも、さらにその形式がどんな文脈でよく使われるか、 を示すことは重要であり、かつ必要なことである。 「〜ておく」の場合、 そのよく使われる文脈が「準備」ないし「後始末」 なのではないか。 「よく使われる文脈」というのは文法の問題ではない。 とすると、「準備」も「後始末」も文法用語ではない ことになる。

「〜ておく」の文法的な意味は 対象を変化させその結果の状態を持続させることである。 ここの「変化、結果、状態、持続」ということばは アスペクトに関する語である。 そして、これはアスペクト的な規定の仕方である。 「〜ておく」のアスペクト的な意味はこういうことである。 「〜ておく」の意味の展開は アスペクト的な意味から出立すべきである。

「〜ておく」と「〜てある」の意味 に関しては、設置動詞がキーワードになる。 このカテゴリーは 動詞のごく一部に関わるものであるが、 「〜ておく」「〜てある」の意味を理解するには絶対に 必要な概念である。 文法用語は必要に応じて設けられるものである。 たとえメンバーが1つでも、必要なら立てられる。 「だ」はメンバーが1つだけの指定詞である。

体系的に見るには こちらを先に 読むこと。| 総合目次へトップページへ