誰にもわかる強くなるコツ

 卓球メールジャーナル第218号(2007年11月22日配信)
 ●誰にもわかる強くなるコツ(51) 吉田和人
 「『教えない指導法』をご存じですか?」


 指導者の方は、日々、指導法を工夫されていることでしょう。今回は、そんな指導者のみなさんのヒントとなりうる研究をご紹介させていただきます。

 この研究は、スキー初心者の学生を対象に行われました。まず、学生は無作為に「教える群」と「教えない群」に分けられました。「教える群」は雪面を滑りやすいように平らに踏み固めてある整地で、指導者が技術を教えながらスキーの練習を行いました。一方、「教えない群」には地面や吹雪の影響でデコボコのままの不整地で「指導者の後をついて来なさい」の指示を与えるだけで、具体的な技術指導は行われませんでした。ただし、「雪面をまっすぐ歩く」「木の切り株などの間を曲がりながら歩く」「下り坂を歩く」などの段階的な目標が設定されました。

 「教えない指導法」とは、このようにして、目標とする動きを身につけるのに適切な状況の中に置くことによって、目標とする動作のための感覚を、教えられることなく自然に習得していくように進めていく方法のことです。

 そして、数日後のプルークボーゲンのテストの結果では、「教えない群」が明らかに優れていたとのことです。この研究は、運動の指導法に多くの示唆を与えるものと言ってよいでしょう。

 卓球でも、「教えない指導法」により大きな効果が発揮されるケースもたくさんあると思われます。私のこれまでの指導経験では、以下のような効果がみられています。
・シェークハンドの選手がフォア、バック両面交互のボールつきをして、グリップが自然に標準的なものになった。
・卓球台を2台横に並べて思いきり遠くに打ち合うことにより、フォアハンドドライブにおける踏み込みながらの身体長軸周りの回転運動が自然にできるようなった。
・多球練習において、早いピッチで送球したら、選手の戻り動作が自然に速くなった。

 指導者の方は一般的に、アドバイスや良い動きの提示を、なるべく多く、きめ細かくする傾向があるようです。しかし、今回紹介した研究のように、できるだけ少しのアドバイスで、選手が上達するような練習法を工夫することが、高い効果を発揮することもあるのです。

 私の初心者指導では、選手の技術レベルや、選手のタイプ(どちらの指導法が好きかなど)などによって、教える指導法と教えない指導法とを使い分けるように心掛けています。

スキー指導に関する参考文献:「スポーツの達人になる方法」(小林一敏、オーム社)

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