快適生活 心のお手入れ
卓球メールジャーナル第228号(2008年7月14日配信) ●快適生活 心のお手入れ(54) 焼津路子
「『コーチ、練習相手になってください!』なんて言えないよ〜」−ある友人の話−
ある友人の話です。彼女は35歳を目前にしたある日、ストレス解消のために卓球を始めました。きっかけは、単なる気まぐれと、「愛ちゃんがかわいい」というだけだったのに、あれよあれよという間にハマってしまい、今では、仲間内で、尊敬と揶揄をこめて「卓球フリーク」と呼ばれるまでになっています。その彼女が、あるとき私のところにふらっと立ち寄って、こんな話をしてくれました。ある気持ちよく晴れた休日に、彼女は友達のAさんと練習をしにいきました。練習会場には、もうすでにたくさんの人が来ていたのですが、その中に、彼女がいつも教えてもらっているコーチが、個人的な練習をしにきていました。いろいろな人がコーチに声をかけ、何人かはラリーをしたりもして、楽しそうでした。中には、たいして上手にもみえないのに打ってもらっている人もいて、私の友達は、とてもうらやましく思ったのだそうです。
ここまで聞いた私は、「あなたも『コーチ、練習相手になってください』ってお願いすればいいじゃない」と言いました。すると、友達は、「そんなこと言えないよ〜」と言いました。個人的な練習をしにきているコーチに、下手な自分が練習をお願いして、大切な時間を割いてもらうことに遠慮と気後れがあったと言うのです。結局、彼女はコーチに声をかけられず、Aさん相手に愚痴をこぼすしかなかったのだそうです。
彼女は長年、専門的な技能を必要とする仕事についています。自分の意見をもち、それを他者に上手に伝えることに慣れていないわけではありません。どちらかというと積極的な人柄だと私は考えていましたので、彼女の反応にはとても驚かされました。
でも考えてみれば、そういう感覚はとても大切ですよね。コーチは、自分の専門技能を高めるために時間を使いに来ているわけですし、たまたま出会ったからといって、他者の個人的な時間にズカズカ入り込んでいっていいというものではありません。コーチにとって、個人技能を高めることは仕事であり、義務でもあります。
でも、我慢してばかりいるのもストレスですよね。目の前では、相手になってもらっている人もいるのですし。ここはやはり、場を読む能力を駆使するしかないでしょう。コーチだって、ずっとラケットを振り続けているわけではないはずです。ちょっとお茶を飲んだり、一息入れたりするときもあることでしょう。そういうときに、あいさつして、コーチの様子を観察してみましょう。真剣に練習に取り組んでいるようなら、相手をお願いするのは諦めたほうがいいですし、余裕がありそうなら、勇気を出して「もしお時間が空いたら…」とお願いしてみましょう。そう特別なことではありませんよね。
友達の新たな一面を知ったと同時に、みんなが競って前に出たがるようなこのご時世に、なんだかちょっと心が温かくなったような気がしたエピソードでした。
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