NHKラジオ講座「やさしいビジネス英語」(現「ビジネス英会話」)講師
杉田敏先生講演会   2001年12月15日(土)
「やさしいビジネス英語」がやさしく聞こえる日のために




[T]「やさしいビジネス英語」について
 1 新番組「ほんとうにやさしいビジネス英語」!?
 2 放送までの流れ
[U]杉田敏の時間管理=朝の時間の有効利用

[V]英語の学習―意欲と実践
 1 リスニング力の強化
 2 「英語を勉強したいけど時間がない?」― 学習の障害について
 3 次のステージに上がるために S・M・A・R・T・S
 4 英語にまつわる神話の打破 ・ 日本人の英語が上達しない理由
 5 「英語の達人」に見られる特徴
 6 英語の学習と結婚生活は似ている

   感想・雑記

参考図書ガイド




[T]「やさしいビジネス英語」について

   1 新番組「ほんとうにやさしいビジネス英語」!?

         「やさビジ」がなくなります。
          (注:2001年12月の講演当時は未発表だったのでこのヒトコトに聴衆はびっくり)

    2002年の番組改編で、NHKの語学講座は大きく変わる。
         「やさしいビジネス英語」は2002年3月で終了。
          新番組のタイトルは、「ほんとうにやさしいビジネス英語」
          …という案もあったが「ビジネス英会話」の見こみ。

    新シリーズ・大滝怜治
         主人公の名前はこれまでのシリーズ同様、学生時代の友人の名前を借用した。
         大阪に本社のある製薬会社からヘッドハンティングされNYのPR会社へ転職。
         栄養士の資格を生かし、栄養学側面からアピールしての食品販売。
         4,5月の放送では2001.9.11のNYテロ事件に触れる予定。


   2 放送までの流れ
         10月ごろ   翌4月の準備をはじめる
                  ・はじめに50〜60種のテーマをラインアップし、26に絞る。
                  (8.9月のテーマ設定にはゆとり。よいものがあれば差し替えられるように。)
                  ・ビニエットははじめ4年間はすべて自分で書いていたが、
                   現在は資料を示して米人ライターに書いてもらっている。 
         12月ごろ   4,5月分のラフな原稿が完成。
          2月ごろ   週1回のペースで収録。1週間分を3〜3.5時間で。  ↑もどる



[U]杉田敏の時間管理=朝の時間の有効利用

「あまり寝なくていいんですよ。10日に1回寝ればいいんだって社員にも言ってるんです。
そう言いつつも毎日寝てるんですけどネ」

        年10回の海外出張、番組の準備などをこなすため、時間管理は重要。
        朝4時すぎに起床、5時半には仕事に取り掛かる。スポーツジムで汗を流すことも。
        早朝は交通渋滞に巻き込まれず、外国との連絡にも時間が合う。一人で仕事に集中できる。
        夕方6時ごろ退社。11時に就寝。
        「車のラジオでビジネス英語の放送を聞きながら帰宅することもありますヨ」
"So much to do, so little time."   ↑もどる



[V]英語の学習―意欲と実践

「今までと同じ生活ではなにも変わりません。
進学、結婚、スポーツの技術の習得など自分を変えるためには何か行動を起こしてきたはずです。
次のステージに上がるには何らかのリスクが必要です」


        これからの社会では英語、PC活用能力、体力が不可欠。
        中国での英語学習熱と習得能力の高さは日本の比ではない。
        これはモチベーションの高さによるもの(英語ができると給料が3倍)。



 1 リスニング力の強化
      ・コミュニケーションのモードにおける「キク」力の重要性
       Listen 45%
       Speak 30%
       Read 16%
       Write 9%
   「キク」ことはコミュニケーションの半分を占めるが、この力は不完全なもの。
   注意力には限界があり、忘却が伴う。
   キキながら考えることは難しい。
   だからこそ「キク」力を養わなくてはならない。


      ・「キク」の4段階
       きく Sensing, Hearing 音が鳴っている
       聞く Interpreting 意味がわかる
       聴く Evaluating 内容を評価できる
       効く Responding 行動する(返事・実行・サマライズ)

   ・・・・あなたはどこまで英語を「キイテ」いるだろう?   ↑もどる



  2 「英語を勉強したいけど時間がない?」 ― 学習の障害について

        Lack of interests and needs?
             本当に英語が必要なのか?イヤイヤやっているのでは?
        Lack of time?
             優先順位の問題。英語より下位のものに時間を割いているのでは?
        Lack of planning?
             目標を定め計画的に学習を。次項(SMARTS)参照。
        Lack of concentration?
             集中力。量=質ではない。   ↑もどる



  3 次のステージに上がるために ― S・M・A・R・T・S
        Specific 具体的な目的を(なんのために学習するのか)
        Measurable 測定可能な目標を (どこにいるのか、行きたいのか=資格・就職など
        Action-oriented 行動をとる
        Realistic 現実的な目標を(手の届く、ではなく背伸びして届く)
        Time-dimensioned 実現までの時間の枠を決める(とくに集中するのは1年半をめどに)
        Sacrifice 犠牲 (時間とお金)
        
   "Success is doing, not wishing."   ↑もどる



  4 英語にまつわる神話の打破 ・ 日本人の英語が上達しない理由


        上達する極意、しない言い訳?
         ・英語が話されている国に行けば…→日本にいても可能
         ・涙なしに自然に身につける→外国語を身につけるには集中力と犠牲が。
         ・時間がない→生活における英語の優先順位の見なおし。
         ・英語で考えると上達が早い→これは最終段階

        上達しない理由?
         ・教師が悪い→いろんな教師がいる。杉田もstudent from hellだった。自分でやる。
         ・受験英語が悪い→決して悪くない。正しい文法、語彙、スペリングの習得
         ・会社、採用、社会が悪い→自分が生かせる場を
         ・アメリカ、英語至上主義が悪い→英語以外を選択する自由も   ↑もどる



  5 「英語の達人」に見られる特徴
        ・積極的な生き方
        ・執念と努力
        ・高い母語の能力
        ・恥をかくことを恐れない
        ・目標設定
        ・興味とニーズ
        ・ハイテクの利用   ↑もどる



  6 英語の学習と結婚生活は似ている
        「結婚30周年を祝ってくれた友人のことば。
           『サトシ、結婚生活のはじめの40年はたいへんだよ、だけどそのあと楽になるんだ。
           おまえもあと10年の辛抱だよ』
         わたしもようやく英語との付き合いを楽しめるようになってきたと思います。   ↑もどる



   感想・雑記

・200人用の会場が満席だった。

・ 「優先順位」と「意欲」が骨子として語られる。
 そしてそのためには「犠牲」。
        「子どもらともっと接してやるんだったなあと思うこともたびたびあります。
        しかし、家庭を第一にしていては自分のしたいことを実現できなかったとも思います」


「頭をオープンにしいろんな声をきけるようでなければ自分自身を変えることはできません」
        自分の伝えたいことが相手に浸透しアクションを起こさせるに到らずはがゆいことが度々あるのであろう。
        「人は自分の聞きたいもののみを聞き、見たいもののみを見るものですが…」と2度は言われた。

・ PR会社を経営され大学講師、ラジオ講座講師として活躍されるだけあって、
 さすがに話の進め方聴衆の注意のひき方が巧み。
        冒頭で内部情報を漏らすことで聴衆の注意をひき、軽口を交えてリラックスさせる、
        聴衆が疲れてきたころに簡単なゲーム(だまし絵や文字探し)で参加させる、
        格言を引用するときに、文字だけでなくイメージしやすい岩登りの写真も見せる、
        など。

・POWERPOINTがお気に入り
        「POWERPOINTはいいですね。
         編集が容易で図表やイラストを即座に提示でき、とても便利です。
         飛行機で隣の席になった人と話をするのにも使ってしまうくらいなんです」
         (演壇に立ち即座にノートパソコンを開きながら)

・随所に引用される格言。
        「格言を効果的に使うと話にインパクトを与えることができます。
         わたしは格言集や格言を紹介するメルマガやWEBページから収集しています。
         番組では著名人のことば、出自の明らかなものを取り上げています。
         時間の無駄なので(PC上の、ことばを管理する)ファイルのなかはとくに整理しません。
         それでもあの格言はファイルのあのあたりにあると大体分かるものです」(講演後の質問に答えて)

・ 講演後の質疑応答の時間に質問の手が挙がらなかったときに
        「講演などではぜひ質問をしてください。わたしは講演中必ず質問参加の機会を設けるんです。
        質問を用意して来なかったとしても、
        話を聞きながら後でどんなことを訊こうかと考えながら聞くと違うものですよ」


おまけ・tamaも質問しました。
Q「先生は中国でもお仕事をされていますが、
  中国での仕事のために中国語はやはり勉強した方がいいと思われますか?」
  (ちょうどわたしの家族がはじめての中国出張に行っているところだった。)

A: 「わたしの会社では英語か日本語の堪能な者を雇うのでコミュニケーションに支障はありません。
今は中国語を勉強するよりは英語やほかのことに時間を割いています。
わたしがかつてスペイン語圏の国に出張することになったときのことを話しましょう。
大学でスペイン語は学習したのですがそのころにはすっかり忘れていました。
出張先まで飛行機で40時間かかるのですが、ちょうど『スペイン語40時間』といった本を見つけたので
これで飛行機から降りたときにはスペイン語はぺらぺらだ、と買いました。
それを見たスペイン語のできる友人が、40時間でマスターできるわけないだろう、生兵法は大怪我のもと、と笑い、
ひとつのスペイン語のことわざを教えてくれました。
En boca cerrada no entran moscas.(と、すらすらと言った。)
閉じた口にハエは入らない=口は災いの元。賢者は黙すという意味です。
当地で『スペイン語を話せるか』ときかれるたびにコレを言って口をつぐむと、わっとうけ、場が和んだものです。
仕事は英語のできる人が相手だったのでことばに支障はありませんでしたが。
・・・こんなところでよいでしょうか」

杉田先生は、質問に対して結論となる一言をあえて答えず聞き手に能動的に考えさせようとするところがある。
ちなみに『英語上達の決め手 AtoZ』(2002年4月NHK出版刊)で杉田先生は、中国語に興味がある、勉強したいと話している。
講演の後にエレベータホールで一緒になったとき、
「中国のどちらに出張ですか?お住まいは?」など気さくに話しかけてくださった。   ↑もどる




参考図書ガイド

『英語研究者のために』 田中菊雄:著(講談社学術文庫)
「英語研究者を目指す方にはこの本はぜひ読んでいただきたいと思います。
わたしは著者の田中先生にお会いしたくて、つてをたどって講義を聴きに行きました。
何事も行動ですよ。」(講演から)

『英語の達人』 杉田敏:著(DHC)
各界で活躍する英語の達人から英語習得の過程などを杉田先生がきく対談集。
恩師との対談のなかでは杉田先生の結婚のエピソードが紹介される。
実弟との対談はいかにもやりにくそう。


『元気がでる英語』 杉田敏:著(ビジネス社)
Quote・・・Unquote集。

『はじめてのビジネス英会話』 杉田敏:著(講談社現代新書)
SMARTSについて記述あり。
発行から時間がたっているので内容が少し古くなっているところもある。

『リスニングチャレンジ』 杉田敏:著(NHK出版)
東北から東京の講演を聴きに来ていた人に、杉田先生がサイン入りでプレゼントしていた。

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