黒須田守
「競艇についての展望と放談」
05年10月3日・記 「つまらんぞ!“枠なり至上主義”!!その2」
〜西島義則「わしら選手にも進入の推理は必要」の深意〜
 
 スポーツ@ニフティ「競艇特集」で、SGの密着取材をするようになって、はや4カ月。ここまでベッタリと競艇に取り組むことができるとは、今年の初めにはとても想像がつかなかったわけで、嬉しいやら責任感ヒシヒシやら気合パンパンやら……とにかく精力を注ぎ込んでいる間に、こちらはすっかりおろそかになってしまっていた。って、ようするに更新滞ってる言い訳ですね。すみません。
 ともかく、皆様のおかげをもちまして、当田中工業&畠山直毅で、スポーツ@ニフティ「競艇特集」を運営している次第であります。次回は10月末の津・ダービー。もちろん渾身のレポートをお届けいたします。
 で、枠なり至上主義。1月以来の更新となるわけだが、その間にプロペラの基準が変更になり、その影響もあって枠なりのレースの割合はかなり少なくなった。けっこうなことである。さらに、その間に競艇雑誌の老舗『競艇マクール』さんが、枠なり競艇を検証する特集記事を組んでいる。これがなかなか興味深い記事で、『マクール』さんの論調としては「進入規則の見直しが必要では」というもの。現行のルールのもとでは、枠なりが多くなるのも仕方がない、だったらルールを徹底的に見直すしかない、というのが大筋での主張だったと思う。なるほど、たしかに「勝利を目的としない前付け」というのは忌むべきものであって、外枠の選手が内寄りのコースを狙いづらいルールのもとでは(詳しくは割愛するが、たとえば待機行動時間=コース獲りに使える時間の問題など)、選手たちが枠なりを選びたくなりがちなのも致し方なし、という理屈は正論だと思う。
 だが、スポーツ@ニフティ「競艇特集」の取材を進めるなかで、爽快な発言をしてくれた選手がいたのである。
 西島義則だ。
 7月末の桐生・オーシャンカップで、松本伸也が6日間密着し、特注選手として取り上げた西島。その最終日、最後のレースを終えた西島に、松本がインタビューを敢行したところ、彼はズバリと言ってくれたのである。
「枠なりばかりのレースだと、お客さんも面白くないと思うんよ。これは進入のルールも関連しているとはいえ、進入の推理はわしら選手にも、お客さんにも必要やけえ」
 西島は、艇界きってのイン屋として知られ、艇番が外枠であろうとも、コース獲りではとにかく動いて内寄りを狙う選手である。まるで、それが自分の仕事といわんばかりに、必ず内をうかがって、駆け引きを繰り広げる。松本は、その言葉を引き出したあと、さらに「動く西島さんが面白いんです」とさらに煽ったわけだが、まさしくその通り、西島の出走するレースには動きがあって、目が離せない。つまり、彼のレースは面白いのである。
 ポイントは、「進入のルールも関連しているとはいえ」であろう。西島も、現行の制度がコース獲りの駆け引きをしづらいものであるのは認めている。そして、実際に枠なりが増えることも仕方がないという見解も示している。しかし、西島自身は、その流れに安住することを良しとしない。たとえルールがどんなものであろうと、西島の選手魂が彼を内コースに動かせるのである。つまり、実際はルールなどたいした問題ではないということ。そのうえで、選手がどのような戦いを見せるかが重要であることを、西島は自らの戦いで表現しているのだ。
 野中和夫選手会長が、常滑・笹川賞で行なったトークショーで、「勝つためには6コース、ということもある」と言ったように、進入の駆け引きは決して内を取り合うだけのものではない。それぞれの選手が、ひとつひとつのレースで、メンバーを見ながら、自分が勝利する方法を模索する。それが、コース獲りにおける駆け引きの醍醐味だろう。その結果、枠なりになることはもちろん大いにありうることだが、しかし枠なりの大部分はそういった精神が欠如しているのではないか。西島のコメントからは、そういった裏読みもできるのである。「進入の推理はわしら選手にも、お客さんにも必要やけえ」。それを推進するためのルール変更は必要だと思うが、選手の意識改革も必要ではないかということだ。
 西島は、若松・MB記念では、F2のハンデを抱えながら優出を果たしている。なんでも、F2でSGの優勝戦に駒を進めたのは、何年ぶりの快挙だとか。西島は、そういう選手だ。ルールがどうだろうと、F2という足かせがあろうと、きっちりと勝負する! 西島というのはそういった突出した勝負師であり、誰もが西島を真似できるわけではない(それだけ西島というのはすごい選手なのだ!)。だが、西島のような選手がたくさんたくさんいたら、エキサイティングな競艇になると思いませんか?
 SGのピット取材をして、僕は競艇選手がさらにさらに大好きになった。彼らの勝負に懸ける姿勢、魂というものは、感動的ですらある。だからこそ、なのだ。これで枠なりレースがもっと減少したなら……。いや、実際、SGでは特に、かなり減ってきているんですがね。つまり、競艇という競技の魅力には、まだまだ伸び代があるはずなのだ。
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05年1月27日・記 「つまらんぞ!“枠なり至上主義”!!その1」
〜正月の平和島に見た“いい枠なり”〜
 
 競艇の2004年売り上げは、1兆円を割り込む見通しだそうである。
 おいおい、ついにそこまで下がってしまったか。廃止が相次ぐ地方競馬、21世紀に入って3場が廃止となった競輪と違い、競艇は安泰だと思っていたが、ついに徳山競艇に存廃論議が噴出してしまった。公営競技不況の波は、ついに艇界にも及んでしまったわけである。
 その理由のひとつとして、涙を飲んで挙げなければならないのは、「最近、競艇がいまひとつ面白くなくなったよなあ」ということである。そして、何が面白くない理由かといえば、それはハッキリと「枠なり至情主義」だと断言できる。
 枠なりとは何かというと、進入が枠番通りになるレースのこと。競艇のルールの特殊性は「コースの取り合い」にあって、ピットアウトした艇は1分40秒の間に好きなコースを取ることができる。それを進入というわけだが、ここが選手間の駆け引きの見所ともなっていて、選手たちは少しでも有利なコースを取ろうと、神経戦を行なうのである。競艇というのは、1コースが圧倒的に有利で、内側のコースを取れば取るほど1着の確率が高くなっていくという競技体系。だから、選手たちはできるだけ内寄りのコースを取るべく、ピットを飛び出すのである。
 ……のはずなのだが、しかし。枠なり競艇とは、その駆け引きがほとんどないレースを指す。とにかく枠番通りに内から並んでいく。それが、SGやGTなどのレベルが高く、格も高いレースほど顕著になるのが、現在の競艇なのだ。
 私、1月3日の平和島初日に今年の打ち初めをしたのでありますが、参戦した9レースから12レースまですべてが枠なり進入でありました。ま、最近の傾向を考えれば予想通りとも言えるのでありますが、私にとって駆け引きのない競艇など、舟券で勝負するに値しないのであります。
 ただ、枠なりがすべて悪いわけではない。その日の12Rは、こんなメンバーだった。
1 西田靖
2 川名稔
3 矢後剛
4 浜野谷憲吾
5 角谷健吾
6 作間章
 西田は基本は内寄りの選手。川名は西田に次ぐ年長者で、矢後はその次に年長。浜野谷はターンスピードに秀でているからセンターからでも問題なく、角谷はダッシュ戦得意、そして作間はメンバー中唯一の20代。どう見たって、枠なりにしかなりようのないメンバーだった。ところが、である。
 スタート展示で作間が前付けに出て、2コースに入った。スタ展の並びは16234/5。不利な6号艇の作間が勝負に出たのである。これが、本番ではどうなったか。1234/56。そう、枠なりである。なんだよ、やっぱり枠なりかよ。と言いたいところだが、そうではない。この枠なりには、ちゃんと駆け引きがあった。
 ピットアウトして、スタ展どおりに前づけに行こうとした作間を、浜野谷と角谷がブロックしたのだ。放っておいたら、浜野谷と角谷はアウトになってしまう。明らかに格上である浜野谷と角谷はそれを許すわけにはいかず(「この若造が」という思いもあったかも)、作間が内寄りに入っていくのを阻止したわけである。結果は、作間は6コースから何もできずに惨敗。浜野谷は4コースからしっかりと差して、ツケマイからバック先頭の矢後をきっちり捌いて、1着となった。作間が内に入っていたら、絶対にありえなかった展開で、浜野谷の作戦勝ちである。
 こういう枠なりなら、文句はないのだ。矢後の頭から買っていた僕としては、「浜野谷、やめて〜」と叫ぶしかなかったけれども、レース自体に文句はない。むしろ、清々しく平和島を後にしたくらいである(ちょっとうなだれつつ、ではあったけど)。しかし、最近の競艇、特にSGやGTでは、そうは見受けられない枠なりがあまりに多いのである。
(この項つづく)
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10月19日・記 〜競艇の入場者数が増えている!〜
 
 日本軽種馬協会が発行している『JBBAニュース』に、各種公営競技実績が掲載されていた。僕が見たのは9月号で、載っていたのは8月までの累計だ。ここでいう実績とは、投票券の売得金額と入場人数である。
 公営ギャンブルが軒並み不振にあえぐ昨今、そのほとんどの数字が前年度比で100%割れなのだが、唯一、前年比100%を超える項目があった。競艇ファンの皆様、バンザイの準備を。それはなんと、競艇の入場人数なのだ!
 4618万2299人で、前年比102・3%。中央競馬、地方競馬、競輪、オートが軒並み入場人員を減らしているなか、競艇のみがそれを増やしているのだ! 素晴らしい!
 単純に考えれば、競艇ファンが増えているということである。漸増とは言えないけれども、間違いなく競艇に興味を持ち、競艇場に足を運ぶ人は増えている。何はともあれ、競艇場にお客さんが集まらなければ舟券も売れないのだから、これは実に好ましい傾向と言える。
 もちろん、こういうことも考えられる。競艇ファンの絶対数は増えていないが、一人のファンが競艇場へ足を運ぶ機会が増えている、というケースだ。そういえば、畏友・畠山直毅は最近、ポーカー屋に行く回数が減って、競艇場に通う回数が増えている気がする。僕に関しては、昨年よりも競艇場に行く機会は減っている。その分を畠山が補って、さらにおつりが来る、といった状態が、前年比102・3%ということだ。
 これにしても悪い傾向ではあるまい。まあ畠山の場合は単にバクチ中毒なだけだが、もともとのファンが競艇場を訪れる回数を増やしているのは、レース自体への興味が昨年よりも増していると考えることもできるからだ。舟券を買ってやろうという気持ちがムクムクと湧き上がる、その度合いが昨年より強いということであれば、それはすなわち競艇自体の充実を表している。これが悪いことであるわけがない。
 
 さて、一方で売上げは相変わらず下がっていることも指摘しておかねばなるまい。8月までの売上げは前年比90・4%。約1割も売上げは下がっている。これは、オートの前年比80・1%に次ぐ、公営競技のなかでは2番目に悪い数字である。公営競技全体の売上げ前年比92・9%をも下回っている。7月に全国モーターボート競走会連合会主催のマスコミ懇親会に参加した折、「今年は相当な売上げ減になる可能性もある」という暗い話を耳にはしていたのだが、数字はそれを顕著に表しているのだ。競艇というのはどういうわけか、春先のほうが売上げがよく、秋から冬にかけてはやや鈍くなるという傾向があるそうなのだが、今年もそのパターンどおりならば、最終的な前年比の数字はもっと悪くなってもおかしくはない。
 それにしても、だ。入場人員が伸びているのに、売上げが下がっているというのは、いったいどういうことなのだろうか。明らかに言えるのは、一人あたりの購買金額が下がっているということ。昨年までは一人1万円使っていたものが、今年は一人8900円ほどしか使っていないというのが、この現象である。単純に考えれば、ファン一人一人の財布の中身が減っているということ。JRAがよく売上げ減の理由にあげる「不況」というのは、こと競艇においては整合性がある。
 ただ、こういうケースもある。つまり、ファンにとって金額を張るに値するレースが減っている、ということだ。先ほど、「競艇場に入場する人数が増えているのは、競艇の充実を表している」と書いたこととは矛盾しているが、この現象を別の側面から見れば、ファンが勝負することを避けているということも言えてしまうのだ。
 果たして、この現象の本当の理由は何なのか。
 
 ここで浮上するキーワードは、スタート展示である。
 スタート展示について詳しい説明は避けるが、ようするにレース前に行なう進入コースの大雑把な表明である。競輪で言う地乗り(顔見せ走行)みたいなもんだ。導入は昨年の8月。競艇のレース予想における最大のポイントのひとつである進入について、かなり重要な情報をここで提示するというわけだ。
 JLCでの競艇中継やIモードなどでも情報を掲示しているものの、間違いなく情報を取得するにはやはり競艇場に足を運んだほうがいい。この情報を得ないで舟券を買うことはあまりにも危険だから、舟券を買うのだったら競艇場に行かねばならない。なるほど、入場人員が増えてもおかしくはない。
 しかし、このスタート展示はレースをつまらなくしてしまったという声もある。スタート展示で入ったコースに本番で入らなくても違反ではないが、ただしスロースタートとダッシュスタートをスタート展示と本番で変えることはできない。これは、スローが4艇になった場合、インの取り合いをする相手が3艇に絞ることができるようになったということだ。これにより、深インはめっきり減った。楽にインを取ることができるようになった。そうなると、どうしても内寄りの艇が強くなる。選手の実力が拮抗しているSGではなおさらで、予想がしやすくなった代わりにレース自体は単調なほうに大きくシフトしてしまったのだ。穴を狙いたいファンにとっては、勝負をかけられないレースが続出しているということである。売上げが減ってもおかしくないではないか。
 入場人数増、売上げ減という現象を「スタート展示」で切り取ってみると、実はすべてが符合するのである。競艇業界は今一度、この件について検討していくべきだろう。
 
 それでも、だ。入場人数が増えているということ自体は、やはりすばらしいことである。なぜなら、景気が回復したり、あるいは舟券購買中枢を刺激されずにはおれないレースが激増すれば、売上げが入場者数に比例していく可能性があるからだ。だから、全モ連はもっとこのことをアピールするべきだと思う。数年前、公営競技が軒並み売上げを下げていく中で、競艇だけがほぼ現状維持で踏みとどまったということがあった。しかし、それもあまり世の中には流布していかなかった。もったいない。
 競艇というのは、もっともっとブレイクする余地のある競技だと僕は思っている。そのためのアイテムとして、102・3%という数字はイメージ戦略上でも有用性がある。もっともっと、この数字を誇ってもいいはずなのだ。
 ともかく、この流れを断ち切ってはならない。選手の皆さんには、この客をがっしり掴んで離さないようなレースをお願いしたい。
 
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