今月のコラム |
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| 運動療法について |
現状 5年おきの糖尿病実態調査やメタボリックシンドロームの増加など運動の必要性を示唆するデータが続々と発表されています。厚生労働省が推進する「健康日本21」では1日の歩数、運動習慣を有する人の割合、の2点を身体活動の指標としていますが、先の中間評価では期待に反して改善は見られていません。これを受けて同省は昨年「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後に薬」のコンセプトの元に、健康づくりのための運動指針を策定しました。 この指針では運動を「体力の維持向上を目的として、計画的意図的に実施する」としています。しかし、つい百年ほど前まで必要不可欠な生活活動と労働で十二分なエネルギー消費がなされていた事を考えれば、ダイエットと運動は我々の生活に根付きにくいのも当然かもしれません。一念発起するが尻すぼみに終わる、といったことが繰り返され勝ちなのです。環境と心身両面の基盤作りを怠った運動推進は効果が薄いばかりでなく、トラブルの原因であったり、時には危険でさえあります。 実践のために 1) 体重は気にしない 運動療法による体重減少は必ずしも早期から出現しません。筋量の増加と脂肪の減少が同時進行するためです。それでも活動量、持久力、脚筋力などの増加は肥満度とは独立してメタボリックシンドロームや血管トラブルに好影響を及ぼしています。運動をやめた時の体重増加は逆の過程なので見た目以上に危険と言えます。また、脂肪以外を減らす体重減少が生じると総死亡率はむしろ上昇します。 2) 基礎代謝を増やす 体重中の除脂肪量を増加させることがこれに繋がります。貢献するのは主に筋量で、ウェイトトレーニングなどの筋抵抗運動、いわゆる力技がこれに適しています。通常の立位では靭帯で膝がロックされ下肢の筋肉は弛緩していますが、軽く膝を曲げて立つだけでこの効果が得られます。ただし、筋抵抗運動単独では頚動脈の動脈硬化を促進するというデータがあり、持久運動と組み合わせる必要があります。当然、軽い抵抗なら持久運動に代えることができます。 3) 総消費エネルギーを増やす 脚筋力と全身持久力が不可欠の要素であるといえます。上肢等の筋運動は相当の疲労を感ずるものでも、体重を支えながらの歩行、ジョギングほどのカロリー消費は望めません。また、下肢の運動を効果的に持続するには持久力が必要で、軽い運動を習慣的に継続することによってこの持久力を養うことができます。微視的に視ると、運動の結果、筋毛細血管密度と遅筋比率の上昇が得られ、血管内皮における脂質代謝を改善し、体脂肪減少に有利に働きます。 4) 臨機応変に行う 先に述べた指針で厚生労働省はエクササイズ単位という新しい概念を提唱しています。日常活動(歩行20分、階段昇降10分等)と運動(ゴルフ15分、軽いジョギング10分等)を同等に1エクササイズとカウントします。週に23単位(うち運動で4単位)が目標です。 強さに関しては指針には示されていませんが、従来から簡易的に138−(年齢の2分の一)の心拍数を上限とするよう指導を行っています。実際にはこれにこだわらず、肥満者や生活習慣病罹患者などのリスク保有者には心肺、運動器への負荷を考慮し、より弱い運動が勧められます。運動の継続時間もエクササイズ単位にこだわらず、短時間、頻回に行っても減量効果や体力向上に差はなく、安全に継続できる可能性が高くなります。最初からできない人よりもやりすぎて挫折する人が多いのです。あせってはいけません。 さらに効果をあげるために 1) 加圧トレーニング 筋肉への血流を制限し短期間に大きな効果を得ようというものです。内分泌環境にまで影響を与えるような大きな効果を持つもので、専門家の助言の元に行う必要があります。低酸素環境が筋毛細血管の増殖を促進し、成長ホルモンの増加が筋繊維の肥大を強く誘導します。 2) 加温トレーニング 軽い筋力トレーニングでは僅かに筋力は増強しますが、筋断面積の増加は見られません。しかし、同じトレーニングを筋温を38度に保つよう加温しながら行うと有意な筋断面積の増加とより強い筋力増強を得ることができることが最近明らかになりました。安全性は非常に高いと考えられます。この研究は日本宇宙航空環境医学会の2006年度優秀論文賞を受賞したもので、将来宇宙飛行士の筋萎縮予防に応用できるものと期待されています。 最後に 運動に取り組み、目標を達成し、さらに効果を持続させることは至難の業です。爽快感、健康感を実感してもらうとともに、本人の意欲、覚悟を内支えするための客観的指標が必要です。さらに継続可能な環境とシステム、指導者やともに取り組む仲間との良好な関係も欠かすことはできません。しかし、何か欠けていても「とにかく始めてみる」これが重要です。 (平成19年7月) |
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