ピアノ協奏曲第2番における一考察
ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番の解説と言うことなので、この際だから 私はさらに突っ込んで、バレエ「黄金時代」の思いでなどを一席。
3年前、ボリショイバレエ団が「黄金時代」をひっさげて来日した。そのころすでに ショスタコに嵌まっていた私は当然の事ながら「これを逃したら生はなかなか見るこ とはできない」と、その公演を見に行ったのです。「黄金時代」は、4曲からなる組曲が一般的(でもない)だが、全曲となると案外どんな曲があるかを知っている人は少ないと思う。そして、この全曲を通して聞いてみると、相変らず自作の引用が多いことに気がつく。それは、「ジャズ組曲1番のフォ クストロット」「タヒチ・トロット」「ピアノ協奏曲第1番2楽章」そして今日演奏 する「ピアノ協奏曲第2番2楽章」。そのうちのピアノ協奏曲の2曲は、どちらも主人公の男女のアダージオ(2人でゆっくりと踊る)の場面であった。
1番は1幕。ここでは主人公の男女が出会って仄かな恋心を表現している踊り。2番 は2幕フィナーレの直前、様々な障害を乗り越えて二人が愛し合うシーンである。ピ アノが女、オケが男。ただ肌を触れ合うだけではなく、荒い息づかいが聞こえてきそ うな濃厚な絡み…実際の公演を見ると、舞台との距離間があったせいか、事前にビデ オで予習したほどの迫力はないが、はいつくばる低音とけぶるピアノの音の対比と、ソリスト達の見事な舞踊と肉体の美に圧倒されていた。
ところで、この作品以降ショスタコはあまりバレエ物を書かなくなったとのことだ が、実際のところ総合的にはそれも仕方がないかもしれないと思わせる出来の作品で はあった。バレエ好きの私にとっては少々残念なことであるが…ただ、その2回のア ダージオが曲と舞台の映像とともに妙に記憶の隅に残っているのは確かである。
それはさておき、今回この曲の2楽章をオケ中で弾いていると、このような過去の刷 り込みのおかげで、耳元で愛の告白をされているような妙な気分になってしまう。息ができない位の陶酔感を彷徨った後、3楽章のアタッカで「はっ…」と我に帰るのである。