D.Shostakovich
24の前奏曲とフーガ作品87(1950/10〜1951/2)

このページは、「24の前奏曲とフーガ」のうち前奏曲だけ
弾いてみたときの感想を、その後集めた
他の資料と共にまとめたものです。



目次



作品概要
作曲 ドミトリー・ショスタコーヴィッチ
初演 1952年12月23,28日レニングラード.フィルハーモニーの小ホール
初演演奏者 タチアナ.ニコラーエワ(自伝による)
初演に向けての準備には、作曲者が直接立会い、リハーサルの段階で
曲相に関する発想記号を再検討し、初演後には新たに書き加えてもいる。
(モスクワ初演は、1953年3月,モスクワ音楽院小ホール)
演奏時間 約2時間32分、通常2晩に渡って演奏される。
初出版 1952年,ムズギーズ社より。

この曲はバッハ没後200年祭の行われたライプチヒから帰国してまもなく作られた。
試演は1951年4月、5月にモスクワの作曲家同盟で作曲者本人によって行なわれた。
「始めはポリフォニーのジャンルの技術的な習作のつもりだった。
しかし、その後構想を広げ、J.S Bachの平均率クラヴィーア曲集に
ならって、一定の形象的内容を持つ 小品のポリフォニー.スタイルによる
一大曲集を決めた」

と、語っている。
(以上、主に「全音楽譜出版・ショスタコービッチ24の前奏曲とフーガ」より引用)

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難易度一覧

NO. 調性 テンポ リズム 難易度 作曲年月日
No.1 C-dur Moderato 3/4 (A-イ) 10/10/1950
No.2 A-moll Allegro 4/4 (B) 10/12
No.3 G-dur Moderato 6/8 (A-イ) 10/14
No.4 E-moll Andante 4/4 (A) 10/22
No.5 D-dur Allegretto 3/4 (A) 10/29
No.6 H-moll Allegretto 3/4 (B) 11/2
No.7 A-dur Allegro 12/8(9/8) (A) 11/10
No.8 Fis-moll Allegretto 2/4 (A) 11/26
No.9 E-dur Moderato 4/4(3/4,3/2) (A) 11/30
No.10 Cis-moll Allegro 4/4(4/3) (B) 12/5
No.11 H-dur Allegro 2/2 (A) 12/9
No.12 Gis-moll Andante 3/4 (B-イ) 12/13
No.13 Fis-dur Moderato 6/8(7/8) (B) 12/20
No.14 Es-moll Adagio 7/4 (B-ロ) 12/27
No.15 Des-dur Allegretto 3/4 (C) 12/30
No.16 B-moll Andante 3/4 (A) 1/11/1951
No.17 As-dur Allegretto 2/2 (B-イ) 1/15
No.18 F-moll Moderato 3/4 (A-イ) 1/21
No.19 Es-dur Allegretto 3/4 (B) 1/26
No.20 C-moll Adagio 4/4(5/4) (A) 2/7
No.21 B-dur Allegro 4/4(2/3) (B) 2/15
No.22 G-moll Moderato 4/3 (A-イ) 2/17
No.23 F-dur Adagio 4/4 (B) 2/20
No.24 D-moll Andante 3/4(5/4) (B) 2/23

難易度の解説

  1. 初見モードでも通すことだけなら可能。数回さらえば弾けるでしょう。(^_^)
  2. 音はさほど難しくはないが、ちゃんと音楽にするなら要練習(^_^;)
  3. かなり手ごわい。腰をすえてかかること。(=_=;)

(補足事項)

難易度についての基準

イメージ、難易度の決定は曲によって違うが、演奏者本人が事前に曲を聞き込んで
いる事を前提に、基本的には数回弾いた時の印象を元にしています。

なお、当然の事ながら、この基準は万人に当て嵌まるものではありません。
これを弾いた当時の女将の腕前はざっと「ショパンのワルツ程度」「オクターブが届
かない小さな指」「この曲は記憶している」という感じで推測してください。

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曲別の感想


No.1  C-dur    Moderato    3/4  (A-イ)
和音の響きがコラールのような曲です。不協和音の響がきれいですね。
ほとんどインテンポで初見でも通せますが、いかんせん9度というのが左手に出てき
ます。これがネックですね。(20.22.27小節目)


No.2 A-moll Allegro 4/4  (B) 楽譜を見るまで気がつかなかったのは、頭に16分休符があること。 そこで、数え方が変わってしまった。 この曲は、右手と左手が交互に一つのメロディになっています。全曲を通してペダル を使用しない(もしくは、軽くふむ)ように指示があります。たしかに、ペダルの響 きはじゃまです。インテンポの倍の遅さでほぼ初見モードですが、インテンポで確実 に音をあてるのは結構大変でしょうね。
No.3 G-dur Moderato 6/8 (A-イ) 音はほとんどユニゾンとオクターブの連続のためにすぐに読めるが、 左手がオクターブでテーマを弾き始めると手が小さい者にはどうにもならない。 よって、その部分はオクターブを諦めて弾くことにする。
No.4 E-moll Andante 4/4 (A) 左は全般を通してベースの音を受け持ち、右手がメロディと内声を受け持っています。 内声はメロディを殺さないようにあくまでも控えめに演奏しなくてはいけないので、 音的には難しいものではありませんが、注意して弾くと息が詰まりそうになります。 (同じような構成をしている曲の例で言うとベートーヴェンの月光ですか) ペダルの使い方も考えないとかなり汚い音になってしまうので要注意。
No.5 D-dur Allegretto 3/4 (A) 右手、左手と共に和音はすべてアルペジオで優しく弾かなくてはいけない曲です。 慣れないと左手は弾きにくいようです。原典には波線記号はなく、曲の始めに senpre arpeggiatoとだけあるそうです。和音に隠されたメロディをいかに流れるよ うに弾けるかがポイントのようです。
No.6 H-moll Allegretto 3/4 (B) 弾いてて苦もなく音量が出るのでなかなか気持ちがよい曲です。符点のリズムさえち ゃんと取れれば余り難しくありません。ただ、最低音をはずすとかなり目立つので 要注意。
No.7 A-dur Allegro 12/8(9/8) (A) カノンのように左と右が交互にメロディをおっかけている。和音もさほど多くなく、 音を引っ掛けなければとても奇麗な曲です。恋に憧れる少女の夢のように。
No.8 Fis-moll Allegretto 2/4 (A) 全般を通してペダルはほとんど不要。36〜38にかけてのみ作者の指示があった模様。 スタッカートをきかせて、軽い感じでさらっといければ上出来。
No.9 E-dur Moderato 4/4(3/4,3/2)  (A) この曲は、すべて3段の楽譜からできています。ので、ちょっと見には(^_^;)なので すが、実は右手と左手がほとんどユニゾンなので、初見モードでいけます。 ただし、ベースの音を響かせているときにはペダルをずっと使っているので、 きれいに響かせるには「間違えないこと」が絶対条件です。
No.10 Cis-moll Allegro 4/4(4/3) (B) バッハのプレリュードを一瞬連想させます。16分音符が玉を転がすような響きで。 ペダルは最小限使うのが良いと思います。
No.11 H-dur Allegro 2/2 (A) カノンとスケルッツオを足して2で割ったような曲です。66から70小節は一瞬今まで とは違う曲相になりますが、またもとにもどっていたずらっこが遊んでいるような感 じに。シャープの数さえ勘違いしなければ(5個ね)ほぼ初見モード。
No.12 Gis-moll Andante 3/4  (B-イ) パッサカリアの形式によって作られている(そうです)。1小節目は直筆によると、 「P 104」の指示があったそうです。初演の後で作者自身が「mf 138」に変更になっ たそうです。107~8,112~3,118~9小節に、次のフーガのテーマが顔を出しています。 最初に出てくるテーマが全編通して出てきますが、それをうまく響かせるのがコツだ と思います。53小節から71小節までがちょっと指を無理させなければ内声部がうまく ならないので、そこがちょっと大変ですね。
No.13 Fis-dur Moderato 6/8(7/8) (B) 16分音符は一瞬ショパンの世界を連想させますが、甘い世界ではありません。 どこか氷の美しさを連想させます。以外と右手のリズムが取りにくいのも発見です。
No.14 Es-moll Adagio 7/4 (B-ロ) とにかく、右手のカウントがしにくい曲です。左手の音が一定にならないとタイミン グがつかめません。本気になって弾くと体力のなさをしみじみと感じてしまいます。 作曲者は始めはオクターブで同時演奏を考えていたそうですが、のちに塗りたくるよ うなトレモロに変えたそうです。
No.15 Des-dur Allegretto 3/4 (C-ロ) 和音が重くならないように、軽快に。ただし、オクターブでちょこまか走るので、 体力的にはけっこうきついものがあります。(次に続くフーガは、1段弾いて挫折し たという曰く付きのもの)
No.16 B-moll Andante 3/4 (A) 唯一の変奏曲です。モーツァルトのハ長調のヴァリエーションのリズムにもとずいて (8分音符、3連音符、16分音符)作曲されたそうです。テーマ、5つのヴァリエーシ ョン、エンディングの様です。いずれもテーマを殺さないように。
No.17 As-dur Allegretto 2/2 (B-イ) 前半はひたすら流れるように。中間部は音的には全く問題なし。後半は指が大きくな いとほとんど弾くことは不可能に近い。いつもの常套手段であるペダルの使用や、 一番上の音(もしくは、下の音)をカットすることができず、10度の和音が一つ 一つちゃんとメロディを持っているので始末が悪い。(-_-;)
No.18 F-moll Moderato 3/4 (A-イ) 静かに、やわらかく。16、17小節で(約?)10度の和音が出てきます。いちばん上を 無視するか、右手で分けて弾けば問題ないでしょう。最後はペダルを上手に使わない と濁ってしまいます。
No.19 Es-dur Allegretto 3/4 (B) 実際のテンポと楽譜から受けるテンポのイメージのギャップがかなりあります。 in 1からin 3までころころと感じるリズムが替わるので、気を付けることが必要。 音的には難しいことはありません。右手が5と4で押さえながら1と2でちゃかちゃか 動くところが慣れないと難しいかもしれない。
No.20 C-moll Adagio 4/4(5/4) (A) 「祈り」と「呟き」が交互に出てくるような曲です。いったい、この主人公はなにを つぶやいているのか?懺悔か、密談か。少なくとも恋人同士の会話ではないでしょう。 つぎのフーガはかなりこの曲をベースにしてかかれているようです。ちょっと聞いた だけではいまいちどこで終わっているのかがわかりにくいようです。
No.21 B-dur Allegro 4/4(2/3) (B) ほとんど右手のエチュードです。ゆっくり行けば初見モードですけど、慣れるまでは かなり音を正確に当てるのがむずかしいです。慣れてしまえばなんて言うことはない。 (2番のプレリュードと同じ理屈)
No.22 G-moll Moderato 4/3 (A-イ) 決して早くはないが、どこか不安をかき立てられるような切羽詰まったようなメロ ディ。にごるまでペダルを使って構わないと思う。右と左の役割が替わるところは メロディが途切れることのないように要注意。
No.23 F-dur Adagio 4/4 (B) ritとa tempo が交互に出てくるので、かなりテンポにむらがあります。 ゆったりと進むが、和音の動き方がメロディを3つ重ねたような動きになるようにす るのには少し大変かも知れません。。
No.24 D-moll Andante 3/4(5/4) (B) 終曲(の一歩手前)だけあって、荘厳な響きをさせています。(これ、フーガがすご いんだなぁ(^o^))ペダルの使い方を気を付けないとどうにも濁った音になりますね。 32〜42まで、次のフーガのテーマが出てきます。


一通り弾いてみた感想

始めてみるまでは本当に終わるかどうか不安でしたが、やってみたら以外と「音を取
るだけ」なら取っ付きやすい曲が多いことに気がつきました。ただ、1曲1曲がそれな
りに完成されているので、デリケートな内面に隠されているちいさなメロディを殺さ
ないように弾けるようになるにはそれなりに考えながらさらわないといけないと痛感
しました。
全曲を通してペダルの使い方は細心の注意が必要です。一歩間違えると非常に濁った
音になってしまい、極美の世界が失われてしまいます。


弾き込む事によって味が出て、音楽の究極の美というものを思い知らされるような曲
集でした。よって結論は「ある程度のレベルにあるピアノ弾きなら余り苦もなく弾く
ことができる」と、言うことでしょう。

フーガのことを少し付け加えると、フーガで取っ付きやすい曲はほとんどありません。
技術的なことはもちろん。表現の方法や感情移入など越えなくては行けない課題が山
ほどあり、とても私ごときが手を付けられるような曲ではありませんでした。
ただ、それこそ1年に1曲でもいいからいつかは挑戦してみたいという遥かな目標でも
あります。

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演奏家別、演奏時間比較表

No. 調性 K.Jarret T.Nikolayeva S.Perticaroli D.Shostakovich
No.1 C-dur 8'11" 5'32" 2'21"(3'21") 4'57"
No.2 A-moll 2'10" 2'24" 1'01"(1'38") --
No.3 G-dur 3'29" 4'01" 1'49"(2'12") --
No.4 E-moll 7'24" 8'48" 2'21"(5'11") 7'24"
No.5 D-dur 4'05" 3'36" 1'45"(2'03") 2'49"
No.6 H-moll 5'22" 9'33" 1'40"(4'50") --
No.7 A-dur 3'11" 3'29" -- --
No.8 Fis-moll 6'21" 10'01" -- --
No.9 E-dur 3'48" 4'29" -- --
No.10 Cis-moll 6'19" 7'33" -- --
No.11 H-dur 3'21" 3'50" -- --
No.12 Gis-moll 6'52" 8'53" -- --
No.13 Fis-dur 7'03" 9'42" -- --
No.14 Es-moll 7'03" 7'09" -- --
No.15 Des-dur 4'20" 5'11" -- --
No.16 B-moll 8'59" 12'00" -- --
No.17 As-dur 5'14" 5'58" -- --
No.18 F-moll 4'35" 6'11" -- --
No.19 Es-dur 4'17" 5'03" -- --
No.20 C-moll 8'05" 11'05" -- --
No.21 B-dur 4'01" 4'31" -- --
No.22 G-moll 5'09" 8'14" -- --
No.23 F-dur 5'28" 6'48" -- 6'43"
No.24 D-moll 10'24" 13'14" -- 11'42"

  1. K.JarretとT.Nikolayeva,D.Shostakovich(作曲者本人)版の演奏時間は、
    Preludes と Fugues が一緒にカウントされている。
  2. S.Perticaroli版の()内はフーガの時間

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ディスコグラフィー

全曲版
ECM NEW SERIES 437189-2
Pf. Keith Jarret
Recording
July 1991
SUCD 10-00073,74,75
Pf. Tatiana Nikolayeva
Recording
1987年(メロディア盤)
 
Tatiana Nikolayeva の他の録音
旧録音(1962年) ビクター音楽産業 VICC40055〜7
新録音(1990年) Hyperion CDA66441/3

抜粋版
EMI :CDC 7 54606 2
pf. D.Shostakovich
Recording:1958.09.12
Salle Wagram, Paris
Composers in Personというシリーズの為、自作自演であると思われる

CDE 1029
pf. S.Perticaroli
Recording:1964.11.14
FONIT CETRA


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