とある小旅行記

 4月30日

 午後、大分陽が傾いた頃、同居人と息子が自転車で駅に向かった。すでに連休に入っているのに、全然出かける予定がない。車だと帰省ラッシュでどうにもならなくなることは分かり切っている。ということで、何か電車を使って旅行をしようか・・・という相談をした。そして、たまたま立ち寄った駅の「みどりの窓口」で「週末学校」というチケットを見付けた。

 「週末学校」はなかなかすごい切符である。大人+子どものセットで買うのだが、大人12,000円、子ども6000円で、2日間、JR東日本の電車であれば、新幹線の特急券込み、指定席は取り放題というほとんど黄門様の印籠に近いようだ。しかも、他の企画物キップはGWには使えないのに対して、これはGWの真っ最中に使える。ただ、東海道新幹線は使えないので、もし使うとなると東北、上越方面に使う事になる。色々時刻表を眺めていたら、なんと6時に東京駅から出る電車に乗れるらしい。ここで、話が段々妙な方向に向かっていく。6時東京駅始発の秋田新幹線があるのだ。今まで子ども達は新幹線は「新横浜〜東京」に乗っただけだった。それはそれで面白かったようだが、「新幹線だっていうから乗ったらこだまだったじゃないか〜」と、恨み言をいう息子(こだまだって新幹線だよな〜と、思うけど)に3時間の新幹線の旅もいいかな?いっそのこと、一泊できればゆっくりできるかな?などと、話「だけ」はとんとん拍子に進展する。その夜は、インターネットで田沢湖付近の宿を色々検索する。大体の雰囲気はつかめた。便利な時代になったものですね。

 5月1日

 早朝、東京ー角館の2日キップを買う。9時頃より夕べインターネットから仕入れた宿情報を頼りに田沢湖付近の宿に片っ端から電話をする。が、(当然の事ながら)すべて満室でどうにもならない。さすがにGWのど真ん中の前日に宿を取ろうったって無理な話だ。しょうがないので二日目のキップをキャンセルして、当日の往復券に変更するためにみどりの窓口へ。
 3日を反故にするのはもったいないということで、とりあえず日帰りでどこにいくかを検討したが、中央本線も捨てがたいということで、「スーパーあずさ」で松本の温泉に日帰りをしようということになった。車だとこのくらいの日帰りはやったことあるが、電車では初めてだ。運転疲れがないだけいいだろう・・・。しかし、秋田日帰り、次の日が松本日帰りなんていうスケジュールを考える人も考える人だと、思わずあきれる。問題は指定席が取れるか・・・だが、なんとか取れた。なんとか・・・という理由は、行き帰りとも喫煙席になってしまったからだ。ちょっと状況を想像して怯んでしまったが、一人1枚マスクを持っていくということでなんとかしようということになった。
 結局、この日はみどりの窓口に3回程足を運んだ事になる。いい加減駅員に顔を覚えられているんじゃないかな?

 なんにしても、決まってしまったのだから、それなりの準備をする。どうせ朝ご飯は車中になるだろうことも考えて、冷凍サンドイッチを作っておく。途中のコンビニでおにぎりを買ってもいいのだが、それだけだって結構お金がかかるからだ。第一、買っているヒマがあるかどうか怪しい・・・のは、長年同居人の行動パターンを見ていて確信していることだから。

 5月2日

 起床3時半、目覚し時計が3つ時差攻撃で鳴る。着替えをし、サンドイッチと水筒を確認し、4時過ぎに家を出て駅に向かう。ここで誤算、近道の筈の地下道の通り抜けができない。しかたがないので大回りでいくことにする。5分は時間をロスしているだろう。ちなみにこの切符は、入場するときに全員そろって有人改札口を通るだけである。チェックもなにもない。(最初は「本当にこれでいーんかいな?」と不安だったが、新幹線の駅をフリーパスで入ったあたりから段々ずうずうしくなってきた。(^^;))4時半過ぎの始発にのる。同じような感じの人々が結構乗っている。さすがに通勤をしている風の人がいないのが、新鮮といえば新鮮。途中でちょうど開けている場所にでたときに日の出を見る。

 京浜東北線に乗り換えて、東京には6時10分前に到着。新幹線の入り口で少々手間取ってしまったが、無事6時発の「こまち」にのる事ができた。これでまず第一関門突破。朝ご飯ようの冷凍サンドイッチは、かちかちに凍っている。適度に解凍してから食べたのだが、うっかりバターを塗るのを忘れていたツケが回ってきてしまった。なんと解け出してからその水分がパンに染み込んで、パンがべちょ〜っとしてしまったのだった。半解凍で食べた時は全然気にならなかったのに・・・変なところでバターの威力を知った。

 日本食堂販売員のお姉さんがやって来た。すかさずコーヒーを1杯買う。1個300円とはまた大層な値段だけれど、缶コーヒーはあまり好きじゃないので、これも旅の一興ということでこれ以降何度かお世話になることになった。テーブル(もしくは窓)に紙コップのコーヒーを置いて、流れていく景色をぼぉ〜〜っと眺めている。こんな長閑な時間の流れも普段できない分、なかなか好きだ。
 何度か「今日のこまちの指定席は満席となっております・・・」のアナウンスが聞こえるが、隣の窓際の席は空いている。きっと次ぎの仙台で乗ってくるのだろうと思っていたが、仙台に到着しても誰も来る気配がない。次の駅まで・・・と、窓際に座ってぼーっとする・・・早起きが祟ってか、いささか眠くなってくる。これもまた車の旅では味わえないのんびりとした気分。

 仙台に近づいた頃、今まさに仙台に帰省している弟夫婦に車内から電話。さすがに仙台駅に停車しないと携帯には通じなかったが、一体なにがおきたのか?と思ったらしい。そりゃそーでしょうね。いきなり「いま仙台〜」なんて言われればなんのこっちゃ?・・でしょう。

 「こまち」は盛岡で電車を切り離して、それからは単独で走り出す。それからの「こまち」は速かった。しかし、よくみてみるとこれは単線を走っているのです。妙に風景が怖いような感じがなぜだか良く分からなかったのだが、要は、線路の風景に余裕がないからだったのですね。しばらく走ると、小岩井牧場の案内がある。窓に映る大きな山は岩手山だろうか?ますむら・ひろしの「コスモス楽園記」に出てくる、幻の岩手山によく似ているような気がする。家に帰ったら調べてみようと思う。

 9時過ぎ、田沢湖駅に到着。なかなか明るい駅舎だが、駅前はのどか(ひなびた?(^^;))な雰囲気が広がる。バス停に向かい、田沢湖畔までのバスを探すともう今すぐにでも出るバスがあるという。座れないけどそれでもいいか?という駅員?のありがたい言葉を頂いたが、この際乗れれば構わないわけで、キップを買い、バスに乗り込む。なかなかのどかな風景が続いたが、ぱっと視界が広がると、そこには田沢湖。晴れているのも手伝ってか、青い湖面がより一層青く、のどかにボートが浮んでいるのが見える。

 田沢湖は海より深い。そのせいで多分湖面は凍結しないのだろう。まさに吸い込まれそうな碧い湖面。天気がよいのでそんなに感じないが、少々天気が悪かったりしたら結構意外な雰囲気になりそうだ・・・

 バス停に到着。すぐに、帰りのバスの時間を確認しておく。駅までは20分見ておけばいい。しばらくの間、湖畔を散歩。砂が白く、さらさらしている。普通の砂とは違うのは、多分火山灰で出来ている砂だからだろう。あちこちに落ちている松ぼっくりを拾いながら一応予定にしていたハーブガーデンまで歩く。が、思ったより距離がある。これは、帰りは30分は観ておいたほうがいいな・・・と、思った時点で、バスの発車時刻まであと1時間。入場料を払ってアイスを食べて30分で出てきた。なんともせわしない・・・。ちなみに、この入場券は1年間入場無料パスらしい。さすがに年内にもう1度はちょっと・・・。ハーブバスにも入ってみたかったのだが、仕方がない。とにかく、バスステーションまで歩かなければ・・・あと25分。しかし、行きと違って実際に帰り道をあるくとかなり時間がかかった。

 バスステーションには予定の3分前に到着。そこのみやげ店で来たときに目を付けておいた地元窯元のコーヒーカップ1客を買う。包装してもらう時間ももどかしく、急いで外に出てみると・・・まだバスは来ていない(^^;)。拍子抜けとはこのことだ・・・

 段々時間が経つと、指定席の時間でもあったのか時刻表を見ている夫婦や、いらいらして、結局タクシーを使うカップルなども現れた。多分、私たちも指定席を取っていたらそこまでするかもしれないが、1本遅れてもさして行程に影響はない(実はあったのだが)と判断して、バスを来るのをひたすら待ち続ける。結局20分近く遅れてバスが来る。見てみると、運転手1人が慣れない乗客にのんびりと行き先等を対応している。親切なのはいいが、なんとものどかなバス予定だ。都会の正確さに較べてしまって、溜息が出る・・・結局、予定の新幹線には5分の差で間に合わず。指定席を取ってあった訳じゃないので別に構わないのだが、30分をスパンとして行動している身には結構つらい。次ぎの25分後の新幹線に乗る。それまで暇だったので、駅構内の観光コーナーにあったパソコンでの寄せ書きにちょっと記帳。いったい、これは誰が見るのだろうか・・・?

 満員の新幹線の自由席に乗り、一つ先の「角館(かくのだて)」に着いた。普通、新幹線一駅なんて使うかぁ?という感じですが、これができるのが「週末学校」の凄さである。とにかくお腹がすいていたので田沢湖駅に置いてあった「角館マップ」にあったうどん屋に入る。うどんを食べずに正調きりたんぽ鍋を食べる。ここは稲庭うどんの産地?なのだから食べればよかった。きりたんぽは美味かったが・・・量が少ない割に高価だったのが少し損したような気分に・・・・

 そのまま歩いてさくら祭りの会場にいくが、さくらはすっかり終わっていた。花が散り、遮る物がない川岸の芝生では、地元の人たちが妙に盛り上がっている。ぽかぽかとした川岸の芝分でしばしうたた寝。なかなか気持ちがいい。少しお腹が空いたのでお団子を買う。

 当初観光名所である「武家屋敷」にも行こうかと思っていたが、あまりにも多くの観光客がいるのに気が重くなってきた。(おお、定形の文章だ(^^;))結局、時間に余裕がなかったのと、いちいち入場料を払って入るのもなんだな〜と思い、この通りにあった民芸屋を覗いただけに終わった。ここで始めて通販生活ではお馴染みの「まげわっぱ」と言う秋田名産のお弁当箱(?)に出会う。手のひらより少し小さい位の物だが、これにご飯を入れたら美味しいだろうな・・・と、不思議にそう思わせる。ここは多分、奥には人が住んでいるのだろう。保存をしている人たちは大変だろうと思う。旧家に住む人は、それなりに苦労はあるものだ。

 途中のお菓子屋でお菓子を買うのに手間取って、余裕があるはずが時間が無くなった。結局、東京行き新幹線の発車5分まえに駅についたので、駅弁を買う時間がない。とりあえず、東京駅についてから考えることに。あまり欲張り過ぎると時間がなくなるのか?もともとタイトなスケジュールだったのか・・・・?多分後者でしょう。

 「こまち」に揺られながら、東京駅から最寄り駅までどうやって帰るか?という議論にしばし花が咲く。とにかく眠いし、疲れているので絶対に座りたいとは同居人の弁。横須賀線で帰ろうかとか、でも東京駅から座れるかどうかなんてわからない・・・など色々考えたが、「しまいには東京から少し戻ってしまおうか?」という同居人の意見にあきれていささかやけくそ気味に「新宿から中央本線特急の指定席でも取って、弁当でも食べるか?」と、言う。が、我ならがむちゃくちゃだと思う提案にあっさり乗ってきた。(^^;)結局、横須賀線で座れても、その後の横浜線で座れない可能性の方が大きいからで、八王子まで行けば、確実に座れる。しかし、普通、新宿〜八王子なんていうのは特別快速の世界ですよねえ・・・まあ、こんな時じゃなければ八王子まで特急指定席なんて使わないだろうから・・・

 7時半過ぎ、東京駅に着いた。駅構内のインフォーメーションに時刻表があるのを発見して、新宿からの特急を探す。少し先だが、9時発の特急があるのを確認した。目的の駅弁を探したが、結局見つからずに、駅構内の中華屋に入る。食事の注文を済ませてから、そこに行く途中で見付けた緑の窓口に入り、無事9時発の中央本線特急の指定席をとる。こんな指定席券を買う人もそうそういないらしく、駅員が結構悩んでいたらしいが、問題はない。食事時間が30分、特快で東京から新宿、15分後にでる特急で新宿から八王子まで。検札が来る前に下車。乗車前にホームに見付けたコーヒーショップ(?)で買ったコーヒーを飲んでいる間に八王子駅に到着。特快でも50分はかかるはずだから、30分で八王子に行けるなんて楽しい話です。そして、最寄り駅に着いたのは10時過ぎ。さすがに家まで歩く元気がなくて、タクシーで帰宅。風呂に入る元気もなく、体力限界のぼろぼろの状態で、子供達はさっさと就寝。私も珍しく12時にチャットに10分程入り、常連達に挨拶だけして早々に布団に潜り込むと、その後の記憶があっというまに無くなったということで、不眠症の私にしては珍しく墜落をしたのであろう。

さて、明日は6時半起きだ・・

 5月3日

 昨日の教訓を生かして、駅までは商店街を通る最短コース。それでも予定の電車の3分前に駅に到着。ただし、1本前の電車を設定していたので、今回は楽勝。スーパーあずさは喫煙席。ただ、煙の流れを観ているとちゃんと換気がされているようで、思ったほど煙臭くない。松本駅で降りる準備をしていると、なにやらカメラマンがムスコの写真を取らせて欲しいとのこと。写真に取られるとなると妙に緊張してガチガチになっているのが面白い。来春に出る本の中に乗るらしい。ただ、題名はわからない。だから観られないだろうな。後から考えてみると、乗り込んできてからも、妙に立派なレンズを付けたカメラで駅弁を椅子の上に載せて写真をとったりしているので、マニアなのかな?とは思っていたが・・

 松本駅を降りて、まず第一の目的である松本城へ向かう。100円循環バスというのが駅から出ていたが、地図を見たところそんなに遠くないと思われたのと、そもそもバスの出発場所がよくわからないという理由で、徒歩で商店街をぶらぶらすることになった。雰囲気は横浜・・・というか、関内の伊勢佐木町に似た雰囲気。周りが山に囲まれているのがかえって不思議な感じ。松本城の入り口にある店でアイスキャンディーを食べる。ただし、私はお焼きにした。しかし、ただでさえあまり漬物系は食べない私にとって、熱い野沢菜は・・・・ちょっと厳しかった。(^^;)

 結局、松本城の人出に恐れをなして少し駅方面にもどり、ガイドブックに載っていたおそば屋でそばを食べる。が、ワタシはなぜかなべ焼きうどん。そば食べればよかった。ちょっと食べた処では、しこしこしていてうまかった。食べ終わってから正面玄関から建物を眺めると、意外とマトモな店だったことに気がついた。しかし、中のテーブルは・・・・ふつーの食堂よりすごかったが。(^^;)

 店を出てから、温泉はゆっくりしたいとのことで、松本城見学はパスして温泉行きのバスに乗る。浅間温泉の温泉会館(いわゆる銭湯です)で、のんびりと風呂に入る。小振りではあるけど、露天風呂やサウナなどもある結構本格的な温泉。空を眺めながらぼお〜〜っとお湯に浸かるのが幸せ・・・(^^)

 駅に向かう途中、旧開智学校を見に行く。温泉からのバスを途中下車したのだが、これが案外遠い。何度か地元の人に道を聞いて、到着すると、目の前に開けているのが現役の「開智小学校」。一部工事をしていたが、これが公立の小学校なのか?と、思うような超モダンな建物だ。目的の旧開智学校はその奥にあるが、雰囲気が両方とも似ている。多分、イメージを似せて作っているんだろうな?と。お役所もなかなか粋な事をするもんだ。中はさながら「小学校の博物館」。アメ色になっている木製の廊下がふと懐かしい気分になった。

 駅まではバス便もでているが、もし電車に間に合わないとまずいので(目的の電車は指定席を取ってあったので)、小学校の前にあったタクシー営業所に待機していたタクシーにお願いをする。「今日は観光客が多いから、駅前は渋滞しているので時間かかるかもしれません。悪くて20分はみてくれませんか?・・」と運転手は言っていたがそこはさすがに地元、裏道を駆使して5分で駅までついた。おかげでお土産を選んでいる時間ができた。お土産には、朴葉味噌と、コーヒーカップ。あとはおそば。

 なぜか駅弁にこだわる同居人。昨日駅弁が食べられなかったので、今日は是非食べたいと・・・お土産に時間がかかって、結局改札を入った所の駅弁売り場で購入。食堂で食べるのと、弁当を買うのと、経済的にはどっちが徳かよくわからないけど、電車で食べるという付加価値を考えればこの場合はお弁当になるのかな?とも思う。5時になった時点で駅弁をパクつく。相変わらずの日本食堂のコーヒーを買って、流れる窓の風景に身を任せる。車では味わえない電車の風景がそこにあった。

 六時半頃、意外と早く最寄り駅に到着。さすがに2日間の強行軍に疲れ果てていたようで、無性に甘いものが食べたい。デパートのお菓子コーナーで芋ようかんを見付けてゲット。残りのウーロン茶と一緒に食べてやっと一息・・・

 実際にこの工程をまともに電車を使ったらどうなるか?という試算をしてみたところ、なんと15万弱になることが判明。特急料金、指定席料金というのが意外と高いらしい。実際に使った電車賃は36000円なので・・・JRは高いのだなあ〜と、思わず実感してしまった次第。

 こんなふうにすぎていった、初夏の4日間。もうおしまい。

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