チェンマイ滞在記(7)楽々登頂

 10時きっかり、ロビーにはメガネをかけた学生風の若者が迎えに来た。彼の名はMr.Jack。別にタイの名前があるのだが、メモしなかったので忘れてしまった。大学の観光学科?で日本語を学んでいたという。まあ、本人もJackと呼んでくれとのことなのでそうすることとしよう。
 
 Jackの話す日本語のレベルはまあまあ、かな。厳冬期に青森の五所川原へ行ったとき、地元のおじさんに話しかけられたのだが、よく分からなくて往生したことがあった。それよりはずっと分かりやすい。こちらも、なるべく短くて主語述語がはっきりした日本語を使うこととした。
 
 チェンマイから国道を45分程南下し、Chom Thong市街の手前から山の方に折れる。すぐにDoi Inthanon国立公園のゲートがあって、ここで入山料を払うこととなる。
 
 そこから山道になって左右に大きく曲がりながら高度を上げて行くが、道は舗装されているし周りは緑の林なのであまり高山の趣はない。あちこちに滝があるらしく、表示板を何回も見かけたが、まずは山頂を目指す。小さな集落や段々畑があって、ここに山岳少数民族が住んでいるのかとも思った。
 
 2000mを越えたあたりで大きなチェディ(仏塔)が見えてきた。このRoyal Chedisには後で寄ることとして、そのまま道を急ぐ。やがて軍のレーダーサイトの脇で道は駐車場となって終わる。ここまで2時間弱。あまりにもあっけないがタイの最高峰Doi Inthanon(2599m)に着いてしまった。
 
 駐車場の脇の階段を上ると、小さなチェディがあって、来た人がみんなお参りをしている。この地方の有力者だった人のチェディということだが、ガイドに聞いても詳しくはわからない。裏に回ると小屋があり、布や飾りが納めてある。件のチェディに奉納されたものを入れておくそうだ。これだけ熱心に拝まれているところを見ると、相当の徳を以て知られた人のようだ。そんなに昔の方ではないとのことだが。
 
 小屋の前の地面に、日本で云えば三角点の様な標識が設置してある。タイ語で「Doi Inthanon 2599m云々」と書いてあるその地点が最高地点らしい。木立の中で何とも実感がわかないが、標識の脇に座り記念写真を撮った。同じ最高峰でも、高山病と闘いながら登ったアフリカ最高峰Kilimanjaro(5895m)とはエライ違いだ。こんなにラクしていいのかな?
 
 駐車場とチェディの間にタイ語と英語で「Doi Inthanon 2599m云々」と書いた立派な看板があって、たいていの人はそこで記念写真を撮っていく。勿論私もそうしたのだが、実は駐車場の反対側がレーダーサイトなので、そっち方向は写真厳禁。Doi Inthanonはそんなに展望も開けている訳じゃなく、よく霧や雲がかかっていて下界は見えないことが多いそうだ。山頂から唯一眺めの良さそうな方向がレーダーサイト方向なんだけどなぁ・・。
 
 山頂からやや下がった所に小さな展示館があって、Doi Inthanon周辺の動植物の写真などを見ることができる。クイズコーナーでは「最も危険な動物は?」というのがあって、熊かな?蛇かな?とガイドに聞いても笑って答えない。壁の小窓を開くと正解があるのだが、そこには何と鏡が入っていた。そう、人間なのだ。
 
 Aangka Nature Trailという小径を辿って森の中に分け入る。木道がきれいに整備されていて、所々説明の札がかかっている。この辺り一帯は先程の展示館も含め、自然植物園のような形になっているらしい。
 
 森の中は木々に苔がまとわりつき、霧が深いことを思わせる。農学部を卒業したくせに植物のことはからきし分からないが、植物相としては日本の同じ高度のものとはまるで違う。低緯度にあるせいか、この高さでも雪が降ることは無いそうだ。
 
 遊歩道の一番奥、小さな祠のようなものがあった。聞く所によると、ヘリコプター搭乗中ここで遭難死した政府要人のものだそうで、なるほどヘリのエンジンとおぼしき機械の上に祀ってあった。これも霧深き気候のなせることなのか。

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