『地図のことがわかる事典』

書評(未完)
1.地教研会報
2.「ダカーポ」443号、4月19日号 83ページ
3.「山と溪谷」2000年5月号 345ページ
4.「岳人」2000年5月号 107ページ
5.日本国際地図学会機関誌「地図」2000年第1号
「地図って楽しい!一人でも多くの方が地図好きになってくださ るなら、編著者にとってこれ以上の喜びはありません。」とはしが きに述べられているとおりの、編著者の地図への思い入れの伝わる できばえである。 小粒な体裁ながら内容はしっかり詰まっている。はじめから順に 読んでよし、興味ある項を拾い読みして良し,地図のことで疑問が わいたらFAQを引く要領で見てよし,といろいろ利用できる。図版 も独創的なものもあり豊富で親しみやすい。 本書の類書に比しての特色をズバリあげれば二つ。 ひとつは地図の政治・社会とのかかわりに関する事例が豊富に 記載されていることと、もうひとつはデジタルマップの最新の動向が 紹介されていることである。 地図を社会的産物ととらえる編集方針から「地図から社会が見え てくる」の章はもとより他の章でも,随所に執筆者の地図を背景に した社会観がにじみでている。地図の楽しさだけでなく地図の怖さ も教えてくれる。ただ,読み手としては表現の客観部分と主観部分 とをわけて読み取らねばならない。 地図の事典という以上,図式や投影法など地図の基礎知識の解説 が充実しているのは当然ともいえるが,「地形図を読みつくす」の 章を読みつくせば読図の基本が身につく。なお,年号表示は本書全 体を通じ西暦が原則なのは当然として,肝心の地形図図式年次の個 所など西暦が併記されていないところがあり経年変化を読みとりに くい。もとをただせば国土地理院の地図に西暦が欠けているのが元 凶ではあるが,統一性に欠けたといえる。 測地成果2000については十分にふれられてはいないが測量法の改 正もまだの現状ではやむをえない。経緯度数値の変更という事柄を いかに正しく,分かりやすく世の中に説明するかは今後の本書のよ うな地図の啓蒙書および当学会にかせられた課題である。 編著者のうち田代氏は@niftyの「山の展望と地図のフォーラム(略 称FYAMAP)」の代表者であり,執筆者には同フォーラムの会員がお おく名をつらねている。ネットワークがあってこそ本書が生まれた とはしがきで述べられているが,ネットワークを利用してある事柄 をまとめあげる手法は学会活動にも応用でき 「地図の近未来形」の章では数値地図や地図ソフトなどデジタル マップの情報が紹介されている。口絵の「北アルプス水晶岳から槍 ケ岳と富士を望む」のような『展望地図』というか地表を横からみ た画像も地図の一種であるには違いない。ただ今後の地図の主流の ひとつとなるとおもわれるGPS関連地図,とくにカーナビゲーショ ン上の地図については言葉はでてくるものの画像での紹介がないの が物足らない。 最後に,日本国際地図学会の会員としての一言。これだけ地図の ことを多元的に要領よくまとめてあるのだから,日本国際地図学会 の存在・活動にもぜひ触れてほしかった。 (栗田好明)
6.地図協会機関誌「地図の友」2000年3・4月号
地図の世界を旅してみよう
「地図」という言葉から、どのようなイメージを思い浮かべますか。
山に登る人は地形図やルートマップ、ドライブ好きはロードマップ、
鉄道ファンは路線図、歴史マニアなら切り絵図……と、人によって
それぞれ異なるでしょう。
地図を手に、知らない場所を旅するのもいいものですが、まだ行
ったことのない場所を想像しながら地図を眺めるのも楽しみのひと
つです。
地図から見えてくる新しい発見
「純粋に地図を楽しむ」本としてさまざまな知識を網羅。
「北極点の東はどっち」「わざと間違いのある地図を作っている
国がある」「パイロットはどういう地図を見ているのか」など、知
れば知るほど地図が面白くなる情報を満載。
地図マニアも一般の人も楽しめる一冊です。
7.「しんぶん赤旗」2000年4月24日
高校教師、大学講師らが執筆した『地図のことがわかる事典』(田
代博、星野朗編著、日本実業出版社・一五〇〇円)は、全十章のな
かに独立した章「地図から社会が見えてくる」を設けています。
大縮尺の地形図は、十八、十九世紀の近代国家の成立にルーツが
あり、多くは国家的事業として軍隊の一機関によって作製されたと
いいます。
「地図が軍用を大きな目的とすると、描かれる事物もそれを反映
する。歩兵の通行に関して、乾田、水田、湿田が区別されたり、相
手から身をかわす灌木としての桑樹・茶畑、塀・棚や、あるいは交
通障害となる河川や水濠などはくわしく描かれる」
その項では、アジア・太平地域を範囲とし、日本軍占領地に計十
四の「日の丸」をたてた「大東亜戦争図」も引用して掲げ、つぎの
ように指摘します。
「小縮尺地図は、しばしば地政学的に利用され、国民の戦意高揚
に地図(主題図)も使われた。そのためか、第二次大戦終了後、しば
らくの間『地図』には、『日の丸』と結びついたきなくさいイメー
ジが残り、人々もタブー視する傾向があった。地図の自由な作製と
使用は、平和とともにある」
計百二十三の各項目は、見開き二ぺージにおさめ読みやすくなっ
ており、それぞれに関連する地図や図などを掲載しています。「イ
タイイタイ病の原因を発見した患者分布図」の項は、一ぺージを「発
生地点の分布」図(富山県)にあてています。患者発生地点を地図の
上に記入したものです。その結果、患者は水田地帯の一定地域に集
中していました。それらのことから、原因が上流の神岡鉱山のカド
ミウムであり、公害病であることが明らかになりました。
同書は、地図にまつわるさまざまな話題を発掘し提供しています。
「地形図の折り方にも流儀はいろいろ」の項のなかでは、つぎのよ
うな紹介をしています。
「地形図を山に持っていく際の折り方は、昔からいろいろ工夫さ
れてきた。その中には、不破哲三さんが『回想の山道』(山と渓谷
社)の中で述べているような『地図は折り目のところがら切れてく
るから、それを防ぐために、買ったらすぐもんでくしゃくしゃにし
たほうがよい』というユニークなものもある」
●表紙へ