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誰も行けない温泉 命からがら



誰も行けない温泉 命からがら
 空いている温泉というのは快適なものである。


 普段、入れないような大きい湯船に、ゆっくりと肩まで浸かるのは非常に気分が良い。露天風呂ならば尚更だし、特に私が以前行ったほったらかし温泉のように眺めが良いと、最高の気分になるものである。

 とは言うものの、「芋を洗うように」という諺が当てはまる状態だと、かなり快適さが少なくなってしまうのも事実である。

 湯船に入っても手足を伸ばせないし、騒がしくもなる。また、人が多くなると、水風呂に頭まで浸かったり、見たくも無いものを目の前に曝してくれる人まで出てきたりする。

 そんなわけで、私は常々、自分一人だけで満喫できるような温泉に行ってみたいと思っていた。


 そんなある日、Aさんから「誰にも行けない温泉 命からがら」という本を紹介して貰った。

 この本は温泉旅行記というより、自然にお湯が湧いている所に浸かりに行ったサバイバル探検記である。ガスマスクをつけて火口に溜まった白濁したお湯に浸かっている表紙の写真から、内容が伺えるだろう。

 この本の筆者は、崖を下ったり、沢登りしたり、道に数時間迷ったり、硫黄ガスが発生している為にガスマスクをつけたりしながら、全国津々浦々のお湯に浸かっているのである。その探検記たるや、驚きを越して苦笑してしまうようなものばかりで、この本を読んでいる間、私はニヤニヤしっ放しであった。


 この本の中には、数少ないながらも、ハイキング程度の道のりで綺麗な湯船に浸かった記事もある。他の波乱万丈な温泉探検記と比べると物足りなさを感じてしまうのだが、自分が温泉を楽しむならば、たとえ人が多くとも普通の温泉の方が良いと深く感じてしまったのである。
大原利雄著
小学館文庫
2002年
ISBN4-09-411524-2

(2004/04/30 23:13 JST)

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