ガラスの汚れを防ぐ光触媒塗装工法
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1.はじめに
 建物のガラスや外壁に汚物が付着し都市の美観が損なわれています。汚物の実体はガラスや外壁の接合部(目地)に充填したシリコーンシーリング材から滲み出たシリコーンオイルに、浮遊塵と微生物が付着した複合物です。ガラスや建材の内部に染み込んだシリコーンオイルは洗剤や溶剤で洗っても除去することが出来ません。又、シリコーンオイルの滲み出を防ぐ方法もない。
本工法は建物の美観を守るため、シリコーンオイル除去用の洗剤と、シリコーンオイルの滲出制御剤を開発し、光触媒塗料と併用してガラスの汚れを防ぐことを目的としています。以下にこの工法で使用する洗剤と、オイル滲出制御剤、およびガラス用光触媒塗料の機能と使用方法について説明致します。
2.技術背景
2.1 建物に汚物が付着する原因
 建物を水密、気密化して耐久性を高めるため、ガラスや建材の接合部(目地)に様々な材質のシーリング材が使われています。中でもシリコーンシーリング材は耐水、耐熱、耐寒、耐久性等に最も優れているため建物の外部に多用されています。しかしシリコーンシーリング材はゴム状に硬化した後、中から未硬化のシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)が滲み出て拡散し、周囲のガラスや建材に染み込む欠点があります。
シリコーンオイルが染み込んだ部分は静電気を帯びるため浮遊塵や排気ガス、油煙等の汚物を吸着します。汚物が付着した部分には、汚物を栄養原に利用して微生物が繁殖します。カビ等の微生物は増殖すると黒色や緑色の胞子を生成するため外壁はさらに汚れます。胞子は小さく軽いので僅かな風が吹いただけで、剥れて環境中に飛散し他の物体に転移します。シリコーンオイルによる建物汚染の実態とメカニズムは20年以上前に解明され、シリコーンオイルの洗浄剤や滲み出防止塗料が開発されましたが、十分に機能する製品が未だに有りません。
2.2 従来のガラス洗浄
各種の洗剤で建物を洗っていますが、ガラスや外壁の中に浸透したシリコーンオイルを洗い落とすことが出来る洗剤はありません。なぜなら、シリコーンオイルの表面張力は20dyne/cmでありトルエン(28.7dyne/cm)や水(73dyne/cm)が入り込むことが出来ない微細なピンホールの中にまで浸透します。内部に染み込んだシリコーンオイルは洗剤で洗っても、トルエン等の溶剤と融合させて拭い取っても完全に除去することが出来ません。シリコーンオイルは洗剤や溶剤等の一機能だけで完全に除去することが出来ません。
2.3 従来のシリコーンオイルの滲み出防止塗料
 シリコーンシーリング材の表面に緻密な塗膜を形成してシリコーンオイルの滲み出を防ぐプライマーや塗料が販売されています。しかし、これらの塗料が形成する塗膜にはシリコーンシーリング材の変形に対する追従性がないため短期間でクラックが入り、中からシリコーンオイルが滲み出すため効果は長く続きません。
2.4 従来の光触媒塗装による防汚工法
 シリコーンシーリング材に塗布することが出来る光触媒塗料は有りません。そのためシーリング材を充填した目地周辺の外壁やガラスに光触媒塗料を塗布し、シーリング材から滲み出て拡散したシリコーンオイルが、接触した時に分解しようとしています。しかし、シリコーンオイルはシリコーンシーリング材を充填する時周辺にも付着
しており、施工後、風雨に晒される度にシーリング材の中から滲み出て拡散し、ガラスや外壁に染み込んでいます。建物を洗浄する技術がない業者は、シリコーンオイルが染み込んだガラスや建材の上に光触媒塗料を塗っています。シリコーンオイルの上に塗料を塗ると下地材と完全に密着しないため硬化せず、塗膜が剥れる原因になります。


3.本工法開発手段


  ガラスや外壁に染み込んだシリコーンオイルを完全に除去することが出来る洗剤と、オイルの滲み出を抑制する制御剤を開発し、光触媒塗料と組み合わせてガラスの汚れを防ぎます。
3.1 シリコーンオイル洗浄剤の開発

  シリコーンオイルと融合する浸透性溶剤と、シリコーンオイルを包含する乳化剤、および乳化物を下地材から分離する界面活性剤を配合して、ガラスや外壁に染み込んだシリコーンオイルを除去することが出来る洗剤(SOCクリーナー)を開発しました。
SOCクリーナーの主成分

1

ミネラルスピリット

2

エチレングリコールエーテル

3

浸透性溶剤

4

乳化剤

5

界面活性剤


機能(SOCクリーナーは水で油を洗い流す)

1

SOCクリーナーを洗浄対照面に塗布すると浸透性溶剤の作用で、ガラスや外壁
の内部に深く浸透する。

2

SOC中のミネラルスピリットがシリコーンオイルと融合し下地材から分離する。

3

シリコーンオイルを含む融合物に洗浄水が接触すると、乳化剤が水とオイルを
包含し遊離させる。

4

乳化物を界面活性剤とエチレングリコールエーテルの洗浄力で洗い流す。


3.2 シリコーンオイルの滲み出制御剤(KBLコートSOP)の開発

 SOPはシリコーンシーリング材と融合する混合溶剤にスメクタイト、ポリアルキルシロキサン、ヒュームドシリカ及びアパタイト被覆酸化チタンを配合して開発しました。
塗布後3〜5秒で表面が乾燥し、シリコーンオイルを取り込んでシーリング材と一体に硬化するため層間剥離を起こしません。硬化体の表面には全くオイルが存在しなくなり、無機物であるため静電気を帯びず浮遊塵を吸着しなくなります。塗布面は50時間でほぼ硬化し、硬化体はシリコーンオイルの滲み出を抑制すると共に、アパタイト被覆酸化チタンに光が当たると光触媒反応が起きて、接触した浮遊塵や微生物を分解するため汚物が付着しません。SOPは施工直後の未硬化のシリコーンシーリング材にも塗布することが可能であり、表面が乾燥硬化しても内部の硬化を妨げません。
 SOPの主成分

ミネラルスピリット

トルエン

ポリアルキルシロキサン

ヒュームドシリカ

スメクタイト

アパタイト被覆酸化チタン


3.3 汚物を分解するガラス用光触媒塗料(KBLコートT1)
 T1は光触媒酸化チタンと二酸化ケイ素をアルコールに分散させた二液型の光触媒塗料です。A液とB液を1:1で混合しガラスに塗布すると4分間で乾燥し3時間後に鉛筆硬度7Hに硬化します。硬化した塗膜の表面は疎水性を呈し、耐水試験1000時間にも耐え、耐水塗膜からは干渉光が発生しません。塗布面に光が当たると光触媒反応が起きて付着した有機物を分解するためガラスが汚れません。
 T1の主成分 

1

エタノール

2

メタノール

3

酸化チタン

4

二酸化ケイ素


4.新築建物のガラスに施工した事例
  市営バスとJR駅の連絡路に高さ約15mのガラス張りの建物を建設し、中にエレベターを設置した。ガラスの美観を保ち、メンテナンス経費の軽減を目的にガラス用光触媒塗料(KBLコートT1)を塗装したのでその施工フローを説明します。

工程

工種 

使用材料

備考

1

一次洗浄

マルチクリーナー(殺菌洗浄剤)

2

シリコーンオイル洗浄

SOCクリーナー

3

二次洗浄

水道水

4

付着物除去

ダイヤモンドバフ

5

三次洗浄

含アルコールイオン交換水

6

屋根の保護

KBLコートG

写真1

7

オイル滲出制御

SOP

8

養生

9

光触媒塗装

T1

写真2

写真1.施工.和田塗装工業

写真2.施工管理.東鉄工業


5.特殊ガラスのメンテナンス
  各種の金属粉末をガラスにスパッタリング法やスプレーコーティング法で塗装した熱線反射ガラスが建物に使われています。大学の建物外壁にカーテンウオール工法で取り付けた熱線反射ガラスが、風雨や温度差等の影響により劣化し、白化して透明度が低下したためガラスの改修工事を実施しました。

写真3.劣化した熱線反射ガラス

 本工事は外壁を殺菌洗浄した後、劣化した金属コーテイング層と付着しているシリコーンオイルを研磨して取り除き、シーリング材にはSOPを、ガラスにT1を塗布しました。その施工フローを説明します。

工程

工種

使用材料

備考

1

一次洗浄

マルチクリーナー(殺菌洗浄剤)

2

劣化部研磨

ハイシャインHS

写真4

3

シリコーンオイル洗浄

SOC    クリーナー

写真5

4

二次洗浄

水道水

5

三次洗浄

含アルコールイオン交換水

6

ガラス枠保護

KBLコートG

7

オイル滲出制御

SOP

写真6

8

養生

9

光触媒塗装

T1

写真7

写真4.施工.パイオンケミカル

写真5.施工.素車B・S

写真6.施工・素車B・S

写真7.施工管理・K・B・L


6. 所見
 ガラスに光触媒塗料を透明に塗布するには高度な技術を要しますが、各種の原因(洗浄不良、硬化不良)により透明塗膜が形成されない時にはすぐ判るので、塗膜を除去し塗り直すことが出来ます。したがって、ガラスに光触媒塗装をする工事は最も施工管理がし易い工事といえます。光触媒塗料が形成する塗膜の膜厚は1〜2μmであり、ガラス面に残留しているミクロサイズの汚物が塗料と混ざると、塗膜が白濁し剥れる原因になります。光触媒塗料をガラス塗装する技術は光触媒塗装の基本でありこの工法(洗浄、塗装)のトレーニングを積むことが塗装技術の向上につながります。

7.むすび
 ガラスの汚れを防ぐにはシリコーンオイルの滲み出を制御することが最大のポイントであり、その対策にシリコーンオイルの洗浄剤と滲出制御剤、および付着物を分解する光触媒塗料は必要不可欠の機能材料であります。しかし、これらの三機能はそれぞれ異なるため、互いの機能を補い合うことが出来ません。そのためこの中のどれ一つ欠けてもガラスの汚れと劣化を防ぐことは難しい。まして、光触媒塗料だけ持っていてもガラスや外壁に塗装工事が出来るとは思えません。SOCとSOPの開発は界面活性剤と溶剤およびシリコーンと光触媒、それぞれの技術の境界領域を越える応用であり一分野の技術者だけで開発することは不可能でありました。本工法は多業種の技術者の協力を得て確立しました。

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