今回は、マウスの基本構造と機能について解説してみたい。
信号の検出と処理
マウスのカバーを開けるとボール、スイッチが見える。スイッチの動作は単純でマウスのボタンを押すと対応したスイッチがオンとなりLEFT信号またはRIGHT信号を発生する。
マウスを動かすとボールに押し当てられたローラが回り、ローラの軸に付いた円盤が回転する。マウスの動きが悪くなったときはこのローラが汚れていることが多い。マウスを左右に動かすと一方の円盤は回転するが、もう一方はほとんど回転しない。2つの円盤はこうしてマウスの動きをX成分とY成分に分ける働きをする。円盤を挟むようにLEDとフォトセンサが配置されている。円盤には細かい溝があり、LEDの光を遮断したり通過させたりする。これによりフォトセンサの出力はパルス信号になる。このパルスを数えることによりマウスの移動量がわかる。マウスの仕様に200カウントなどとあるのは、1インチ動かした時に発生するパルス数である。それぞれのフォトセンサには2つのセンサが内蔵されている。センサの位置はずらしてあるため、出力信号(XA,XB)もずれる。回転方向によりずれかたが逆になるので、これでマウスの移動方向を判別する。
マウスの中ではマウスの動きを表すXA,XB,YA,YBの4信号とボタンの状態を表すLEFT、RIGHTの2信号、あわせて6つの信号が作られる。この仕組みはボタンの数などの違いはあれ各機種共通である。しかし市販のマウスは機種ごとに分かれ互換性がない。これは、この後の信号を処理する場所と伝達方法の違いにより発生している。
NEC98ではこれら6信号は6本の線を通して直接パソコン本体へ送られる。パルスをカウントして移動量を検出したり、移動方向を検出するのは本体内で行われる。そのため、マウス内の回路はシンプルである。
DOS/VとMacではこれに対しマウス内で信号処理を行って本体に送る。送るときの信号線は1本でシリアル信号である。DOS/VとMacはこのシリアル信号の方式が違うために互換性がない。[図1]はNEC98用マウスだが、同じメーカ製で外見もほぼ同じDOS/V用マウスには[図2]のとおりワンチップマイコンが入っており、ここで信号処理とシリアル信号への変換を行っている。
[図1 NEC98用マウス(左)、図2 PS/2マウス(右)]
98・DOS/V変換アダプタを作るにはこのワンチップマイコンだけを取り出し、本来つながっていたXA,XBなどの信号の変わりにNEC98用マウスをつなぐようにすればよい。同じ仕組みでNEC98のマウスをMacで使うためのアダプタが、かつてテックパーツから出ていた。しかし、ニーズが多いと思われるDOS/VマウスをNEC98で使うための変換は困難である。DOS/V用は信号処理が済んでいるので、シチューを生の野菜に戻すような作業になる。
DOS/V用マウスにはPS/2マウスとシリアルマウスの2種類がある。PS/2マウスはコネクタが丸形(miniDIN)6ピンで、シリアルマウスは角形(DSUB)9ピンである。両方兼用のものもあり、たいてい変換コネクタが付属しているがこの変換コネクタを使ってPS/2専用マウスをシリアルポートにつないでも動作しない。本来は互換性がないのをマウス内のワンチップマイコンにより対応しているからである。この変換コネクタが付属するか、パッケージかマウスの裏に「Serial」の文字があるか、マウスの裏に「12V 14mA」のように12Vの表記があれば兼用タイプであるが、Microsoftのマウスのように外形は同じでも、兼用とPS/2専用の2タイプあることもあり注意が必要である。
NEC98の場合バスマウスとシリアルマウスがある。バスマウスのコネクタは丸形(miniDIN)9ピンと角形(DSUB)9ピンの2種類があるが、DOS/Vと異なりコネクタ形状の違いだけなので変換コネクタで対応できる。NEC98でのシリアルマウスはあまり一般的ではないが、MicrosoftとLogitechが正式対応製品を出している。どちらもマウスそのものはDOS/V用シリアルマウスで、NEC98用ドライバと変換コネクタを添付した物である。基本的に、異なる機種のマウスは互換性がないが、唯一DOS/V用シリアルマウスは変換コネクタを使ってNEC98用シリアルマウスとして使用できる。ただしドライバソフトは流用できないので、NEC98用ドライバが必要となる。
Macに関してはSE以降マウスインターフェースはADBに統一されており、混乱はない。
次に、マウスを使用する上で不便を感じる2つの例を挙げて対応方法を紹介する。
問題その1―ドラッグできない。
最も多い不都合である。ダブルクリックなど他の操作は遠回りでも実行する手段があるが、ドラッグは、グラフィックソフトで線を引く時など、代替手段がないことが多い。
3つボタンのマウスは付属のソフトで中央のボタンをドラッグロックに設定できる。また、Mac用のマウスは純正以外は2ボタンが多いが、余った右ボタンをドラッグロックに設定できる物がある。ドラッグロックボタンを押すと、左ボタンを押し続けた状態となり、ボタンから手を離してカーソルの移動に専念できる。解除には、再びドラッグロックボタンを押すか、左ボタンを押す。
IntelliPointはMicrosoftマウスの付属ソフトで、左ボタンを押し続けるとドラッグロック状態になるように設定でき、ロックまでの時間も調整可能である[図3]。このソフトはMicrosoft製のマウスでなくても動作するのが利点である。3つボタンの場合より劣る点は、ロックしたかどうかわからないこと、ロックさせたくないときにロックしてしまうことである。
[図3 ドラッグロックの設定ダイアログ]
Logitechマウスの付属ソフトMousewareでも同様のことができる。こちらは左右のボタンを同時に押したときにドラッグロックとなる[図4]。これも同様にLogitech製のマウスでなくとも動作する。Microsoftの場合のように不用意にロックしてしまうことはなくなるが2つのボタンを同時に押す操作が困難な人もおり一長一短である。なお、Microsoftのソフトは製品を購入しないと入手できないが。Logitechのものはwww.logicool.co.jp/からダウンロード可能である。また、メーカー製パソコンの多くは付属のマウスにLogitechの物を使っているので、パソコン購入時にすでにインストールされていることも多い。
[図4 ロジテック社マウスウェアの設定]
問題その2―ダブルクリックできない
ダブルクリック操作をするかわりに、たとえば左クリック−右クリック−「開く」−左クリックでも同じ操作ができるが、便利な機能なので実現したければドラッグロックの場合と同様の方法で可能である。
3つボタンならば3つ目のボタンをダブルクリックに設定できる。2ボタンならば、Logitechのソフトを使うと左右のボタンを同時に押すとダブルクリックとなる。この2つの方法はドラッグロックとの併用はできない。
Microsoftのソフトだと、左ボタンを1回押すだけで実行できるように設定でき、ドラッグロックとも併用できる[図5]。併用した場合、短く押すと実行、少し長く押すとシングルクリック、さらに押すとドラッグロックとなる。シングルクリックによる実行は、WWWブラウザでなじみがあるせいか、操作して違和感はない。シングルクリックによる実行はWindows98にも採用された。
市販品を改造せずに使えば故障の時の代替品の入手しやすさや保証の点で問題が少ない。まずは改造なしで対応できないか検討し、その後改造を考えたい。
[図5 クリックセーバのダイアログ]
オリジナル:Prowler7010 最終修正日: 1998/07/11
編集:yossy.aoki 最終修正日: 2004/07/16