・親子でチャリンコ遊び@北海道(98.7.31〜8.11)


 小学校5年生の息子と2人でチャリンコ遊びに出かけることにした。北海道内8泊9日。もちろん全日テント泊。私は、ここ11年で6回目の北海道旅行。息子は、3回目。私は、一切合切を持ってのツーリングも何度かしているが、息子は、オートキャンプのみ。キャンプ・テント泊慣れはしているものの自転車にはほとんど乗っていない(一応乗れるが)。わたしも、旅の手段として自転車を使うこともあるが、普段はほとんど乗っていない。そんな2人による「ちんたらチャリンコ遊び」が始まった。

[コース図はこちら]

・7.31夜    
 有明のターミナルから釧路に向けてフェリーで出航。そこまでは、女房に自動車にて送ってもらう。かなり軟弱だが、そこは子連れの辛いところ。
 ところで、「近海郵船」は、自転車を輪行袋に入れて持ち込むことを許していない。完成車のみOKというのはいかがなものか。

・8.1
 フェリーの中の食事は、もちろん持ち込みのパンとカップラーメン。貧乏ツーリストはこれでなくちゃっ。飯以外はとにかく爆睡。バードウオッチャーなら甲板に出て海鳥の観察というのが本来のあり方だが、もう若くない私にそんなパワーはない。ひたすら船酔いせぬよう眠りこける。

・8.2
 朝、釧路に到着。おきまりの和商市場へ一直線。おめあてはイクラ丼だ。ライスを買って、魚屋へ。イクラとタラコをトッピング。一口食って「これだから北海道はやめられねえええ。」
 食事後、釧路川を上流に向けて出発。いつものことだが、釧路の駅前の道路はわかりにくく、釧路脱出に大変手間取る。何とか釧路川沿いに出るが、オフロード。国道に出たいのだが、広大な釧路湿原に阻まれ、川沿いをガタガタヨロヨロ走る。やっとの思いで岩保木水門にたどり着く。腹はぺこぺこ。近くのパークゴルフ場でかけそばを食らう。
 再出発。緩やかな坂にさしかかったところでふと後ろを振り返ると、息子がチャリを押しているではないか。
「おりゃー、こんな所で押してたらこれからどうするんだ」
私に一喝されて渋々漕ぎ出すが、今後が思いやられるぜ。
 シラルトロ湖畔のキャンプ場泊。隣接する憩いの家の茅沼温泉で、汗を流す。53.4q走行。

・8.3
 釧路川沿いに国道391号を北上。途中、標茶で買い出し。ついでに釧路川にかかる開運橋で釣り。
 今回は「釣り」もやりたい遊びの一つとして重視している。そのために、私は、太股までのウエーダー(ゴム長靴)まで持ってきている。チャリンコツーリングにこんなもの持っていくやつはあまりいないのではないか。でも遊びたいんだからしょうがない。
 ちなみに、私は息子の荷物もほとんど自分のチャリに積んでいる。そのため、私の自転車には、バッグが前後の左右に一つずつ(計4つ)、さらにフロントバッグ・後ろのキャリアの上に60リットルのザックが積まれている。とどめは、デイパックを背負うという体勢。全部で7つのバッグ。おそろしや、おそろしや。
 2年前来たときには、ここで、かわいらしいヤマメの赤ちゃんをたくさん釣り、唐揚げにして食ったのだが、今回は全然ダメ。ちなみに唯一息子が釣ったのが、トゲウオだった。トゲウオは、テレビの動物番組でしか見たことが無く初めてのご対面。よく見ると橋桁の周りにたくさんいた。これは何を表しているのだろう。
 結局トゲウオはリリース。
 この日は、弟子屈の釧路川岸に泊。
 夕方より、息子が頭痛を訴える。おいおい、旅は始まったばかりだぜ。仕方なく早々と停滞決定。息子をテントの中に押し込み、私は、床屋に行く。床屋の親父が「なんだかきたねえやつが来たな」という表情で私を見る。すでに私の腕、足、顔は日焼けで真っ黒。そう見られてもしょうがない。
 次に、摩周温泉の公衆浴場に行くが、あいにく定休日。が、テン場から歩いて1分の所にペンションがあり、300円で入浴可。喜んで入る。49.5q走行。

・8.4
 息子は頭痛から復活。しかし、大事をとって停滞。そこで、当別川に釣りに行くことにする。
 駅の観光案内所で釣具屋を紹介してもらった「ナガイ釣具店」へ。そこの親父がすごかった。
「どんなものを持ってきているんだ、見せてみなさい。」
「はあ、こんなもんですが。」
「これじゃあ、釣れないよ。北海道に来れば簡単に釣れると思ってくる人が多いが、それは間違いだよ。魚はいるが、その土地にあった道具を使わなければ釣れない。自然の摂理に反してはいけない。」
「はあ、えさはイクラでどうでしょう。」
「ここにあるようなイクラじゃダメだ。」と、店頭に並んでいるどこにでもあるイクラ瓶を顎で指す。そして、店の奥にいったかと思うと、薬の空き瓶だと思われるビンを一つ持ってきた。
「このイクラは、ゼリーで固めたようなその辺のイクラとは全然違う。本物のイクラだ。それに私が加工をして作ったのだ。作り方は言えない。あんたがそっちのイクラがいいのなら、私は無理をしてこっちを買ってもらわなくていい。買うのはあなたの自由。でも、それでは釣れないよ。これは私が作った日本一のイクラだ。」
「日本一のイクラ」とまで言われては買わないわけにはいかない。
「あ、是非それを買わせてください。」
その後も話は続く。
「みんな私のことを頑固だ頑固だというが、私は頑固でいいと思っている。私は消費税に反対だから、消費税だってみなさんからもらわない。もちろん、消費税は納めない。それが正義だと信じている。」
「時の流れが速くなっているが、そんなことではいつか破綻する。人間は自然の一部なのだから、自然の摂理に反しては絶対にいけない。」
「私は自分の仕事に責任を持っている。仕事とは、人に仕えるものだ。人に喜んでもらえないようでは仕事とはいえない。私は、この土地で釣りに関して一番になってみなさんに喜んでもらえるよう努力をしてきた。昔は何軒もあった釣具屋が今ではうち一軒だけだ、何も宣伝もしないのに。」
「私は、子孫に対し後ろ指を指されることだけはしたくない。それが正義というものだ。あなたは自分の子どもに対し、何を残しますか。」
と、ご講演は釣り以外の方へどんどん流れていくのだった。
 とても良い親父だった。64歳だといっていた。こういう「熱さ」を私は将来持ち続けられるのだろうか。胸にこみ上げるものを感じ、店を後にした。
 さて、釣果の方だが、私がスモールサイズのイワナ1。実はそれ以外にビッグ(30p級)なイワナ?を釣ったのだが、バラしてしまった。息子はゼロ。でも、わたしは、ビッグなイワナがかかったのはあのイクラのおかげだと思っている。やはり日本一のイクラだ。16q走行。

・8.5
 今日は峠越え。といっても、なるべく楽にオホーツクに抜けることしか考えていない私たちは、摩周湖と屈斜路湖の間を走る国道391号をてれてれと進む。海岸沿いにいけば知床峠の餌食、もう少し西よりに行けば美幌峠の罠。その中間をこそこそと抜けるのが一番楽なのだ。
 峠道にさしかかると当然スピードも落ちる。サイクルコンピューターが、時速7q台を示す。と、どこからか待ってましたとばかりに灰色のアブが襲いかかってくる。
こうなると大変。チャリを漕ぎながらアブを追い払う。調子のいいアブになるととりあえずバッグに止まって休息をとり、落ち着いてから攻撃態勢にはいる。そういうやつは、足でサイドバッグを蹴って追い払う。
そんな最中にもダンプが後ろから迫ってきてあわてる。また、向こうからはツーリングバイクがピースサインをしながら下ってくる。几帳面な私は、アブ騒動でふらふらになりながらも震える手でピースサインを返す。
 度重なるアブとの戦いで習得したのは、アブは追っ払ってはいけない。まずは、アブを腕なり足なりにとまらせる。アブは、皮膚に止まってから刺すまでに数秒かかるのでそこをねらい打ちにしてばーんとたたき殺すのが一番有効なのだ。追っ払うだけでは、何度もスクランブル攻撃を受けてしまう。
 アブのおかげで、あまり上り坂のつらさに集中しなくてすんだ。無事、野上峠を越える。
 下りは、すばらしかった。資源保護水面として一年を通して禁漁の止別川上流沿いをのんびり走ることができたからだ。白樺を中心とした木々が鬱蒼と茂る林。その中を蛇行して自然のままに流れる川。たくさんの虫や鳥や稚魚たちが生きられるような環境がそこにはあった。一年を通して禁漁とはかなり厳しいが、釣りブームで魚たちが逃げ回るしかない現状では、もっとこういう川があってもいいと思う。
 オホーツク海に出て、浜小清水の前浜キャンプ場泊。カナダ人の夫婦(現在は埼玉県蕨市在住)の隣にテントを張らしてもらう。私はカナダにカヌーを漕ぎに行ったことがあるのでカナダが好きだ。そんな話をしたらとても喜んで、強風の中、テント設営を手伝ってくれた。
 彼らは、オホーツク海を眺めて、「完璧だ」と感激していた。
 砂浜の上をホウロクシギが飛んでいった。71.1q走行。

・8.6
 テントの周りの植物を観察。ハマハコベ、ハマニガナ、シロヨモギなどが生えていた。 
ホオアカを横目で見ながら網走を越え、オホーツク海沿いに走る。
 能取湖の、卯原内付近の干潟では、シギチ(シギ・チドリ)がたくさん。シギチファンの私としては私としては、これを見逃すわけにはいかない。止まって、重いバッグで揺れるハンドルを足で押さえながら双眼鏡を出す。と、シギチが一斉に飛び上がってしまう。「あああ。」見ると、中型のワシタカが通過していった。
 しばらくすると、また、シギチが戻ってきた。双眼鏡なのでよくわからない。それでも、ハマシギ、アオアシシギ、ソリハシシギなどがいるのが見える。
 能取湖には干潟やアシ原が何カ所もあり、その後もチュウヒの飛ぶ姿を観察することができた。
 「ホタテの町」常呂町泊。大きな町で、銭湯もある。61.2q走行。

・8.7
 サロマ湖付近で、直売のホタテ貝を買う。ひとつ60円のを4つ。これは安い。その後に通過した道の駅では、ホタテの焼きたてを売っていたが、ひとつ200円だった。
 ホタテを、別の道の駅のはじっこにある芝生で焼いて食う。ううううまいっ。
 今回のツアーに持っていったプリムス製のトースターが大活躍。ホタテがぱかっと開くのが楽しい。そこに、キッコーマンのステーキしょうゆをかける。これまた大根おろしがたっぷり入っていてうまい。
「ホタテは自分で焼いてこそうまいのだあ」
と、息子と食らいつく。
 紋別国際コムケキャンプ場泊。夕方から霧雨。めちゃめちゃ寒い。Tシャツの上に、長袖、さらにフリースまで引っぱり出すハメに。天気予報では10月上旬の寒さという。気温は、13度くらいか。65.7q走行。

・8.8
 降り続いていた霧雨が、午前7時過ぎになんとか上がる。それでも明日の午後からは再び雨の予報。もう寒いのはごめんだ。バスで、暖かい南へ脱出を図ることにする。
 コムケ湖は、本当はとてもよい野鳥観察のポイントのようだが、そんなことを言っていられない。大きく羽ばたくオジロワシにそそくさとお別れをし、紋別の中心部へ。
 それでもまずは、お遊び。道立流氷科学センターに行く。初めて入る観光スポットだ。
でも、その内容はすばらしかった。流氷がマイナス20度の部屋で保存されており、それにさわることもできる。私が、とてもいいなと思ったのは、流氷という紋別の土地の特徴を生かした館だったことだ。そして流氷をプラス面に最大に利用していた。
 こういう発想を関東甲信越の各自治体や、観光業の方にしてもらいたい。どこへ行ってもテニスコートにゴルフ場じゃ、個性がなさ過ぎるじゃあないですか。
 その後、バスターミナルへ。旭川行きが、75分後にあった。ラッキー。
自転車を輪行袋に詰める前に昼飯にすることにした。駅前の店で、カニ定食。一人1800円。超リッチ。ところが、である。店が混んでいて、なかなか食事が出てこない。置いてあったスポーツ新聞を読み、ガイドブックを一通り見ても、こない。
 30分待って、やっと来た。バス出発まであと45分。まだ、自転車をバラしてないのにい。
 とにかく、がつがつと胃袋にカニ定食を突っ込んでいく。ああ、悲しい。1800円もする食べ物を味わうひまもなく単に食うなんて。何がどんな味なんてわからない。
 10分間で自分だけ食べ終わると、まだ食べ終わっていない息子を置いて、勘定だけ済ませて店を出る。2台分の自転車をバラし手荷物を60リットルザックひとつにきちんと詰めなければならない。あと30分しかない。
わっせ、わっせ。
もう少しで詰め終わるという頃、バスが来た。ひええええ。まだ、出発までは3分ほどある。残りのものを強引に詰め、バスへ走る。息子も重たい自分のチャリの入った輪行袋を持って走っている。おお、火事場の馬鹿力だ。オンタイムで、セーフ。
この日は、旭川に着いたのが午後6時頃。近くの牛朱別川の川岸で泊。あとでわかったことだが、旭川は、駅寝が派手に行われているらしい。駅寝をすればテン場を探す手間暇が避けられたし、息子に駅寝の世界を教えることもできたのに。情報不足に泣く。20q走行。

・8.9
 作戦大当たり。暖かいし、晴れている。オホーツクは寒かった。
 旭川から千歳空港までJR。これまた、改札で、「あと2分です、急いでください」と、係員にせかされる。階段で、輪行袋をガタンガタンぶつけながらとにかく車両へ。乗った瞬間「プシュー」とドアが閉まる。なんだかせわしい日が続くなあ。
 千歳空港から、再び自転車を組み立て、早来町の鶴の湯温泉へ。ここは、以前ソロで自転車ツーリングに来たとき初めて泊まったキャンプ場だ。キャンプ場と言うより温泉の敷地内にテントを張ってもいいよというくらいの所だ。トイレも水も外にはなく、温泉の施設を借りる。夜中はもちろん使えない。でもそんな素朴なところが気に入っていた。
 キャンプ場近くで、息子が落車。下り坂の途中での左折でスピードを出しすぎたらしい。膝と肘から血が出ている。大したことはない。本人は気づいていないだろうがツアーも長くなり、疲労が増し、集中力が切れてきたのだろう。
 キャンプ場の入口で、逆に出てくるサイクリストに会う。
「昨日、ここで泊まったんですか。」
「いや、今日泊まろうと思ったんだけど、何もないから他の所に行こうと思って」
 施設の充実したキャンプ場に慣れたキャンパーは、トイレと水がないくらいで「何もない」と言ってしまう。堕落だあああ。そんなことでどうすんの。何もないのが良くて北海道に来てるんじゃないのかい。それで大自然を味わうだとお、笑わせんない。
 でも、こういう私って、もう主流じゃないよねえ。遊び仲間のヒタジェンヌでは思い切り通用するけど。寂しいなあ。いや、弟子屈の「ナガイ釣具店」の親父を見習っていつまでも頑固に生きよう。
 温泉は、400円で入りたい放題。やっぱりここは最高だあ。広い広い庭の池には、トンボがたくさん飛び交っている。20.3q走行。

・8.10
 10時頃ゆっくりと出発。いよいよ最終日だ。苫小牧からフェリーに乗る。
日本野鳥の会の第1号サンクチュアリであるウトナイ湖へ。自然観察路をゆっくり歩く。アカハラと至近距離で見つめ合う。
 その後、苫小牧へ向かうが、なにせ出航時間は午後11時45分。夜中まで自転車でふらふらしなければいけないっていうのは結構辛い。
 公園で読書をしたり、本屋で長時間の立ち読みをしたりして時間をつぶす。そして、船内での食事(得意のパンとカップラーメン)を買いだめし、ターミナルへ。
 42.8q走り、総走行距離が400qに達する。

・8.11
 大洗に午後7時着。なぜに大洗か。ただ、この切符しかとれなかったのだ。
 家族に自動車で迎えに来てもらい、再び軟弱な人間へと堕落。息子と2人ののんびりツーリングが終わった。

[チャリンコ遊びの部屋へ戻る]    [目次へ戻る]