今シーズンは、これまでになくゲレンデにかなり通った。以前は、クロカンしかやっていなかったので、ゲレンデとは無縁であったが、テレマークをはじめてから、その練習のためにゲレンデへ行くことが多くなった。私としては、自然破壊によってできあがったゲレンデに行くようになり複雑な思いである。が、家族は、スキーに家族全員でいけるようになり喜んでいるようである。
その練習の成果を発揮するため、今シーズンは、レースにも初挑戦してしまったくらいだ(結果はさておき)。テレマークをはじめるまで、こんなふうになるなんて自分自身思わなかった。
テレマークを始めて4年目。そろそろツアーにも行きたい。というわけで、いろいろなスクールのパンフを検討し、妙高にある「モルゲダール倶楽部」の主催する三田原山・前山ツアーに参加することにした。
これまでツアーは、昨シーズンの安達太良中腹のミニツアーと、今シーズンの前山中腹までの軽いツアーの2回であり、今回が3回目となる。
朝8時50分、モルゲダール倶楽部発車でスキー場へ。妙高杉野原スキー場から、杉野原ゴンドラ・三田原第3高速リフトを乗り継ぎ、1885メートル地点へ。
午前10時過ぎ。ここからシールをつけて三田原山を目指す。ブナの林をゆっくり登る。天気は晴れ。気温も高い。すぐに暑くなったので、パーカー・フリースを脱ぎ、クロロファイバーのアンダーウエアとウールのシャツの2枚になる。15人の参加者の多くも服を脱ぎ、衣服調整をする。斜登行とキックターンをしながら、気持ちよく登る。
が、だんだんかかとが痛くなってくる。普段テレマークで滑ってばかりで歩くことになれていないので、靴づれになりそうだ。そのため、歩幅を小さくして、かかとに負担がかからないようにした。参加者の中には、テレベートをつけている人もいたが、かかとの負担が小さそうで登りにかなり便利そうに思えた。
もうそろそろかかとがやばいぞ、というところで、なんとか2300メートル地点の尾根にでた。普段、山を登るのが嫌いで山をほとんどやったことがない人間にとって、標高差415メートル、2時間あまりの登りは疲れた。
12時半、その場で昼食となる。私のメニューは、カロリーメイト(フルーツ味)1箱、魚肉ソーセージ1本、チーズかまぼこ1本、ロールパン2個。その他、水筒、グリコ・アーモンドチョコ、森永・ハイソフトなどを携行した。
後ろには、妙高山の荒々しい山頂が目の前に迫る。とても滑って下りられそうもなさそうだなあと思っていたら、先生が、「あそこしか滑れないな。」と険しい斜面を指さして話しているのにはびっくり。すごい斜度なのに。
昼食後、シールをはがし出発。いよいよお楽しみの下りだ。まず最初に先生がワンターン。「この雪じゃ、スキーになんねえな。」。暖かさのためか、雪質が悪いようだ。ツアー初心者には、雪質が滑りにどう影響するかなんてわからない。とにかく、ゲレンデで鍛えたことを十二分に発揮するだけだ。
先生は、あんなことを言いながらすいすいと下へ滑っていく。参加者も後に続く、と言いたいところだが、みんなばたばたとこける。俺はそんなことはないだろう、と、力強くスタート、そしてターンへ入る。ドタッ。コケたあああ。いや、そんなはずはない、何かの間違いだ。もう一度。スー、ドテッ。ありゃりゃ。全然ターンができない。どうなってるんだ。
そんなことを考えながら滑るのだが、ダメ。
そのうち、次もダメだろうな、転ぶだろうな。どうせ、ツアー初心者だもんな。などとマイナスイメージで頭がいっぱいになる。そうなるともう完全にダメだ。滑る前からこけているようなものである。まわりを見てもほとんどの人がそうである。が、女性の中には、ゆっくりとだが、確実なターンでしっかり回っている人もいる。ああ、やっぱりそうだ。
最近、私は、少し連続ターンができるようになったので、早い滑りと小回りを中心にしたターンに力を入れていた。そのため、自分でも気になっていたのだが、前足の膝がきちんと曲がらずコントロール不能になることが多くなってきていたのだ。テレマークになれてきていたので、それでも転ばなくなっていた。そのため、やばいぞ、と心の中で思いつつもま、なんとかなるさと手を抜いていたのである。そのつけがここではっきり出てしまった。やはり大切なのは、基本なのだ。
あまりのひどさに、みんな無言になりながら滑るようになってきた。テレマークターンをあきらめボーゲンをしようとするのだが、これもダメ。手袋はびしょびしょ。立ち止まって絞ると水が、ジャーと流れ出る。
テレマークターン、ボーゲンに見放され、残るは、斜滑降とキックターンのみになってしまった。考えることは皆同じ。転ぶよりは、転ばない方を優先するようになり、みんなで、斜滑降大会となってしまった。テレマーク連続ターンなどできなくても関係ない世界だ。
ヘロヘロ状態で、林道を通って、何とか妙高杉野原スキー場三田原ゾーンへ到着。後は、ゲレンデを下まで滑るだけだ。みんなほっとした面持ちで滑り出す。と、何ということか。急に水を得た魚のようになって、すいすい滑り出す。私もガンガンいく。おお、ゲレンデとは何と滑りやすいことか。地獄から天国へやってきたようだ。
結局モルゲダール倶楽部へ戻ったのは、6時近くになってから。予定は3時のはずだったので、3時間もの遅れ。登りより下りの方が圧倒的に時間がかかったことからもその悪戦苦闘ぶりがうかがえた。私自身、本当の話で、100回以上は転んだと思う。
夕食の後、爆睡。
参加者は、朝から顔が暗い。また、昨日のような惨事が待ち受けているのか。またもや玉砕、バックカントリーのしごきに耐えるのか。
そんな気持ちを抱きながら、赤倉観光ホテルスキー場へ。ゴンドラとリフト1本を乗り継ぎ、1500メートル地点へ。シールをつけて早速登り始める。
始めはゆったりとした登りだが、1700メートル付近から急斜面になってくる。目の前に広がる斜面に生えるダケカンバは小さく、ここは雪崩の起きやすい所だという説明を受ける。そのため、そこを避けて、大きな木の下を細かく斜登行、キックターンをしながら登ることになった。
下を見るとものすごい急斜面。足がすくんでしまいそうだ。ここで滑ってしまったらどうしよう。そんな恐怖を感じながらもキックターンをしながら登らなければならない。あまりの斜度に、山まわりキックターンをしようとするとスキーが山に引っかかってとてもやりづらい。だからといって、谷まわりキックターンをするには、谷に向いてキックターンをしなければならず、その勇気などない。仕方なく、両手を雪面につけ、はいつくばりながら無理矢理ターンをするのであった。
そんな繰り返しで、何とか1900メートル地点へ。ここまで来ればもう少し。とうとう1932メートルの山頂へ。やった。登り切ったぞ。 私にとって山はこれまで遠い存在であった。でも、ああ、なんだか山もちょっぴり楽しいのかな、という気持ちになった。でも、カヌーのようにふらふらと力無く漂う世界の方が断然楽しそうなんだけど・・・。
11時50分、山頂着。昨日より早いぞ。12時30出発と聞いて、昼食開始。メニューは昨日と変わらず。
昼食後、いよいよ下りだ。で、私は先生に聞きましたね。「どこから下るのでしょうか・・・。」
私から見て、下れそうな場所がなかったのである。
先生が、「こっちですよ」と指さす方向には、細い尾根が延びている。げっ、あんな狭いところを滑るのか。両側は急斜面になっていて、落ちたらさよならだ。テレマークには気持ちが大切なのに、いきなり、よしいってやるぞ、いけるぜ。という気分に全くなれないスタートだ。今日もやばそうな雰囲気。
それでも、それじゃいけない。昨日の女性のように、ゆっくりで良いから確実なターンをするのだ、と心がけスタート。自分の得意な右ターン。おお、決まった。これを忘れちゃいけない。ここで調子に乗って左ターンをすると、失敗して気持ちがダメになる。そう考えた私は、ズリズリと後ろへ下がり、右側の斜面を確保し、また右1回ターンで止まる。やったね。成功。よし、もう1回。そんな感じで、右ターン、ズリズリ、右ターン、ズリズリを繰り返す。何とか昨日よりかはましのようだ。他の人たちもターンが決まってきている。
と思ったところでいきなり急斜面。下を見ると、何人もの人が斜面に転がっている。とにかく、斜面を怖がらず、体を下に向けるんだぞ、と言い聞かせ、ゴー。右ターン1回はうまくいった。そして、得意のズリズリ。よし、もう1回。それっ。ああっ。ターンの外側に吹っ飛び、そのまま、ザーッと落ちていく。ありゃりゃ。スキーを谷側にしてなんとか止まる。ああ広い斜面だったのにもったいないことをした。何とか立ち上がり下まで行く。ふー。
少し緩斜面になったので、右ターンを入れてみることにした。それっ。すかさず転倒。左足のビンディングがはずれた。と、思った瞬間左のスキーがスーッと斜面を下って行くではないか。ああっ。流れ止めをつけ忘れていたらしい。万事休すか。
が、女神様は私を見守っていてくれた。スキーは、ちょうど15メートルほど下を滑っていた人に激突。そこで止まった。その人も怪我もなく、無事。おお、なんてこったい。危なくツボ足で下山となるところだった。
そこからは、みんなコテコテ転びながらも、何とかテレマークターンらしきものをしながら滑ることができた。気持ちのよい林の中を肩までガチガチに力を入れながら何とか下るのだった。
私は、連続ターンなど1回しかできなかった。1回ターンしては止まり、1回ターンしては止まりの連続だった。それでもとてもおもしろかった。
昨日と違って、この日ターンが単発ながらもできたのは、ビデオでのワンステップターンの場面を思い出したからだ。前足を出すのではなく、後ろ足を曲げる。そこをしつこくやった。でも、前後のスライドの大きさといったら悲惨な状態で、足が何度もクロスしてしまい、転びまくった。
もう一つは、しっかり外向姿勢をとったこと。そうすることによって、強い斜度でも何とか転倒せずにすんだ。
そんなこんなで、何とか赤倉観光ホテルスキー場へ帰還。今日は、2時過ぎには戻ることができた。みんな調子が上がったのだろう。
この2日間、もうヘトヘトになるまで山の雪に鍛えられた。そして、ツアーのおもしろさに触れることができた。多くのテレマーカーとも話をすることができた。やっぱりテレマークは、ツアーをして初めてその楽しさがわかるんだなあ、と思った。
これからがツアーシーズンなので、あと2回はツアーに行き、山にいじめてもらいたいものだ。
そして、来シーズンは、基礎の基から、初心に戻って鍛え直したい。ツアーに通用するしっかりした技術を身につけるために。