*四万十川カヌーツーリング(97.8)

                     
                     口屋内の沈下橋の下でテントを張る


 今年の夏のツアーは四国行きだ。今回の計画は、10年ぶりに四万十川へ行くことと、そこからはしごをして今や四万十よりもきれいだと言われる仁淀川へ行くというものだ。近頃めっきり「最後の清流」らしくないうわさばかり聞く四万十だが本当にやばい状態なのだろうか。じっくり見てきたいと思う。


*1日目(新宿から高知へ移動)

 さて、今回は初めて深夜高速バスに乗ってのツーリングだ。ファルトをやっている人の中では結構メジャーな移動手段であるが、今まで、電車、飛行機で遠方に飛んでいた私はいきなり緊張するのであった。
 午後8時新宿小田急ハルク前発高知行きのブルーメッツ号に乗るのである。カヌーなどの重い物はすでに西土佐村役場に送っておいた。ここの役場はカヌーの受け取りをしてくれるので大変ありがたい。
 7時50分になって入車。席に着くと落ち着かない様子でいすの装備を確認する。
 まず、毛布。飛行機並の強冷房に備え長袖を着てきたが、毛布もあれば安心だ。
 次にマルチステレオ。飛行機のやつと似ていてヘッドフォンを差し込むタイプである。すかさずチャンネル案内を見てラジオにあわせるが、これが聞こえないのだ。えっ、今日の野球中継を聞けないとはどうしてくれるんだ、えっ。ベイスターズは今年は好調なんだよ。楽しみにしていたんだから。とは、思ってみたものの深夜高速バス初心者としてはそんな文句を付ける余裕などあるはずもなく、自分のやり方が悪いのかな、それとも機械が壊れてるのかなあなどと静かに考えるのであった。
 それ以外にもなかなかの装備である。スリッパ、テーブル、レッグレスト、リクライニングシートなどが付いた3列セパレートシートはとても良いのだ。
 そんなことを思っているうちに午後9時30分双葉SAに着き休憩。混雑を避けるためか、それとも時間調節のためか、バスは東名ではなく中央道を走るということを初めて知った。食料を全く用意していなかった私は、飲み物とおにぎりを購入。15分休憩のあと出発。
 その後、10時には消灯となり、順調に高知へと進むのであった。就寝。


*2日目(高知から土佐昭和へ移動)

 朝の5時55分、高知自動車道立川PAで15分休憩。昨日の夜はよく寝たが、途中から雨になっていたようだ。7時高知駅着。予定よりも50分も早い。
 7時16分発須崎行き普通列車に乗る。車窓から見る田んぼの中には、早くも稲の穂がたれ、黄色く色づいているものもある。天気は曇り。
 8時35分、須崎着。次の窪川行きが9時51分発という。1時間以上も間があるので町を歩くことにする。
 駅を出て左へ進むと朝市をしている。野菜が中心である。これがまた安い。なす、キュウリが一皿100円。近くの魚屋では、カツオが1本550円だった。が、ここが一人の悲しいところ。こんなに買っても腐らせるだけ、重たくなるだけなのだ。しかし、取れたてのトマトを見たらそのまま通り過ぎるわけにはいかなかった。
「このトマト、バラで売ってもらえませんか。」
「いいよ、安くしとくからね。」
100グラム10円、20円、30円などのトマトが並んでいる。
「これもおいしいよ。」
と言うので
「じゃ、これを2個ね。」
「それじゃ100円ね。」
なんだか値札と違うような気がしたが、勢いで100円玉を出してしまう。そのかわり、売っているものや市のことを聞き出す。ちょうどお盆シーズンで、サカキのような木を売っていたが、正確には2種類あって、神様用にはサカキ、仏様用にはシキビという木を供えるのだそうだ。パッと見てもその違いはわからなかった。また、この市は、毎週日、木の朝から昼まであるそうだ。
 トマトと昨日買ったおにぎりで朝飯にする。須崎港の堤防で海を見ながら食った。トマトが実にうまくてうれしくなる。
 その後、須崎から窪川、江川崎へと乗り継いで午後になってやっと役場に着く。役場の裏手には、各地から送られてきたファルトボートが山積みになっていた。その中から自分のものを見つけ、礼を言って役場を出る。
 さて、これからどうしようか。予定では、江川崎から海まで下る予定である。しかし、電車の中から見た四万十川はそれほど水量も多くなく、土佐昭和以降、険悪な瀬もなかったように思われた。そこで、再び電車に乗って土佐昭和まで戻りそこから下ることにする。以前、ヒタジェンヌのK氏がフジタ艇を大破したという土佐昭和からのコースではあるが、ま、大丈夫だろうと考えた。
 土佐昭和駅から表通りに出て、近くの酒屋で川までの道を聞く。川まではすぐだった。船着き場を見るとその20センチ位下まで水がある。「川地図101」を見るとまあ適量の範囲内のようである。明日が楽しみだ。近くの自動車修理工場の人に断って、船着き場でテントを張らしてもらう。
 夕飯は、江川崎で買い出しをしておいた餃子とレトルトご飯。
 ところで、ツーリングで一番困るのが油。ふつうのサラダオイルはふたが取れやすくツーリングには不適。そこで、ラードやら、スプレーオイルやら、チューブ式のマーガリンみたいなやつなどを臨機応変に使う。が、今は夏でもあり溶けてウニョウニョになりやすいのでできるだけ使わないようにしている。
 そこで餃子を、シルバーストーン加工の折り畳み式フライパンでオイル抜きで焼く。が、焦げ付いてしまう。あわてて水を入れるが焦げ付きがなかなかとれない。「このヤロー」と力を入れてフライ返しでこすっていたところ、フライパンの柄を持っていた手にも力が入り、なんと、熱い餃子を載せたフライパンが折り畳まれてしまったのである。アツアツ餃子は、見事短パンから元気に出ていた私の膝の上に落下。
「ヒエー」やけどだ。いきなりのチョンボ。やけどは冷やすに限る。四万十川にドボーンと飛び込む。なんてことだ。カヌーをする前から沈状態。情けない。
 這々の体で夕食を済ませて、就寝。ああ、どうなることやら。


*3日目(土佐昭和から江川崎へ)

 昨日の夜は雨が降ったが、朝は晴れ。水量の増加を心配したが余り変化はない。トイレをしに駅へと向かう。駅前の観光案内所のおばあさんと話をし、カヌーで川下りをすることを伝えると、
「気をつけなさいよ。」
と、十和村内の四万十川の地図をくれた。
 カヌーを組み立て、荷物を積み、さあ出発だ。この瞬間がとても好きだ。ソロならではの緊張感と、これからの期待と不安。それらが複雑に絡み合い、何とも言えない気持ちになる。
 川へこぎ出すとカヌーはスーッと滑り出す。ファルトでの夏の長期ツーリングは3年ぶりだ。感触を確かめるように、カヌーを揺すってバランスをとったり、パドルでいろいろな漕ぎ方をしたりした。
 少し行くと子どもたちが川で遊んでいる。水着を着て泳いでいる。ああいいなあ。都会では、川で遊ぶといっても石を投げたりちょっと水にさわったりするくらいで、泳ぐという姿はお目にかかれない。私の世代では、「昔は川で泳いだけんどなあ」と言う老人の話を聞くだけになっていた。
 しかし、ここでは、未だに泳ぐ対象として川が存在している。いい。いつまでもこうあって欲しい。
 が、水はやや濁っている。今年の夏は雨が多いのだという。そのせいだろうか。
 しばらく行くとゴーッと音が聞こえる。河内下の瀬だ。岸に上がって様子を見る。十分下見をして、突入。船がザッポーン、ザッポーン、と大波で揺れる。そして、ストッパー。船が止まる。
「オリャー。」
 気合いを入れてパドルを力一杯漕ぐ。船は、ゆっくり前へ進み瀬を抜けたのだった。やった。
 ソロの場合、やはり瀬では緊張する。沈した時は自分で自分を救出しなければならないからだ。私は、瀬の前では必ず自分に
「いいか、パドルを絶対放しちゃだめだぞ。とにかくパドルを流すなよ。」
と言い聞かせる。パドルの流失は、ソロの場合即ツーリングの終了を意味する。逆に、沈をしてもパドルやカヌーを流さなければ何とかなるものである。
 まあ、とにかく第一関門を突破である。
 土佐昭和から江川崎までは、「川地図101」によれば、3級の瀬が3つ。一つは今越えた「河内下の瀬」。二つ目が「小貝の瀬」。三つ目が「藤の瀬」となっている。
 次は小貝の瀬だ。川地図では、「流れがせばまった所に大きな波。入り口浅瀬なので進路注意。」とある。
 「チー」と逃げるカワセミや、警戒心の強いヤマセミを見ながら下る。
 2級くらいの瀬はたくさんある。適当にいなしていたところ、なんといつの間にか小貝の瀬に近づいてしまっていた。岩を丁寧によけていて、あまり遠くを見ることができなかったのだ。
「ヤベー。仕方ない。いっちまえー。」
もうこうなったら突っ込むしかない。それでも頭の一部は冷静で、
「パドルは流すなよ。」
と自分に何度も念を押している。が、そんなことはお構いなしに瀬がドカーンと来る。また、船が止まる。とにかく漕がなきゃいけない。瀬の中で漕がないでいるのは、自転車に乗ってこがないのと同じである。すかさずバランスを崩してしまうのだ。
 なんとか沈をせずに抜けきった。後ろを振り向くと大きな波が白く泡立っていた。
「やったぜ。」
 瀬を下ると、必ず後ろを振り返ってその瀬を見てしまう。そして、それが大きければ大きいほどやったぜ感で満ちる。そして、よくやったなあ、と自分で自分をほめてあげるのである。ま、自己満足ってやつですね。
 その後も順調に瀬をパス。途中で4人グループと出会う。十川から下っているとのこと。
半家が近づいて来て初めての沈下橋を見る。やっぱり沈下橋は美しいなあ、などと沈下橋ファンの私はため息をつく。が、何か変だぞ。おお、沈下橋の下が真っ白だあ。橋の手前の左岸に船を着け下見をする。波が大きくうねり、水が橋桁にぶつかっている。思わずビビッてしまう。こんなの川地図にもないぞお。行けるのだろうか。とても悩む。沈下橋の上からも川をのぞき込んで偵察。川の流れは素直そうだ。だが、もし万が一船を橋桁に引っかけたらかなりやばい。さらに、もし船の真ん中が橋桁にぶつかろうもんなら一瞬にして折れ、張り付いてしまうだろう。それに乗っている人間はお陀仏だ。しかし、ここまでがんばって瀬をクリアしてきたのに、ここであきらめて船を引っ張っては征服感台無しだ。どうしよう。
 結局、悩みに悩んだ末、ここは船をライニングダウンすることにした。ヘルメットも持ってきてない上、もし橋桁に引っかからなくても沈をするとその下の瀬にも巻き込まれ危険と思ったからだ。ま、次回があるさ。と、本当に次回があるのかと思いながらもあきらめることにした。
 そのころから雨が降り始める。先を急いでいると、またまた気が付いたら藤の瀬が目の前。得意のとにかく漕がなきゃで突破。全くいい加減なもんだ。
 雨が強くなってきた。目の前の水面が雨でぐちょぐちょだ。
江川崎着。左岸にカヌー館やキャンプ場があるのはいろいろな情報で知っていたが、うるさいのがいやなので右岸で降りる。誰もいない。テントを張ったあと、そこはキャンプ禁止になっていることを知ったが、面倒なのでそのままここに泊まることにする。夕方5時半頃毎秒50トンの放水を告げる放送がある。
山村ヘルスセンターで入浴後、就寝。


*4日目(江川崎で停滞)

 朝、5時半頃目を覚ます。昨夜からの雨が強く、急な増水が心配であまり寝られなかった。一応、カヌーはテントより高い場所においておいたので大丈夫だ。が、河原を見るとかなり面積が減り、水が近づいている。雨も降っているので、停滞を即座に決める。だが、このままでは水没しそうだ。
 雨もちょっと小降りになったので、撤収を開始。カヌーにとりあえず荷物を放り込み、対岸へ向かって漕ぐ。結局、カヌー館のキャンプ場にとまることになってしまった。朝の6時頃みんなが起き出してくる頃、テントを立てている私を見てみんな不思議そうな顔をしていた。
 10時頃には、毎秒300トンの放水をするとの放送が流れた。
 12時頃、対岸の私がいた場所を見ると河原は完全に水没。移動しておいて良かったと思う。
 雨は、少し降ってはやみ、少しやんではスコールのように降るの繰り返し。買い出しをしたあと、一日中読書。山村ヘルスセンターで入浴後、就寝。隣のテントが夜遅くまでうるさい。これだからキャンプ場はいやだ。


*5日目(江川崎から口屋内)
 
 朝起きて川を見に行く。昨日より減水しはじめていて、つぶれていたカヌー館前の瀬も復活している。よし、今日は行けそうだ。晴れ間も見え、テントを干すことさえできた。ラッキー。フェザー艇のソロの人と話をする。友達が自転車で回っていて、明日ここで落ち合うことになっているので、今日は停滞するそうだ。「まあ、またそのうち会うでしょう」などと話して別れる。
 朝飯は、スパゲティー。ふつう、スパゲティーは、一袋分の量が多いので今までほとんど使ったことがない。
 だが、昨日買い出しで見つけた、はごろもフーズ社製「ポポロ スパッと3分」というスパゲティーはとても優れている。なんと一人分96円で売っていて(インスタントラーメン並)、バジリコ、梅じそ、たらこの3種の味がある。一人分で売っているので、封を開けたら全部使い切ることができる。ゆでたら粉をかけるだけという手軽さも良い。
 しかも、よく見るとスパゲティーの中心に穴があいていて、簡単に言えば、長いマカロニ状態になっているのだ。そのため、たった3分でゆで上がり、燃料の消費も少なくてすむ。
 ところで、スパゲティーはゆで汁が出る。ローインパクトにとても気をつかっていた知人は、それにカップスープのもとを入れて飲み、ゆで汁を捨てないようにしていたらしい。
 私はそこまでしたことはないが、スパゲティーのゆで汁がアブラをよく落とすということは知っていたので、早速食べた後のコッヘルをそれで洗った。グー。きれいに落ちる。まあ、洗うこと自体あまり良くはないのだが、キャンプ場だとついつい洗っちゃいますなあ。もちろん洗剤は使わないけど。
 さらに、アブラをよく落とすならと、残ったゆで汁で顔を洗ってみた。おお、良いではないか。温かいゆで汁で洗うと、顔のアブラがとれてすっきりする。これは新発見。一石二鳥だあ。
 みんなも、はごろもフーズ社製「ポポロ スパッと3分」を買おう。
お客様相談室の電話番号は、0120−123620なので、近くで売っているところを聞いてみよう。別に宣伝しているわけではなく、こういう便利なものは長く売って欲しいのだ。
 さて、朝飯の話題で長くなったが、出発。
ちょっと漕ぐと右側から目黒川という支流の流れ込みがある。すかさずちょっと遡り、船をあげる。
 そして、釣り道具をおもむろに出す。今回はテンカラを持ってきた。道具がシンプルなのと、ロッドが比較的コンパクトになるからだ。毛針をつけて、水面に振り込む。何度か振っているとあたりがある。しかし、合わせが難しい。でも何度もトライしているうちにハヤのような魚がかかった。結局2匹つり上げるがそれくらいではどうしようもないのでリリース。
 また、雨が降り始める。考えてみると出発から5日。雨が降らなかった日はない。
 目標としている口屋内までには大きな瀬はない。が、渦やボイルが頻繁にあり、結構気が抜けない。特に渦では、船が水の中に引き込まれそうになり、あわてて逃げることもあった。
 今日は、増水後のためか、ヤマセミを見ることはなかった。それでも、いかにも西日本だなあと感じたのは、クマゼミの「シャワシャワシャワシャワ」という声と、コシアカツバメである。両方とも家のそばでは見ることはない。その他にも、ササゴイ、キセキレイなどの川の鳥を見ながら下る。
 時折強く降る雨の中、口屋内の沈下橋に到着。ここの沈下橋は、とても美しい。それは、橋の下側が緩くRを描いているからだ。沈下橋といっても、橋桁を鉄板で補強したもの、「キケン」とペンキでべっとり字が書かれているものなど様々だ。そんな中で、ここの沈下橋は見ているだけで心を和ませてくれる。 が、河原がどうも様子が違う。10年前は大変美しい河原が広々していたのに、雑草が一面に生えていて、本当にここだったっけ、と思ってしまう位なのだ。どうしたことだろう。
 ここで、口屋内の情報を伝える。 

 まず、1竹内商店だが、口屋内に来たらまずここで挨拶をするべき存在。優しいおばちゃんだ。酒、雑貨、食品などがある。
 次が、2宮崎商店。竹内商店と似たような品揃えだが、たばこもある。釣りについてもおじさんにアドバイスしてもらえる。
 そして、3竹村鮮魚店も大切。パン、弁当、アルカリ電池も扱っている。9月以降は、ツガニ(モクズガニ)の販売も行う。
 ちなみにレトルトご飯はどこにもない。



 
 まず、竹内商店に行き、おばさんに挨拶。前回来たときはエビを捕る道具を貸してくれたりして、とてもお世話になった。それから、たばこの買い出しに宮崎商店へ。その後は、ブラブラする。
 夜8時半頃、傘をさしながら歩いていると、道ばたで何かが光っている。あっ、ホタルかなあ、と思って顔を近づけるとなんと、テントウムシの幼虫のようなシャクトリ虫のようなやつが草の葉の裏へとスタコラサッサと逃げ出す。しかも光っているのは、そのお尻の先の2カ所なのだ。しかも1匹だけでなく何匹もいる。陸生ホタルなのか、それともホタルの幼虫なのか、それとも全く別の発光体を持つ昆虫なのか。よくわからないが、とてもきれいだった。


*6日目(予定通りの停滞)

 午前中、近くの清流黒尊川へ釣りに行く。釣りに行く前に宮崎商店のおじさんにどんな釣り方がいいかと聞くと、流し毛針がいいというので、それを買っていった。
 黒尊川は大変美しく、長雨だというのにあまり濁っていない。ユリがとてもたくさん咲いている。
 早速毛針をテンカラ竿につける。同じ毛針といっても、流し毛針は浮きが付いていて単に上流へポイと放り込むだけである。全くアタリはないが、流し毛針をしているという行為が楽しく何十回も投げ込む。そう言えば日中は釣れないとおじさんが言っていたなあ。また夕方来ようと引き揚げる。
 カメラの調子がおかしい。電池がないらしい。アルカリ電池を買いに出る。
竹内商店。「そんなもんないよ。いったい何に使うん。」
宮崎商店。「聞いたことないなあ。見てみて。ここにあるかねえ。」
竹村鮮魚店。「なんだか知らんが、ここにあるだけや。」やっとあった。ほとんど奇跡のようだ。
 電池を入れ替えるが動かない。どうも防水機能が低下して浸水してしまったらしい。中が濡れている。
 ちなみに、帰宅後、ニコンの修理部に電話して状況を説明したところ、私の話の様子では、かなりの部品を交換しなくてはならないのだが、もうすでに部品の在庫がないと言われる。。そのような場合、修理部が修理不能認定書のようなものを発行し、それがあれば、同等のニコンのカメラが35パーセント引きで買えるのだそうだ。やったあ、と思ったが、現在ニコンでは、防水コンパクトカメラを製造していないという。それではだめだ。残念。しかし、ニコンは偉い。ちゃんと責任をとろうとしている。でも、もっと偉いのは部品を長くとっておくことだけどね。
 河原から川を見ていたら、また雨がザーザー降ってきた。もう、いい加減慣れてしまった。でも、北海道と違って、四国の夏の雨はとても良い。濡れても全然寒くない。今回のツアーでは、結局レインスーツは一回も着なかった。パドリング中は本当に濡れネズミ状態だったが、あまりの雨の強さに前が見えなくなる以外、全く問題がないのだった。
 と、あのフェザーの人が下ってきた。「やっぱり会えましたねえ。」
滋賀県に住み、大阪で働いているという。話を聞くと自転車もやっているという。ファルトの人って、こういうの多いな。私もそうだし。水の上か、道路の上かという違いはあるものの基本的なスタイルは似ているからだろう。
 6時過ぎ、再び黒尊川へ。流し毛針で3匹あげる。これでは、だめだとまたリリース。


*7日目(口屋内から中村)

 朝6時頃、また雨。が、その後上がったので出発することにする。買い出しに出ていたら、野村のおいちゃんがいた。家の前にかごがあり、山からのわき水を引いた中に入れてある。
「すみません。この中には何がいるんですか。」
「ウナギとナマズとツガニだ。」
見せてもらうと、太いウナギが2匹うごめいていた。
「これは1匹1キロくらいだなあ。昨日の晩2つ沈めといたら2つともかかったとった。」
「すげー。」
「これはナマズ。あんた、ナマズみたことないかね。これは小さいよ。ナマズは刺身が一番だな。」
「ヒエー。」
いつの間にかそばに来ていた近くのおじさんも「ナマズは、刺身が一番。」と言うのだった。
 まだまだ、四万十川は豊かなんだなあ。もう、ウナギなんて実際のところ獲れないのではないかと思っていた。四万十川強し。まだまだ捨てたもんじゃあない。
 今日は、本当ののんびりコース。晴れ間も見えてきて、とても気持ちがよい。フェザーの人と近くなり、遠くなりの一緒に下っているんだか別々に下っているのかわからないとてもいい感じで下っていった。
 12時頃昼飯にするため、上陸。フェザー艇は先に行ったようだ。
 暑くなってきたので、川の中に入り遊ぶ。ふー、いい気持ち。ガンガン暑くなってきた。もうたまらん。水着も脱いで、素っ裸になって川にはいる。ここは俺だけのヌーディストビーチだぞーといい気になって遊んだ。もし、ここにかわいい子が来たら「ここはヌーディストビーチだよ。さあさ、脱いで、脱いで。」と言おうなどと考えていたら、川の上流からカヌーが数艇下ってきた。今思っていたことなどすかさず忘れ、あわてて水着をはくのであった。相変わらず情けない。
 再び出発。
 フェザー艇の人が、河原で寝ている。洗濯物が乾くまで、しばらく昼寝をしていきます、と言う。今日は、佐田の沈下橋で上がるそうだ。そこには、ゲートボール場があり、トイレ、水場もあるという情報を聞いたらしい。私もそこで上がるかもしれないと言い、通り過ぎる。
今日は久々の晴れ間のためか、遊覧船も結構出ている。たった3,4人のお客しか乗せていないのだが、これで良く食っていけるなあ。お客さんは、必ず手を振ってくれる。私も恥ずかしそうにちょっと手を振る。ここの船頭さんは皆いい人で、挨拶をすると、軽く会釈をしてくれたり手を挙げてくれたりする。場所によっては、カヌーを邪魔者を見るような目で見る人もいるのだが、四万十川では同じ船に乗るものとして認めてくれているような気がする。
 川は、ますます幅を広げゆったりと進む。アオサギが、「グァッ」と大きな声を出しながら飛ぶ。なぜかアオサギって飛んでいる最中に水状のフンをやたらと出す。あんなの頭からかぶりたくないなあ。
 両岸は、エビを捕るための筒がたくさん沈めてある。江川崎からずっとこんな状態だ。こんなに毎日とっていて、エビはいなくならないのだろうか。
 佐田の沈下橋が近づいてくる。上がる場所を探すが、そんなところはない。増水のため、河原がつぶれているのだろう。それではと、中村目指し、珍しく漕ぐことにする。普通は、あまり漕がない。単に流されている状態が多い。何もカヌーで遊びに来るときまで一生懸命何かに取り組む必要はないだろう、という怠け心を常に持っている。
 が、この流れでは中村まで着きそうにないので、仕方なく腕を動かす。前の方に怪しい物体発見。中央大ワンゲル部による筏下りらしい。そういえば、江川崎で筏の組立をしていた。タイヤのチューブをひもで結び、木材で座る部分を作ってある。パドルも木の板と棒を釘で打ち付けたものだ。あんなもので、良くここまで来たなあ、と感心。パドリングだってめちゃめちゃだ。メンバーには女の子も含まれていて、今の時代でもこんな汚い世界に興味を持つ女性がいるんだとこれまた感心する。
 そして、中村着。雨がぱらぱら降ってくる。結局1週間毎日雨が降ったのだ。
 テントを立てているとフェザー艇もやってくる。やはり佐田では上がれなかったとのこと。
 一息ついたとことで、フェザーの彼と、風呂と飯にいくことにする。毎日、ラーメン、レトルトの食事だったので川旅の終わりを祝し、今日は居酒屋で乾杯しようということになったのだ。私は、明日、潮の引く時間が適当であれば、海まで下る予定だ。
 四万十川橋をわたり、銭湯に突入。番台のおばあさんに
「この辺でうまくて安い居酒屋とかありますかねえ。」と聞くと
「そりゃ無理だわ。うまいところは高い。」
「そりゃそうなんですけどね。金がないんすよ。」
いろいろ考えていたようだが、一件教えてくれた。「ちっと高いが、高いもんは頼まなければええ。」
 教えられたところへ二人でいく。店構えを見ただけでお互い顔を見合わせ、
「こりゃ高そうだわ。」カメレオンのように土地に合わせてしまう私は、半分関西弁になりかかっている。
少し歩くと、良さそうな居酒屋「大関」発見。まさか、ワンカップしか出さないなんてことはないだろうなと思いながら入ったが、ここが良かった。「態度はでかいですけど、金は持ってないですよ。」と言う私に、この土地の魚を出してくれた。
 各自生ビール2本、メジカという中村付近でしか捕れない魚1匹、魚のかき揚げ、鮎の甘露煮、カツオのたたき(土佐はやっぱりコレ)、ライスで、一人2500円。店のおばさんも明るくて最高。
 新聞も借りて、明日の潮汐表を見る。満潮が午後の2時。引き潮に合わせて下るとなるとそのころ出発となるので、海まで行くのをやめる。

  おしまい。次は仁淀川じゃ。





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