・タカの渡りを見に@神奈川県矢倉岳
先日、私の入っている全国愛鳥教育研究会の話し合いに行ったとき、常務理事のH氏から、「今度の休みには、矢倉岳に鷹を見に行くんだ」と、聞かされた。
「それってどこですか。」
最近、鳥の情報に、めっぽう弱い私は聞いた。
「松田のそばだよ。」
家に帰ってから道路地図を見たがわからない。近くの本屋で低山ハイクの本を見てわかった。足柄峠のそばなのだ。
なんでも、1500羽ものサシバが見られるというのだ。
サシバというのは、夏鳥のタカのことである。秋になると、群をなして海を渡っていく。そのルートはだいたい決まっていて、毎年、愛知県の伊良湖岬や鹿児島県の佐多岬には、多くのサシバが集まる。
そして、それを求めて、全国からバードウオッチャーが集結する。特に鷹が好きな人たちのことをホークウオッチャーと呼ぶ。私も、学生の頃は、4年連続して伊良湖へ通ったものだ。しかし、卒業してから10年たつが、それからは、1回しか行っていない。(今年は行きますが。)やっぱり遠いのだ。
そんな私にとって、矢倉岳情報は、寝耳に水というか、棚からぼた餅というか、とにかくラッキーな情報であったことには違いない。早速タカを見に行くことにした。
97年9月29日。朝9時、自宅を出る。そして、11時。矢倉岳への出発地である万葉公園へ着く。
見ると、平日だというのに、2人のバードウオッチャーが上空を見上げている。
「あああ、丸岳の上の方に鷹柱ができてる」
「あ、左に流れていく」
「あ、また右から5羽。」
双眼鏡を目から離さず会話をしている。
その声に私も思わず空を見上げるが、着いたばかりで目が鳥になれておらず、全然見えない。しかし、落ち着いて目を凝らしてみると、おお、サシバじゃあないか。ホントにこんなところにいるんだ。うわあ。
ちょっと話しかけてみた。実は、こんな時間では、もう鷹の渡りの時間ではないように思えたからだ。
「もう、サシバの渡りのピークの時間は過ぎましたか。」
「いや、これからだよ。3時くらいまで見られます。」
伊良湖は午前中がピークのようだが、ここはそうでもないようだ。
さらに、これまでに90羽ほどが見られたという。
矢倉岳への入り口でこんなに見ることができるのだから、もう、ここで見ちゃおうかとも思ったが、せっかくここまで来たのだから矢倉岳へ行ってみることにした。
矢倉岳へのハイキングコースを歩き始めると、マユミの木が、実を鈴なりにつけている。が、我が家のものとは違い、まだ赤みがかなり薄い。気候の違いか、栽培されているものと野生のものとの違いか。
路肩には、ヒガンバナが色あせてしぼんでいる。ヒガンバナの象徴的な真っ赤に燃えるような赤色の時期というのは意外と短いものだ。
ヤマガラのツイー、ツイー、と言う声を聞きながら足を進める。
右手に濃い紫色が美しい、妙な花を見つける。何が妙かというと、花が帽子をかぶったようになっているのだ。つくりも複雑でなんだかよくわからない。あとで家へ帰ってわかったのだが、これが名前だけは良く知っているトリカブトの仲間だった。あれがそうだったのか、もうちっとよく見ておくんだった。
「ジャー、ジャー」カケスが得意のしわがれ声を林の中に響かせる。
ヒノキの林を長々と歩く。ウグイスが、「チャッ、チャッ」と鳴きながら目の前の藪の中を逃げていく。
途中、木々の切れ間から空を見上げると、サシバが上空を通過している。早く矢倉岳山頂へ行かねば、と思いつつも道ばたに咲くきれいな花や、野草に思わず足を止めてしまうのだった。
くっつく実で有名なヌスビトハギの実。その形がサングラスのように見える。
初めて見るヤマジノホトトギスの花。うちのそばで見るヤマホトトギスとは違って、花びらが反り返っていない。ヤマジノの方が残念ながら美しい。
小さな花がかわいらしいミゾソバ。
つるの先にホタルブクロのような花を付けたツルニンジン。ちょっと気持ち悪い。図鑑によれば、このつるを切ったときに出る白い汁は切り傷に効くらしい。
他にも、ツリガネニンジン、ミズヒキ、ワレモコウ、ガクアジサイなどの花や真っ赤に実ったガマズミの実を楽しむ。
ススキが多くなってきた。頂上はもうすぐのようだ。
そして、視界が開ける。チカラシバの原っぱだ。ここが頂上だ。
男の人が一人、バズーカ砲のようなレンズの付いたカメラでシャッターを切っている。おっと、H氏ではないか。予告通り、ここにいた。
と、目と同じ高さにタカ柱が発生。15羽ほどだ。近い。ものすごく近い。こんなに近くでタカ柱を見るのは初めてだ。思わず興奮する。H氏のシャッターがうなる。
「すごいですねえ。ここは、いつもこんな風に見えるんですか。」
「いや、ものすごく運がいいねえ。こんなの2年にいっぺんだよ。来てすぐこんなの見たらもう病みつきになるぜ。」
そう言っている間も横から次々にタカ柱がわき上がる。そして、高度を上げてから頭の上を流れていく。
「うわああ。すごい、すごい。」
思わず声が出る。
そして、また次のタカ柱。なんというところだ、ここは。伊良湖に行く必要なんて全くないじゃないか。
H氏によれば、昨日は、オオタカ、ノスリ、ミサゴも出たとのこと。ハイタカ属も出るのだが、遠くてはっきりわからないようだ。
タカの出現がぱたっと止まったところで、昼食。1時30分。アマツバメが一羽飛んでいる。
2時に山頂を後にする。なぜか、嵐のようなタカ柱波状攻撃が終わった後、山頂には1羽もサシバは通らなかった。まさにグッドタイミングであったわけだ。
下山すると、万葉公園の前に、先ほどのバードウオッチャーが帰り支度をしていた。今日は、朝からなんとジャスト850羽ものサシバが通過したという。こりゃたまげた。そして、今日が第一のピークで、次は、今度の日曜日くらいになるのでは、と言う。
来週は無理だけど、来年も絶対来たいと思った。
[観察した鳥] ( )は、他の人の情報
(ハチクマ)、トビ、サシバ、キジバト、アマツバメ、コゲラ、ツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、カケス
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