| 多摩川について |
| 東京都内を流れる全国的に有名な一級河川ですが、身近であるはずの多摩川について知らないことが多かったので、図書館で少しだけ調べてみました。 |
| ■多摩川の由来、あれこれ |
| ■漁師町、羽田 |
| ■水質環境と現在 |
| ■カシンベック病 |
| ■緑地の狙い〜アシの浄化作用〜 |
| ■豊富な魚種 |
| ■多摩川水系の漁獲高 |
| ■82番目の水質 |
| ■2番目の集客 |
| 多摩川の由来、あれこれ |
| ▲多摩川とは? 秩父山地南部を源として、東京の西部を流れて東京湾に注ぎます。 多摩川上流より、「一ノ瀬川」「丹波川」「多摩川」と名を変え、河口付近は古くから地名を取り「六郷川」とも呼ばれていますが、これは恐らく河口付近の羽田は漁師町として栄え、土地に対する愛着が強かったせいだと思われます。 また、多摩川は「多麻河」「多麻川」「玉川」等とも記された記録があります。 水源は笠取山(山梨、埼玉県境)と、青梅街道の柳沢峠付近とする二つの説があるらしく、その関係からも、流程は138km、128km、123,5kmなど様々ですが、ほとんどは「水源は笠取山、流程は138km」となっています。 多くの支流を集めながら、山梨〜東京都〜神奈川県境と流れ東京湾にたどり着く一級河川で、東京都の大規模河川では唯一、上流域〜河口域までが都内を流れます。流程が全国の一級河川の中で、49位となっています。 ▲名前の由来 調べてみると多摩川の名前の由来には諸説あり、どれを本当として良いものか迷ったので、自分の中で一番面白いと感じたものをまとめてみます。 元々は地名で、平安前期の武蔵国(東京都)の「多磨郡」からきているものと思われます。この「多磨郡」は「たばぐん」と読み「和名抄」という史科では、やはり「多磨」を「たば」と呼んでいました。 その「たば」という読み方について、2つの説をご紹介します。 まずはこの説から。 多摩川上流に「丹波川(たばがわ)」という川がありますが、「手離(たばな)れる」という言葉が元という説です。自国から他国へ離れていく事を、古代では「手離れる」と言っていました。丹波川は、山梨県より源を発し、東京都に入ってから「多摩川」と名を変えます。 以下に「手離れる」を簡単な図で説明します。 ![]() もう1つの説は、田場の意の「たば」で、その田場とは稲作などに向いた田の場所です。 その田場の合い間を流れた・・・ということから「たばがわ」と呼ばれていた・・というものです。 ▲色んな呼び名 多摩川の「たま」を「玉」として「玉川」と呼ばれることも多くなり、今でもその地名などが残ります。 玉石が採れた、玉のように美しい川、また「魂(たま)」として、霊力を持った聖なる川だからだ・・・という説まであります。 |
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| 漁師町、羽田 |
| かつては漁師町として栄えた羽田も、現在は元漁師が遊漁船や屋形船を操業するのみで、漁で生活をする人は激減しました。 高度経済化に伴い圧迫され、1931年、羽田空港開発の埋立工事が始まると、漁師達は補償金と引き換えに強制的に職を奪われ、漁師町としての羽田の歴史は、ほぼ幕を降ろす結果となりました。 その後何もなければ漁師を続けることは可能でしたが、埋立地には工場がひしめき、その結果工業排水が流れ出し、人口増加で家庭排水の垂れ流しが横行し、1970年代には深刻な汚染がピークを迎えます。 つまり魚類が生息できない、できたとしても汚染された魚や貝であり食すことはできないレベルになっており、漁は不可能な事態に追い込まれ廃業せざるを得ませんでした。 かつては清流と謳われた多摩川ですが、高度成長期のピーク、たったの10年たらずの間に死の川となり、東京湾は死の海となってしまいました。 現在は水質がかなり改善されてきましたが、1970年代から改善されてきた水質は、30年以上経過した今も、まだ満足な水質には回復していませんし、そして二度と本来の姿に戻ることはないでしょう。 しかしそれでも、死の川時代に騒がれた重金属汚染、科学物質汚染の数値も落ち、東京湾ではアオヤギ、トリ貝、シャコなどがたくさん捕れます。羽田の大粒アサリは有名で、その味も大変に美味だとされています。 東京湾で捕れた魚貝類だとは知らずに食べている方もたくさんいらっしゃるはずです。 |
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| 水質環境と現在 |
| 1950年後半からの高度成長に向けて、汚染が激しくなってきます。 特に「アンモニア性窒素(※1)」の濃度は1960年に入ると激増。同時に「BOD(※2)」も急上昇。 BODは1960年後半〜1970年代には、魚類の生息限界値まで達してしまいます。 この時代は更に酷く、農薬や工業排水の垂れ流しによりあちこちで魚類が大量死し、1970年には「カシンペック病」(事項で解説)の騒ぎがあり、調布取水堰での飲料用取水が停止します。そして、それまではごく普通に泳げていた場所が、遊泳禁止区域になってしまいました。 この時代の悪評が現在でも根付いていて、未だに「死の川」「汚い川」だと思い込んでいる人が多いのは非常に残念です。 確かに下流域のゴミの多さを見ると、景観もその周囲の水質も綺麗だとは言えませんが、現在は農地や工場が減り、廃水処理や下水処理能力も向上したことから、生物がたくさん戻っています。 中流域〜上流ではアユが生きていけるくらいにまで水質が改善されてきました。サケの遡上も確認されています。 ただ高度成長期以前の水準にまでには改善されておらず、実は下水処理の限界もすぐそこまできているのが現状でもあります。 多摩川ではより大規模な治水工事を数十年計画で進めていますが、これを魚類等の生息に適したものに改善したり、下水処理排水の水質改善など、たくさんの課題が残されています。 ※1「アンモニア性窒素」 アンモニアが水に溶けたもので、タンパク質などの有機物が多い汚れた水にたくさんあります。尿素に多く含まれ、下水処理場でも全てを処理できな物質なので、人口が増えれば比例して増えます。 環境ホルモン(外因性内分泌撹乱科学物質)の1つです。 ※2「BOD」 Biochemical Oxygen Demandの略で、生物化学的酸素要求量という意味。 水中の微生物が汚れた水を浄化する為に必要な酸素量で、この値が大きくなると微生物が生きていけず、結果として汚染が始まります。水の汚濁指標として用いられ、工場排水等の規制項目の一つとして重要視されています。 2001年の環境省によるBODの調査では、大師橋〜調布橋までの区間はBODの基準を下回る結果が出ています。水質は少しずつ回復してきているのです。 |
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| カシンベック病 |
| 水の需要が多くなってきた高度成長期の頃、調布堰から飲料水の取水を開始しましたが、そんな中、1970年9月19日朝日新聞の一面トップで、多摩川の水を飲むとカシンベック病になるのでは?という疑いの記事が発表され、その当時は水俣病やイタイイタイ病も注目されていたことから大騒ぎとなりました。 この病は直接死に繋がることはありません。 骨の成長期に軟骨に異常が出るもので、成長と共に「骨多孔症(こつ たこうしょう)」という症状が見られ、骨が脆弱になってしまいます。 関節部分が竹の節のようにゴツゴツと膨れてしまい、外見上目立ってしまいます。 報道後、調布堰からの取水を停止した後に様々な実験を繰り返した結果、実は多摩川からはカシンベック病は発症しないとの結論が出て取水の再開が望まれましたが、カシンベック病そのものだけではなく、「カドニウム汚染 ※1」や「ABS濃度 ※2」の増加など、水質汚染が進んでいた現状と、すでにその頃には東京都の水道水源に余裕が出てきた為、総合的判断により取水が再開されることはありませんでした。 ※1「カドニウム汚染」 重金属の汚染の1つで、バッテリー、乾電池、塗料、顔料、プラスチックなど様々な用途に使われるものです。 カドニウムは発癌性、環境に大きく害を及ぼすもので、イタイイタイ病で有名になりました。 ※2「ABS濃度」 ABS樹脂のことで、「Acrylonitrile Butadiene Stylene」の頭文字を取っています。強度が強く柔軟性もあるプラスチックであることから文具、家具、日用品雑貨、車の部品などに広く使われますが、ABS樹脂にはアクリロニトリルが微量に残存することがあり、その毒性は発癌性などが挙げられます。 このように、多摩川では古くから水質汚染に様々な問題を抱えていることから、汚染基準の川となって全国的に水質の改善を促したといっても過言ではないようです。 1990年には政府は飲料水に関する暫定基準を制定。1993年には更に厳しく改められています。 |
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| 緑地の狙い 〜アシの浄化作用〜 |
| 下流域には特に広大な緑地が広がります。 野球場などを作り、実際には緑地というほど緑地だらけというわけではないのですが、週末ともなると野球やサッカーをしたり、散歩を楽しんだりする多くの人で賑わいます。 この緑地は、こういったスポーツやレジャーなどの目的で作られたといのもあるのですが、本来の機能は水質改善の為です。 雨水を土壌に染み込ませ、長い時間をかけて浄化させることで、多摩川の水質改善にも繋がるというわけです。 ▲アシの浄化作用 最河口〜府中辺りまでの特徴に、イネ科の植物アシ群落が挙げられます。 アシはヨシとも呼ばれていて、もしかしたらヨシの方が一般的かも知れませんが、それは昔、アシは「悪し(アシ)」というマイナスイメージがあるので「良し(ヨシ)」にしたからだと聞いたことがあります。どちらでも正解なので、ここではアシと表記します。 このアシ、様々な生物の棲家になるだけではなく、汚染の吸着除去をして水の浄化を助けます。また干潟も同様に大事なポイントで、干潟に棲む生物による水質浄化能力もあるのです。貝などは肝臓で毒素を分解する能力がある大変貴重な水辺の生き物です。 |
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| 豊富な魚種 |
| 河口から13kmほど上流にある大田区調布取水堰までの区間は「感潮域※」で、下流域に相当します。 ここまではコイ科の魚類、純淡水魚と共に、ボラ、サッパ、そしてコノシロまでが生息。コノシロは江戸前寿司では重宝される高級魚で、1キロ20000円前後の高値が付くこともあるのです。 1970年〜1992年までに多摩川水系淡水域で確認された魚種は10目、19科、46属、62種です。 ※感潮域 河川の下流で潮汐の影響をうける区間のこと。水位や水質の変化、流れの逆転などが生じます。 |
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| 多摩川水系の漁獲高 |
| 関東農政局が調査したところ、魚類はニジマス、ヤマメ、イワナ、アユ、コイ、フナ、オイカワ等の魚類、そしてその他の水産動物を合わせた結果、平成10年には297トンという漁獲高でした。 毎年、300トン前後の漁獲高となっています。 |
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| 82番目の水質 |
| 全国109の一級河川の中で、多摩川は82番目の水質です。 かなり改善されてきた水質ではありますが、まだ多くの課題が残っている結果といえます。 |
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| 2番目の集客 |
| 都市化の進んだ中での河川では当然のことかも知れませんが、全国109の一級河川の中で、なんと2番目に訪れる人が多いのが、多摩川なのです。 ちなみに一位は横浜市の鶴見川です。 オアシスを求めるという表現がよく使われますが、その中の一体どれだけの人が川の汚染状況を知り、自然に意識を向けた上でオアシスを求めているのでしょうか。 人が増えれば川が汚れるという、皮肉な結果なのかも知れません。 |
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