下関市国民保護計画(原案)への意見
提出団体 アイラブ・KENPO・ネットワーク
共同代表 泉 哲朗 山下 隆夫
提出団体 10フィート映画を上映する下関市民の会
代表 赤司 瞭雄
はじめに
私たちは平和活動を行っている市民グループです。
このたびの下関市国民保護計画策定に当たり、市が基本的人権の尊重と住民保護の立場
を堅持することを求めて以下の意見を提出します。
第1編 総 論
囲みの文章を書き換える
「わが国の平和と安全を確保するには、不断の外交努力により武力攻撃の発生を未然
に防ぐことが何よりも重要である。そのため、下関市としても国際交流などを通じて
周辺諸国との相互理解に努め、武力攻撃の回避・予防のために、平素からあらゆる努
力を払う。
しかし、こうした外交努力などにもかかわらず、武力攻撃事態等が発生した場合は
住民を保護するため、戦時国際人道法などの精神に基づいてこの計画を作成する。
武力攻撃事態の対処は侵害排除と国民保護の二つであるが、自治体の役割はあくま
でも住民の保護であり、住民の生命、身体および財産の保護に適切な役割を果たすこ
とである。併せて住民の基本的人権を侵害する恐れのないようこの計画を定める」
理由 下関市の基本的な姿勢を明確にするため。
第1章 市の責務、計画の位置付け、構成等
1、 市の責務、計画の位置付け
(1) 市の責務の項
文案のあとに次の文章を追加する
「ところで、戦争の予防こそが国民を保護する最良の方法である。そのために、
市は平素から地域・職場・学校等で平和教育等を行う。その平和教育は、先の大
戦や今日の国際紛争等の被害者から体験等を学ぶことを主とする」
理由 戦争を防止する一つは平和教育です。市として平和教育を重視することを 確認するため。
3、市国民保護計画の見直し、変更手続きの項
文案のあとに次の文章を追加する。
「そのため、現在の協議会委員に弁護士、市民、平和団体メンバーを加えるとともに市民に開かれた討論の場を設置する」
理由 戦時国際人道法に盛られた「軍民分離」原則の徹底と日本国憲法が保障
する基本的人権の尊重を、保護される市民の立場から意見を出し議論するため。
第2章 国民保護措置に関する基本方針の項
(1) 基本的人権の尊重
「日本国憲法の保障する国民の自由と権利を」のあとに「最大限に尊重する義務
があり」を追加する。
並びに、日本国憲法が保障する国民の自由と権利、武力攻撃事態における国民の
人権に対する必要最小限の制限を具体的に記載する。
理由 市の主要な役目はあくまでも住民保護です。保護措置を講じる場合の市の
基本的姿勢を明確にするため。
(2) 国民の権利利益の迅速な救済の項
文案のあとに次の文章を追加する
「そのため、中立的な「人権救済委員会(仮)を設置し、人権侵害、言論統
制、報道規制等の弊害を防止する」
理由 権利利益の迅速な救済を実施するため。
(6) 高齢者、障害者への配慮のあとに「ならびに園児、児童及び生徒への配慮」
を明記する。
理由 戦争で大きな被害を受けるのは「社会的弱者」です。計画案の中に「子ども
達への配慮」を明記した部分がありません。子どもの権利条約第38条、ジュネ
ーブ第4条約の第14、16〜18、24条で「紛争からの保護」が求められています。
また、2行目のあとに次の文章を追加する
「とりわけ、在日外国人に対しては特段の配慮を講ずる」
理由 市の特性として多くの在日韓国・朝鮮人の居住が挙げられます。関東大震
災時の朝鮮人虐殺やチマ・チョゴリの朝鮮学校生徒への嫌がらせなどを想起する
と、特別な配慮をする必要があります。
第2編 平素からの備えや予防
第1章 組織・体制の整備
第1 市における組織・体制の整備
囲みの文案を書き換える
「市は、国民保護措置を実施せざるを得ないような武力攻撃事態等に至らな
いようにするため、政府に対し平和外交の努力を求めるとともに、自治体・民
間の文化・人材交流や経済・技術協力の促進、教育を通じた平和・人権思想の
普及を図らなければならない。そのため、以下の通り各部局における平素の業
務等について定めるとともに、国民保護措置の実施に際して必要な組織及び体
制、職員の配置等の整備についても定める」
P23 1 市の各部課室における平素の業務の項
文案のあとに次の文書を追加する。
「なお、担当職員が武力攻撃災害とその他の災害との区別を認識し、業
務遂行にあたってはこれを混同したり転用することのないよう計画に明示し
周知徹底する」
P24 教育委員会の平素の業務に次のことを追加する。
・児童生徒の平和・人権教育に関すること
第2 関係機関との連携体制の整備
5 ボランティア団体等に対する支援の項
(1)の研修内容に戦時国際人道法も加えること。
第5 研修及び訓練の項
市職員への研修内容に戦時国際人道法も加えること。
理由 通常は知ることもない戦時国際人道法について周知徹底を図るため。
第4章 国民保護に関する啓発の項
次のことを追加する
「戦時国際人道法、有事における民間人の保護の普及啓発,国民保護措置における強
制措置及び任意の協力に限られる事項、国民保護における基本的人権の尊重、権利
侵害に対する救済措置などの啓発を図る」
理由 通常は知ることもない戦時国際人道法についての理解を図るとともに有事
における個人の権利について周知させるため。
第3編 武力攻撃事態等への対処
第4章 警報及び避難の指示等
第2 避難住民の誘導等の項
P95の自衛隊周辺地域における避難について
最も攻撃される可能性のあるところです。周辺住民の安全確保等について具体
的に明記すべきです。
P96の「国民保護のための措置と自衛隊の行動のためのニーズが競合した場
合」の記載はあまりにもあっさりしすぎています。住民保護と軍隊の作戦行動が、ぶつかり合う場面です。
侵害排除行動と住民の避難措置がぶつかった場合、市はあくまでも住民保護
優先の立場から施設、道路等の利用を図るべきです
そのためにも起こり得る事態を想定し、計画に組み込むことが必要です。
P97のE「北九州への避難」は前記とも関連することです。これも平素から
事態への対処を考慮すべきです。
さいごに
下関市国民保護計画(原案)で戦時国際人道法について記載があるのは3ページ目の
みで、内容について言及しているのは赤十字標章に関する条項しかありません。
ご承知のとおり、文民保護を規定したジュネーブ条約4条約ならびに2追加議定書
に加えさまざまな関連条約及び慣習法の総称として戦時国際人道法はあります。
これまで世界各地で繰り返されてきた紛争で、多くの一般市民の犠牲という悲痛な体験に基づいたものです。日本をはじめ環日本海の国々は批准済みです。
ジュネーブ第1条約は、「平時であると戦時であるとを問わず自国において出来る限り普及させること」という周知・教育の義務を要請しています。また、日本国憲法
第98条2項は国際法規の遵守を定めています。
不幸にも起きてしまった紛争でもいつかは終わりがきます。紛争の解決や違反行為に対する適切な処罰を国際社会に訴え解決するためにも、人道法や条約の理解は必要です。
一方、ジュネーブ条約は人口の集中している地域またはその付近に軍事目標を設けることを避けるなど、攻撃される側にも予防的措置を要請しています。市民や民間施設が保護されるためには,軍事作戦行動と厳密かつ明確に区分されることが必要です。
「軍民分離」こそが戦火から守る道です。
下関港に自衛艦や米軍艦船がたびたび入港しています。有事の際、同じようにこれ
らの艦船が民間港に入港した場合、港湾関連施設などが攻撃されても国際法上は抗議出来ません。
下関市国民保護計画(原案)総論の最初に、「不断の外交努力により、武力攻撃の発生を未然に防ぐことが何よりも重要である」とありますが、私たちも同感です。この計画が実際に使われることのないよう、「非核平和都市宣言」をしている下関市の平和行政に期待して意見を終わります。