終章

「夢…では…無かった…」

 ナギサは自分の意識が空港ビルの屋上、送迎デッキに立っている自分のこの肉体へ帰ってきたことをやっと認識した。そして、自分が誰であるのか…目の前にいるのが誰であるのか…。
 彼女は叫んだ。今度ははっきりと声にして。

「ジェダイトさま!」

 そう、そこに立っているのは夢で見たのと同じ、ジェダイトであった。

「目覚めたか。目覚めてくれたか」
「はい…はい…ジェダイトさま……」

 あの覚醒からまだほんの数日。
 記憶の混乱をきたすたび、テティスはこうやって塔の頂上にたち、夜風に吹かれて心の整理をすることを繰り返してきた。

 ……

 古城の事件ののち、四天王の心は完全に王家より離反した。
 そして、その晩秋。凶作を理由に地球国行政府は月王国へのいわゆる上納税の支払いを遅延していたが、いよいよ最後の刈り入れが済むと、地球国軍は月王国へと殺到したのである。

「我ら、たとえ妖魔と化しても誓って銀水晶を滅ぼさん」

 四天王は合議の結果、こう檄文をしたためたという。
 妖魔の力を借りることにためらいがなかったわけではなかろう。しかしクンツァイト卿配下、「七本槍」で名高い勇士達が志願して「妖魔七人衆」となり四天王に続いたとの報に士官ばかりか下士官・兵に至るまでが続々とベリルの洗礼を受けていった。

 ……

 今、こうして見渡す街は平穏そのものであった。
 だが、着々と銀水晶の通力圏は拡大している。
 テティスはそっとジェダイトを振り返った。
 このお方のために戦い抜こう…。
 そして、転生したであろう月の猫、ルナは今どうしているのか思いを巡らすテティスであった。 
  

                         (了)

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